Yamagishi Complexity Torus Lab山岸勇輝ラボ

【論文542】「相反」は四つあり、三つは対称性だけを要り、一つは時間反転を要る

要旨

光学にも、電磁気にも、構造にも、熱力学にも「相反定理」がある。本稿が示すのは、前三つが作用素の対称性だけを要るのに対し、四つ目は磁場の符号まで反転させることを要ることである。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、対称な作用素なら相反は厳密に成り立つ、対称な剛性行列で $f_{1}\cdot u_{2}$ と $f_{2}\cdot u_{1}$ の差は $\mathbf{0.00\times10^{0}}$ である(第2節)。

第二に、非対称にすると破れる。差は $\mathbf{0.029851}$、相対で $\mathbf{0.6667}$ になる。境目の反対側である(第2節)。

第三に、これが本稿の芯である。磁場のある系では、対称性が壊れているのに相反が成り立つ、$|L_{12}-L_{21}|=\mathbf{1.600000}$ なのに、$L(B)$ と $L(-B)$ の転置は差 $\mathbf{0.00\times10^{0}}$ で一致する(第3節)。

第四に、磁場を切れば普通の対称性に戻る。$B=0$ では $|L_{12}-L_{21}|$ が $10^{-15}$ の桁に落ちる(第3節)。

第五に、条件の形が違う。前三つは一つの行列について言えるが、四つ目は二つの状態($B$ と $-B$)を並べないと書けない(第4節)。

第六に、分離子は、いくつの状態を要るかである。一つで足りるか、二つ要るか(第4節)。

キーワード:相反定理、オンサーガーの相反関係、ヘルムホルツの相反性、ベッティの定理、時間反転対称性。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。ヘルムホルツ、ローレンツ、ベッティ、オンサーガーのいずれの相反関係も標準的である。オンサーガー関係を証明しない。微視的可逆性からの導出には立ち入らず、関係の形だけを数で見る。実在の材料を扱わない。行列は説明のために置いたもので、特定の物質の係数ではない。非線形な場合に広げない。線形応答の枠内だけを見る。相反でない素子の設計を述べない。アイソレータやサーキュレータの実装は主題ではない。四つで尽きるとは書かない。数えたのは四つで、他に無いとは主張しない。「同じ定理だ」とも「無関係だ」とも書かない。共有しているのは形であり、要求している条件が違う。既刊との関係:論文143 は最小エントロピー生成が原理ではなく柵つきの定理だと示した。その柵の一つがオンサーガー関係であり、本稿はその関係が他の三つと形を異にすることを示す。論文77 は微視の保存と粗視の増大を扱った。オンサーガー関係が要求する時間反転は、あちらの微視の側にある。論文125 はホップが三人いると示した。本稿も固有名ではなく語の点呼だが、分ける向きである。論文300 は同根か別根かが判定できると示した。四つは「量の持ち物」の基準で、三対一に分かれる。加えたのは、対称性で成り立つ相反を数値で確かめたこと、非対称にすると $\mathbf{0.6667}$ 破れると測ったこと、磁場のある系で対称性が壊れても相反が残ることを示したこと、磁場を切ると戻ることを対照に置いたこと、分離子を「いくつの状態を要るか」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:相反定理は、原因と結果を入れ替えても応答が変わらないという形をしている。ヘルムホルツは光学で、ローレンツは電磁気で、ベッティは構造力学で、オンサーガーは不可逆過程で、それぞれ同じ名前の定理を持つ。

観察 1.1 どれも「入れ替えても同じ」と言う。形が同じなら、同じ条件を要求しているように見える。しかし要求は形からは読めない。

観察 1.2 条件を見分ける方法がある。条件を壊してみて、相反が破れるかどうかを見ればよい。破れ方が違えば、要求も違う。

問い:四つは同じ条件を要求しているか。

2. 三つは、作用素の対称性だけを要る

計算 2.1:ベッティの相反を、二自由度の弾性系で確かめた。荷重 $f_{1}$ による変位を $u_{1}$、$f_{2}$ による変位を $u_{2}$ とし、$f_{1}\cdot u_{2}$ と $f_{2}\cdot u_{1}$ を比べる。

剛性行列 $f_{1}\cdot u_{2}$ $f_{2}\cdot u_{1}$ 差
対称 $-0.049180327868852$ $-0.049180327868852$ $\mathbf{0.00\times10^{0}}$
非対称 $-0.044776119402985$ $-0.014925373134328$ $\mathbf{0.029851}$

観察 2.2 対称なら厳密に成り立つ。差が丸めの桁でもなく、ちょうど零、近似ではなく恒等式である。

観察 2.3 非対称にすると破れる。相対で $\mathbf{0.6667}$、境目の反対側。相反が「いつでも成り立つ」のではないことを確かめた。

観察 2.4 光学と電磁気も同じ形である。媒質が相反的であれば作用素が対称になり、同じ議論が通る。要求されるのは、一つの作用素についての一つの性質だけである。

3. 四つ目は、二つの状態を要る

計算 3.1:磁場に奇な項(ホール項)を持つ線形応答行列を作り、対称性と相反を別々に測った。

量 値
$L(B)$ の $L_{12}$ $1.3000$
$L(B)$ の $L_{21}$ $-0.3000$
対称性の破れ $|L_{12}-L_{21}|$ $\mathbf{1.600000}$
$L(B)$ と $L(-B)$ の転置の差 $\mathbf{0.00\times10^{0}}$

観察 3.2 これが本稿の芯である。対称性は $\mathbf{1.600000}$ だけ壊れているのに、相反は厳密に成り立っている。ただし成り立っているのは $L(B)=L(-B)^{\top}$ という形で、$L=L^{\top}$ ではない。

観察 3.3 磁場を切れば戻る。$B=0$ では $|L_{12}-L_{21}|$ が $10^{-15}$ の桁、境目の反対側。磁場が入っているときだけ、条件の形が変わる。

観察 3.4 要求しているのは時間反転である。微視的な運動方程式を時間で反転させると磁場の符号も変わる。論文77 が扱った微視の側の性質が、ここで条件として現れている。

観察 3.5 だから「対称だから成り立つ」とは言えない。対称でなくても成り立つ場合がある。前三つの説明をそのまま四つ目に当てると、間違える。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、いくつの状態を要るかである。前三つは一つの作用素について書ける。四つ目は $B$ と $-B$ という二つの状態を並べないと書けない。

観察 4.2 論文300 の「量の持ち物」で三対一に分かれる。前三つは作用素という持ち物だけを要る。四つ目は外場の符号という持ち物を追加で要る。

観察 4.3 実務でも差が出る。相反でない素子を作るには、磁場のような時間反転を破るものが要る。対称性を崩すだけでは足りない。四つ目の条件を崩さなければならない。

観察 4.4 論文143 の柵の一つがこれである。あちらは最小エントロピー生成が柵つきの定理だと示した。その柵にオンサーガー関係が含まれ、その関係自体が磁場のもとで形を変える。

観察 4.5 四つで尽きるとは書かない。数えたのは四つである。尽くしたと言うには、尽くし方を先に決めなければならない。

観察 4.6 言わないこと。オンサーガー関係を証明しない。微視的可逆性からの導出には立ち入らず、線形応答の枠内だけを見た。

5. 点呼と結び

  1. 対称なら差が $\mathbf{0.00\times10^{0}}$(計算 2.1):恒等式。
  2. 非対称なら $\mathbf{0.029851}$(計算 2.1):相対 $\mathbf{0.6667}$。
  3. 光学と電磁気も同じ形(観察 2.4):一つの性質だけ。
  4. 対称性の破れ $\mathbf{1.600000}$(計算 3.1):磁場があるとき。
  5. それでも相反は厳密(観察 3.2):本稿の芯。
  6. 成り立つ形は $L(B)=L(-B)^{\top}$(観察 3.2):$L=L^{\top}$ ではない。
  7. $B=0$ で戻る(観察 3.3):境目の反対側。
  8. 要求は時間反転(観察 3.4):微視の性質。
  9. 分離子は状態の数(観察 4.1):一つか二つか。
  10. 三対一に分かれる(観察 4.2):持ち物が違う。
  11. 四つで尽きるとは書かない(観察 4.5):数えたのは四つ。

結び:光学にも、電磁気にも、構造にも、熱力学にも「相反定理」がある。三つは作用素の対称性だけを要る。対称な剛性行列では $f_{1}\cdot u_{2}$ と $f_{2}\cdot u_{1}$ の差が $\mathbf{0.00\times10^{0}}$ で、丸めの桁ですらなくちょうど零になる。近似ではなく恒等式である。非対称にすると差は $\mathbf{0.029851}$、相対で $\mathbf{0.6667}$ になり、相反が「いつでも成り立つ」のではないことが分かる。光学も電磁気も同じ形で、媒質が相反的であれば作用素が対称になる。要求されるのは一つの作用素についての一つの性質だけである。四つ目は、対称でなくても成り立つ、磁場に奇な項を持つ線形応答行列では $|L_{12}-L_{21}|=\mathbf{1.600000}$ と対称性が壊れているのに、$L(B)$ と $L(-B)$ の転置は差 $\mathbf{0.00\times10^{0}}$ で一致する。成り立っているのは $L(B)=L(-B)^{\top}$ という形であって、$L=L^{\top}$ ではない。磁場を切れば $|L_{12}-L_{21}|$ は $10^{-15}$ の桁に落ちて普通の対称性に戻るので、条件の形が変わるのは磁場が入っているときだけである。要求されているのは時間反転で、微視的な運動方程式を時間で反転させると磁場の符号も変わる。論文77 が扱った微視の側の性質が、ここでは条件として現れている。分離子は、いくつの状態を要るかである。前三つは一つの作用素について書けるが、四つ目は $B$ と $-B$ という二つの状態を並べないと書けない。論文300 の「量の持ち物」でいえば、前三つは作用素だけを要り、四つ目は外場の符号を追加で要る。三対一に分かれる。実務でも差が出る。相反でない素子を作るには時間反転を破るものが要り、対称性を崩すだけでは足りない。論文143 は最小エントロピー生成が柵つきの定理だと示した。その柵の一つがオンサーガー関係であり、関係そのものが磁場のもとで形を変える。だから前三つの説明をそのまま四つ目に当てると間違える。正直に言えば、オンサーガー関係を証明していない。微視的可逆性からの導出には立ち入らず、関係の形だけを数で見た。行列は説明のために置いたもので、特定の物質の係数ではない。線形応答の枠内だけを見ており、非線形な場合には広げていない。アイソレータやサーキュレータの実装も述べていない。四つで尽きるとも書かない。「同じ定理だ」とも「無関係だ」とも書かない。共有しているのは形であり、要求している条件が違う、そこまでである。

参考文献

  1. Betti, E. (1872). Teoria della elasticita. Il Nuovo Cimento.
  2. Helmholtz, H. von (1856). Handbuch der physiologischen Optik. Voss.
  3. Lorentz, H. A. (1895). Het theorema van Poynting over de energie in het electromagnetisch veld en een paar algemeene stellingen over de voortplanting van het licht. Verslagen der Afdeeling Natuurkunde.
  4. Onsager, L. (1931). Reciprocal Relations in Irreversible Processes I. Physical Review.
  5. 山岸勇輝 (2026). 『リューヴィルの定理と時間の矢:微視の保存と粗視の増大』[論文77]. Zenodo. 10.5281/zenodo.21722473
  6. 山岸勇輝 (2026). 『ホップは三人いる』[論文125]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22079384
  7. 山岸勇輝 (2026). 『最小エントロピー生成は、原理ではなく柵つきの定理である』[論文143]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22082367
  8. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「「相反」は四つあり、三つは対称性だけを要り、一つは時間反転を要る」[論文542]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.23014145

YOI 542第1版・2026年9月日付の証拠:受付済み

日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS

住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/542・DOI 10.5281/zenodo.23014145・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 「相反」は四つあり、三つは対称性だけを要り、一つは時間反転を要る [論文542]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/542 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014145

Yamagishi, Y. (2026). ``Reciprocity'' Is Four Theorems: Three Need Only Symmetry, One Needs Time Reversal [Paper 542]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/542; DOI: 10.5281/zenodo.23014145

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