要旨
同じ太さで描いた線は、どこに置いても同じ太さに見える、と思いやすい。本稿は、文字の縦の線のような一本の線を画素の格子に置き、中心が線の中にある画素を黒くする模型で、置く位置によって出る太さがどう変わるかを数える。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、出る太さは二通りしかない。幅 $2.9$ 画素の線は、置く位置によって $2$ 画素か $3$ 画素で出て、その間の太さは出ない(第2節)。
第二に、これが本稿の芯である。太いほうになる割合は、線の幅の端数に等しい。位置を $10000$ 通りずらすと、切り上げの太さになる割合は幅 $0.7$ で $\mathbf{0.700000}$、$1.3$ で $\mathbf{0.300000}$、$2.5$ で $0.500000$、$2.9$ で $\mathbf{0.900000}$ だった(第2節)。
第三に、位置をならせば、太さは保たれる。四つの幅のどれでも、出た太さの平均は $0.700000$・$1.300000$・$2.500000$・$2.900000$ で、線の幅に等しい(第2節)。
第四に、低い解像度では、細い線は消えることがある。$0.35$ pt の線は $200$ dpi で $\mathbf{0.972222}$ 画素で、位置を $10000$ 通りずらすと $\mathbf{0.027700}$ の位置で $0$ 画素になった(第3節)。
第五に、解像度を上げると、二つの太さの差は線に比べて小さくなる。二つの太さの差は、線の幅の $\mathbf{1.028571}$ 倍($200$ dpi)、$0.685714$ 倍($300$ dpi)、$0.342857$ 倍($600$ dpi)、$\mathbf{0.171429}$ 倍($1200$ dpi)である(第3節)。
第六に、分離子は、画素の中心で白か黒かを決めるか、覆う面積で灰色にするかである。覆う面積の割合で灰色にすると、幅 $2.9$ 画素の線の灰色の合計は、位置を $1000$ 通りずらしても最小も最大も $2.900000$ だった(第4節)。
キーワード:線の太さ、解像度、画素、端数、覆う面積、書体。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。線を画素に置くと太さが画素の数に丸められること、置く位置で太さが揺れること、画素を覆う面積の割合で灰色にすると揺れが抑えられること、解像度を上げると揺れが目立たなくなることは、いずれも文字を画面や印刷に出す技術で既知である。実在の書体を主張しない。線の太さ $0.35$ pt と四つの解像度は模型の値で、どの書体、画面、プリンタにも対応しない。形を整える仕組みを扱わない。線を画素の格子に合わせて置き直す仕組み(ヒンティング)、横の線、曲線、インクのにじみは入れない。見え方を論じない。人の目にどれだけの揺れが見えるかは論じない。既刊との関係:論文731 は、印刷の灰色が点の濃さではなくますの中の点の数であり、階調の数が装置の比だけで決まることを示した。本稿はその隣に置く。あちらは灰色を点の数で作り、作れる灰色の数が装置で決まった。ここでは線の太さが画素の数に丸められ、どちらに丸まるかの割合が線の幅の端数で決まる。加えたのは、四つの幅で出る太さの割合と平均を数えたこと、$0.35$ pt の線を四つの解像度で画素に直したこと、覆う面積で灰色にする方式と比べたこと、分離子を「中心で決めるか、面積で灰色にするか」に置いたことである。
1. 記法と問い
設定:幅 $w$ 画素の縦の線の左端を位置 $\varphi$ に置く。画素 $k$ は $k$ から $k+1$ までを占め、その中心 $k+0.5$ が線の中にあれば黒くする。出る太さは黒い画素の数である。位置 $\varphi$ を一画素ぶん $10000$ 通りにずらして、出る太さの割合と平均を数えた。
$$\text{黒い画素}=\{\,k:\ \varphi\le k+0.5<\varphi+w\,\},\qquad
\text{出る太さ}\in\{\lfloor w\rfloor,\ \lceil w\rceil\}$$
長さの単位 pt は $1/72$ インチで、解像度 $d$ dpi での幅は $w=0.35\times d/72$ 画素である。比べる方式として、画素ごとに線が覆う面積の割合で灰色にし、その合計を出した。
問い:同じ太さの線は、どこに置いても同じ太さで出るのか。
2. 置く位置と出る太さ
計算 2.1:四つの幅で、位置を $10000$ 通りずらして出る太さを数えた。
| 線の幅(画素) | 出る太さ | 切り上げになる割合 | 平均の太さ |
|---|---|---|---|
| $0.7$ | $0$ か $1$ | $0.700000$ | $0.700000$ |
| $1.3$ | $1$ か $2$ | $0.300000$ | $1.300000$ |
| $2.5$ | $2$ か $3$ | $0.500000$ | $2.500000$ |
| $2.9$ | $2$ か $3$ | $0.900000$ | $2.900000$ |
観察 2.2 これが本稿の芯である。太いほうになる割合は、線の幅の端数に等しい。幅 $2.9$ 画素の線は $0.900000$ の位置で $3$ 画素、残りの $0.100000$ の位置で $2$ 画素で出る。割合が端数に等しいので、位置をならした平均は線の幅そのものになる。どの位置に置いても太さは二つのどちらかで、その間の太さは出ない。
3. 解像度と、細い線
計算 3.1:$0.35$ pt の線を四つの解像度で画素に直した。太いほうになる割合は、前節で確かめた「幅の端数」である。
| 解像度 | 線の幅(画素) | 太いほうになる割合(端数) | 二つの太さの差 ÷ 線の幅 |
|---|---|---|---|
| $200$ dpi | $0.972222$ | $0.972222$ | $1.028571$ |
| $300$ dpi | $1.458333$ | $0.458333$ | $0.685714$ |
| $600$ dpi | $2.916667$ | $0.916667$ | $0.342857$ |
| $1200$ dpi | $5.833333$ | $0.833333$ | $0.171429$ |
観察 3.2 低い解像度では、細い線は消えることがあり、太さの揺れは線そのものより大きい。$200$ dpi では線が $0.972222$ 画素しかなく、位置を $10000$ 通りずらすと $0.027700$ の位置で $0$ 画素になった。そのとき二つの太さ($0$ 画素と $1$ 画素)の差は線の幅の $1.028571$ 倍である。$300$ dpi 以上では消える位置は $0$ で、差は $1200$ dpi で線の幅の $0.171429$ 倍まで縮む。
4. 分離子
観察 4.1 分離子は、画素の中心で白か黒かを決めるか、覆う面積で灰色にするかである。中心で白か黒かを決めると、太さは画素の数に丸められ、位置によって一画素ぶん揺れる。覆う面積の割合で灰色にすると、幅 $2.9$ 画素の線の灰色の合計は、位置を $1000$ 通りずらしても最小 $2.900000$、最大 $2.900000$ で、位置に依らなかった。揺れは太さの丸めから出ており、面積で灰色にすれば合計には出ない。
観察 4.2 論文731 の隣に置く。731 は、印刷の灰色をますの中の点の数で作り、作れる灰色の数が装置の比で決まることを示した。ここでは線の太さが画素の数に丸められ、どちらに丸まるかの割合が線の幅の端数で決まる。
観察 4.3 言わないこと。実在の書体や画面、プリンタの値、線を格子に合わせて置き直す仕組み、横の線や曲線、インクのにじみ、人の目に見える揺れは扱わない。示したのは、この模型で、同じ太さの線が置く位置で一画素ぶん太さを変え、太いほうになる割合が線の幅の端数に等しいことである。
5. 点呼と結び
- 中心が線の中にある画素を黒く(第1節):出る太さは二通り。
- 幅 $0.7$ で $\mathbf{0.700000}$(計算 2.1):端数どおり。
- 幅 $1.3$ で $\mathbf{0.300000}$(計算 2.1):端数どおり。
- 幅 $2.9$ で $\mathbf{0.900000}$(計算 2.1):本稿の芯。
- 平均の太さは線の幅(観察 2.2):ならせば保たれる。
- $200$ dpi で $\mathbf{0.972222}$ 画素(計算 3.1):$0.35$ pt の線。
- 消える位置 $\mathbf{0.027700}$(観察 3.2):$300$ dpi 以上では $0$。
- 差は幅の $\mathbf{1.028571}$ 倍から $\mathbf{0.171429}$ 倍へ(計算 3.1):解像度で縮む。
- 面積で灰色にして $2.900000$(観察 4.1):位置に依らない。
- 中心で決めるか、面積で灰色にするか(観察 4.1):分離子・論文731。
結び:低い解像度では同じ太さの線が置かれた位置で一画素ぶん太さを変え、太いほうになる割合は線の幅の端数に等しい。中心が線の中にある画素を黒くすると、幅 $2.9$ 画素の線は $0.900000$ の位置で $3$ 画素、残りで $2$ 画素になり、位置をならした平均は $2.900000$ だった。太さは保たれるが、一本一本は二つのどちらかに丸められる。$0.35$ pt の線は $200$ dpi で $0.972222$ 画素しかなく $0.027700$ の位置で消え、二つの太さの差は線の幅の $1.028571$ 倍だったが、$1200$ dpi では $0.171429$ 倍に縮んだ。覆う面積で灰色にすれば、灰色の合計は位置に依らず線の幅のままだった。既刊との位置:論文731 の「灰色はますの中の点の数」の隣に、線の太さが画素の数に丸められ、その割合が端数で決まることを置いた。正直に言えば、線の太さと解像度は模型の値で、線を格子に合わせて置き直す仕組みも、曲線やにじみも入れていない。
参考文献
- 山岸勇輝 (2026). 『印刷の灰色は点の濃さではなく、ますの中の点の数である。だから階調の数は装置の比だけで決まる』[論文731]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/731 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23015049
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「低い解像度では同じ線が位置で一画素ぶん太さを変え、太いほうになる割合は線の幅の端数に等しい」[論文899]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/899
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/899・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 低い解像度では同じ線が位置で一画素ぶん太さを変え、太いほうになる割合は線の幅の端数に等しい [論文899]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/899
Yamagishi, Y. (2026). At Low Resolution a Stroke’s Width Jumps by a Pixel with Position, and the Share Drawn Wider Equals Its Width’s Fractional Part [Paper 899]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/899
@misc{yamagishi2026yoi899,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {At Low Resolution a Stroke's Width Jumps by a Pixel with Position, and the Share Drawn Wider Equals Its Width's Fractional Part},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/899},
note = {Preprint, edition 1}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
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