【論文919】瞳が 1.85 mm より開いていれば、目の細かさの天井は回折ではなく錐体の並びが決める

要旨

目で見分けられる縞の細かさには、光の側と網膜の側に二つの限界がある。本稿は、瞳の回折が通す最も細かい縞と、網膜の錐体の並びが拾える最も細かい縞を、同じ単位($1$ 度あたりの縞の本数と視力)に直して比べ、どちらが先に天井になるかを瞳の直径で数える。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、網膜の並びが拾える細かさは、視力に直すと $2$ に近い。波長 $555$ nm・錐体の中心間隔 $2.5$ μm・節点から網膜まで $16.7$ mm の代表値で、錐体一つぶんの視角は $30.8780$ 秒角、ナイキストの細かさは $58.2940$ 本/度で、視力に直すと $\mathbf{1.943133}$ だった(第2節)。

第二に、二つの限界が等しくなる瞳の直径は $1.853700$ mm である。回折が通す限界は瞳の直径を波長で割った細かさで、それがナイキストの細かさに等しくなる直径は $\mathbf{1.853700}$ mm だった(第2節)。

第三に、それより開いた瞳では、網膜の並びが先に天井になる。瞳 $3$ mm では回折の限界は視力 $3.144737$ に当たり、ナイキストの細かさの縞をコントラスト $\mathbf{0.266680}$ で通す。瞳 $2$ mm では $0.023487$ で、$1.5$ mm 以下の瞳ではナイキストの細かさは通らなかった(第3節)。

第四に、境は錐体の間隔で動く。錐体の間隔を $2.0$ μm にすると境は $2.317125$ mm・視力 $2.428917$、$3.0$ μm にすると $1.544750$ mm・視力 $1.619278$ になった(第3節)。

第五に、分離子は、瞳の直径が波長と眼の長さと錐体の間隔で決まる境より大きいか小さいかである。境より小さければ光の回折が天井で、瞳を開くほど細かく見える。境より大きければ網膜の並びが天井で、瞳を開いても天井は上がらない(第4節)。

キーワード:視力、回折限界、錐体の間隔、ナイキストの細かさ、変調伝達関数、瞳の直径。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。円形の開口の回折による変調伝達関数とその遮断の細かさ、標本化のナイキストの細かさ、ランドルト環による視力の定義は、いずれも標準的である。値は代表値である。波長 $555$ nm・錐体の中心間隔 $2.5$ μm・節点から網膜まで $16.7$ mm は代表値で、人によって、網膜の場所によって動く。錐体の間隔を動かした値も並べる。収差を入れない。眼の球面収差・色収差・涙の膜・散乱は入れない。回折だけの光学を置く。脳での処理を扱わない。並びが拾った信号がどう使われるか、視力検査の手順は扱わない。視力の上限を人に当てはめない。数は二つの限界の比べ方を示すためのもので、誰かの視力を予言しない。既刊との関係:論文837 は、触覚の二点弁別で、受容野を細くしても受容器の間隔より閾が下がらないことを示した。ここでは目で同じ型を数え、もう一方の天井が光の回折で、瞳の直径とともに動くことを示す。論文775 は、望遠鏡の分解能を決めるのが開口の大きさではなく波長との比であることを示した。ここでは同じ比が瞳の回折の限界を決め、それが網膜の並びと競う。論文757 は、解像を波長・開口数・係数のどれで買うかで焦点深度の払いが違うことを示した。ここでは瞳を開いて買える細かさに、網膜の並びという別の天井があることを数える。加えたのは、回折の限界と網膜の並びの限界を同じ単位に直したこと、二つが等しくなる瞳の直径 $1.853700$ mm を出したこと、瞳の直径ごとにナイキストの細かさで通るコントラストを並べたこと、境が錐体の間隔で動く幅を出したこと、分離子を「瞳の直径が境より大きいか小さいか」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:波長 $\lambda$、瞳の直径 $D$、節点から網膜までの長さ $f$、錐体の中心間隔 $s$ とする。回折だけの光学で通る縞の細かさの上限(遮断)と、錐体の並びが拾える細かさの上限(ナイキスト)は、$1$ ラジアンあたりの縞の本数で次のとおりである。

$$\nu_{\mathrm{c}}=\frac{D}{\lambda},\qquad \nu_{\mathrm{N}}=\frac{f}{2s},\qquad \nu_{\mathrm{c}}=\nu_{\mathrm{N}}\ \Longleftrightarrow\ D^{*}=\frac{\lambda f}{2s}$$

視力 $1.0$ はランドルト環の切れ目 $1$ 分角で、縞に直すと $1$ 度あたり $30$ 本とした。回折の変調伝達関数は円形の開口の式 $\mathrm{MTF}(x)=\tfrac{2}{\pi}\bigl(\arccos x-x\sqrt{1-x^2}\bigr)$($x=\nu/\nu_{\mathrm{c}}$)で、ナイキストの細かさで通るコントラストを出した。

問い:目の細かさの天井を決めるのは、瞳の回折か、網膜の並びか。

2. 二つの限界

計算 2.1:代表値($\lambda=555$ nm・$s=2.5$ μm・$f=16.7$ mm)で、錐体一つぶんの視角は $30.8780$ 秒角、ナイキストの細かさは $58.2940$ 本/度、視力に直すと $\mathbf{1.943133}$ だった。

計算 2.2:二つの限界が等しくなる瞳の直径は $D^{*}=\mathbf{1.853700}$ mm で、そこで二つの細かさの差は $0$ だった。

観察 2.3 二つの限界は同じ桁にある。網膜の並びの限界は視力 $2$ に近く、回折の限界は瞳 $2$ mm で視力 $2$ を少し超える。どちらが天井になるかは、瞳の大きさで入れ替わる。

3. 瞳の大きさを動かす

計算 3.1:瞳の直径ごとの回折の限界と、ナイキストの細かさで通るコントラスト。

瞳の直径 回折の限界(本/度) 視力に直す レイリーの角(秒角) ナイキストの細かさのコントラスト
$1.0$ mm $31.4474$ $1.048246$ $139.6619$ $0.000000$
$1.5$ mm $47.1711$ $1.572369$ $93.1079$ $0.000000$
$2.0$ mm $62.8947$ $2.096492$ $69.8310$ $0.023487$
$3.0$ mm $94.3421$ $3.144737$ $46.5540$ $0.266680$
$4.0$ mm $125.7895$ $4.192983$ $34.9155$ $0.431808$
$6.0$ mm $188.6842$ $6.289475$ $23.2770$ $0.612983$
$8.0$ mm $251.5790$ $8.385966$ $17.4577$ $0.707636$

境 $1.853700$ mm より小さい瞳ではナイキストの細かさのコントラストは $0$、大きい瞳では正だった。

計算 3.2:錐体の間隔を動かすと、境は $2.0$ μm で $2.317125$ mm(視力 $2.428917$)、$3.0$ μm で $1.544750$ mm(視力 $1.619278$)になった。

観察 3.3 境より開いた瞳では、網膜の並びが先に天井になる。瞳 $3$ mm の回折はナイキストの細かさの縞を $0.266680$ のコントラストで網膜に届けるが、並びはそれより細かい縞を拾えない。瞳を $8$ mm まで開くとコントラストは $0.707636$ まで上がるが、天井の細かさ $58.2940$ 本/度は動かない。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、瞳の直径が波長と眼の長さと錐体の間隔で決まる境より大きいか小さいかである。境より小さい瞳では回折の限界が網膜の並びより粗く、瞳を開くほど見える縞が細かくなる。境より大きい瞳では網膜の並びが天井で、瞳を開いて増えるのは天井より粗い縞のコントラストだけである。論文837 の触覚でも天井は受容器の間隔だったが、目ではもう一方の天井が瞳の直径で動く。

観察 4.2 言わないこと。収差、涙の膜、脳での処理、視力検査の手順、個人の視力は扱わない。示したのは、回折と網膜の並びという二つの限界が同じ桁にあり、どちらが先に来るかが瞳の直径で入れ替わることである。

5. 点呼と結び

  1. $\nu_{\mathrm{c}}=D/\lambda$・$\nu_{\mathrm{N}}=f/2s$(第1節):二つの限界。
  2. ナイキストの細かさ $58.2940$ 本/度・視力 $\mathbf{1.943133}$(計算 2.1):網膜の並び。
  3. 境 $D^{*}=\mathbf{1.853700}$ mm(計算 2.2):二つが等しい瞳。
  4. 瞳 $3$ mm でコントラスト $\mathbf{0.266680}$(計算 3.1):回折は通すが並びが拾えない。
  5. 錐体の間隔で境は $1.544750$〜$2.317125$ mm(計算 3.2):代表値への敏感さ。
  6. 瞳の直径と境(観察 4.1):分離子・論文837・775・757。

結び:瞳が $1.85$ mm より開いていれば、目の細かさの天井は回折ではなく錐体の並びが決める。代表値で、網膜の並びが拾える細かさは $58.2940$ 本/度・視力 $1.943133$ で、瞳の回折の限界がそれに等しくなる直径は $1.853700$ mm だった。瞳 $3$ mm の回折はその細かさの縞を $0.266680$ のコントラストで届け、瞳を $8$ mm まで開いても天井の細かさは動かなかった。境は錐体の間隔で $1.544750$ から $2.317125$ mm まで動く。分離子は、瞳の直径が波長と眼の長さと錐体の間隔で決まる境より大きいか小さいかである。既刊との位置:論文837 が触覚で見た受容器の間隔の天井を目で数え、論文775 の開口と波長の比を瞳に当て、論文757 の解像の買い方に網膜という別の天井を足した。正直に言えば、誰の視力も予言しない。二つの天井のどちらが先に来るか、そこまでである。

参考文献

  1. Atchison, D. A., & Smith, G. (2000). Optics of the Human Eye. Butterworth-Heinemann.
  2. Born, M., & Wolf, E. (1999). Principles of Optics. Cambridge University Press.
  3. 山岸勇輝 (2026). 『解像を三つの量のどれで買うかで、焦点深度の払いが違う』[論文757]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/757 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23015169
  4. 山岸勇輝 (2026). 『分解能を決めるのは開口の大きさではなく、波長との比である』[論文775]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/775 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23015274
  5. 山岸勇輝 (2026). 『二点弁別の閾には限りが二つある。受容野を細くしても、受容器の間隔より下がらない』[論文837]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/837 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23015616

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「瞳が 1.85 mm より開いていれば、目の細かさの天井は回折ではなく錐体の並びが決める」[論文919]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/919

YOI 919第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 瞳が 1.85 mm より開いていれば、目の細かさの天井は回折ではなく錐体の並びが決める [論文919]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/919

Yamagishi, Y. (2026). With the Pupil Wider Than 1.85 mm, the Eye’s Limit of Fineness Is Set Not by Diffraction but by the Spacing of Cones [Paper 919]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/919

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