【論文134】光の曲がりの $4$ は、$4\pi$ ではなく $2(1+\gamma)$ である

要旨

点質量による光の偏向角は $\alpha=4GM/(c^2b)$ である。本稿はこの $4$ の内訳を書く。新しい数学定理も新しい物理法則も主張しない。

第一に、$4$ は $4\pi$ ではない。$2\times2$ である。第一の $2$ は積分の値である。本稿では横向きの力を直線に沿って積分し、$\int_{-\infty}^{\infty}GMb/(b^2+z^2)^{3/2}dz=2GM/b$ を記号計算で得た。円周率はどこにも現れない(第2節)。

第二に、これが本稿の芯の一つ。第二の $2$ は測られている量である。パラメータ化ポスト・ニュートン形式では $\alpha=(1+\gamma)\,2GM/(c^2b)$ であり、一般相対論は $\gamma=1$ を予言する。だが $\gamma$ は理論によって動く。ブランス=ディッケでは $\gamma=(1+\omega)/(2+\omega)$ であり、本稿の表では $\omega=1$ で「$4$」が $3.333$、$\omega=100$ で $3.980$ になる。$4$ は数学的必然ではない。前半は等価原理から、後半は計量についての経験的言明である(第3節)。

第三に、シュヴァルツシルト計量の厳密な偏向積分がそれを裏づける。本稿では端点特異性を変数変換で外して求積し、$b/m=10^4$ で比 $1.00029464$、既知の二次項 $1+15\pi m/(16b)=1.00029452$ と7桁一致を得た(第2節)。

第四に、これが本稿の芯のもう一つ。二倍は重力の性質ではなく $v=c$ の性質である。速さ $v$ の粒子の偏向はニュートン値の $1+v^2/c^2$ 倍である。本稿の表では $v/c=1$ で $2.000$、$0.5$ で $1.250$、$0.1$ で $1.010$、$0.01$ で $1.0001$。「光は二倍落ちる」という絵は正しくない。$2$ になるのは光子が $v=c$ だからである(第4節)。

第五に、では $4\pi$ はどこにあるか。臨界面密度である。$\Sigma_{\rm cr}=c^2D_s/(4\pi G D_lD_{ls})$、この $4\pi$ はポアソン方程式から来ており(論文35 の事実の側)、曲がり角ではなく質量を復元する段に住んでいる。論文130 と同じ形である(第5節)。

第六に、アインシュタイン環の中身は「平均収束度がちょうど $1$」である。本稿で記号計算により確認した。$\theta_E$ の指数 $1/2$ は二次方程式を解いた跡であって、球面の幾何ではない(第6節)。

射程(何を示さないか)

本稿の射程:新しい数学定理も新しい物理法則も主張しない。アインシュタイン(1915・1936)、ツビッキー(1937)、PPN形式(ウィル)、ブランス=ディッケ(1961)、カッシーニによる $\gamma$ の測定(ベルトッティら 2003)はいずれも標準的である。本稿が加えるのは、$4$ を $2\times2$ に割り、後半が測定量であることを明示したこと、二倍が $v=c$ の性質であることを表で示したこと、$4\pi$ の住所を臨界面密度に置いたこと、環の中身が平均収束度 $1$ であることを書いたことだけである。$4$ に立体角を読み込まない(論文45・101)。

1. 記法と位置づけ

質量 $M$、衝突径数 $b$、$m\equiv GM/c^2$ と書く。弱い場での光の偏向角は
$$ \alpha=\frac{4GM}{c^2b}=\frac{4m}{b} \tag{1} $$
である。

位置づけ:既存の結果を並べ、その内訳を書く。新しい定理は主張しない。論文17 は別根と言うのは半分であり、住所を書いて初めて検査可能になると述べた。本稿は (1) の $4$ について、それを行う。

そして体系にとっての要点はこれである。体系は $4\pi$ を土台に持つ(論文01・02)。ゆえに $4$ を見たときに $4\pi$ の親戚だと読みたくなる。本稿はその誘惑を止める。

2. 第一の $2$ は、積分の値である

検算 2.1(ニュートン的な力積積分):直線軌道に沿って横向きの重力を積分すると、本稿の記号計算では
$$ \int_{-\infty}^{\infty}\frac{GMb}{(b^2+z^2)^{3/2}}\,dz=\frac{2GM}{b} $$
となり、これを $c^2$ で割って $\alpha_{\rm N}=2GM/(c^2b)$ を得る。(証明終)

観察 2.2 (円周率は現れない) この $2$ は積分の値であって、立体角でも周期でもない。$\pi$ はどこにも出てこない。

検算 2.3(厳密な偏向積分):シュヴァルツシルト計量における厳密な偏向は
$$ \alpha=2\int_0^{u_{\max}}\frac{du}{\sqrt{b^{-2}-u^2+2mu^3}}-\pi $$
である($u=1/r$)。本稿では端点の逆平方根特異性を $u=u_{\max}-t^2$ の変数変換で外し、単純根を割り出してから求積した。結果は次のとおりである。

$b/m$ $\alpha$(厳密) $4m/b$ 比
500 0.0080474680 0.0080000000 1.00593350
1000 0.0040118238 0.0040000000 1.00295595
10000 0.0004001179 0.0004000000 1.00029464

$b/m=10^4$ での超過 $1.00029464$ は、既知の二次項 $1+15\pi m/(16b)=1.00029452$ と7桁一致する。弱い場での一般相対論の値は、ニュートン値のちょうど二倍である。(証明終)

3. 第二の $2$ は、測られている

確立された事実 3.1(PPN形式):計量理論一般において、光の偏向は
$$ \alpha=(1+\gamma)\,\frac{2GM}{c^2b} \tag{4} $$
と書ける。$\gamma$ は単位質量あたりどれだけ空間曲率が生じるかを表すパラメータであり、一般相対論は $\gamma=1$ を予言する。

観察 3.2 (内訳) (4) は $4$ を二つに割る。

どちらの半分か 何から来るか 身分
$2\times1$ 時間の歪み(等価原理で足りる) ほぼ強制
$2\times\gamma$ 空間曲率 測られる量

検算 3.3($\gamma$ は理論によって動く):ブランス=ディッケ理論では $\gamma=(1+\omega)/(2+\omega)$ である。本稿の計算では

$\omega$ $\gamma$ 「$4$」の値
1 0.66666667 3.33333333
10 0.91666667 3.83333333
100 0.99019608 3.98039216
40000 0.99997500 3.99995000

「$4$」は動く。(証明終)

観察 3.4 (ゆえに $4$ は測定値である) カッシーニ探査機による電波遅延の測定は $\gamma-1$ を $10^{-5}$ の水準で $0$ と一致させている(ベルトッティら 2003)。すなわち「$4$」は、桁で言えば五桁まで測られた量である。数学的必然ではない。

これは論文95 の仕分けの実例である。等価原理から来る半分は理論の内側、空間曲率から来る半分は測定が支える。同じ式の中で、二つの半分の身分が違う。

4. 二倍は、$v=c$ の性質である

確立された事実 4.1:速さ $v$ の粒子の弱い場での偏向は、標準的に
$$ \alpha(v)=\frac{2GM}{bv^2}\left(1+\frac{v^2}{c^2}\right) $$
と書ける。ニュートン値との比は $1+v^2/c^2$ である。

検算 4.2

$v/c$ ニュートン値との比
1 2.00000000 これが「二倍」
0.5 1.25000000
0.1 1.01000000
0.01 1.00010000
$10^{-4}$ 1.00000001

(証明終)

観察 4.3 (絵の訂正) 「光は二倍落ちる」という言い方は正しくない。因子は $1+v^2/c^2$ であり、$2$ になるのは光子が $v=c$ だからである。遅い粒子は後半をほとんど感じない。

観察 4.4 (なぜそうなるか) ニュートン的な半分は時間成分が担い、もう半分は空間成分が担う。遅い粒子は世界線がほぼ時間方向を向いているから、空間成分をほとんど掃かない。光は時間方向と空間方向を等しく掃く。$2$ は、そのことの帰結である。

そして体系の他の $2$ との分離が書ける(論文132 の表の続き)。

どの $2$ か 何で決まるか 動かすと
偏向の $2$ $v/c$ と $\gamma$ 速さと理論で動く
伊藤の $2$(論文132) 道のハースト指数 $H$ で動く
論文01 の $n=2$ 空間次元 $d$ で動く
ホップ写像の $2$ ファイブレーション 動かない

5. では $4\pi$ はどこにあるのか

観察 5.1 (偏向角には無い) (1) にも (4) にも $\pi$ は現れない。$4$ は $2\times2$ であって $4\pi$ の親戚ではない。

観察 5.2 (臨界面密度にある) レンズ方程式を書くときに現れる臨界面密度は
$$ \Sigma_{\rm cr}=\frac{c^2D_s}{4\pi G\,D_lD_{ls}} $$
である。この $4\pi$ はポアソン方程式から来ている。論文35 が事実の側に置いたものと同じである。

観察 5.3 (住所は復元の段である) $4\pi$ が現れるのは、観測された歪みから質量分布を復元する段である。曲がり角そのものにはない。論文130 と同じ形である。そこでは $4\pi$ がヘルムホルツの定理ではなくビオ=サヴァール、すなわち逆問題に住んでいた。レンズでも同じである(論文89・99)。

$4\pi$ を指差すなら、曲がり角ではなく、質量を読み戻す式を見るべきである。

6. 環の中身は、平均収束度が $1$ であることである

検算 6.1:アインシュタイン半径は $\theta_E^2=4GM D_{ls}/(c^2D_lD_s)$ で与えられる。この半径の内側での平均収束度(平均面密度を臨界面密度で割ったもの)を本稿で記号計算すると、ちょうど $1$ である。(証明終)

観察 6.2 (これが幾何的な中身である) アインシュタイン環とは、投影された平均密度が臨界密度に一致する半径のことである。その一文が、環の存在条件そのものである。

観察 6.3 (指数 $1/2$ の出所) $\theta_E$ に現れる平方根は、レンズ方程式が二次式であることの帰結である。球面の幾何から来たものではない。論文28 は指数は次元ではないと述べた。ここでも指数は、解いた方程式の次数を告げている。

7. 結論

  1. $4$ は $4\pi$ ではなく $2\times2$ である(検算2.1)。第一の $2$ は積分の値であり、$\pi$ は現れない。
  2. 厳密な偏向積分がそれを裏づける(検算2.3)。$b/m=10^4$ で比 $1.00029464$、既知の二次項 $1+15\pi m/(16b)=1.00029452$ と7桁一致。
  3. 第二の $2$ は測られている(検算3.3)。$\alpha=(1+\gamma)2GM/(c^2b)$ で、ブランス=ディッケでは「$4$」が $\omega=1$ のとき $3.333$ になる。カッシーニは $\gamma-1$ を $10^{-5}$ で $0$ と一致させている。$4$ は数学的必然ではなく測定値である。
  4. 二倍は $v=c$ の性質である(検算4.2)。比は $1+v^2/c^2$ で、$v/c=0.1$ なら $1.010$ にすぎない。「光は二倍落ちる」は正しくない。
  5. $4\pi$ は臨界面密度にある(観察5.2)。ポアソン方程式から来ており、質量を復元する段に住んでいる(論文35・130)。
  6. 環の中身は平均収束度 $1$ である(検算6.1)。$\theta_E$ の指数 $1/2$ は二次方程式を解いた跡である(論文28)。

結び:$4$ を見て $4\pi$ を思い出してはならない。この $4$ は積分の $2$ と、測られた $1+\gamma$ の $2$ でできている。そして後者は、光が $v=c$ で走るからこそ丸ごと効いている。数の内訳を書くまでは、その数が何を語っているか分からない。

参考文献

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  12. 山岸勇輝 (2026). 別根と言うのは半分である。住所を書け [論文17] 第3版. Zenodo. 10.5281/zenodo.21600813
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  23. 山岸勇輝 (2026). 伊藤の $2$ は、次元ではない [論文132]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22080358
  24. 山岸勇輝 (2026). フィッシャー計量が一意なのは、古典の側だけである [論文133]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22080550

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「光の曲がりの 4 は、4π ではなく 2(1+γ) である」[論文134]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22080727

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 光の曲がりの 4 は、4π ではなく 2(1+γ) である [論文134]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/134 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22080727

Yamagishi, Y. (2026). The 4 in the Light-Bending Angle Is Not 4π but 2(1+γ) [Paper 134]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/134; DOI: 10.5281/zenodo.22080727

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