要旨
血圧は「高さを心臓に合わせて測る」と言われる。本稿は、高さが何を動かし、何を動かさないかを数える。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、血液の柱は $1$ cm ごとに圧を足す。密度 $1060$ kg/m$^{3}$ で $1$ cm あたり $\mathbf{0.779695}$ mmHg である(第2節)。
第二に、測る高さのずれがそのまま値に乗る。腕を $10$ cm 下げれば $7.7969$、$30$ cm 下げれば $23.3908$ mmHg 高く出る(第2節)。
第三に、立った体の中では上下で大きく違う。足($130$ cm 下)で $+101.3603$、頭($40$ cm 上)で $-31.1878$、その差は $\mathbf{132.5481}$ mmHg である(第2節)。
第四に、壁にかかる圧は足で二倍を超える。動脈 $100$ と置いた圧が足では $201.3603$ になり、$\mathbf{2.013603}$ 倍である(第3節)。
第五に、これが本稿の芯である。流れを押す差は動かない。動脈と静脈に同じ柱が乗るので、差は心臓の高さでも足でも $95.0000$ mmHg のままである(第3節)。
第六に、分離子は、壁にかかる圧を問うか、流れを押す差を問うかである。「血圧」という一語が、高さで動く量と動かない量の両方に使われうる(第4節)。
キーワード:血圧、静水圧、液柱、経壁圧、駆動圧、模型。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。液柱の圧が密度・重力加速度・高さの積であること、血圧の測定で腕を心臓の高さに置くこと、立位で足の血管にかかる圧が高くなること、動脈と静脈に同じ液柱が乗れば両者の差は変わらないことは、いずれも既知である。医学の助言をしない。測り方の指導や、どの値が正常かは述べない。実在の人の値を主張しない。動脈 $100$・静脈 $5$ mmHg、足まで $130$ cm、頭まで $40$ cm は模型の値である。血管を静止した柱として見る。弾性、脈動、静脈の弁、流れの抵抗は入れない。体の反応を扱わない。立ち上がったときの反射や、圧受容器の働きには入らない。既刊との関係:論文454 は、水圧が深さの二乗で増えるのに堤体の幅は比例でよいことを示し、静水圧を既知として置いた。本稿はその席には座らず、隣に置く。あちらはダムの壁、こちらは血管の壁である。論文794 は、木が水を押し上げるのではなく引き上げており、上限が水の重さと流れの抵抗の和で決まることを示した。あちらは重さと抵抗を足した。こちらは重さが壁にだけ効き、流れを押す差には効かないことを数える。加えたのは、$1$ cm あたりの圧を出して高さのずれの効きを並べたこと、足で壁の圧が $2.013603$ 倍になると測ったこと、流れを押す差が高さで動かないことを差 $1.421\times10^{-14}$ で確かめたこと、分離子を「壁の圧か、流れを押す差か」に置いたことである。
1. 記法と問い
設定:血液の密度を $\rho$、重力加速度を $g$、心臓からの高さの差を $\Delta z$(下を正)とする。高さ $\Delta z$ の点の圧は、心臓の高さの圧に液柱の分を足したものである。
$$p(\Delta z)=p_{0}+\rho g\,\Delta z,\qquad
\bigl(p_{\mathrm{a}}+\rho g\Delta z\bigr)-\bigl(p_{\mathrm{v}}+\rho g\Delta z\bigr)=p_{\mathrm{a}}-p_{\mathrm{v}}$$
動脈の圧を $p_{\mathrm{a}}$、静脈の圧を $p_{\mathrm{v}}$ と書く。本稿は $\rho=1060$ kg/m$^{3}$、$g=9.80665$ m/s$^{2}$ で数える。
問い:高さを変えると、どの圧が動き、どの圧が動かないのか。
2. 高さのずれが値に乗る
計算 2.1:血液の柱が足す圧を出した。
| 場所 | 足される圧 |
|---|---|
| 柱 $1$ cm あたり | $0.779695$ mmHg |
| 腕を $10$ cm 下げる | $+7.7969$ mmHg |
| 腕を $30$ cm 下げる | $+23.3908$ mmHg |
| 頭($40$ cm 上) | $-31.1878$ mmHg |
| 足($130$ cm 下・立位) | $+101.3603$ mmHg |
| 頭と足の差 | $132.5481$ mmHg |
観察 2.2 高さのずれは、そのまま値に乗る。腕を $30$ cm 下げるだけで $23.3908$ mmHg 高く出る。腕を心臓の高さに置くのは作法ではなく、どの高さの値かを決める約束である。
観察 2.3 $1$ cm あたりは $1$ mmHg に届かない。血液は水銀より軽いので、同じ高さの柱が足す圧は小さい。単位の mmHg は水銀の柱の高さであって、血液の柱の高さではない。
3. 壁の圧は動き、差は動かない
計算 3.1:心臓の高さで動脈 $100$・静脈 $5$ mmHg と置き、立ったときの足($130$ cm 下)での値を出した。
| 量 | 心臓の高さ | 足 |
|---|---|---|
| 動脈の圧 | $100.0000$ | $201.3603$ |
| 静脈の圧 | $5.0000$ | $106.3603$ |
| 流れを押す差 | $95.0000$ | $95.0000$ |
観察 3.2 壁にかかる圧は足で二倍を超える。動脈の圧は $2.013603$ 倍になる。血管の壁は、その高さの柱の重さをそのまま受ける。
観察 3.3 これが本稿の芯である。流れを押す差は動かない。差は心臓の高さでも足でも $95.0000$ で、二つの差は $1.421\times10^{-14}$ にすぎない。動脈にも静脈にも同じ高さの柱が乗り、引き算で消えるからである。
観察 3.4 だから足で圧が高いことは、足で血がよく流れることを意味しない。流れを決める差は、高さに関係なく同じである。高さが効くのは、血管を押し広げる向きだけである。
4. 分離子
観察 4.1 分離子は、壁にかかる圧を問うか、流れを押す差を問うかである。前者は高さで $2.013603$ 倍に動き、後者は $95.0000$ のまま動かない。同じ「血圧」という語が、動く量と動かない量の両方を指しうる。
観察 4.2 論文454・794 の隣に置く。454 は水圧が深さとともに増えるのを堤体がどう受けるかを示した。あちらはダムの壁、こちらは血管の壁で、どちらも壁の側の話である。794 は木が水を引き上げる上限が水の重さと流れの抵抗の和で決まることを示した。あちらは重さと抵抗を足した。こちらは、重さは壁にだけ効き、流れを押す差からは消える。同じ液柱の重さが、どこに効くかで分かれる。
観察 4.3 言わないこと。測り方の指導も、正常な値も、血管の弾性や弁や反射も扱わない。示したのは、高さが壁の圧を動かし、流れを押す差を動かさないということである。
5. 点呼と結び
- $1$ cm あたり $\mathbf{0.779695}$ mmHg(計算 2.1):水銀より軽い。
- 腕を $30$ cm 下げて $+23.3908$(計算 2.1):高さのずれが乗る。
- 足で $+101.3603$(計算 2.1):立位。
- 頭と足の差 $\mathbf{132.5481}$(計算 2.1):体の上下。
- 足の動脈 $201.3603$(計算 3.1):壁の圧。
- $\mathbf{2.013603}$ 倍(観察 3.2):二倍を超える。
- 流れを押す差は $95.0000$ のまま(計算 3.1):本稿の芯。
- 差の違いは $1.421\times10^{-14}$(観察 3.3):引き算で消える。
- 圧が高くても流れは増えない(観察 3.4):効くのは押し広げる向き。
- 壁の圧か、流れを押す差か(観察 4.1):分離子・論文454・794。
結び:高さは血管の壁にかかる圧を動かすが、流れを押す差は動かさない。血液の柱は $1$ cm あたり $0.779695$ mmHg を足すので、腕を $30$ cm 下げるだけで $23.3908$ mmHg 高く出て、立った体では足と頭で $132.5481$ mmHg 違う。腕を心臓の高さに置くのは、どの高さの値かを決める約束だからである。心臓の高さで動脈 $100$・静脈 $5$ と置くと、足では動脈が $201.3603$ と $2.013603$ 倍になるのに、流れを押す差は $95.0000$ のままで、違いは $1.421\times10^{-14}$ しかない。動脈にも静脈にも同じ高さの柱が乗り、引き算で消えるからである。だから足で圧が高いことは、足で血がよく流れることを意味せず、高さが効くのは血管を押し広げる向きだけである。既刊との位置:論文454 のダムの壁の隣に血管の壁を置き、論文794 が重さと抵抗を足した隣に、重さが流れを押す差から消える側を置いた。正直に言えば、血管を静止した柱として見ており、動脈 $100$・静脈 $5$ も模型の値である。
参考文献
- Hall, J. E., & Hall, M. E. (2020). Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology. Elsevier.
- 山岸勇輝 (2026). 『水圧は二乗で増えるのに、堤体の幅は比例でよい』[論文454]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/454 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22732989
- 山岸勇輝 (2026). 『木は水を押し上げるのではなく引き上げており、上限は水の重さと流れの抵抗の和で決まる』[論文794]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/794 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23015380
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「高さは血管の壁にかかる圧を動かすが、流れを押す差は動かさない」[論文849]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/849
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/849・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 高さは血管の壁にかかる圧を動かすが、流れを押す差は動かさない [論文849]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/849
Yamagishi, Y. (2026). Height Moves the Pressure on a Vessel’s Wall but Not the Difference That Drives the Flow [Paper 849]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/849
@misc{yamagishi2026yoi849,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {Height Moves the Pressure on a Vessel's Wall but Not the Difference That Drives the Flow},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/849},
note = {Preprint, edition 1}
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指紋(SHA-256)と確かめ方
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