【論文404】水平線は、見える距離の限界ではない

要旨

水平線の向こうは見えない、と思える。本稿が示すのは高い物なら普通に見えることである。自分の水平線の $8.6697$ 倍先の塔が見える。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、水平線までの距離は $\sqrt{2Rh+h^{2}}$ で、身長 $1.7$ m なら $\mathbf{4.6542}$ km である(第2節)。

第二に、高さの平方根なので、身長を二倍にしても $\mathbf{1.4142}$ 倍にしかならない(第2節)。

第三に、これが本稿の芯である。高い物は水平線の向こうから見える。$100$ m の塔は $\mathbf{40.3503}$ km 先、自分の水平線の $\mathbf{8.6697}$ 倍である(第3節)。

第四に、富士山($3776$ m)なら $\mathbf{224.0352}$ km 先から見える(第3節)。

第五に、屈折を入れると距離が $\mathbf{1.063015}$ 倍になる。有効半径を $1.13$ 倍にした平方根である(第4節)。

第六に、分離子は「地面が見えるか、物が見えるか」である(第5節)。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。水平線までの距離、二物体の和の公式、大気による屈折の有効半径係数はすべて既知である。測量をしない。実際の可視判定は地形と建物で決まる。球面と直線視線だけを見る。大気を作らない。屈折率の高度分布や逃げ水・浮島現象は主題ではない。$k=1.13$ という代表値を一つ使うだけである。地球を球と置いている。扁平・海面のうねり・潮位は主題ではない。見えるかどうかを主張しない。視力・大気の透明度・コントラストは主題ではない。幾何的に遮られないかだけを見る。地平線と水平線を区別しない。障害物の無い球面上の地平を扱う。既刊との関係:論文395 は音が曲がるから遠くへ届くことを示した。ここでは光も少し曲がって $1.063$ 倍届く。論文389 は厚さではなく長さが効くことを示した。ここでは自分の高さではなく相手の高さが効く。論文391 は代表値が代表していないことを示した。ここでは「水平線までの距離」が可視距離を代表していない。論文300 は同根か別根かが判定できることを示した。自分の高さと相手の高さは、その基準で別根である。加えたのは、四つの高さで水平線距離を数に出したこと、平方根であることを二倍・四倍で確かめたこと、塔と富士山の可視距離を出したこと、屈折の係数 $1.063015$ を出したこと、分離子を「地面か物か」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:地球を半径 $R=6371$ km の球とし、高さ $h$ の目から水平線までの距離を求める。

$$d(h)=\sqrt{2Rh+h^{2}}\ \approx\ \sqrt{2Rh}$$

高さ $h_{1}$ の目から高さ $h_{2}$ の物が見える距離は $d(h_{1})+d(h_{2})$ である。

観察 1.1 $d$ は $h$ の平方根である。$h^{2}$ の項は $h\ll R$ で無視できる。高さを上げても、伸びが鈍い。

観察 1.2 二物体の式は和になっている。$d(h_{1})+d(h_{2})$、自分の高さと相手の高さが、別々に効く。

観察 1.3 相手が高ければ、自分が低くても届く。和のうち片方が大きい。「水平線までの距離」は、この和の片方でしかない。

問い:水平線の向こうは、見えないのか。

2. 高さの平方根でしか伸びない

計算 2.1:高さに対する水平線距離(本稿で計算)。

目の高さ [m] 水平線まで [km] 屈折込み [km]
$\mathbf{1.7}$(身長) $\mathbf{4.6542}$ $4.9475$
$10$ $11.2881$ $11.9994$
$100$ $35.6961$ $37.9455$
$10000$(旅客機) $\mathbf{357.0994}$ $379.6019$

観察 2.2 身長 $1.7$ m の水平線は $4.6542$ km しかない。五キロ足らず。歩いて一時間の距離である。

観察 2.3 高さを四倍にすると、距離がちょうど二倍になる。$1.7\to6.8$ m で $4.6542\to9.3084$ km、平方根であることが数で確かめられる。

観察 2.4 高さを二倍にしても $1.414214$ 倍にしかならない。$\sqrt{2}$、背伸びは効きが悪い。

観察 2.5 旅客機の高度 $10$ km で $357.0994$ km になる。$h^{2}$ の項がここでは効く。$\sqrt{2Rh}$ だけの近似は $356.9$ km で、$0.06$ パーセントずれる。

観察 2.6 身長では $h^{2}$ の項が $10^{-6}$ 未満しか効かない。近似が使える範囲、どこから効くかは、数を入れれば分かる。

3. $100$ m の塔は、水平線の $8.6697$ 倍先から見える

計算 3.1:身長 $1.7$ m の目から見える距離(本稿で計算)。

見る対象 見える距離 [km] 自分の水平線の何倍
海面(水平線) $4.6542$ $1.0000$
$10$ m の船 $15.9423$ $3.4253$
$\mathbf{100}$ m の塔 $\mathbf{40.3503}$ $\mathbf{8.6697}$
$\mathbf{3776}$ m の富士山 $\mathbf{224.0352}$ $\mathbf{48.1361}$

観察 3.2 これが本稿の芯である。$100$ m の塔は $40.3503$ km 先から見える。自分の水平線 $4.6542$ km の $8.6697$ 倍で、「水平線の向こうが見える」ことは例外ではない。

観察 3.3 富士山なら $224.0352$ km、$48.1361$ 倍である。水平線の五十倍近く。実際に遠方から見えることと合う。

観察 3.4 見えているのは頂上だけである。裾は地球に隠れている。「見える」と「全部見える」は別である。

観察 3.5 自分が高くなるより、相手が高いほうが効く。和の中で大きいほうが支配する。$100$ m の塔の $35.6961$ km が、自分の $4.6542$ km の $7.67$ 倍。

観察 3.6 論文389 と同じ形である。論文389 では厚さではなく長さが効いていた。ここでは自分の高さではなく相手の高さが効く。どちらも、注目される側が効いていない。

4. 光も少し曲がる

観察 4.1 大気の密度が高さとともに減るので、光線は下向きに曲がる。地球の丸みと同じ向き、地平線が少し遠くなる。

観察 4.2 慣例では地球の半径を $1.13$ 倍にして直線で扱う。有効半径、距離は $\sqrt{1.13}=1.063015$ 倍になる。

観察 4.3 身長では $4.6542$ km が $4.9475$ km になる。$293$ m 遠くなる。$6.3$ パーセントの効きである。

観察 4.4 論文395 と同じ形である。論文395 では音が曲がるから遠くへ届いた。ここでは光が曲がるから少し遠くまで見える。どちらも、直進しないことが届く距離を伸ばしている。

観察 4.5 ただし効きの桁が違う。音は閉じ込められて数千 km、光は $6.3$ パーセント、同じ「曲がる」でも、勾配の大きさが桁で違う。

観察 4.6 $1.13$ は代表値であって定数ではない。気温の逆転層があれば大きくなる。そのとき水平線の向こうの船が浮いて見える。

5. 分離子:地面が見えるか、物が見えるか

観察 5.1 分離子、見ようとしている対象に高さがあるか、無いか。

対象 高さ 見える距離 身長 $1.7$ m から
海面・地面 $0$ $d(h_{1})$ $4.6542$ km
高さのある物 $h_{2}>0$ $d(h_{1})+d(h_{2})$ いくらでも伸びる

観察 5.2 一行目だけが「水平線までの距離」である。高さ $0$ の対象、それを一般の可視距離と混同すると、桁で外す。

観察 5.3 二行目には上限が無い。相手が高ければいくらでも、月は $38$ 万 km 先だが見える。

観察 5.4 分離子は動かせる。相手の高さを $0$ に近づければ、可視距離は自分の水平線に落ちる。連続に繋がっている。

観察 5.5 正直に言えば、$40.3503$ km も $224.0352$ km も、屈折を入れない幾何だけの値である。実際には大気の透明度と対比が効く。動かないのは、距離が高さの平方根であることと、二物体で和になることである。

観察 5.6 最後に一つ、「水平線までの距離」は、自分についての量である。相手については何も言っていない。それを可視距離と呼ぶと、自分の高さだけを気にすることになる。

6. 点呼と結び

  1. $d=\sqrt{2Rh+h^{2}}$(第1節):高さの平方根。
  2. 身長 $1.7$ m で $4.6542$ km(計算 2.1):五キロ足らず。
  3. 高さ四倍で距離二倍(観察 2.3):平方根の確認。
  4. 高さ二倍で $1.414214$ 倍(観察 2.4):背伸びは効かない。
  5. 旅客機で $357.0994$ km(計算 2.1):$h^{2}$ が効き始める。
  6. $100$ m の塔は $40.3503$ km(計算 3.1):水平線の $8.6697$ 倍。
  7. 富士山は $224.0352$ km(計算 3.1):$48.1361$ 倍。
  8. 見えているのは頂上だけ(観察 3.4):裾は隠れている。
  9. 屈折で $1.063015$ 倍(観察 4.2):有効半径 $1.13$ 倍の平方根。
  10. 高さ $0$ の対象だけが水平線(観察 5.2):混同すると桁で外す。

結び:水平線の向こうは見えない、と思える。だが高い物なら普通に見える。水平線までの距離は $d(h)=\sqrt{2Rh+h^{2}}$ で、高さの平方根である。身長 $1.7$ m なら $\mathbf{4.6542}$ km、歩いて一時間の距離しかない。高さを四倍にすると距離がちょうど二倍になり、二倍にしても $1.414214$ 倍にしかならない。背伸びは効きが悪い。旅客機の高度 $10$ km では $357.0994$ km で、ここでは $h^{2}$ の項が効き、$\sqrt{2Rh}$ だけの近似から $0.06$ パーセントずれる。身長では $10^{-6}$ 未満しか効かない。ところが、二物体の可視距離は和である。$d(h_{1})+d(h_{2})$ で、$100$ m の塔は $\mathbf{40.3503}$ km 先から見える。自分の水平線 $4.6542$ km の $\mathbf{8.6697}$ 倍である。富士山($3776$ m)なら $\mathbf{224.0352}$ km、$48.1361$ 倍で、実際に遠方から見えることと合う。ただし見えているのは頂上だけで、裾は地球に隠れている。「見える」と「全部見える」は別である。和の中では大きいほうが支配し、塔の $35.6961$ km は自分の $4.6542$ km の $7.67$ 倍、自分が高くなるより、相手が高いほうが効く。論文389 で厚さではなく長さが効いていたのと同じ形で、注目される側が効いていない。光も少し曲がる。大気の密度が高さとともに減るので光線は地球の丸みと同じ向きに曲がり、慣例では地球の半径を $1.13$ 倍にして直線で扱う。距離は $\sqrt{1.13}=\mathbf{1.063015}$ 倍になる。身長では $4.6542$ km が $4.9475$ km になり、$293$ m ぶん、$6.3$ パーセントの効きである。論文395 で音が曲がるから遠くへ届いたのと同じ形だが、効きの桁が違う。音は閉じ込められて数千 km、光は $6.3$ パーセントである。$1.13$ は代表値であって定数ではなく、気温の逆転層があれば大きくなる。そのとき水平線の向こうの船が浮いて見える。分けているものは一つ、見ようとしている対象に高さがあるか、無いか。高さ $0$ の海面・地面なら見える距離は $d(h_{1})$ で $4.6542$ km。高さのある物なら $d(h_{1})+d(h_{2})$ で、上限が無い。一行目だけが「水平線までの距離」であって、それを一般の可視距離と混同すると桁で外す。相手の高さを $0$ に近づければ可視距離は自分の水平線に落ち、二つは連続に繋がっている。正直に言えば、$40.3503$ km も $224.0352$ km も屈折を入れない幾何だけの値であり、実際には大気の透明度と対比が効く。動かないのは、距離が高さの平方根であることと、二物体で和になることである。最後に一つ、「水平線までの距離」は、自分についての量である。相手については何も言っていない。それを可視距離と呼ぶと、自分の高さだけを気にすることになる。

参考文献

  1. Bomford, G. (1980). Geodesy (4th ed.). Oxford: Clarendon Press.
  2. Young, A. T. (2006). Understanding Astronomical Refraction. The Observatory.
  3. van der Werf, S. Y. (2003). Ray tracing and refraction in the modified US1976 atmosphere. Applied Optics.
  4. Lynch, D. K., Livingston, W. (2001). Color and Light in Nature (2nd ed.). Cambridge: Cambridge University Press.
  5. 山岸勇輝 (2026). 『第三百回の点呼、同根か別根かは判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  6. 山岸勇輝 (2026). 『紙が折れなくなるのは厚いからではない。効いているのは長さである』[論文389]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22699183
  7. 山岸勇輝 (2026). 『有義波高は、平均でもなければ最大でもない』[論文391]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22699212
  8. 山岸勇輝 (2026). 『音が遠くまで届くのは、直進しないからである』[論文395]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22699289

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「水平線は、見える距離の限界ではない」[論文404]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22699418

YOI 404第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 水平線は、見える距離の限界ではない [論文404]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/404 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22699418

Yamagishi, Y. (2026). The Horizon Is Not the Limit of What Can Be Seen [Paper 404]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/404; DOI: 10.5281/zenodo.22699418

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