要旨
強い光を当てれば壊れる、と思われている。本稿が示すのは、光子 $1$ 個あたりのエネルギーが結合に届かなければ、何個当てても切れないことである。だから「明るさ」ではなく「色」が退色を決める。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、$700$ nm の光子は $1.7712$ eV $=170.90$ kJ/mol である(第2節)。
第二に、$400$ nm では $\mathbf{3.0996}$ eV $=299.07$ kJ/mol へ、$1.75$ 倍になる(第2節)。
第三に、これが本稿の芯である。C–N 結合($305$ kJ/mol)を切れるのは $\mathbf{392.2}$ nm より短い光だけで、赤い光は $170.90$ しか持たず届かない(第3節)。
第四に、結合ごとに限界波長が違う。C–C は $343.8$、C–O は $334.2$ nm である(第3節)。
第五に、強度を上げても、この境目は動かない(第3節)。
第六に、分離子は「合計で効くか、$1$ 個で効くか」である(第4節)。
キーワード:光化学、光子のエネルギー、結合解離エネルギー、光劣化、光化学の法則。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。光量子仮説、結合解離エネルギー、光化学の第一法則と第二法則はすべて既知である。材料を設計しない。色素の選択、紫外線吸収剤、保護膜は主題ではない。反応機構を論じない。励起状態の寿命、項間交差、酸素の関与は主題ではない。結合エネルギーは代表値である。分子によって数十 kJ/mol は動く。境目の位置ではなく、境目があることを見ている。多光子過程を除く。超高強度の場では二光子吸収が起こりうるが、日常の照明では無視できる。速さを論じない。何年で退色するかは主題ではない。切れるか切れないかだけを見る。既刊との関係:論文447 は増やした働き手が出口から流れ出すことを示した。そこでも、量を増やす方向が効かない場所があった。論文300 は同根か別根かが判定できることを示した。「合計エネルギー」と「$1$ 個あたりのエネルギー」は、その基準で別根である。論文446 は下限が要求で動くことを示した。そこでも、条件を言わない量が誤解を生んだ。加えたのは、四つの波長で光子エネルギーを並べたこと、三つの結合について限界波長を出したこと、C–N の $392.2$ nm を境目として置いたこと、赤い光が $170.90$ で届かないことを数で示したこと、分離子を「合計か $1$ 個か」に置いたことである。
1. 記法と問い
設定:波長 $\lambda$ の光子 $1$ 個のエネルギーは
$$E=\frac{hc}{\lambda}$$
であり、$1$ mol あたりに直すには $N_{A}$ を掛ける。
$$E_{\mathrm{mol}}=\frac{N_{A}hc}{\lambda}$$
結合解離エネルギー $D$ の結合を切れるのは、$E_{\mathrm{mol}}\ge D$ のときである。したがって限界波長は
$$\lambda_{\max}=\frac{N_{A}hc}{D}$$
で与えられ、これより長い波長では切れない。
観察 1.1 強い光を当てれば壊れる、と思われている。エネルギーを注ぎ込めば、いずれ結合は切れる。熱の像である。
観察 1.2 だが光は個数で来る。$1$ 個の光子が $1$ つの結合に当たる。足し合わせて使うことができない。
問い:どの色が、どの結合に届くのか。
2. 光子のエネルギーは色で 2.33 倍違う
計算 2.1:四つの波長で光子エネルギーを出す。
| 波長 [nm] | 光子 [eV] | $1$ mol [kJ] |
|---|---|---|
| $700$(赤) | $1.7712$ | $170.90$ |
| $550$(緑) | $2.2543$ | $217.50$ |
| $400$(紫) | $\mathbf{3.0996}$ | $299.07$ |
| $300$(紫外) | $4.1328$ | $398.76$ |
観察 2.2 赤から紫外へ、$2.33$ 倍になる。$1.7712$ から $4.1328$ eV へ、可視光の端から端でも $1.75$ 倍ある。
観察 2.3 この差は、強度とは無関係である。暗い紫外光の光子も $4.1328$ eV を持つ、明るい赤色光の光子は $1.7712$ eV のままである。
3. C–N を切れるのは 392.2 nm より短い側だけ
計算 3.1:三つの結合について限界波長を出す。
| 結合 | $D$ [kJ/mol] | $\lambda_{\max}$ [nm] |
|---|---|---|
| C–C | $348$ | $343.8$ |
| C–N | $305$ | $\mathbf{392.2}$ |
| C–O | $358$ | $334.2$ |
観察 3.2 最も切れやすい C–N でも $392.2$ nm である。可視光の紫の端すら、ほぼ境目にある。$400$ nm の $299.07$ kJ/mol は $305$ にわずかに届かない。
観察 3.3 赤い光は $170.90$ kJ/mol しか持たない。C–N の $305$ に対して $56.0$ パーセント、半分強で、どれだけ当てても切れない。
観察 3.4 結合ごとに境目が違う。C–O の $334.2$ nm と C–N の $392.2$ nm では $58$ nm の差、同じ光が、ある結合は切り、別の結合は切らない。
観察 3.5 強度を上げても、この境目は動かない。光子を $10^{6}$ 倍にしても、$1$ 個あたりは $1.7712$ eV のまま、閾値が個数で越えられない、というのがここの要点である。
観察 3.6 だから紫外線を切れば退色が止まる。窓ガラスやフィルムが効く理由である。明るさを落とすのではなく、短い側だけを落とす。
4. 分離子
分離子:合計で効くか、$1$ 個で効くか。
観察 4.1 合計で効くなら、強度を上げれば足りる。熱がその型である。どんな色でも、注ぎ込めばいずれ届く。
観察 4.2 $1$ 個で効くなら、色を変えるしかない。光化学がその型である。足りない光子を何個集めても、足りないままである。
観察 4.3 これは論文300 の基準で別根である。どちらも「エネルギー」と呼ばれる。一方は流れの量、一方は $1$ 回の受け渡しの大きさである。
観察 4.4 論文447 と同じ形である。そこでは働き手を増やしても出口が抱えきれなかった。ここでは光子を増やしても $1$ 個の大きさが足りない。どちらも、量を増やす方向が効かない。
観察 4.5 だから保護を考えるときは、まずスペクトルを見る。総照度ではなく、短波長側の分布である。同じ明るさでも、光源によって退色の速さが変わる。
観察 4.6 正直に言えば、結合解離エネルギーは代表値である。分子によって数十 kJ/mol 動く。境目の位置ではなく、境目があることを見ている。
観察 4.7 最後に一つ、超高強度の場では二光子吸収が起こりうる。その場合は $2$ 個ぶんが一度に渡る。日常の照明では無視できるが、境目が「絶対」ではない理由をここに置いておく。
5. 点呼と結び
- $700$ nm は $170.90$ kJ/mol(計算 2.1):赤い光。
- $400$ nm は $299.07$(計算 2.1):$1.75$ 倍。
- 赤から紫外で $2.33$ 倍(観察 2.2):色で決まる。
- 差は強度と無関係(観察 2.3):暗くても持っている。
- C–N の限界は $392.2$ nm(計算 3.1):本稿の芯。
- 赤は $305$ の $56.0$ パーセント(観察 3.3):届かない。
- C–O は $334.2$ nm(計算 3.1):結合ごとに違う。
- 強度では境目が動かない(観察 3.5):個数で越えられない。
- 紫外線を切れば止まる(観察 3.6):短い側だけを落とす。
- 分離子は合計か $1$ 個か(観察 4.3):論文300 の基準で別根。
結び:強い光を当てれば壊れる、と思われている。エネルギーを注ぎ込めばいずれ結合は切れる、という熱の像である。だが光は個数で来る。$1$ 個の光子が $1$ つの結合に当たり、足し合わせて使うことができない。光子 $1$ 個の大きさは、色で決まる。$700$ nm で $1.7712$ eV $=170.90$ kJ/mol、$550$ で $217.50$、$400$ で $\mathbf{299.07}$、$300$ で $398.76$。赤から紫外へ $2.33$ 倍、可視光の端から端でも $1.75$ 倍ある。そしてこの差は強度と無関係で、暗い紫外光の光子も $4.1328$ eV を持ち、明るい赤色光の光子は $1.7712$ eV のままである。結合の側には閾値がある。C–C は $343.8$、C–N は $\mathbf{392.2}$、C–O は $334.2$ nm より短い光でなければ切れない。最も切れやすい C–N でさえ $392.2$ nm で、$400$ nm の $299.07$ kJ/mol は $305$ にわずかに届かない。赤い光は $170.90$ しか持たず、C–N の $56.0$ パーセント、半分強で、どれだけ当てても切れない。結合ごとに境目が違い、C–O と C–N では $58$ nm の差があるので、同じ光がある結合は切り別の結合は切らない。そして強度を上げても境目は動かない。光子を $10^{6}$ 倍にしても $1$ 個あたりは $1.7712$ eV のままで、閾値は個数では越えられない。だから紫外線を切れば退色が止まる。明るさを落とすのではなく、短い側だけを落とすのである。分けているものは一つ、合計で効くか、$1$ 個で効くか。合計で効くなら強度を上げれば足り、熱がその型である。$1$ 個で効くなら色を変えるしかなく、光化学がその型で、足りない光子を何個集めても足りないままである。論文300 の基準で別根であり、一方は流れの量、一方は $1$ 回の受け渡しの大きさである。論文447 と同じ形で、そこでは働き手を増やしても出口が抱えきれなかった。どちらも、量を増やす方向が効かない。だから保護を考えるときは総照度ではなくスペクトルを見る。同じ明るさでも、光源によって退色の速さが変わる。正直に言えば、結合解離エネルギーは代表値で、分子によって数十 kJ/mol 動く。境目の位置ではなく、境目があることを見ている。最後に一つ、超高強度の場では二光子吸収が起こりえて、その場合は $2$ 個ぶんが一度に渡る。日常の照明では無視できるが、境目が「絶対」ではない理由をここに置いておく。
参考文献
- Einstein, A. (1905). Über einen die Erzeugung und Verwandlung des Lichtes betreffenden heuristischen Gesichtspunkt. Annalen der Physik.
- Stark, J. (1908). Über die Anwendung des Planckschen Elementargesetzes auf photochemische Prozesse. Physikalische Zeitschrift.
- Lide, D. R. (Ed.) (2004). CRC Handbook of Chemistry and Physics (85th ed.). CRC Press.
- Rabek, J. F. (1995). Polymer Photodegradation: Mechanisms and Experimental Methods. Chapman & Hall.
- 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
- 山岸勇輝 (2026). 『理論の下限は、たくさん取ろうとすると上がる』[論文446]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22732460
- 山岸勇輝 (2026). 『働き手を増やしすぎると、働き手のほうが流れ出す』[論文447]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22732494
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「赤い光をいくら当てても、青い光が切る結合は切れない」[論文448]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22732565
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). 赤い光をいくら当てても、青い光が切る結合は切れない [論文448]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/448 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22732565
Yamagishi, Y. (2026). No Amount of Red Light Breaks What Blue Light Breaks [Paper 448]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/448; DOI: 10.5281/zenodo.22732565
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