要旨
「燃えるごみ」は、燃えるものとして集められ、焼却炉で燃やされる。本稿が示すのは、水の多い生ごみは単独では燃え続けず、燃えているのは一緒に入っている紙の熱を借りているからで、紙を資源に回すほどごみは燃えなくなることである。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、ごみの熱は、乾いた分の熱から水の蒸発の潜熱を引いて出る。生ごみ(水分 $0.80$)で $\mathbf{1.4464}$ MJ/kg、紙(水分 $0.10$)で $\mathbf{14.1558}$ MJ/kg である(第2節)。
第二に、生ごみが単独で燃え続けられる水分の上限は $\mathbf{0.565785}$ である。水分 $0.80$ の生ごみは、そこから大きく外れている(第2節)。
第三に、これが本稿の芯である。燃え続けるには、紙が湿り重量で $\mathbf{0.358286}$ 以上混ざっていなければならない。生ごみが燃えているのは、紙が一緒に燃えているからである(第3節)。
第四に、紙が半分の町で、紙の $\mathbf{44.1673}$ パーセントを資源に回すと、残ったごみは燃え続けなくなる。$20$ パーセントで $\mathbf{7.0950}$、$40$ パーセントで $\mathbf{6.2124}$、$60$ パーセントで $\mathbf{5.0777}$ MJ/kg へ落ちる(第4節)。
第五に、境目は目安の選び方で動く。水分の目安で見ると紙は $3/7=\mathbf{0.428571}$ 以上で、発熱量の目安との差は $\mathbf{0.070285}$ である(第3節)。
第六に、分離子は、水の潜熱が乾いた分の熱を食い尽くすかどうかである。水分がその上限を越えれば、ごみは熱を出すものから熱を奪うものに変わる(第5節)。
キーワード:ごみ焼却、低位発熱量、生ごみ、紙のリサイクル、自燃。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。低位発熱量の式も、燃え続けるための目安も標準的である。数は代表値である。生ごみは水分 $0.80$・乾いた分 $17$ MJ/kg、紙は水分 $0.10$・乾いた分 $16$ MJ/kg、水の蒸発の潜熱 $2.442$ MJ/kg、助燃なしで燃え続ける目安を $6$ MJ/kg、水分の目安を $0.5$ と置いた。灰を入れていない。灰は熱を出さないので、入れれば境目はさらに厳しくなる。プラスチックを入れていない。プラスチックは発熱量が高く、それも資源に回せば同じ向きに効く。焼却炉を設計しない。炉の形、空気の量、燃焼温度は扱わない。エネルギーや二酸化炭素の収支を比べない。助燃に使う燃料と、紙を資源に回す得を比べるのは本稿の外である。「紙を資源化するな」とは書かない。既刊との関係:論文464 は、撒いた水が奪う熱のうち蒸発の潜熱が温度差の熱の $58.53$ 倍で、水の温度を変えても効果は $\mathbf{3.3882}$ パーセントしか変わらないと示した。本稿でも、水が効くのは温度ではなく蒸発の潜熱を通してで、それが燃焼の収支を食う側に出る。論文455 は、どこまで乾かすかで乾燥の律速が入れ替わると示した。同じ含水率が、あちらでは乾く速さを、こちらでは燃えるかどうかを分ける。論文300 は同根か別根かが判定できると示した。水分の目安と発熱量の目安の二つの境目は、同じ潜熱の根から出るのに、数が一致しない。加えたのは、生ごみが単独で燃え続けられる水分の上限 $\mathbf{0.565785}$ を閉じた式と二分法で出したこと、燃え続けるのに要る紙の割合 $\mathbf{0.358286}$ を出したこと、紙を資源に回す割合と残ったごみの発熱量の関係を並べ、境目の $\mathbf{44.1673}$ パーセントを確かめたこと、目安の選び方で境目が $\mathbf{0.070285}$ 動くことを示したこと、分離子を水の潜熱と乾いた分の熱の比べ合いに置いたことである。
1. 記法と問い
設定:湿り重量 $1$ kg のごみのうち水が $w$、乾いた分の発熱量を $H_d$、水の蒸発の潜熱を $L$ とすると、低位発熱量は
$$H(w)=(1-w)\,H_d-w\,L$$
である。二つのごみを湿り重量で $p:(1-p)$ に混ぜると、発熱量も同じ割合で混ざる。
観察 1.1 「燃えるごみ」は、燃えるものとして集められる。だが燃えるかどうかは、ごみが持っている熱と、ごみに含まれる水が蒸発で奪う熱の差で決まる。水の多いごみは、火に入れても熱を出すより奪うほうが大きいことがある。
問い:生ごみは単独で燃え続けるか。紙を資源に回すと、残ったごみに何が起きるか。
2. 生ごみと紙
計算 2.1:代表値で低位発熱量を出した。
| ごみ | 水分 | 乾いた分の熱 | 低位発熱量 |
|---|---|---|---|
| 生ごみ | $0.80$ | $17$ MJ/kg | $\mathbf{1.4464}$ MJ/kg |
| 紙 | $0.10$ | $16$ MJ/kg | $\mathbf{14.1558}$ MJ/kg |
| 燃え続ける目安 | $6$ MJ/kg |
観察 2.2 生ごみの熱の大半は、水を蒸発させるのに使われる。乾いた分の熱は湿り重量 $1$ kg あたり $3.4$ MJ あるが、そのうち $1.95$ MJ ほどを水の蒸発に取られる。残るのは目安の四分の一に届かない。
計算 2.3:生ごみが単独で燃え続けられる水分の上限は、$H(w)=6$ を解いて $w^*=(H_d-6)/(H_d+L)=\mathbf{0.565785}$ である(閉じた式と二分法が $10^{-9}$ で一致)。
観察 2.4 水分 $0.80$ の生ごみは、上限 $0.565785$ から大きく外れている。生ごみは単独では燃え続けない。焼却炉の中で燃えている生ごみは、自分の熱で燃えているのではない。
3. 混ぜると燃える
計算 3.1:紙を湿り重量で $p$ だけ混ぜた。燃え続ける境目は $p^*=\mathbf{0.358286}$ である(その割合で発熱量がちょうど $6$ に戻る・$10^{-12}$)。
| 紙の割合 | 低位発熱量 | |
|---|---|---|
| $0.50$ | $\mathbf{7.8011}$ MJ/kg | 燃え続ける |
| $0.40$ | $\mathbf{6.5302}$ MJ/kg | 燃え続ける |
| $0.36$ | $\mathbf{6.0218}$ MJ/kg | 燃え続ける |
| $0.30$ | $\mathbf{5.2592}$ MJ/kg | 助燃が要る |
| $0.20$ | $\mathbf{3.9883}$ MJ/kg | 助燃が要る |
観察 3.2 これが本稿の芯である。生ごみが燃えているのは、紙が一緒に燃えているからである。紙が湿り重量で $0.358286$ を下回ると、ごみ全体が燃え続けなくなり、炉に燃料を足すことになる。
計算 3.3:もう一つの目安、水分 $0.5$ 以下で見た。境目は $p=(0.80-0.50)/(0.80-0.10)=3/7=\mathbf{0.428571}$ で、$3/7$ と $10^{-12}$ で一致した。
観察 3.4 境目は、どの目安で「燃え続ける」と言うかで動く。発熱量の目安では $0.358286$、水分の目安では $0.428571$ で、差は $\mathbf{0.070285}$ である。境目は物理の定数ではなく、置いた目安の関数である。
4. 紙を資源に回すと
計算 4.1:紙と生ごみが湿り重量で半々の町で、紙の一部を資源に回し、残りを燃やすとした。
| 紙を資源に回す割合 | 残りの中の紙 | 残りの低位発熱量 |
|---|---|---|
| $0$ パーセント | $\mathbf{0.500000}$ | $\mathbf{7.8011}$ MJ/kg |
| $20$ パーセント | $\mathbf{0.444444}$ | $\mathbf{7.0950}$ MJ/kg |
| $40$ パーセント | $\mathbf{0.375000}$ | $\mathbf{6.2124}$ MJ/kg |
| $60$ パーセント | $\mathbf{0.285714}$ | $\mathbf{5.0777}$ MJ/kg |
観察 4.2 紙の $\mathbf{44.1673}$ パーセントを資源に回したところで、残ったごみは燃え続けなくなる。その割合で、残りの発熱量はちょうど目安の $6$ に戻る($10^{-9}$)、資源化が半分に届く前に、焼却炉は燃料を足さなければならなくなる。
観察 4.3 紙の資源化とごみの焼却は、同じ紙を取り合っている。「燃えるごみ」の燃えやすさを決めているのは、その中の紙である。紙を抜くほど、残るのは水の多い生ごみになる。
5. 分離子
観察 5.1 分離子は、水の潜熱が乾いた分の熱を食い尽くすかどうかである。水分が上限 $0.565785$ より小さければ、ごみは熱を出す側にいる。上限を越えれば、ごみは熱を奪う側に回り、燃やすには他のものの熱を借りるしかない。
観察 5.2 論文464 と同じく、水が効くのは潜熱を通してである。あちらでは、撒いた水が奪う熱のうち蒸発の潜熱が温度差の熱の $58.53$ 倍で、水の温度を変えても効果は $3.3882$ パーセントしか変わらなかった。こちらでは、同じ蒸発の潜熱が燃焼の収支を食う側に出る。
観察 5.3 論文455 と同じ量の、別の役である。あちらでは、どこまで乾かすかで乾燥の律速が入れ替わった。同じ含水率が、あちらでは乾く速さを、こちらでは燃えるかどうかを分ける。
観察 5.4 論文300 の基準では同根だが、数は一致しない。水分の目安と発熱量の目安は、どちらも水の潜熱が乾いた分の熱を食うことから出る。それでも境目は $0.070285$ ずれる。同根であることと、数が一致することは別である。
観察 5.5 言わないこと。「紙を資源化するな」とは書かない。助燃に使う燃料と、紙を資源に回す得を比べるのは本稿の外である。示したのは、二つの取り組みが同じ紙を取り合っていて、片方を進めるともう片方の条件が変わるということである。
6. 点呼と結び
- 生ごみ $\mathbf{1.4464}$・紙 $\mathbf{14.1558}$ MJ/kg(計算 2.1):水の潜熱を引いた熱。
- 生ごみの水分の上限 $\mathbf{0.565785}$(計算 2.3):水分 $0.80$ は遠く外れる。
- 燃え続けるには紙が $\mathbf{0.358286}$ 以上(計算 3.1):本稿の芯。
- 紙 $0.30$ で $\mathbf{5.2592}$ MJ/kg(計算 3.1):助燃が要る。
- 水分の目安では $\mathbf{0.428571}$(計算 3.3):$3/7$。
- 二つの目安の差 $\mathbf{0.070285}$(観察 3.4):境目は置いた目安の関数。
- 紙の $\mathbf{44.1673}$ パーセントを資源化すると燃え続けない(観察 4.2):半分に届く前。
- 資源化 $60$ パーセントで $\mathbf{5.0777}$ MJ/kg(計算 4.1):目安を切る。
- 分離子は潜熱が乾いた分の熱を食い尽くすか(観察 5.1):熱を出す側か奪う側か。
- 同根でも数は一致しない(観察 5.4):二つの目安のずれ。
結び:「燃えるごみ」は、燃えるものとして集められ、焼却炉で燃やされる。ところが水の多い生ごみは、単独では燃え続けない。低位発熱量は乾いた分の熱から水の蒸発の潜熱を引いて出て、水分 $0.80$ の生ごみで $\mathbf{1.4464}$ MJ/kg、水分 $0.10$ の紙で $\mathbf{14.1558}$ MJ/kg である。助燃なしで燃え続ける目安 $6$ MJ/kg に対し、生ごみが単独で燃え続けられる水分の上限は $\mathbf{0.565785}$ で、生ごみはそこから大きく外れている。生ごみが燃えているのは、紙が一緒に燃えているからである。紙が湿り重量で $\mathbf{0.358286}$ を下回ると、ごみ全体が燃え続けなくなる。紙と生ごみが半々の町で、紙の $\mathbf{44.1673}$ パーセントを資源に回すと、残りの発熱量はちょうど目安まで落ち、それを越えれば炉に燃料を足すことになる。境目は目安の選び方でも動き、水分の目安では $3/7=\mathbf{0.428571}$、発熱量の目安との差は $\mathbf{0.070285}$ である。分離子は、水の潜熱が乾いた分の熱を食い尽くすかどうかである。上限を越えたごみは熱を出す側から奪う側に回り、燃やすには他のものの熱を借りるしかない。論文300 の基準で二つの目安は同じ潜熱の根から出るが、境目の数は一致しない。既刊との位置、論文464 と同じく、水が効くのは温度ではなく蒸発の潜熱を通してで、こちらではそれが燃焼の収支を食う。論文455 と同じ含水率が、あちらでは乾く速さを、こちらでは燃えるかどうかを分ける。正直に言えば、数は代表値で、灰もプラスチックも入れていない。焼却炉は設計しておらず、助燃の燃料と資源化の得のどちらが大きいかも比べていない。そして「紙を資源化するな」とは書かない。示したのは、二つの取り組みが同じ紙を取り合っているということである。
参考文献
- Niessen, W. R. (2002). Combustion and Incineration Processes (3rd ed.). Marcel Dekker.
- Tchobanoglous, G., Theisen, H., & Vigil, S. A. (1993). Integrated Solid Waste Management: Engineering Principles and Management Issues. McGraw-Hill.
- 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
- 山岸勇輝 (2026). 『どこまで乾かすかで、律速が入れ替わる』[論文455]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22733024
- 山岸勇輝 (2026). 『冷たい水を撒いても、効果は四パーセントしか変わらない』[論文464]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22733251
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「紙を資源に回すと、生ごみは燃えなくなる」[論文575]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.23014311
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). 紙を資源に回すと、生ごみは燃えなくなる [論文575]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/575 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014311
Yamagishi, Y. (2026). Send the Paper to Recycling and the Kitchen Waste Stops Burning [Paper 575]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/575; DOI: 10.5281/zenodo.23014311
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author = {Yamagishi, Yuuki},
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