【論文439】びくつく原因は摩擦の大きさではなく、二つの摩擦の差である

要旨

摩擦が大きいと、動きがぎくしゃくすると思われている。本稿が示すのは、原因が大きさではなく差であることである。二つの摩擦が等しければ、摩擦がどれだけ大きくても滑らかに動く。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、これが本稿の芯である。一回の滑りの振幅は $2(F_s-F_k)/k$ で、静止 $30$ N・動 $20$ N・ばね $1000$ N/m なら $\mathbf{20.0000}$ mm である(第2節)。

第二に、二つの摩擦が等しければ、振幅はちょうど $\mathbf{0}$ になる(第3節)。

第三に、比を $1.1$・$1.5$・$2.0$ と上げると、振幅は $5.4545$・$20.0000$・$\mathbf{30.0000}$ mm と単調に増える(第3節)。

第四に、ばねを $10$ 倍硬くすると、振幅は $20.0000$ から $\mathbf{2.0000}$ mm へ、ちょうど $1/10$ になる(第3節)。

第五に、ただし硬くしても消えない。比が $1$ でない限り、振幅は残る(第3節)。

第六に、分離子は「摩擦の大きさか、二つの摩擦の差か」である(第4節)。

キーワード:スティックスリップ、静止摩擦、動摩擦、摩擦振動。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。静止摩擦と動摩擦の区別、スティックスリップの機構はどちらも既知である。摩擦の起源を論じない。なぜ静止摩擦のほうが大きいのかという議論は主題ではない。速度依存を扱わない。動摩擦が滑り速度で変わる場合の詳しい扱いは主題ではなく、本稿は二つの定数で近似する。減衰を入れない。実際には振動が減衰し、振幅は次第に落ち着く。本稿は一回の滑りの大きさだけを見る。材料の値を主張しない。$30$ N・$20$ N・$1000$ N/m は説明のための代表値である。音を扱わない。きしみ音の周波数や音圧は主題ではない。既刊との関係:論文430 は見かけの面積を広げても摩擦力が変わらないことを示した。そこでも、動かした量が結果を動かさなかった。論文300 は同根か別根かが判定できることを示した。「摩擦が大きい」と「二つの摩擦が違う」は、その基準で別根である。論文438 は双方が同じだけ改良すると比が動かないことを示した。そこでも、差がゼロなら何も起きなかった。論文422 は核心と名指された条件が結果を動かさないことを示した。ここでも、大きさという目立つ量が効いていない。加えたのは、一回の滑りの振幅を $20.0000$ mm と数に出したこと、差がゼロなら振幅がちょうど $0$ になることを境目の反対側に置いたこと、四つの比で振幅を並べたこと、ばねの硬さと振幅が逆比になることを示したこと、硬くしても消えないことを示したこと、分離子を「大きさか差か」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:ばね定数 $k$ のばねで物体を引く。静止摩擦を $F_s$、動摩擦を $F_k$ とする。 ばねの力が $F_s$ に達すると滑り出し、$F_k$ で釣り合う位置を通り越して行き過ぎ、また止まる。

$$\Delta x=\frac{2(F_s-F_k)}{k}$$

以下 $F_s=30$ N、$F_k=20$ N、$k=1000$ N/m とする。

観察 1.1 摩擦が大きいと、動きがぎくしゃくすると思われている。重いものは引きずるとがたつく。大きさが原因に見える。

観察 1.2 だが式に入っているのは差である。$F_s-F_k$、$F_s$ も $F_k$ も単独では現れない。

問い:差がゼロなら、摩擦がどれだけ大きくても滑らかなのか。

2. 一回の滑りは 20 mm 飛ぶ

計算 2.1:与えた値で振幅を出す。

$\Delta x=2(30-20)/1000=0.020000$ m $=\mathbf{20.0000}$ mm である。

観察 2.2 $20$ mm は目に見える。手で引いていれば、はっきり分かる飛び方である。滑らかに動いているのではなく、止まっては飛んでいる。

観察 2.3 この式に、荷重も面積も入っていない。二つの摩擦とばねだけ、論文430 で摩擦係数から形が消えたのと、同じ形の消え方である。

観察 2.4 $F_s$ と $F_k$ を同じだけ増やしても、振幅は動かない。差が変わらないからである。もっと強く押しつけても、飛び方は同じになる。

3. 差がゼロなら、振幅もゼロ

計算 3.1:静止摩擦を $30$ N に固定し、静/動の比を変える。

静/動 の比 振幅 [mm]
$1.00$ $\mathbf{0.0000}$
$1.10$ $5.4545$
$1.50$ $20.0000$
$2.00$ $\mathbf{30.0000}$

観察 3.2 比がちょうど $1$ なら、振幅はちょうど $\mathbf{0}$ である。摩擦は $30$ N もあるのに、まったく飛ばない。境目の反対側であり、大きさが原因でないことを示す。

観察 3.3 比が $1.1$ でも $5.4545$ mm 飛ぶ。一割の差で、五ミリ、差はわずかでよい。

計算 3.4:ばねを硬くする。

ばね [N/m] 振幅 [mm]
$1000$ $20.0000$
$10000$ $\mathbf{2.0000}$

観察 3.5 $10$ 倍硬くすると、ちょうど $1/10$ になる。逆比である。だから機械を剛にすると、びくつきは小さくなる。

観察 3.6 だが消えない。比が $1$ でない限り、どれだけ硬くしても振幅は正のまま残る。剛性は症状を薄めるだけで、原因を取り除かない。

4. 分離子

分離子:摩擦の大きさか、二つの摩擦の差か。

観察 4.1 大きさを動かしても、差が同じなら振幅は動かない。$F_s$ と $F_k$ を揃えて上げる。押しつけを強くしても飛び方は同じである。

観察 4.2 差を動かすと、振幅が動く。比 $1.0$ から $2.0$ で $0$ から $30$ mm、ここだけが効いている。

観察 4.3 これは論文300 の基準で別根である。どちらも「摩擦のせい」と呼ばれる。一方は水準、一方は二つの水準の差である。

観察 4.4 だから直し方も二通りある。差を減らす(潤滑を変える)か、ばねを硬くする。前者は原因を、後者は症状を扱う。

観察 4.5 そして「よく滑る材料に替える」は、必ずしも効かない。摩擦が小さくても差が大きければ飛ぶ、選ぶべきは、小さい摩擦ではなく差の小さい摩擦である。

観察 4.6 正直に言えば、本稿は動摩擦を定数として扱った。実際には滑り速度で変わり、その依存が振動の形を決める。変わらないのは、差がゼロなら振幅もゼロだという点である。

観察 4.7 最後に一つ、減衰も入れていない。実際の振動は次第に落ち着く。本稿が出したのは一回の滑りの大きさで、その後の履歴ではない。

5. 点呼と結び

  1. 一回の滑りは $20.0000$ mm(計算 2.1):目に見える。
  2. 式に荷重も面積も入らない(観察 2.3):二つの摩擦とばねだけ。
  3. 両方を同じだけ上げても動かない(観察 2.4):差が変わらない。
  4. 比が $1$ なら振幅はちょうど $0$(計算 3.1):境目の反対側。
  5. 比 $1.1$ でも $5.4545$ mm(計算 3.1):一割の差で五ミリ。
  6. 比 $2.0$ で $30.0000$ mm(計算 3.1):単調に増える。
  7. ばね $10$ 倍で $2.0000$ mm(計算 3.4):ちょうど $1/10$。
  8. 硬くしても消えない(観察 3.6):症状を薄めるだけ。
  9. 小さい摩擦より差の小さい摩擦(観察 4.5):選ぶ基準。
  10. 分離子は大きさか差か(観察 4.3):論文300 の基準で別根。

結び:摩擦が大きいと動きがぎくしゃくすると思われている。重いものは引きずるとがたつくので、大きさが原因に見える。だが式に入っているのは差 $F_s-F_k$ であって、$F_s$ も $F_k$ も単独では現れない。一回の滑りは、はっきり飛ぶ、静止摩擦 $30$ N・動摩擦 $20$ N・ばね $1000$ N/m なら、振幅は $2(30-20)/1000=\mathbf{20.0000}$ mm である。手で引いていれば分かる飛び方で、滑らかに動いているのではなく、止まっては飛んでいる。この式に荷重も面積も入っておらず、論文430 で摩擦係数から形が消えたのと同じ形の消え方をしている。だから $F_s$ と $F_k$ を同じだけ増やしても振幅は動かず、もっと強く押しつけても飛び方は同じである。差がゼロなら、振幅もゼロである。静/動の比がちょうど $1$ なら、摩擦が $30$ N もあるのに振幅はちょうど $\mathbf{0}$ になる。比を $1.1$・$1.5$・$2.0$ と上げると $5.4545$・$20.0000$・$\mathbf{30.0000}$ mm と単調に増え、一割の差でも五ミリ飛ぶ。ばねを $10$ 倍硬くすると振幅は $\mathbf{2.0000}$ mm へちょうど $1/10$ になるので、機械を剛にすればびくつきは小さくなる。ただし消えない。比が $1$ でない限り、どれだけ硬くしても振幅は正のまま残るので、剛性は症状を薄めるだけで原因を取り除かない。分けているものは一つ、摩擦の大きさか、二つの摩擦の差か。大きさを動かしても差が同じなら振幅は動かず、差を動かせば $0$ から $30$ mm まで動く。論文300 の基準で別根であり、どちらも「摩擦のせい」と呼ばれるが、一方は水準、一方は二つの水準の差である。だから直し方も二通りあり、差を減らす(潤滑を変える)のは原因を、ばねを硬くするのは症状を扱う。そして「よく滑る材料に替える」は必ずしも効かない。摩擦が小さくても差が大きければ飛ぶので、選ぶべきは小さい摩擦ではなく差の小さい摩擦である。正直に言えば、本稿は動摩擦を定数として扱った。実際には滑り速度で変わり、その依存が振動の形を決める。変わらないのは、差がゼロなら振幅もゼロだという点である。最後に一つ、減衰も入れていない。実際の振動は次第に落ち着く。本稿が出したのは一回の滑りの大きさであって、その後の履歴ではない。

参考文献

  1. Bowden, F. P., & Tabor, D. (1950). The Friction and Lubrication of Solids. Oxford: Clarendon Press.
  2. Rabinowicz, E. (1958). The Intrinsic Variables Affecting the Stick-Slip Process. Proceedings of the Physical Society.
  3. Dieterich, J. H. (1979). Modeling of Rock Friction. Journal of Geophysical Research, 84(B5).
  4. Ruina, A. (1983). Slip Instability and State Variable Friction Laws. Journal of Geophysical Research, 88(B12).
  5. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  6. 山岸勇輝 (2026). 『規則の核心と名指された条件を外しても、成績が動かない』[論文422]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22700081
  7. 山岸勇輝 (2026). 『接触面を $100$ 倍広げても、摩擦力は変わらない』[論文430]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22700470
  8. 山岸勇輝 (2026). 『どちらも $7.2446$ 倍になり、比は動かなかった』[論文438]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22732350

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「びくつく原因は摩擦の大きさではなく、二つの摩擦の差である」[論文439]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22732357

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). びくつく原因は摩擦の大きさではなく、二つの摩擦の差である [論文439]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/439 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22732357

Yamagishi, Y. (2026). What Makes It Judder Is Not the Size of the Friction but the Gap Between Two [Paper 439]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/439; DOI: 10.5281/zenodo.22732357

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