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【論文522】「仕事をしない」は三つあり、零になっている場所が三つとも違う

要旨

「仕事をしない」という同じ一言が、電気の三つの場面で使われている。本稿が示すのは、零になっている場所が三つとも別であり、ポインティングの帳簿の別の項に住んでいることである。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、無効電力で零なのは時間平均だけである。平均は $\mathbf{1.004\times10^{-17}}$ だが、瞬時電力は $\mathbf{0.500000}$ あり、電流の実効値も $\mathbf{0.707107}$ ある(第2節)。

第二に、抵抗を直列に入れると平均は $\mathbf{0.250000}$ になる。境目の反対側。零だったのは回路の性質であって、交流の性質ではない(第2節)。

第三に、磁場で零なのは内積そのものである。力と速度の内積は規格化して $\mathbf{0.000\times10^{0}}$、平均を取る前から零である(第3節)。

第四に、それでも速度は動いている。速さは $\mathbf{0.911043357914}$ から $\mathbf{0.911043357916}$ へしか動かないのに、$x$ 成分は $\mathbf{0.700000}$ から $\mathbf{0.559541}$ へ動く(第3節)。

第五に、これが本稿の芯である。変位電流の「仕事をしない」は、零ですらない。$\mathbf{J}\cdot\mathbf{E}$ の項に入っていないだけで、隙間の蓄えは $\mathbf{8.854187813\times10^{-8}}$ ワットで増え、側面から入る流束と比 $\mathbf{1.000000000000}$ で一致する(第4節)。

第六に、分離子は「どの零か」である。時間平均が零・内積が零・項に入っていない、の三つであり、同じ帳簿の別の場所である(第5節)。

キーワード:仕事をしない力、ポインティングの定理、無効電力、ローレンツ力、電磁エネルギー。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。ポインティングの定理も、無効電力の定義も、ローレンツ力が仕事をしないことも標準的である。エネルギーの局在を論じない。ポインティングベクトルの一意性(曲がりの分だけ足せる自由度)には立ち入らない。本稿が使うのは積分した帳簿だけである。磁気モーメントの話に広げない。内部自由度を持つ粒子で磁場が仕事をするように見える場合は、本稿の枠の外である。回路の設計をしない。力率をどう改善するかは主題ではない。変位電流に実体を与えない。磁場を作るという性質を述べるだけで、電荷が動いているとは書かない。三つを「同じ現象」と呼ばない。共有しているのは帳簿であって、機構ではない。既刊との関係:論文356 は電流が流れているのに仕事をしていないと示した。本稿はその零が時間平均の零であることを、瞬時電力 $0.500000$ を並べて示す。論文410 は磁場が仕事をしないのに粒子を閉じ込めると示した。本稿はその零が内積の零であることを、速さと向きを分けて示す。論文267 は変位電流が電流ではないと示した。本稿はそれが帳簿のどの項に住んでいないかを示す。論文339 は彗星の尾が二本だと示し、論文418 は光の角運動量が二つだと示した。どちらもポインティングベクトルを運動量の側から使っている。本稿はエネルギーの側から使う。論文300 は同根か別根かが判定できると示した。三つの零は「量の持ち物」の基準で別根である。論文481 は「法則が破れた」がどの仮定へも落とせると示した。本稿は逆に、「仕事をしない」がどの項へ落ちるかを一意に決める。加えたのは、三つの零を同じ帳簿の三つの場所として住所づけたこと、無効電力の瞬時値 $0.500000$ と抵抗入りの $0.250000$ を境目の両側として測ったこと、磁場の内積が平均を取る前から零であることを測ったこと、変位電流の帳簿が $12$ 桁で閉じることを確かめたこと、分離子を「どの零か」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:ポインティングの定理は、電磁場のエネルギーの帳簿である。

$$\frac{\partial u}{\partial t}+\nabla\cdot\mathbf{S}=-\mathbf{J}\cdot\mathbf{E}$$

ここで $u$ は蓄え、$\mathbf{S}=\mathbf{E}\times\mathbf{B}/\mu_{0}$ は流れ、$\mathbf{J}\cdot\mathbf{E}$ は物質へ渡す仕事率である。

観察 1.1 項は三つしかない。蓄えの変化、流れの発散、物質への受け渡し、「仕事をしない」と言うとき、どの項が零なのかを言わなければ、文は住所を持たない。

観察 1.2 零には形が三つある。時間平均が零・量そのものが零・その項に入っていない。三つ目は「零である」とすら言えない。項が違うのである。

問い:電気の三つの「仕事をしない」は、この三つのどれか。

2. 無効電力、零なのは時間平均だけ

計算 2.1:$v(t)=\cos t$ を純粋なインダクタ($L=1$)に掛ける。電流は $i(t)=\sin t$ になる。一周期にわたって $p(t)=v i$ を数値的に平均した。

量 値
平均電力 $\mathbf{1.004\times10^{-17}}$
瞬時電力の最大 $\mathbf{0.500000}$
電流の実効値 $\mathbf{0.707107}$

観察 2.2 三つの数のうち、零なのは一つだけである。電流は流れており、瞬時電力も往復している。零になるのは一周期を通したあとであって、どの瞬間にも仕事をしていないのではない。

観察 2.3 瞬時電力の最大 $\mathbf{0.500000}$ は、蓄えの往復である。$p(t)=(1/2)\sin 2t$ で、周波数が二倍になる。エネルギーは電源とインダクタのあいだを一周期に二度往復している。

計算 2.4:抵抗 $R=1$ を直列に入れて同じ平均を取る。平均は $\mathbf{0.250000}$ である(閉じた式 $V^{2}R/(2|Z|^{2})$ と一致)。

観察 2.5 境目の反対側である。同じ交流、同じ周波数でも平均は零でなくなる。零だったのは回路の性質であって、交流であることの性質ではない。

観察 2.6 帳簿でいえば、$\mathbf{J}\cdot\mathbf{E}$ は零でない。各瞬間には物質と場のあいだで受け渡しがある。一周期で足すと零になるだけである。

3. 磁場、零なのは内積そのもの

計算 3.1:一様磁場 $\mathbf{B}=(0,0,1)$ の中で荷電粒子を $200000$ 歩だけ進め、毎歩、力と速度の内積を規格化して測った。

量 値
内積の最大(規格化) $\mathbf{0.000\times10^{0}}$
速さ(初め) $\mathbf{0.911043357914}$
速さ(後) $\mathbf{0.911043357916}$
速度の $x$ 成分(初め $\to$ 後) $\mathbf{0.700000}\to\mathbf{0.559541}$

観察 3.2 ここでの零は、平均を取る前から零である。$\mathbf{F}=q\mathbf{v}\times\mathbf{B}$ は定義により $\mathbf{v}$ と直交する。無効電力とは零の種類が違う。あちらは往復して消え、こちらは初めから無い。

観察 3.3 それでも何も起きていないのではない。速さの相対変化は $\mathbf{1.759\times10^{-12}}$(数値積分の誤差の桁)なのに、$x$ 成分は $\mathbf{0.700000}$ から $\mathbf{0.559541}$ へ $\mathbf{0.140459}$ 動いている。仕事が零であることと、影響が無いことは別である。

観察 3.4 帳簿でいえば、$\mathbf{B}$ は $\mathbf{J}\cdot\mathbf{E}$ に一度も現れない。仕事率の項は電場だけを含む、論文410 が「閉じ込めるのに仕事をしない」と書いた事情は、この項の形そのものである。

観察 3.5 磁場が無関係だという意味ではない。$\mathbf{S}$ には $\mathbf{B}$ が入り、$u$ にも $B^{2}/2\mu_{0}$ が入る。$\mathbf{B}$ が入っていないのは三つの項のうち一つだけである。

4. 変位電流、零ですらない

計算 4.1:面積 $10^{-2}$ 平方メートル、間隔 $10^{-3}$ メートルの平行板の隙間で、電場を毎秒 $10^{6}$ ボルト毎メートルの割合で増やす。$t=10^{-3}$ 秒の時点で、隙間の蓄えの増え方と、側面から入るポインティング流束を別々に計算した。

量 値(ワット)
蓄えの増え方 $\partial u/\partial t$ の体積積分 $\mathbf{8.854187813\times10^{-8}}$
側面から入る流束 $\mathbf{8.854187813\times10^{-8}}$
比 $\mathbf{1.000000000000}$
$\mathbf{J}\cdot\mathbf{E}$(自由電流が無い) $0$

観察 4.2 これが本稿の芯である。隙間には自由電流が無いので $\mathbf{J}\cdot\mathbf{E}=0$ だが、それは「零になった」のではない。初めからその項に住んでいない。エネルギーは $\partial u/\partial t$ と $\nabla\cdot\mathbf{S}$ の二項だけで完全に釣り合っている。

観察 4.3 帳簿は $12$ 桁で閉じる。側面から入る流束と蓄えの増え方の比が $\mathbf{1.000000000000}$、これは検査であって主張ではない。もし変位電流を磁場の源に数え入れなければ、$\mathbf{B}$ が出ず、流束は零になり、帳簿は開いたままになる。

観察 4.4 エネルギーは横から入っている。極板の導線に沿ってではなく、円筒の側面から、論文267 が「変位電流は電流ではない」と書いたとおり、運んでいるのは電荷ではなく場である。

観察 4.5 三つ目の零は、零の一種ではない。時間平均の零は「積分すると消える」、内積の零は「常に零」、項の所属は「その量がそこに無い」。三つ目だけが数の話ですらない。

5. 分離子

観察 5.1 分離子は「どの零か」である。三つを取り違えると、予測が変わる。時間平均の零は回路を変えれば破れ($\mathbf{0.250000}$)、内積の零はどんな磁場配置でも破れず、項の所属は帳簿の書き方を変えない限り動かない。

観察 5.2 論文300 の「量の持ち物」の基準で別根である。一つ目は周期という持ち物を要り、二つ目は要らず、三つ目は量ですらない。同じ数(零)が出ることは、同根の証拠にならない。

観察 5.3 共有しているのは帳簿である。三つとも同じ一本の等式の中に住所を持つ、ただしそれは「同じ現象」という意味ではない。同じ台帳に別の行があるだけである。

観察 5.4 論文481 の逆向きである。あちらは「法則が破れた」がどの仮定へも落とせると示した。こちらは「仕事をしない」がどの項に落ちるかが一意に決まると示す。帳簿があると、行き先が一つに定まる。

観察 5.5 言わないこと。ポインティングベクトルには曲がりの分だけ足せる自由度があり、局在の議論には立ち入らない。本稿が使うのは、閉曲面で積分した帳簿だけである。

観察 5.6 磁気モーメントを持つ粒子は枠の外である。内部自由度があると「磁場が仕事をした」ように見える場合がある。本稿の粒子は点電荷であり、その場合に限って内積は厳密に零である。

6. 点呼と結び

  1. 無効電力の平均 $\mathbf{1.004\times10^{-17}}$(計算 2.1):零なのは平均だけ。
  2. 瞬時電力 $\mathbf{0.500000}$・実効電流 $\mathbf{0.707107}$(計算 2.1):零でない量が二つある。
  3. 抵抗を入れると $\mathbf{0.250000}$(計算 2.4):境目の反対側。
  4. 磁場の内積 $\mathbf{0.000\times10^{0}}$(計算 3.1):平均を取る前から零。
  5. 速さは $\mathbf{0.911043357914}\to\mathbf{0.911043357916}$(計算 3.1):$1.759\times10^{-12}$ しか動かない。
  6. $x$ 成分は $\mathbf{0.700000}\to\mathbf{0.559541}$(観察 3.3):仕事が零でも影響はある。
  7. 蓄えの増え方 $\mathbf{8.854187813\times10^{-8}}$ ワット(計算 4.1):本稿の芯。
  8. 側面からの流束と比 $\mathbf{1.000000000000}$(観察 4.3):帳簿が $12$ 桁で閉じる。
  9. $\mathbf{J}\cdot\mathbf{E}$ に $\mathbf{B}$ は現れない(観察 3.4):項の形そのもの。
  10. 分離子は「どの零か」(観察 5.1):三つで予測が違う。
  11. 磁気モーメントは枠の外(観察 5.6):点電荷に限る。

結び:電気には「仕事をしない」と言われる場面が三つある。一つ目で零なのは時間平均だけである。純粋なインダクタでは平均電力が $\mathbf{1.004\times10^{-17}}$ で零だが、瞬時電力は $\mathbf{0.500000}$ あり、電流の実効値も $\mathbf{0.707107}$ ある。瞬時電力は $(1/2)\sin 2t$ の形で、周波数が二倍になっている。エネルギーは一周期に二度、電源とインダクタのあいだを往復している。抵抗 $1$ を直列に入れると平均は $\mathbf{0.250000}$ になり、閉じた式と一致する。零だったのは回路の性質であって、交流であることの性質ではない。二つ目で零なのは内積そのものである。ローレンツ力は定義により速度と直交し、規格化した内積の最大は $\mathbf{0.000\times10^{0}}$ で、平均を取る前から零である。それでも何も起きていないのではない。速さは $\mathbf{0.911043357914}$ から $\mathbf{0.911043357916}$ へ $1.759\times10^{-12}$ しか動かないのに、$x$ 成分は $\mathbf{0.700000}$ から $\mathbf{0.559541}$ へ $0.140459$ 動く。帳簿でいえば、仕事率の項 $\mathbf{J}\cdot\mathbf{E}$ に $\mathbf{B}$ は一度も現れない。ただし $\mathbf{S}$ にも $u$ にも $\mathbf{B}$ は入るので、入っていないのは三項のうち一項だけである。三つ目は零ですらない。平行板の隙間には自由電流が無いので $\mathbf{J}\cdot\mathbf{E}=0$ だが、これは零になったのではなく、初めからその項に住んでいない。蓄えは $\mathbf{8.854187813\times10^{-8}}$ ワットで増え、円筒の側面から入るポインティング流束と比 $\mathbf{1.000000000000}$ で一致し、二項だけで帳簿が閉じる。エネルギーは導線に沿ってではなく横から入っている。運んでいるのは電荷ではなく場である。これは検査であって主張ではない。変位電流を磁場の源に数え入れなければ $\mathbf{B}$ が出ず、流束は零になり、帳簿は開いたままになる。分離子は「どの零か」である。時間平均の零は回路を変えれば破れ、内積の零はどんな磁場配置でも破れず、項の所属は帳簿の書き方を変えない限り動かない。論文300 の「量の持ち物」の基準でいえば、一つ目は周期という持ち物を要り、二つ目は要らず、三つ目は量ですらない。同じ零が出ることは同根の証拠にならない。論文481 の逆向きでもある。あちらでは「法則が破れた」がどの仮定へも落とせたが、帳簿があると「仕事をしない」の行き先は一つに定まる。正直に言えば、ポインティングベクトルには曲がりの分だけ足せる自由度があり、エネルギーの局在には立ち入っていない。使ったのは閉曲面で積分した帳簿だけである。磁気モーメントを持つ粒子は枠の外で、内積が厳密に零なのは点電荷の場合に限る。力率をどう改善するかも、変位電流に実体があるかどうかも扱っていない。言えるのは、三つの「仕事をしない」が同じ一本の等式の別々の場所に住んでおり、取り違えると予測が変わる、そこまでである。

参考文献

  1. Feynman, R. P., Leighton, R. B., & Sands, M. (1964). The Feynman Lectures on Physics. Addison-Wesley.
  2. Heaviside, O. (1893). Electromagnetic Theory. The Electrician Printing and Publishing Company.
  3. Jackson, J. D. (1998). Classical Electrodynamics (3rd ed.). Wiley.
  4. Poynting, J. H. (1884). On the Transfer of Energy in the Electromagnetic Field. Philosophical Transactions of the Royal Society of London.
  5. 山岸勇輝 (2026). 『変位電流は、電流ではない』[論文267]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22169814
  6. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  7. 山岸勇輝 (2026). 『彗星の尾は一本ではなく、別の力に引かれた二本である』[論文339]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22682041
  8. 山岸勇輝 (2026). 『電流は流れているのに、仕事をしていない』[論文356]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22697124
  9. 山岸勇輝 (2026). 『磁場は仕事をしないのに、粒子を閉じ込める』[論文410]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22699628
  10. 山岸勇輝 (2026). 『光の角運動量は二つあって、片方だけ上限がない』[論文418]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22699908
  11. 山岸勇輝 (2026). 『「法則が破れた」は、どの仮定へも落とせる』[論文481]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22733927

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「「仕事をしない」は三つあり、零になっている場所が三つとも違う」[論文522]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22867518

YOI 522第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 「仕事をしない」は三つあり、零になっている場所が三つとも違う [論文522]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/522 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22867518

Yamagishi, Y. (2026). There Are Three Ways of Doing No Work, and the Zero Sits in a Different Place in Each [Paper 522]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/522; DOI: 10.5281/zenodo.22867518

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