要旨
論文111 は光が共形構造までしか決めないこと(十成分のうち九つ)を書き、論文118・119・121・122 は四つの時計、$dt$(座標)、$d\tau$(曲線の汎関数)、$dS$(測度の汎関数)、リッチ・フローの径数、を別の論理型として分けた。本稿は両者を一つの試験にかける。新しい数学定理も新しい物理法則も主張しない。
第一に、残る一成分の正体は密度である。計量は共形類(九成分)と密度(一成分)に分かれる。シュヴァルツシルト計量で確かめると、単位行列式の代表元の行列式は $-1$、密度は $r^2|\sin\theta|$ である(本稿で記号計算)(第2節)。
第二に、共形変換は光円錐を動かさず、固有時を動かす。零ベクトルは任意の $\Omega$ で零のまま、時間的間隔は $\Omega^2$ 倍になる(第3節)。
第三に、これが本稿の芯である。一度の共形変換が、四つの時計を重みで分ける。$dt$ は重み $0$、$d\tau$ は重み $1$、リッチ・フローの径数は重み $2$ である(球面の消滅時刻で確認、$[t]=L^2$ と一致)。論文118 の「論理型が違う」が、ここでは一つの数として読める(第4節)。
第四に、第三の時計は同じ試験で二つに割れる。確率測度のエントロピーは重み $0$、体積を基準に測る微分エントロピーは $d\log\Omega$ だけ「ずれる」。重みですらなく、加法的な非斉次項である(三次元ガウスで確認、$\Omega=10$ で $6.907755$)(第5節)。
第五に、ワイルの定理により、因子は定数に決まる。共形構造(光)と射影構造(自由落下)を両方与えると $\phi$ は定数に強制される。どちらか一方では決まらない(第6節)。そして光が届かない最後の一つは、論文149 で「押し出る側・$|\det|$ を担う側」と書いた当のものである(第7節)。
射程(何を示さないか)
本稿の射程:新しい数学定理も新しい物理法則も主張しない。ワイル(1921)、エーレルス=ピラーニ=シルト(1972)、リッチ・フロー(ハミルトン1982)、微分エントロピーの座標依存性はいずれも標準的である。本稿が加えるのは、四つの時計を一つの共形変換にかけて重みで分けたこと、第三の時計がその試験で二つに割れることを示したこと、光が残す一成分が「密度」であり論文149 の分類でいう押し出る側だと書いたことだけである。計量が実在するとも、共形構造が本質だとも主張しない。
1. 記法と位置づけ
計量を $g$、共形変換を $g\mapsto\Omega^2g$、$\Omega=e^{\phi}$ と書く。$d$ を空間時間の次元とする。
位置づけ:論文148 は「点」の別根を試験対象で分け、論文149 は運搬の向きで分けた。本稿は同じ道具を体系自身の四つの時計に当てる。そして光が測れないものに名前を与える。
2. 計量は、共形類と密度に分かれる
観察 2.1 対称二階テンソルの成分は $d(d+1)/2$ である。行列式を $1$ に規格化した代表元は $d(d+1)/2-1$ 成分をもち、残る一つが密度である。
| $d$ | 対称成分 | 単位行列式の部分 | 密度 |
|---|---|---|---|
| 2 | 3 | 2 | 1 |
| 3 | 6 | 5 | 1 |
| 4 | 10 | 9 | 1 |
| 5 | 15 | 14 | 1 |
| 6 | 21 | 20 | 1 |
検算 2.2:シュヴァルツシルト計量で本稿の記号計算は
$\det g=-r^4\sin^2\theta$、$\hat g=|\det g|^{-1/4}g$ に対し $\det\hat g=-1$、密度は $|\det g|^{1/2}=r^2|\sin\theta|$ を与える。(証明終)
観察 2.3 四次元では $10=9+1$ である。光が決めるのは前者であり、後者は決めない(論文111)。
3. 共形変換は光円錐を動かさず、固有時を動かす
検算 3.1
| ベクトル | $g(v,v)$ | $\Omega^2g(v,v)$ |
|---|---|---|
| 零 $(1,1,0,0)$ | $0$ | $0$ |
| 時間的 $(1,\tfrac12,0,0)$ | $-\tfrac34$ | $-\tfrac34\Omega^2$ |
(証明終) 零は任意の $\Omega$ で零のままである。光円錐は共形不変であり、だから光は共形構造しか報せない。
4. 一度の共形変換が、四つの時計を重みで分ける
検算 4.1:直線状の時間的世界線に沿う固有時は、本稿の計算で
$d\tau/d\lambda=\sqrt3/2$ が $\Omega^2g$ では $\sqrt3\,\Omega/2$ になる。重みは $1$ である。(証明終)
検算 4.2:半径 $r_0$ の丸い $n$ 球面上のリッチ・フロー $g(t)=(1-2(n-1)t/r_0^2)\,g_0$ の消滅時刻は
$t_*=r_0^2/(2(n-1))$ であり、$r_0\mapsto\Omega r_0$ とすると $t_*\mapsto\Omega^2 r_0^2/(2(n-1))$ になる。重みは $2$ である。(証明終)
観察 4.3 (これが本稿の芯である)
| 時計 | 何の上の関数か | $g\mapsto\Omega^2g$ で | 重み |
|---|---|---|---|
| $dt$ | 図表(座標) | 変わらない | 0 |
| $d\tau$ | 曲線 | $\Omega$ 倍 | 1 |
| $dS$ | 測度 | 第5節 | 、 |
| リッチ・フローの $t$ | 計量の空間 $\mathrm{Met}(M)$ | $\Omega^2$ 倍 | 2 |
論文118 は四つを「論理型が違う」と分けた。ここでは一度の変換を当てるだけで、その違いが一つの数として現れる。そして重みを決めているのは「何の上の関数か」、すなわち論文148 のいう試験対象である。
観察 4.4 重み $2$ は $[t]=L^2$(論文119)と一致する。別々に得た二つの事実が同じ数を指している。
5. 第三の時計は、同じ試験で二つに割れる
検算 5.1:三次元ガウス測度の微分エントロピーを、$x\mapsto\Omega x$ の前後で比べると
| $\Omega$ | 微分エントロピー | $\Omega=1$ からのずれ | $d\log\Omega$ |
|---|---|---|---|
| 0.5 | 2.692719 | $-2.079442$ | $-2.079442$ |
| 1.0 | 4.772161 | 0.000000 | 0.000000 |
| 2.0 | 6.851602 | 2.079442 | 2.079442 |
| 3.0 | 8.067998 | 3.295837 | 3.295837 |
| 10.0 | 11.679916 | 6.907755 | 6.907755 |
一方、同じ情報を有限集合上の確率として読んだシャノン・エントロピーは $1.207974$ ナットであり、空間を伸縮しても動かない。(証明終)
観察 5.2 「$dS$」は二つの量である。確率測度のエントロピーは重み $0$。体積を基準に測る微分エントロピーは重みを持たず、$d\log\Omega$ だけ加法的にずれる。
観察 5.3 (なぜ割れるのか) 微分エントロピーは測度だけの関数ではなく、測度と体積要素の比の関数だからである。体積要素は第2節の密度であり、共形変換が動かすのはまさにそれである。分離子は、基準を外から持ち込んでいるかどうかである。
6. ワイル:共形と射影を両方与えると、因子は定数になる
事実 6.1:$g\mapsto e^{2\phi}g$ で接続は
$\delta\Gamma^a{}_{bc}=\delta^a{}_b\phi_c+\delta^a{}_c\phi_b-g_{bc}g^{ad}\phi_d$ だけ変わる。
二つの接続が径数を無視した測地線を共有するのは
$\delta\Gamma^a{}_{bc}=\delta^a{}_b\omega_c+\delta^a{}_c\omega_b$ と書けるときに限る。
検算 6.2:$a$ と $b$ を縮約すると左辺は $d\,\phi_c$、右辺は $(d+1)\omega_c$ ゆえ $\omega_c=d\,\phi_c/(d+1)$ である。ここで平坦計量と $\phi=\phi(x^1)$ を取り、$a=1,\ b=c=2$ の成分を見ると
| $\delta\Gamma^1{}_{22}$ | $-\phi_1$ |
|---|---|
| 射影の形が許す値 | $0$ |
| 差 | $-\phi_1$ |
すなわち一致するのは $\phi_1=0$ のとき、つまり因子が定数のときだけである。(証明終)
観察 6.3 光(共形構造)と自由落下(射影構造)を両方与えて、計量は定数倍を除いて決まる(ワイル1921、エーレルス=ピラーニ=シルト1972)。どちらか一方では決まらない。論文111 の「光は九つまで」に、もう一本の脚が加わる。
7. 光が残す一つの数は、密度である
観察 7.1 正の定数 $k$ に対し $g$ と $k^2g$ は同じ光円錐と同じ測地線をもち、固有時は $k$ 倍、四次元の体積は $k^4$ 倍になる(本稿で確認)。
観察 7.2 (点呼)
| 観測されるもの | 何によって | 決まるもの | 個数 | 向き(論文149) |
|---|---|---|---|---|
| 光円錐 | 光線 | 共形類 | 10のうち9 | 引き戻る |
| 径数なしの測地線 | 自由落下 | 射影構造 | 、 | 引き戻る |
| 最後の一つ | 時計または物差し | 密度 | 10のうち1 | 押し出る |
観察 7.3 (これが結び目である) 光が届かない最後の一成分は、論文149 が「押し出る側・$|\det|$ を担う側」と書いた当のものである。光は引き戻る量しか報せない。体積の基準は、外から持ち込むしかない。そして第5節で微分エントロピーがずれた理由も、同じこれである。
観察 7.4 (射程) 以上は「計量が実在するか」には触れない。どの観測がどの構造を決めるか、という勘定だけである(論文95)。
8. 結論
- 計量は共形類と密度に分かれる(検算2.2)。四次元で $10=9+1$。
- 共形変換は光円錐を動かさず、固有時を動かす(検算3.1)。
- 一度の共形変換が四つの時計を重みで分ける(観察4.3):$0$/$1$/第5節/$2$。重みを決めるのは「何の上の関数か」である。
- 第三の時計は二つに割れる(検算5.1):確率測度のエントロピーは重み $0$、微分エントロピーは $d\log\Omega$ だけずれる。
- 共形と射影を両方与えて因子は定数になる(検算6.2)。どちらか一方では決まらない。
- 光が残す一つは密度であり、押し出る側の量である(観察7.2、論文149)。
結び:光は、引き戻せるものしか報せない。共形構造は引き戻り、密度は押し出る。だから光でいくら測っても、体積の基準は出てこない。四つの時計が一度の変換で $0,1,2$ に分かれ、そのうち一つが二つに割れたのは、どれが基準を外から持ち込んでいるかが違うからである。時計とは、外から持ち込んだ基準の名前であった。
参考文献
- Weyl, H. (1921). Zur Infinitesimalgeometrie: Einordnung der projektiven und der konformen Auffassung. Nachrichten von der Gesellschaft der Wissenschaften zu Göttingen.
- Ehlers, J., Pirani, F. A. E. & Schild, A. (1972). The geometry of free fall and light propagation. In: General Relativity (ed. L. O’Raifeartaigh), Clarendon Press.
- Penrose, R. (1965). Zero rest-mass fields including gravitation: asymptotic behaviour. Proceedings of the Royal Society A, 284.
- Hamilton, R. S. (1982). Three-manifolds with positive Ricci curvature. Journal of Differential Geometry, 17.
- Perelman, G. (2002). The entropy formula for the Ricci flow and its geometric applications. arXiv:math/0211159.
- Cover, T. M. & Thomas, J. A. (2006). Elements of Information Theory, 2nd ed. Wiley.
- 山岸勇輝 (2026). 別根と言うのは半分である。住所を書け [論文17] 第3版. Zenodo. 10.5281/zenodo.21600813
- 山岸勇輝 (2026). 規約と事実 [論文95]. Zenodo. 10.5281/zenodo.21758621
- 山岸勇輝 (2026). 王道の点呼 [論文100]. Zenodo. 10.5281/zenodo.21758864
- 山岸勇輝 (2026). 光と共形構造 [論文111]. Zenodo. 10.5281/zenodo.21961685
- 山岸勇輝 (2026). $c$ の指数が数えているもの [論文116]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22003794
- 山岸勇輝 (2026). 二つの時計、一つの尺度 [論文118]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22036237
- 山岸勇輝 (2026). 第四の時計 [論文119]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22036353
- 山岸勇輝 (2026). 道具の計量 [論文121]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22038594
- 山岸勇輝 (2026). 時計と次元 [論文122]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22054748
- 山岸勇輝 (2026). $\varepsilon^2=0$ は環の定義であり、$(dW)^2=dt$ は道の事実である [論文148]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22083237
- 山岸勇輝 (2026). 分母を決めるのは行列式ではなく、最大不変因子である [論文149]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22083590
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「光が測れないのは、密度である」[論文150]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22083989
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/150・DOI 10.5281/zenodo.22083989・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 光が測れないのは、密度である [論文150]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/150 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22083989
Yamagishi, Y. (2026). What Light Cannot Measure Is a Density [Paper 150]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/150; DOI: 10.5281/zenodo.22083989
@misc{yamagishi2026yoi150,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {What Light Cannot Measure Is a Density},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/150},
doi = {10.5281/zenodo.22083989},
note = {Preprint, edition 1}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
e79b2e39c63c04cb101803c8902807581ca616daf60c3246615ade62ad404c75 yamagishi_yoi150_v1_jp.pdf9598b0a213e08b6610de81df52279ac74ee1752614900b436741861a1755f8e2 yamagishi_yoi150_v1_en.pdfPDF と .ots を同じ場所に保存し、opentimestamps.org に .ots、続けて PDF を落とすと、記録された日時が表示されます。PDF が 1 バイトでも変わっていれば通りません。