要旨
$n$ が素数なら、$n$ と互いに素などの $a$ についても $a^{n-1}$ を $n$ で割った余りは $1$ になる(フェルマーの小定理)。そこで、余りが $1$ になるかを見て素数らしさを判定する方法がある(フェルマーの判定)。この判定がどの合成数に、どれだけ騙されるかを数える。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、$561$ は互いに素な底すべてで判定を通る。$561=3\times11\times17$ と互いに素な底は $320$ 個で、その $320$ 個すべてで余りが $1$ になる。$1$ から $560$ の底のうち割合は $\mathbf{0.571429}$ で、見破れるのは $3$・$11$・$17$ のどれかを共有する $240$ 個($\mathbf{0.428571}$)だけである(第2節)。
第二に、こうした数は珍しいが、無くならない。互いに素な底すべてで判定を通る合成数(カーマイケル数)は、$10^3$ までに $1$ 個、$10^4$ までに $7$ 個、$10^5$ までに $16$ 個、$10^6$ までに $43$ 個ある。全部の底で確かめた数と、素因数だけで決める判定(コルセルトの判定)は、$10^5$ まで一つ残らず一致した(第2節)。
第三に、問いを足すと、騙す底が減る。$561$ で、$a^{280}$ がヤコビ記号に一致するかも問う(オイラーの判定)と騙す底は $80$ 個($\mathbf{0.142857}$)、$2$ 乗の列を全部問う(ミラー=ラビンの判定)と $10$ 個($\mathbf{0.017857}$)になる(第3節)。
第四に、これが本稿の芯である。最後の問いが見ているのは、$2$ 乗して $1$ になる数が $\pm1$ の二つしかないかどうかである。素数 $557$ を法とすると $2$ 乗して $1$ になる数は $1$ と $556$ の $2$ 個だが、$561$ を法とすると $8$ 個ある。底 $2$ で $2^{35},2^{70},2^{140},2^{280}$ を $561$ で割ると $263,166,67,1$ で、$1$ の直前の $67$ が $\pm1$ でない $1$ の平方根として $561$ を見破る(第3節)。
第五に、分離子は、何を問うかである。フェルマーは最後の一つ $a^{n-1}$ だけを問い、オイラーはその半分の冪とヤコビ記号を、ミラー=ラビンは $2$ 乗の列の途中を全部問う。騙す底は $320$、$80$、$10$ と減り、ミラー=ラビンでは $10^4$ までのどの奇数の合成数でも、騙す底の割合は上限の $1/4$ を超えなかった(ちょうど $1/4$ になるのは $9$)(第3節)。
キーワード:カーマイケル数、フェルマーの素数判定、ミラー=ラビン判定、擬素数、素数判定。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。カーマイケル数(カーマイケル、$1910$)、素因数による判定(コルセルト、$1899$)、オイラーの判定(ソロヴェイとシュトラッセン、$1977$)、ミラー=ラビンの判定とその上限 $1/4$(ミラー、$1976$/ラビン、$1980$)、カーマイケル数が無限にあること(アルフォード、グランヴィル、ポメランス、$1994$)は、いずれも既知である。定理を証明しない。$10^6$ までの数を数え、$10^5$ までは全部の底で確かめ、$561$ で底を全部数えるだけである。「どの底でも騙される」とは言わない。騙すのは互いに素な底だけで、素因数を共有する底は見破る。暗号での使い方や計算の速さは扱わない。既刊との関係:論文513 は、平方剰余の相互法則を格子点で数えて示し、余りを問うなら $a^{(p-1)/2}$ を $p$ で割った余りで答が出る(オイラーの規準)と書いた。本稿のオイラーの判定は、その規準を合成数に当てて、騙されるかを数えたものである。加えたのは、$561$ で三つの判定の騙す底を全部数えて並べたこと、全部の底で確かめる道筋と素因数で決める道筋を $10^5$ まで突き合わせたこと、分離子を「何を問うか」に置き、最後の問いが $1$ の平方根の個数を見ていることを数で示したことである。
1. 記法と問い
設定:奇数 $n$ と底 $a$($1\le a\le n-1$)について、次の三つを問う。
フェルマーの判定:$a^{n-1}$ を $n$ で割った余りが $1$ か。
オイラーの判定:$a$ が $n$ と互いに素で、$a^{(n-1)/2}$ を $n$ で割った余りがヤコビ記号 $(a/n)$ に等しいか。
ミラー=ラビンの判定:$n-1=2^s d$($d$ は奇数)と書き、$a^{d}$ が $1$ か、$a^{d},a^{2d},\dots,a^{2^{s-1}d}$ のどれかが $n-1$ に等しいか。
$n$ が素数なら、どの判定もすべての底で「素数らしい」と答える。合成数 $n$ で「素数らしい」と答えさせる底を、その判定を騙す底と呼ぶ。
問い:フェルマーの判定を、互いに素な底すべてで騙す合成数はあるか。問いを足すと、騙す底はどれだけ減るか。何が効いているか。
2. フェルマーの判定を通る合成数
計算 2.1:$10^6$ までの合成数を、素因数だけで決める判定(平方因子を持たず、どの素因数 $p$ についても $p-1$ が $n-1$ を割る)で調べた。
| 範囲 | 互いに素な底すべてで判定を通る合成数 |
|---|---|
| $10^3$ まで | $1$ 個 |
| $10^4$ まで | $7$ 個 |
| $10^5$ まで | $16$ 個 |
| $10^6$ まで | $43$ 個 |
最初の $16$ 個は $561,1105,1729,2465,2821,6601,8911,10585,15841,29341,41041,46657,52633,62745,63973,75361$ である。$561=3\times11\times17$、$1729=7\times13\times19$ で、どちらも異なる三つの素数の積である。
計算 2.2:素因数の判定とは独立に、$10^5$ までの合成数すべてで、互いに素な底をすべて試した。判定を通る合成数は $16$ 個で、素因数の判定の $16$ 個と一つ残らず一致した。比べると、底 $2$ だけを騙す奇数の合成数は $10^5$ までに $78$ 個あり、その中に $16$ 個とも入っている。
計算 2.3:$561$ で、底 $a=1,\dots,560$ をすべて数えた。$561$ と互いに素な底は $320$ 個($320$ は $2\times10\times16$)で、その $320$ 個すべてで $a^{560}$ の余りが $1$ だった。割合は $\mathbf{0.571429}$ である。余りが $1$ にならなかった $240$ 個($\mathbf{0.428571}$)は、$3$・$11$・$17$ のどれかを約数に持つ底とちょうど一致した。
観察 2.4 $561$ を見破れるのは、素因数を当てたときだけである。$560$ は $2$・$10$・$16$ のどれでも割り切れるので、互いに素な $a$ なら $a^{560}$ は $3$・$11$・$17$ のどれで割っても余り $1$ になり、したがって $561$ で割っても余り $1$ になる。フェルマーの判定でこの数を見破るには、素因数を持つ底を引き当てるしかない。それは素因数分解を当てることに近い。
3. 問いを足す
計算 3.1:$561$ で、三つの判定を騙す底を全部数えた($n-1=560=2^4\times35$)。
| 判定 | 騙す底 | $560$ 個の底に対する割合 |
|---|---|---|
| フェルマー | $320$ | $\mathbf{0.571429}$ |
| オイラー | $80$ | $\mathbf{0.142857}$ |
| ミラー=ラビン | $10$ | $\mathbf{0.017857}$ |
ミラー=ラビンを騙す $10$ 個は $1,50,101,103,256,305,458,460,511,560$ である。
計算 3.2:$2$ 乗して $1$ になる数を数えた。素数 $557$ を法とすると $1$ と $556$ の $2$ 個だけだった。$561$ を法とすると $1,67,188,254,307,373,494,560$ の $8$ 個だった。底 $2$ で $2^{35},2^{70},2^{140},2^{280},2^{560}$ を $561$ で割った余りは $263,166,67,1,1$ だった。
観察 3.3 これが本稿の芯である。最後の問いが見ているのは、$1$ の平方根が $\pm1$ の二つしかないかどうかである。素数を法とすれば、$x^2$ の余りが $1$ になる $x$ は $1$ と $n-1$ だけである。$2$ 乗の列が $1$ に着くなら、その直前は $1$ か $n-1$ でなければならない。$561$ では、底 $2$ の列が $67$ から $1$ に着いた。$67$ は $\pm1$ でない $1$ の平方根で、これが合成数の証拠になる。$561$ を法とする $1$ の平方根は、三つの素因数それぞれで $\pm1$ を選ぶ $2^3=8$ 通りある。
観察 3.4 分離子は、何を問うかである。フェルマーは列の最後 $a^{n-1}$ だけを問い、オイラーはその半分の冪 $a^{(n-1)/2}$ とヤコビ記号の一致を問い、ミラー=ラビンは列の途中を全部問う。騙す底は $320$、$80$、$10$ と減った。問いを足すたびに、合成数が隠しておける場所が減る。
計算 3.5:$10^4$ までの奇数の合成数すべてで、ミラー=ラビンを騙す底の割合を数えた。最大は $n=9$ の $0.250000$(底 $1$ と $8$ の $2$ 個)で、ラビンの上限 $1/4$ をどの数も超えなかった。$561$ の $\mathbf{0.017857}$ は、上限の $0.071429$ 倍である。
観察 3.6 ミラー=ラビンには、全部の底で騙す合成数が無い。フェルマーの判定には $10^6$ までに $43$ 個あったが、ミラー=ラビンでは騙す底が多くとも四分の一である。だから底を変えて何度か試せば、見逃す確率を $1/4$ ずつ掛けて小さくできる。フェルマーの判定では、カーマイケル数に対して試す回数を増やしても、互いに素な底を引くかぎり見逃し続ける。
観察 3.7 論文513 と並べる。513 は、余りを問うなら $a^{(p-1)/2}$ を $p$ で割った余りで答が出る(オイラーの規準)と書いた。その規準は素数 $p$ についての事実であり、合成数に当てると $561$ では $80$ 個の底が規準どおりの答を返してしまう。規準が素数を特徴づけるのは、素数の側から見たときだけである。
観察 3.8 言わないこと。カーマイケル数が無限にあることも、ラビンの上限も証明しない。暗号での使い方や計算の速さは扱わない。示したのは、$10^6$ までの数え上げ、$10^5$ までの二つの道筋の一致、そして $561$ での三つの判定の比較である。
4. 点呼と結び
- $561$ と互いに素な底 $320$ 個すべてで判定を通る(計算 2.3):割合 $\mathbf{0.571429}$。
- 見破る底 $240$ 個は素因数を共有する底(計算 2.3):割合 $\mathbf{0.428571}$。
- カーマイケル数は $10^6$ までに $43$ 個(計算 2.1):珍しいが無くならない。
- 全部の底と素因数の判定が $10^5$ まで一致(計算 2.2):二つの道筋。
- 騙す底は $320$、$80$、$10$(計算 3.1):問いを足すと減る。
- $561$ を法とする $1$ の平方根は $8$ 個、$557$ では $2$ 個(計算 3.2):素因数の数だけ増える。
- 底 $2$ の列は $263,166,67,1$(計算 3.2):$67$ が見破る。
- 最後の問いは $1$ の平方根が $\pm1$ だけかを見る(観察 3.3):本稿の芯。
- 分離子は何を問うか(観察 3.4):列の最後か、途中も全部か。
- ミラー=ラビンを騙す割合は $1/4$ 以下、$9$ でちょうど $1/4$(計算 3.5):全部の底で騙す数は無い。
結び:$a^{n-1}$ を $n$ で割った余りが $1$ かを見る判定は、素数を必ず通すが、合成数も通してしまうことがある。$561=3\times11\times17$ は、互いに素な底 $320$ 個のすべてで判定を通る。見破れるのは素因数を共有する $240$ 個の底だけで、こうした数は $10^6$ までに $43$ 個ある。全部の底で確かめた数と素因数だけで決める判定は、$10^5$ まで一つ残らず一致した。問いを足すと、騙す底は $320$ 個から $80$ 個、$10$ 個へと減る。最後の問い(ミラー=ラビン)が見ているのは、$2$ 乗して $1$ になる数が $\pm1$ の二つしかないかどうかである。素数 $557$ ではその数は $2$ 個、$561$ では $8$ 個あり、底 $2$ の列 $263,166,67,1$ の $67$ が $561$ を見破る。分離子は、何を問うかである。列の最後だけを問う判定には全部の底で騙す合成数があり、途中を全部問う判定では、騙す底は $10^4$ までのどの数でも四分の一を超えなかった。既刊との位置、論文513 が素数の側から書いたオイラーの規準を、合成数の側から当てると、$561$ では $80$ 個の底が規準どおりに答える。正直に言えば、数えたのは $10^6$ までで、無限にあることも上限も証明していない。
参考文献
- Alford, W. R., Granville, A., & Pomerance, C. (1994). There are infinitely many Carmichael numbers. Annals of Mathematics.
- Carmichael, R. D. (1910). Note on a new number theory function. Bulletin of the American Mathematical Society.
- Korselt, A. (1899). Problème chinois. L’Intermédiaire des Mathématiciens.
- Miller, G. L. (1976). Riemann’s hypothesis and tests for primality. Journal of Computer and System Sciences.
- Rabin, M. O. (1980). Probabilistic algorithm for testing primality. Journal of Number Theory.
- Solovay, R., & Strassen, V. (1977). A fast Monte-Carlo test for primality. SIAM Journal on Computing.
- 山岸勇輝 (2026). 『数えるという操作が、代数の定理を証明してしまう』[論文513]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22862214
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「561 は、互いに素などの底で試しても、フェルマーの判定を通る」[論文603]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.23014433
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). 561 は、互いに素などの底で試しても、フェルマーの判定を通る [論文603]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/603 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014433
Yamagishi, Y. (2026). 561 Passes Fermat's Test for Every Base Coprime to It [Paper 603]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/603; DOI: 10.5281/zenodo.23014433
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