要旨
理容所・美容所の数を、衛生行政報告例(令和6年度末、厚生労働省)と経済センサス(令和3年、産業小分類782・783)で数え、都道府県ごとに比べた。
数は合わない。 理容所は 107,995 対 86,476(+24.9%)、美容所は 277,752 対 161,280(+72.2%)。
衛生行政報告例は許可を受けた施設、経済センサスは事業所である。
1店あたりの従業者は2人前後。 理容所は 1.80人/施設、美容所は 2.12人/施設。どちらも、ほとんどが1人か2人でやっている店である。
高齢化が進んだ県ほど、美容所より理容所が多い。 美容所÷理容所の比は、東京都の 3.90 から秋田県の 1.39 まで開き、高齢化率との相関は r = −0.668。
一方で、人口あたりの施設数はどちらも高齢化とともに増える(理容所 r = +0.792、美容所 r = +0.723)。
北海道は美容所÷理容所が 1.97 で47都道府県中39位。人口1万人あたり理容所11.38・美容所22.41である。
1. はじめに
I003 は、診療所を2つの公的統計で数えると歯科は合い一般診療所は合わないことを示した。
理容所・美容所も、2つの統計に出てくる。しかも許可制の商売なので、行政の側にも台帳がある。
理容所・美容所は、いくつあり、1店に何人いるか。
2. データ
| 衛生行政報告例 | 厚生労働省「令和6年度 衛生行政報告例」第10表。理容所・美容所の施設数と従業理容師・美容師数(令和6年度末現在) |
| 経済センサス | 「令和3年 経済センサス-活動調査」産業小分類 782 理容業・783 美容業(令和3年6月1日) |
| 人口・65歳以上 | 総務省「住民基本台帳に基づく人口」2026年1月1日 |
衛生行政報告例には市区町村別が無い(都道府県・指定都市・中核市まで)。本稿は都道府県を単位とし、経済センサスは市区町村の値を都道府県ごとに合計した。
3. 結果
3-1 美容所は、統計によって72%ちがう
| 衛生行政報告例(令和6年度末) | 経済センサス(令和3年) | 差 | |
|---|---|---|---|
| 理容所 | 107,995 | 86,476 | +24.9% |
| 美容所 | 277,752 | 161,280 | +72.2% |
I003 の一般診療所(+26.8%)よりも、美容所の差のほうが大きい。
衛生行政報告例は生活衛生関係の営業許可を受けた施設の数である。許可は、廃業の届出が出るまで残りうる。
経済センサスは事業所の数で、実際に活動している単位を数える。この差は、休業中や実質的に動いていない施設を含むかどうかで説明できる可能性があるが、本稿では確かめていない。
3-2 1店あたり2人
| 従業者 | 施設 | 1店あたり | |
|---|---|---|---|
| 理容所 | 194,531人 | 107,995 | 1.80人 |
| 美容所 | 588,291人 | 277,752 | 2.12人 |
どちらも2人前後。 理容所は2人に満たない。
R003 で見たとおり理容業・美容業は「1軒だけ」になりにくい分類(それぞれ3.0%・2.3%)だが、1軒1軒は小さい。
数は多く、規模は小さい。この2つは両立する。
3-3 高齢化した県ほど、美容所より理容所が多い

図1 高齢化率と、美容所÷理容所の比(47都道府県)。
灰色は都道府県、橙は北海道、青は最小二乗のあてはめ。
| 比が大きい | 理容所 | 美容所 | 美容÷理容 | 高齢化率 |
|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 7,328 | 28,589 | 3.90 | 22.4% |
| 大阪府 | 5,960 | 20,929 | 3.51 | 26.8% |
| 京都府 | 1,929 | 6,232 | 3.23 | 29.7% |
| 比が小さい | 理容所 | 美容所 | 美容÷理容 | 高齢化率 |
|---|---|---|---|---|
| 岩手県 | 2,166 | 3,083 | 1.42 | 35.6% |
| 山形県 | 2,100 | 3,119 | 1.49 | 35.8% |
| 秋田県 | 2,083 | 2,903 | 1.39 | 39.8% |
高齢化率との相関は r = −0.668。 東京では美容所が理容所の3.9倍あるが、秋田では1.4倍しかない。
ただし、人口あたりで見ると、どちらも高齢化とともに増える。
| 高齢化率との相関 | |
|---|---|
| 人口1万人あたりの理容所 | +0.792 |
| 人口1万人あたりの美容所 | +0.723 |
高齢化が進んだ県は人口も少なく、R001 で見たとおり人口あたりの事業所は多くなる。
その中でも、理容所のほうがより多く残っている。 比が下がるのは、そのためである。
3-4 北海道と釧路総合振興局管内
北海道は、人口1万人あたり理容所 11.38・美容所 22.41、美容所÷理容所は 1.97 で47都道府県中 39位。高齢化率33.3%に対して、比は低いほうである。
釧路管内は、衛生行政報告例に市区町村別が無いため、経済センサスの数字のみを示す。
| 市町村 | 人口 | 理容 | 美容 | 理容/1万人 | 美容/1万人 |
|---|---|---|---|---|---|
| 釧路市 | 151,566 | 195 | 288 | 12.87 | 19.00 |
| 釧路町 | 18,021 | 20 | 34 | 11.10 | 18.87 |
| 厚岸町 | 7,976 | 12 | 14 | 15.05 | 17.55 |
| 浜中町 | 5,172 | 8 | 8 | 15.47 | 15.47 |
浜中町では、理容と美容が同数(8と8)である。
4. 考察
4-1 許可の台帳と、事業所の名簿は別のもの
美容所で72.2%、理容所で24.9%の差が出た。I003 の一般診療所(26.8%)と同じ種類の問題である。
「その町に美容室が何軒あるか」という問いに、公的統計は1つの答えを返さない。
どちらが実態に近いかは、本稿では判定しない。ただし、開業の数を語るときは、許可の数と事業所の数のどちらを指しているかを明示する必要がある。
4-2 小さい店が、たくさんある
1店あたり2人前後という数字は、この商売の形をよく表している。
店の数が多いのは、1店が大きくなれないからでもある。髪を切る仕事は、1人が同時に1人しか相手にできない。
R002 で、理容業・美容業の50%到達人口が最小の155人だったこととも整合する。小さくて、どこにでもある。
4-3 需要の中身が変わると、比が変わる
高齢化率と比の相関(−0.668)は、同じ「髪を切る」という需要の中身が、年齢構成によって変わることを示している。
ただしこれは、どちらの店に行くかという習慣の差であって、本稿はその中身を見ていない。
5. 限界
- 衛生行政報告例は令和6年度末、経済センサスは令和3年6月1日、人口は2026年1月1日。時点が違う
- 衛生行政報告例は許可を受けた施設の数で、休業中の施設を含みうる。経済センサスは事業所
- 衛生行政報告例には市区町村別が無い。釧路管内はセンサスの値のみ
- 従業理容師・美容師数は、その施設で働く人の数で、常勤・非常勤を区別しない
- 経済センサスの市区町村を合計した値(理容86,476・美容161,280)は、秘匿の扱いにより全国値とわずかに違いうる
- どちらの統計が正しいかを、本稿は判定しない
6. 再現の手順
- e-Stat から「令和6年度 衛生行政報告例」第10表(CSV)を取得する。指定都市・中核市の再掲行があるので、都道府県の行だけを使う
- e-Stat から令和3年 経済センサスの産業小分類別 事業所数(市区町村別)を取得し、782・783 を都道府県ごとに合計する
- 住民基本台帳の人口・65歳以上人口を都道府県ごとに合計する
- 施設数の比、1施設あたりの従業者数、人口1万人あたりの施設数を出す
本稿の数値は、すべて1本のスクリプト(kensan_191)の出力である。中間の数値を手で書き写していない。
参考文献・データの出典
- 厚生労働省「令和6年度 衛生行政報告例」第10表
- 総務省統計局・経済産業省「令和3年 経済センサス-活動調査」産業小分類別 事業所数(市区町村別)
- 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」2026年1月1日現在
- 山岸勇輝「その商売は、人口何人の町から現れるか」(R002)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22872356
- 山岸勇輝「町に1軒だけの商売」(R003)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22872474
- 山岸勇輝「同じ診療所を2つの公的統計で数えると」(I003)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22875614
版の記録
| 版 | 日付 | 内容 |
|---|---|---|
| 第1版 | 2026-09-21 | 初出 |
引用のしかた
山岸勇輝(2026)「理容所と美容所、1店あたり2人、そして高齢化した県ほど理容所が多い [I004]」Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22875820
(この DOI は concept DOI。常に最新の版を指す。引用にはこれを使う)
© 2026 山岸 勇輝(Yuuki YAMAGISHI)
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出典を示せば、複製・改変・再配布・商用利用ができる。
creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja
図表を含め、本稿の数値はすべて公的統計から計算したものである。元データそのものの権利は、各統計の公表元に従う。
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「理容所と美容所」[I004]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22875820
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/I004・DOI 10.5281/zenodo.22875820・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 理容所と美容所 [I004]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/I004 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22875820
Yamagishi, Y. (2026). Barbershops and Beauty Salons: Two People per Shop, and More Barbershops Where the Population Is Older [I004]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/I004; DOI: 10.5281/zenodo.22875820
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指紋(SHA-256)と確かめ方
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