要旨
食品のラベルにあるカロリーは、燃やして測った熱だと思われている。本稿が示すのは、それが「体が取り出せる分」を係数で見積もった値であり、燃やした熱との差がタンパク質だけに集まっていることである。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、差はタンパク質だけ桁違いに大きい。炭水化物 $\mathbf{2.4390}$・脂質 $\mathbf{4.7619}$・アルコール $\mathbf{1.4085}$ パーセントに対し、タンパク質は $\mathbf{29.2035}$ パーセントである(第2節)。
第二に、係数は燃焼熱と二つの補正から組み立て直せる。吸収率と尿の分を差し引くと $3.977$・$8.9775$・$4.048$・$7.1$ になり、四つとも $4$・$9$・$4$・$7$ に丸まる(第3節)。
第三に、これが本稿の芯である。タンパク質の差 $1.65$ kcal/g のうち $\mathbf{0.757576}$ は尿に出る分である。体は窒素を尿素の形で捨て、尿素にはまだ燃える部分が残っている。熱量計はそれも燃やす(第3節)。
第四に、補正の順序で $0.1$ 違うが、丸めが吸う。差はちょうど $1.25\times0.08$ で、どちらの順でも $4$ に戻る(第3節)。
第五に、食品の比はタンパク質の割合で決まる。熱量計の値 $\div$ ラベルの値は、炭水化物だけなら $\mathbf{1.025}$、タンパク質だけなら $\mathbf{1.4125}$、ふつうの組成で $\mathbf{1.114865}$ である(第4節)。
第六に、分離子は、元素が燃えきるか捨てられるかである。炭素と水素は二酸化炭素と水まで燃えきり、窒素は燃えかけのまま捨てられる(第5節)。
キーワード:アトウォーター係数、食品のエネルギー、タンパク質、燃焼熱、栄養表示。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。アトウォーターの係数も、その導き方も、百年以上前から知られている。栄養の助言をしない。何をどれだけ食べるべきかは述べない。ラベルの数が何を表しているかだけを見る。使った値は代表値である。燃焼熱($4.10$・$9.45$・$5.65$・$7.10$ kcal/g)と吸収率($0.97$・$0.95$・$0.92$)は古典的な混合食の値である。燃焼熱を別の代表値($4.15$・$9.40$)に替えても丸めた整数は変わらないことを確かめたが、小数第二位の数そのものは主張しない。尿に出る分はアトウォーターの測定値をそのまま使う。タンパク質 $1$ g あたり $1.25$ kcal という値の内訳には立ち入らない。食物繊維・糖アルコール・有機酸を扱わない。これらには別の係数が使われる。各国の食品成分表の算出法を扱わない。表によっては一般係数ではなく、食品ごとの係数やアミノ酸組成からの計算を使う。本稿は一般係数だけを見る。個人差を扱わない。腸内細菌や消化の個人差で吸収率は動く。既刊との関係:論文338 は約束であることと恣意的であることは別だと示した。$4$・$9$・$4$ はまさにその例である。整数に丸めた約束だが、燃焼熱と二つの補正から組み立て直せるので恣意的ではない。論文551 は指標が動かないまま不良率が $359$ 倍になると示し、名前の広い数が狭い中身しか持たない型を見せた。「カロリー」も同じ型で、熱の名で呼ばれながら、中身は体が取り出せる分だけである。論文300 は同根か別根かが判定できると示した。「差がタンパク質に集まる」と「食品の比が組成で動く」は、窒素という一つの根から出る同根である。加えたのは、四つの係数を燃焼熱と二つの補正から組み立て直し、四つとも整数に丸まることを確かめたこと、補正の順序による $0.1$ の差を閉じた式 $1.25\times0.08$ と $12$ 桁で突き合わせたこと、タンパク質の差のうち尿の分を $\mathbf{0.757576}$ と測ったこと、食品の比を六つの組成で並べ、タンパク質の割合で単調に動くことを示したこと、分離子を「元素が燃えきるか捨てられるか」に置いたことである。
1. 記法と問い
設定:食品のエネルギーは、炭水化物・脂質・タンパク質・アルコールの質量にそれぞれ $4$・$9$・$4$・$7$ kcal/g を掛けて足す。これがアトウォーターの一般係数である。一方、同じものを熱量計(ボンベ)で燃やすと、燃焼熱として $4.10$・$9.45$・$5.65$・$7.10$ kcal/g が出る。
観察 1.1 二つは同じ単位で書かれている。どちらも kcal/g で、どちらも「カロリー」と呼ばれる。だが片方は熱量計の針、片方は体の出入りの勘定である。
問い:二つの差はどこから来て、どれだけ効くのか。
2. 差は、タンパク質だけ桁違いに大きい
計算 2.1:燃焼熱と係数の差を取った。
| 成分 | 燃焼熱(kcal/g) | 係数 | 差の割合 |
|---|---|---|---|
| 炭水化物 | $4.10$ | $4$ | $\mathbf{0.024390}$ |
| 脂質 | $9.45$ | $9$ | $\mathbf{0.047619}$ |
| タンパク質 | $5.65$ | $4$ | $\mathbf{0.292035}$ |
| アルコール | $7.10$ | $7$ | $\mathbf{0.014085}$ |
観察 2.2 タンパク質だけが三割近い。$0.29$ より大きく $0.30$ より小さい(実測 $\mathbf{0.292035}$)、他の三つのどれと比べても $5$ 倍以上である。
観察 2.3 三つは数パーセントで揃っている。炭水化物・脂質・アルコールの差は、吸収しきれない分だけである。タンパク質にだけ、別の何かが加わっている。
3. 係数は、組み立て直せる
計算 3.1:燃焼熱に吸収率を掛け、タンパク質だけは尿に出る分 $1.25$ kcal/g を差し引いた。
| 成分 | 組み立て直した値 | 丸めると |
|---|---|---|
| 炭水化物 | $4.10\times0.97=\mathbf{3.977000}$ | $4$ |
| 脂質 | $9.45\times0.95=\mathbf{8.977500}$ | $9$ |
| アルコール | $7.10\times1.00=\mathbf{7.100000}$ | $7$ |
| タンパク質(尿を先に引く) | $(5.65-1.25)\times0.92=\mathbf{4.048000}$ | $4$ |
| タンパク質(吸収率を先に掛ける) | $5.65\times0.92-1.25=\mathbf{3.948000}$ | $4$ |
観察 3.2 四つとも係数の整数に戻る。係数は勝手に決めた数ではなく、測った燃焼熱から出てくる。丸めが入っているだけである。
観察 3.3 補正の順序で $0.1$ 違う。その差は閉じた式 $1.25\times(1-0.92)=0.1$ に $12$ 桁で一致する。別に組み立てた式との突合せである。どちらの順でも整数 $4$ との隔たりは $0.06$ 未満で、丸めが順序の違いを吸ってしまう。
観察 3.4 燃焼熱の代表値を替えても変わらない。炭水化物を $4.15$、脂質を $9.40$ にすると $4.025500$ と $8.930000$ で、やはり $4$ と $9$ に丸まる。結論は燃焼熱の小数第二位に依らない。
計算 3.5:タンパク質の差 $5.65-4=1.65$ kcal/g のうち、尿に出る分の割合を出した。$1.25/1.65=\mathbf{0.757576}$ である($0.75$ より大きく $0.76$ より小さい)。
観察 3.6 これが本稿の芯である。タンパク質の差の四分の三は、吸収できないからではなく、吸収したものを燃やしきらないから出ている。体は窒素を尿素の形で捨てる。尿素にはまだ燃える炭素と水素が残っていて、熱量計はそれも燃やす。ラベルは燃やさない。
4. 食品の比は、タンパク質の割合で決まる
計算 4.1:組成を振って、熱量計の値とラベルの値の比を出した。
| 組成(タンパク質・脂質・炭水化物 g) | 熱量計 | ラベル | 比 |
|---|---|---|---|
| $0$・$0$・$100$ | $410.00$ | $400.00$ | $\mathbf{1.025000}$ |
| $0$・$100$・$0$ | $945.00$ | $900.00$ | $1.050000$ |
| $10$・$5$・$75$ | $411.25$ | $385.00$ | $1.068182$ |
| $20$・$10$・$50$ | $412.50$ | $370.00$ | $\mathbf{1.114865}$ |
| $30$・$20$・$10$ | $399.50$ | $340.00$ | $1.175000$ |
| $100$・$0$・$0$ | $565.00$ | $400.00$ | $\mathbf{1.412500}$ |
観察 4.2 タンパク質だけの食品で、比はちょうど $5.65/4$ になる。$12$ 桁で $\mathbf{1.412500}$、燃焼熱と係数の比そのものである。
観察 4.3 ふつうの組成で一割強の差がある。$20$・$10$・$50$ で $\mathbf{1.114865}$($1.11$ より大きく $1.12$ より小さい)。同じ食品を熱量計で測れば、ラベルより一割強多く出る。
観察 4.4 比はタンパク質の割合とともに増す。$10$・$20$・$30$ g と増やすと $1.068182$・$1.114865$・$1.175000$、そして混ぜた食品の比は、成分だけの比の最小($1.025$)と最大($1.4125$)のあいだに入る。
観察 4.5 高タンパクの食品ほど、熱量計とラベルが離れる。肉や豆のように組成が偏った食品では、ラベルの数が熱量計の数からいちばん遠くなる。どちらが正しいかではなく、測っているものが違う。
5. 分離子
観察 5.1 分離子は、元素が燃えきるか捨てられるかである。炭素と水素は、体の中でも熱量計の中でも二酸化炭素と水まで燃えきる。窒素は、熱量計の中では燃えるが、体からは燃えかけの尿素として出ていく。炭水化物と脂質に窒素は無く、タンパク質にはある。差がタンパク質に集まるのはそのためである。
観察 5.2 アルコールが対照になる。窒素を持たず、ほぼ吸収されるので、差は $\mathbf{0.014085}$ にとどまる。同じ「体に入る」でも、窒素が無ければ熱量計とほとんど変わらない。
観察 5.3 論文338 のいう「約束だが恣意的ではない」の例である。$4$・$9$・$4$ は整数に丸めた約束である。だが燃焼熱と二つの補正から組み立て直せるので、恣意的ではない。約束の中に、測定が折りたたまれている。
観察 5.4 論文551 と同じ「名前が広い」型である。あちらは「工程能力」を名乗る指数が、ばらつきしか見ていなかった。こちらは熱の名で呼ばれる「カロリー」が、体が取り出せる分だけを数えている。
観察 5.5 論文300 の基準では同根である。「差がタンパク質に集まる」と「食品の比が組成で動く」は、どちらも窒素一つから出る。窒素を持たない食品だけなら、どちらも消える。
6. 点呼と結び
- タンパク質の差 $\mathbf{0.292035}$(計算 2.1):他の $5$ 倍以上。
- 炭水化物 $\mathbf{3.977000}$・脂質 $\mathbf{8.977500}$(計算 3.1):$4$ と $9$ に丸まる。
- タンパク質 $\mathbf{4.048000}$ と $\mathbf{3.948000}$(計算 3.1):どちらの順でも $4$。
- 順序の差 $0.1=1.25\times0.08$(観察 3.3):$12$ 桁の突合せ。
- 別の代表値でも $4$ と $9$(観察 3.4):小数第二位に依らない。
- 尿の分 $\mathbf{0.757576}$(計算 3.5):本稿の芯。
- タンパク質だけの食品で $\mathbf{1.412500}$(観察 4.2):$5.65/4$。
- ふつうの組成で $\mathbf{1.114865}$(観察 4.3):一割強。
- 分離子は燃えきるか捨てられるか(観察 5.1):窒素がそれを分ける。
- アルコールは $\mathbf{0.014085}$(観察 5.2):窒素の無い対照。
結び:食品のラベルにあるカロリーは、燃やして測った熱だと思われている。ところが燃焼熱と係数の差は、タンパク質だけに集まっている。炭水化物 $\mathbf{2.4390}$・脂質 $\mathbf{4.7619}$・アルコール $\mathbf{1.4085}$ パーセントに対し、タンパク質は $\mathbf{29.2035}$ パーセントで、他の三つのどれの $5$ 倍をも超える。係数は勝手な数ではなく、燃焼熱に吸収率を掛け、タンパク質だけ尿に出る分を差し引けば組み立て直せる。$3.977$・$8.9775$・$7.1$・$4.048$ が、四つとも $4$・$9$・$7$・$4$ に丸まる。補正の順序で $0.1$ 違うが、それは閉じた式 $1.25\times0.08$ に $12$ 桁で一致し、どちらの順でも整数に戻る。燃焼熱を別の代表値に替えても、丸めた整数は変わらない。タンパク質の差 $1.65$ kcal/g のうち、$\mathbf{0.757576}$ は尿に出る分である。差の四分の三は、吸収できないからではなく、吸収したものを燃やしきらないから出ている。体は窒素を尿素の形で捨て、尿素にはまだ燃える炭素と水素が残る。熱量計はそれも燃やし、ラベルは燃やさない。だから食品の比は、タンパク質の割合で決まる。熱量計の値 $\div$ ラベルの値は、炭水化物だけなら $\mathbf{1.025}$、タンパク質だけならちょうど $5.65/4=\mathbf{1.4125}$、ふつうの組成で $\mathbf{1.114865}$ で、タンパク質を増やすほど単調に増す。高タンパクの食品ほど、二つの数は離れる。どちらが正しいかではなく、測っているものが違う。分離子は、元素が燃えきるか捨てられるかである。炭素と水素は体の中でも熱量計の中でも燃えきり、窒素は熱量計の中では燃えるが、体からは燃えかけのまま出ていく。窒素を持たないアルコールでは差が $\mathbf{0.014085}$ にとどまる。論文300 の基準では、「差がタンパク質に集まる」と「食品の比が組成で動く」はどちらも窒素一つから出る同根である。既刊との位置、論文338 のいう「約束だが恣意的ではない」の例である。$4$・$9$・$4$ は整数に丸めた約束だが、測定が折りたたまれている。論文551 と同じ「名前が広い」型でもあり、熱の名で呼ばれる「カロリー」が、体が取り出せる分だけを数えている。正直に言えば、栄養の助言はしていない。燃焼熱と吸収率は古典的な混合食の代表値で、小数第二位の数そのものは主張しない。尿に出る $1.25$ kcal/g はアトウォーターの測定値として使い、内訳には立ち入っていない。食物繊維・糖アルコール・有機酸にかかる別の係数も、各国の食品成分表の算出法も、吸収率の個人差も扱っていない。
参考文献
- Atwater, W. O., & Bryant, A. P. (1900). The Availability and Fuel Value of Food Materials. Storrs Agricultural Experiment Station, Annual Report.
- FAO (2003). Food Energy、Methods of Analysis and Conversion Factors. FAO Food and Nutrition Paper 77. Food and Agriculture Organization of the United Nations.
- Merrill, A. L., & Watt, B. K. (1973). Energy Value of Foods: Basis and Derivation. Agriculture Handbook No. 74. United States Department of Agriculture.
- Southgate, D. A. T., & Durnin, J. V. G. A. (1970). Calorie Conversion Factors. British Journal of Nutrition.
- 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
- 山岸勇輝 (2026). 『約束であることと、恣意的であることは別である』[論文338]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22681999
- 山岸勇輝 (2026). 『指標が動かないまま、不良率が $359$ 倍になる』[論文551]. Zenodo. 10.5281/zenodo.23014191
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「タンパク質だけが、熱量計とラベルで三割違う」[論文567]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.23014274
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). タンパク質だけが、熱量計とラベルで三割違う [論文567]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/567 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014274
Yamagishi, Y. (2026). Only Protein Differs by Nearly a Third Between the Calorimeter and the Label [Paper 567]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/567; DOI: 10.5281/zenodo.23014274
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