【論文452】液を持ち上げているのは表面張力ではなく、表面張力の差である

要旨

表面張力が大きいほど液は持ち上がる、と思われている。本稿が示すのは、持ち上げているのは表面張力そのものではなく、その差であることである。だから純水は表面張力が最も大きいのに、脚を作らない。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、純水は $0.072800$、$12$ パーセントのワインは $\mathbf{0.039445}$ N/m である(第2節)。

第二に、蒸発で $10$ パーセントに減ると $0.042828$ へ上がる(第2節)。

第三に、これが本稿の芯である。差 $\mathbf{0.003383}$ N/m が、膜厚 $20$ μm の液を $\mathbf{17.25}$ mm 持ち上げる(第3節)。

第四に、高さは膜厚に反比例し、$100$ μm では $\mathbf{3.45}$ mm に下がる(第3節)。

第五に、純水では蒸発しても組成が変わらないので差がゼロになり、脚はできない(第3節)。

第六に、分離子は「量が効くか、差が効くか」である(第4節)。

キーワード:マランゴニ効果、表面張力、ワインの涙、薄膜。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。マランゴニ効果、表面張力の濃度依存性、薄膜の力の釣り合いはすべて既知である。ワインを評価しない。品質、産地、アルコール度数と味の関係は主題ではない。内挿式は模型である。エタノール水溶液の表面張力を指数型で内挿した。両端は実測値に合わせてあるが、中間の形は実測ではない。蒸発速度を扱わない。どれくらいの速さで組成が変わるかは主題ではない。差が生じたあとの釣り合いだけを見る。膜厚を実測しない。$20$ μm は代表値であり、実際のグラスでは場所によって変わる。周期的な流れを扱わない。脚が滴になって落ちる過程は主題ではない。既刊との関係:論文451 は断熱しているのが雪ではなく空気であることを示した。そこでも、名前のついたものと働いているものが違った。論文300 は同根か別根かが判定できることを示した。「表面張力」と「表面張力の差」は、その基準で別根である。論文448 は光子 $1$ 個の大きさが効くことを示した。そこでも、合計ではない量が効いていた。加えたのは、二つの組成で表面張力を出したこと、差を $0.003383$ N/m と出したこと、持ち上がる高さを $17.25$ mm と出したこと、膜厚に反比例することを二つの値で確かめたこと、純水を境目として置いたこと、分離子を「量か差か」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:エタノール体積分率 $x$ の水溶液の表面張力を、両端を実測値に合わせた指数型で内挿する。

$$\sigma(x)=\sigma_{w}+(\sigma_{e}-\sigma_{w})\,\frac{1-e^{-9x}}{1-e^{-9}}$$

ここで $\sigma_{w}=0.0728$、$\sigma_{e}=0.0223$ N/m である。厚さ $\delta$ の液膜が、表面張力の差 $\Delta\sigma$ によって持ち上げられる高さは、力の釣り合いから

$$h=\frac{\Delta\sigma}{\rho\,g\,\delta}$$

で与えられる。

観察 1.1 表面張力が大きいほど液は持ち上がる、と思われている。毛管上昇の式がそう見える。$\sigma$ が分子にあるから。

観察 1.2 だがワインの脚は、表面張力が最も小さい液で起きる。純水では起きない。向きが逆である。

問い:何が持ち上げているのか。

2. 蒸発が 0.003383 N/m の差を作る

計算 2.1:三つの組成で表面張力を出す。

エタノール体積分率 表面張力 [N/m]
$0.00$(純水) $0.072800$
$0.10$ $0.042828$
$0.12$(ワイン) $\mathbf{0.039445}$

観察 2.2 $12$ パーセントで、すでに純水の $54.18$ パーセントまで落ちている。わずかなエタノールで大きく下がる。表面に集まる性質があるからである。

観察 2.3 そして蒸発でエタノールが減ると、表面張力は上がる。$0.12$ から $0.10$ へ減ると、$0.039445$ から $0.042828$ へ、差は $\mathbf{0.003383}$ N/m である。

観察 2.4 この差は、純水の表面張力の $4.65$ パーセントしかない。絶対値としては小さい。だが効いているのはこの小さいほうである。

3. 0.003383 N/m が 17.25 mm 持ち上げる

計算 3.1:二つの膜厚で、持ち上がる高さを出す。

膜厚 高さ
$20$ μm $\mathbf{17.2465}$ mm
$100$ μm $3.4493$ mm

観察 3.2 $17.25$ mm はグラスで目に見える高さである。$2$ センチ近く。脚が見えるのは、この大きさだからである。

観察 3.3 高さは膜厚に反比例する。$20$ μm と $100$ μm で $5$ 倍、薄い膜ほど高く上がる。厚い膜は自分の重さで負ける。

観察 3.4 純水では差がゼロになる。蒸発しても組成が変わらないから、表面張力は $0.072800$ と最も大きいのに、脚はできない。

観察 3.5 これが境目である。混合物か、単一成分か、片方が選択的に蒸発するかどうかで、現象が出るか出ないかが決まる。

観察 3.6 だから「表面張力が大きいと脚ができる」は、二重に誤っている。向きが逆であり、しかも効いているのは量ではなく差である。同じ語で二つの量を指している。

4. 分離子

分離子:量が効くか、差が効くか。

観察 4.1 量が効くなら、大きいほど強い。毛管上昇はこの型である。純水が最も高く上がる。

観察 4.2 差が効くなら、一様な液では何も起きない。マランゴニ流はこの型である。どれだけ大きくても、揃っていれば動かない。

観察 4.3 これは論文300 の基準で別根である。どちらも「表面張力の効果」と呼ばれる。一方は場の量、一方は場の勾配である。

観察 4.4 論文451 と同じ形である。そこでは断熱しているのが雪ではなく空気だった。ここでは持ち上げているのが表面張力ではなくその差である。どちらも、名前のついたものと働いているものが違う。

観察 4.5 論文448 とも重なる。そこでは合計ではなく $1$ 個の大きさが効いた。ここでは値ではなく値の変化が効く。どちらも、素朴に足し合わせた量が答えを持っていない。

観察 4.6 だから脚の強さは、アルコール度数そのものではなく、蒸発による組成変化の大きさを見る。度数が高くても、蒸発しにくい環境なら差は小さい。湿度と温度が効く理由がここにある。

観察 4.7 正直に言えば、内挿式は模型である。両端は実測値に合わせてあるが、中間の形は指数型と置いただけ、$0.003383$ という値は模型に依るが、差がゼロなら脚が出ないという結論は依らない。

5. 点呼と結び

  1. 純水は $0.072800$ N/m(計算 2.1):最も大きい。
  2. ワインは $0.039445$(計算 2.1):$54.18$ パーセント。
  3. $10$ パーセントで $0.042828$(計算 2.1):蒸発で上がる。
  4. 差は $0.003383$ N/m(観察 2.3):これが効く。
  5. $17.2465$ mm 持ち上がる(計算 3.1):本稿の芯。
  6. $100$ μm では $3.4493$ mm(計算 3.1):膜厚に反比例。
  7. 純水では差がゼロ(観察 3.4):脚ができない。
  8. 境目は混合物か単一成分か(観察 3.5):選択的な蒸発。
  9. 分離子は量か差か(観察 4.3):論文300 の基準で別根。
  10. 湿度と温度が効く(観察 4.6):組成変化の大きさ。

結び:表面張力が大きいほど液は持ち上がる、と思われている。毛管上昇の式で $\sigma$ が分子にあるから、そう見える。だがワインの脚は、表面張力が最も小さい液で起き、純水では起きない。向きが逆である。効いているのは、小さいほうの数である。純水は $0.072800$ N/m、$12$ パーセントのワインは $\mathbf{0.039445}$ で、わずかなエタノールで純水の $54.18$ パーセントまで落ちる。エタノールが表面に集まる性質を持つからである。そして蒸発でエタノールが $0.12$ から $0.10$ へ減ると表面張力は $0.042828$ へ上がり、差は $\mathbf{0.003383}$ N/m になる。この差は純水の表面張力の $4.65$ パーセントしかなく、絶対値としては小さい。だが効いているのはこの小さいほうである。その小さな差が、目に見える高さを作る。膜厚 $20$ μm なら $\mathbf{17.2465}$ mm、$2$ センチ近く持ち上がる。脚が見えるのは、この大きさだからである。高さは膜厚に反比例し、$100$ μm では $3.4493$ mm に下がる。薄い膜ほど高く上がり、厚い膜は自分の重さで負ける。そして純水では蒸発しても組成が変わらないので差がゼロになり、表面張力は $0.072800$ と最も大きいのに脚はできない。これが境目である。混合物か単一成分か、片方が選択的に蒸発するかどうかで、現象が出るか出ないかが決まる。だから「表面張力が大きいと脚ができる」は二重に誤っている。向きが逆であり、しかも効いているのは量ではなく差である。分けているものは一つ、量が効くか、差が効くか。量が効くなら大きいほど強く、毛管上昇はこの型で、純水が最も高く上がる。差が効くなら一様な液では何も起きず、マランゴニ流はこの型で、どれだけ大きくても揃っていれば動かない。論文300 の基準で別根であり、一方は場の量、一方は場の勾配である。論文451 と同じ形で、そこでは断熱しているのが雪ではなく空気だった。どちらも、名前のついたものと働いているものが違う。論文448 とも重なり、そこでは合計ではなく $1$ 個の大きさが効いた。どちらも、素朴に足し合わせた量が答えを持っていない。だから脚の強さはアルコール度数そのものではなく、蒸発による組成変化の大きさを見る。度数が高くても蒸発しにくい環境なら差は小さく、湿度と温度が効く理由がここにある。正直に言えば、内挿式は模型である。両端は実測値に合わせてあるが中間の形は指数型と置いただけで、$0.003383$ という値は模型に依る。だが差がゼロなら脚が出ないという結論は、模型に依らない。

参考文献

  1. Thomson, J. (1855). On Certain Curious Motions Observable at the Surfaces of Wine and Other Alcoholic Liquors. Philosophical Magazine.
  2. Marangoni, C. (1871). Ueber die Ausbreitung der Tropfen einer Flüssigkeit auf der Oberfläche einer anderen. Annalen der Physik.
  3. Fournier, J. B., & Cazabat, A. M. (1992). Tears of Wine. Europhysics Letters.
  4. Vazquez, G., Alvarez, E., & Navaza, J. M. (1995). Surface Tension of Alcohol + Water from 20 to 50 Degrees C. Journal of Chemical & Engineering Data.
  5. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  6. 山岸勇輝 (2026). 『赤い光をいくら当てても、青い光が切る結合は切れない』[論文448]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22732565
  7. 山岸勇輝 (2026). 『断熱しているのは雪ではなく、雪が抱えている空気である』[論文451]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22732772

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「液を持ち上げているのは表面張力ではなく、表面張力の差である」[論文452]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22732842

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 液を持ち上げているのは表面張力ではなく、表面張力の差である [論文452]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/452 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22732842

Yamagishi, Y. (2026). What Lifts the Liquid Is Not Surface Tension but Its Difference [Paper 452]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/452; DOI: 10.5281/zenodo.22732842

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