要旨
訪問者がたくさんの花を回れば、それだけよく受粉すると思いやすい。本稿は、同じ株で続けて回るとき、ほかの株の花粉の総量と割合が逆を向くことを数える。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、ほかの株の花粉の総量は増える。一つの花で体の花粉の $0.3$ を置くと、続けて $k$ 個回ったときの総量は $1-(1-0.3)^k$ で、$10$ 個で $0.971752$、$1$ 個のときの $3.239175$ 倍である(第2節)。
第二に、これが本稿の芯である。それでも、ほかの株の花粉の割合は下がる。置いた花粉のうちほかの株のものは、$1$ 個で $1.000000$、$2$ 個で $0.629630$、$5$ 個で $\mathbf{0.271977}$、$10$ 個で $\mathbf{0.125670}$ である(第2節)。
第三に、同じ株の花粉はそれより速く増える。ほかの株の花粉は持ってきた $1$ を超えないが、同じ株の花粉は花ごとに拾い足され、$10$ 個で $\mathbf{6.760825}$ になる(第2節)。
第四に、後の花ほど、ほかの株の花粉は届かない。花ごとに届くほかの株の花粉は $0.3\times0.7^{j-1}$ で、十個目の花では $0.012106$、この花が受け取る花粉のうちの割合は $\mathbf{0.012458}$ である(第3節)。
第五に、花ごとの量と総量は別々に出して合う。花ごとのほかの株の花粉は十個とも式と差 $10^{-12}$ 未満で一致し、花ごとの量を足すと総量に差 $10^{-12}$ 未満で戻った(第3節)。
第六に、分離子は、置いた花粉の総量を問うか、その中の割合を問うかである。総量は回るほど増え、割合は回るほど下がる。同じ訪問が、どちらを問うかで逆を向く(第4節)。
キーワード:受粉、花粉、隣花受粉、ほかの株の花粉、割合、模型。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。同じ株のほかの花から花粉が運ばれること(隣花受粉)、訪問者の体の花粉が花ごとに少しずつ置かれて減っていくことは、いずれも受粉の研究で知られている。実在の値を主張しない。置く割合 $0.3$ と拾う量 $1$ は模型の値で、どの植物にもどの訪問者にも対応しない。仕組みを入れない。花粉の寿命、柱頭が受け入れる量の上限、自分の株の花粉を受け付けない性質、訪問者が体を掃除することは入れない。結実を論じない。届いた花粉が種になるか、実がいくつなるかは扱わない。既刊との関係:受粉を主題にした既刊は無い。論文864 は、上の段ほど物質の量は減るのに濃さは上がることを示した。本稿はその隣に置く。あちらは段ごとに一定の割合が掛かって分母の生き物の量が縮み、濃さが上がった。ここでは花ごとに $0.7$ が掛かってほかの株の花粉が減り、同時に同じ株の花粉が足されて割合が下がる。加えたのは、続けて回る花の数ごとに総量と割合を並べたこと、総量が $3.239175$ 倍に増えるあいだに割合が $0.125670$ まで下がると測ったこと、花ごとに受け取る量を十個目まで追ったこと、分離子を「置いた総量か、その中の割合か」に置いたことである。
1. 記法と問い
設定:訪問者は、ほかの株の花粉 $1$ を体に付けて株に来る。一つの花で、体にある花粉のそれぞれ割合 $d$ を置き、そのあとでその株の花粉 $p$ を拾って次の花へ行く。$j$ 個目の花が受け取るほかの株の花粉を $a_j$、同じ株の花粉を $b_j$ とすると、次のようになる。
$$a_j=d(1-d)^{j-1},\qquad
\sum_{j=1}^{k}a_j=1-(1-d)^{k},\qquad
\text{ほかの株の割合}=\frac{\sum_{j} a_j}{\sum_{j} a_j+\sum_{j} b_j}$$
$d=0.3$、$p=1$ とした。$b_j$ は式にせず、体に残った同じ株の花粉を花ごとに一つずつ数えた。
問い:同じ株で続けて回るほど、ほかの株の花粉はよく届くのか。
2. 続けて回る花の数
計算 2.1:同じ株で続けて回る花の数 $k$ を変えて、置いた花粉を数えた。
| $k$ | ほかの株の花粉 | 同じ株の花粉 | ほかの株の割合 |
|---|---|---|---|
| $1$ | $0.300000$ | $0.000000$ | $1.000000$ |
| $2$ | $0.510000$ | $0.300000$ | $0.629630$ |
| $3$ | $0.657000$ | $0.810000$ | $0.447853$ |
| $5$ | $0.831930$ | $2.226900$ | $0.271977$ |
| $10$ | $0.971752$ | $6.760825$ | $0.125670$ |
観察 2.2 これが本稿の芯である。続けて回るほど、ほかの株の花粉の割合は下がる。割合は $1$ 個で $1.000000$、$5$ 個で $0.271977$、$10$ 個で $0.125670$ である。二つ目の花から、訪問者は同じ株の花粉を運び始めるからである。
観察 2.3 総量は増えるが、上限がある。ほかの株の花粉の総量は $10$ 個で $0.971752$、$1$ 個の $3.239175$ 倍になり、式 $1-(1-d)^k$ と差 $10^{-12}$ 未満で一致した。持ってきた $1$ を超えることはない。同じ株の花粉は拾い足されるので上限が無く、$10$ 個で $6.760825$ になる。
3. 花ごとに受け取る量
計算 3.1:十個続けて回るとき、何個目の花が何を受け取るかを並べた。
| 何個目 | ほかの株の花粉 | 同じ株の花粉 | この花でのほかの株の割合 |
|---|---|---|---|
| $1$ | $0.300000$ | $0.000000$ | $1.000000$ |
| $2$ | $0.210000$ | $0.300000$ | $0.411765$ |
| $3$ | $0.147000$ | $0.510000$ | $0.223744$ |
| $5$ | $0.072030$ | $0.759900$ | $0.086582$ |
| $10$ | $0.012106$ | $0.959646$ | $0.012458$ |
観察 3.2 後の花ほど、ほかの株の花粉は届かない。十個目の花が受け取るほかの株の花粉は $0.012106$ で、同じ株の花粉 $0.959646$ に対して割合 $0.012458$ である。花ごとのほかの株の花粉は十個とも $d(1-d)^{j-1}$ と差 $10^{-12}$ 未満で一致し、花ごとの量を足すと計算 2.1 の $k=10$ の行に差 $10^{-12}$ 未満で戻った。
4. 分離子
観察 4.1 分離子は、置いた花粉の総量を問うか、その中の割合を問うかである。総量を問えば、続けて回るほど多くのほかの株の花粉が届く。割合を問えば、続けて回るほど同じ株の花粉に埋もれる。同じ訪問の同じ数が、どちらを問うかで逆を向く。
観察 4.2 論文864 の隣に置く。864 は、段ごとに一定の割合が掛かって、上の段ほど物質の量は減るのに濃さが上がることを示した。あちらは分母が縮んで比が上がった。ここでは分子に $0.7$ が掛かって減り、分母には同じ株の花粉が足されて、比が下がる。
観察 4.3 言わないこと。実在の植物や訪問者の値も、花粉の寿命や柱頭の上限も、自分の株の花粉を受け付けない性質も、結実も扱わない。示したのは、続けて回るほど総量は増え、割合は下がるということである。
5. 点呼と結び
- 総量は $1-(1-d)^k$(第1節):持ってきた $1$ が上限。
- $1$ 個で割合 $1.000000$(計算 2.1):ほかの株のものだけ。
- $2$ 個で $0.629630$(計算 2.1):同じ株の花粉が混ざり始める。
- $5$ 個で $\mathbf{0.271977}$(計算 2.1):下がり続ける。
- $10$ 個で $\mathbf{0.125670}$(計算 2.1):本稿の芯。
- 総量は $10$ 個で $0.971752$(観察 2.3):$3.239175$ 倍に増える。
- 同じ株の花粉は $\mathbf{6.760825}$(計算 2.1):上限が無い。
- 十個目の花で割合 $\mathbf{0.012458}$(計算 3.1):後の花ほど届かない。
- 花ごとと総量が差 $10^{-12}$ 未満(観察 3.2):別々に出した。
- 置いた総量か、その中の割合か(観察 4.1):分離子・論文864。
結び:同じ株で花を続けて回るほど、ほかの株の花粉の割合は下がる。一つの花で体の花粉の $0.3$ を置き、その株の花粉を $1$ 拾うとき、割合は $2$ 個で $0.629630$、$5$ 個で $0.271977$、$10$ 個で $0.125670$ になる。二つ目の花から同じ株の花粉を運び始め、それが拾い足されて $10$ 個で $6.760825$ まで増えるからである。ほかの株の花粉の総量は $0.971752$ まで増えるが、持ってきた $1$ を超えない。十個目の花が受け取る花粉のうち、ほかの株のものは $0.012458$ しかない。既刊との位置:受粉を主題にした既刊は無く、段ごとの割合で分母が縮む論文864 の隣に、花ごとの割合で分子が減り分母が増える側を置いた。正直に言えば、置く割合と拾う量は模型の値で、花粉の寿命、柱頭の上限、自分の株の花粉を受け付けない性質は入れていない。
参考文献
- Willmer, P. (2011). Pollination and Floral Ecology. Princeton University Press.
- 山岸勇輝 (2026). 『上の段ほど物質の量は減るのに、濃さは上がる』[論文864]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/864
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「同じ株で花を続けて回るほど、ほかの株の花粉の割合は下がる」[論文866]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/866
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/866・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 同じ株で花を続けて回るほど、ほかの株の花粉の割合は下がる [論文866]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/866
Yamagishi, Y. (2026). The More Flowers a Visitor Works on One Plant, the Smaller the Share of Pollen from Other Plants [Paper 866]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/866
@misc{yamagishi2026yoi866,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {The More Flowers a Visitor Works on One Plant, the Smaller the Share of Pollen from Other Plants},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/866},
note = {Preprint, edition 1}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
e603561faed13b2694848ca0955c76ce89c5f53f80b90922aa4b4916d893e829 yamagishi_yoi866_v1_jp.pdfcf80806e2878f110be9d0383684f68edeb8f0733dfefb32d059764de56463431 yamagishi_yoi866_v1_en.pdfPDF と .ots を同じ場所に保存し、opentimestamps.org に .ots、続けて PDF を落とすと、記録された日時が表示されます。PDF が 1 バイトでも変わっていれば通りません。