【論文886】4×4 のオセロで最も多く返す手が最善手と重なるのは、半分をわずかに超える局面だけ

要旨

オセロでは、たくさん返す手が良い手に見える。本稿は、読み切れる $4\times4$ の盤で、いちばん多く返す手と最善手がどれだけ重なるかを、すべての局面で数える。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、$4\times4$ のオセロは読み切れる。調べた局面は $58533$ 個で、互いに最善を尽くすと先手の黒は石の差 $-8$ で負ける(第2節)。

第二に、これが本稿の芯である。いちばん多く返す手が最善手になるのは、半分をわずかに超えるだけである。手が二つ以上ある局面 $22191$ 個のうち $12030$ 個、割合 $\mathbf{0.542112}$ である(第3節)。

第三に、読み切る側は、多く返す側に勝てる。黒が読み切り・白がいちばん多く返す手で打つと、最善どうしなら $-8$ で負ける黒が $+2$ で勝つ(第3節)。

第四に、多く返す側は、読み切る側にさらに大きく負ける。黒がいちばん多く返す手・白が読み切りなら黒は $-9$、どちらも多く返す手なら $-6$ である(第3節)。

第五に、読み切りは打ち合わせと合う。黒も白も読み切りで打ち合わせた結果は、読み切りで出した値 $-8$ と一致した(第2節)。

第六に、分離子は、一手で返す石の数を問うか、最後に残る石の差を問うかである。返した石は次の手で返され得るので、一手の多さは最後の差を約束しない(第4節)。

キーワード:オセロ、読み切り、ミニマックス、貪欲な手、石の差。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。小さい盤のゲームを最後まで読み切れること、互いに最善を尽くす読み(ミニマックス)、目先の得を選ぶ手が最善と限らないことは、いずれも既知である。大きい盤を主張しない。$6\times6$ や $8\times8$ の結果は扱わない。数えたのは $4\times4$ だけである。強いプログラムに入らない。読みを速くする工夫や、評価の作り方は扱わない。数え方を一つに決めた。勝ち負けは最後の石の差だけで数え、空いたますを勝者に足す数え方はしない。いちばん多く返す手が同数なら、番号の小さいますを選ぶ。既刊との関係:論文846 は、勝てるかどうかは後ろから塗れば分かり、何手で勝てるかはその札からは読めないことを示した。本稿はその隣に置く。ここでも最後から読み切って値を出し、その値と目先の手の多さが食い違うことを数える。論文633 は、大きい硬貨から払う両替が円なら最少枚数だが、旧英貨では一枚多くなることを示した。本稿はその隣にも置く。あちらは目先の最大が全体の最善を外す一例を見せた。ここではそれが局面の $0.457888$ で起きることを数える。加えたのは、$4\times4$ の盤を読み切ったこと、いちばん多く返す手が最善手になる割合 $0.542112$ を測ったこと、読み切りと多く返す手を四通りに打ち合わせたこと、分離子を「一手の数か、最後の差か」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:$4\times4$ の盤の中央四ますに黒と白を二つずつ置き、黒から打つ。挟んだ石を返し、打てなければパスし、両方打てなければ終わる。結果は、最後の黒の石の数から白の石の数を引いた差とする。

$$v(\text{局面})=\max_{\text{手}}\bigl(-v(\text{次の局面})\bigr),\qquad
\text{貪欲な手}=\arg\max_{\text{手}}\ (\text{その手で返す石の数})$$

読み切りは、手番の側から見た最後の差を、同じ局面を覚えながら最後から出した。貪欲な手は、いちばん多く返す手で、同数なら番号の小さいますとした。

問い:いちばん多く返す手は、どれだけ最善手か。

2. 読み切り

計算 2.1:初めの局面から読み切った。

観察 2.2 $4\times4$ のオセロは読み切れ、先手が負ける。調べた局面は $58533$ 個で、互いに最善を尽くすと黒は石の差 $-8$ で負ける。黒も白も読み切りで打ち合わせると、結果は同じ $-8$ だった。

3. 多く返す手と最善手

計算 3.1:手が二つ以上ある局面すべてで、いちばん多く返す手が最善手の一つかを数え、四通りに打ち合わせた。

黒 白 黒から見た石の差
読み切り 読み切り $-8$
読み切り 多く返す $+2$
多く返す 読み切り $-9$
多く返す 多く返す $-6$

観察 3.2 これが本稿の芯である。いちばん多く返す手が最善手になるのは、半分をわずかに超えるだけである。手が二つ以上ある局面 $22191$ 個のうち、いちばん多く返す手が最善手の一つなのは $12030$ 個、割合 $0.542112$ である。残りの $0.457888$ の局面では、多く返す手を選ぶと最後の差が悪くなる。

観察 3.3 食い違いは勝ち負けに出る。最善どうしなら $-8$ で負ける黒が、読み切りで打てば、多く返す手で打つ白に $+2$ で勝つ。逆に黒が多く返す手で打つと、読み切る白に $-9$ で負け、最善どうしより $1$ 石悪い。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、一手で返す石の数を問うか、最後に残る石の差を問うかである。一手で多く返すと、その場では石が増える。だが返した石は次の手で返され得る。一手の多さは、最後に残る差を約束しない。

観察 4.2 論文846・633 の隣に置く。846 は、勝てるかどうかは後ろから塗れば分かることを示した。ここでも最後から読み切って値を出した。633 は大きい硬貨から払う両替が旧英貨で一枚多くなることを示し、目先の最大が全体の最善を外す一例を見せた。ここではそれが局面の $0.457888$ で起きることを数えた。

観察 4.3 言わないこと。$6\times6$ や $8\times8$ の結果も、強いプログラムの作り方も、空いたますを数える流儀も扱わない。示したのは、$4\times4$ の盤でいちばん多く返す手が最善手と重なる割合が $0.542112$ だということである。

5. 点呼と結び

  1. $4\times4$ を読み切る(第1節):最後の石の差。
  2. 局面 $58533$ 個(観察 2.2):覚えながら読む。
  3. 最善どうしで $-8$(観察 2.2):先手が負ける。
  4. 手が二つ以上の局面 $22191$ 個(観察 3.2):選ぶ余地がある。
  5. 多く返す手が最善 $\mathbf{0.542112}$(観察 3.2):本稿の芯。
  6. 外れる局面 $0.457888$(観察 3.2):半分近く。
  7. 読み切りの黒が $+2$ で勝つ(計算 3.1):相手が多く返すと。
  8. 多く返す黒は $-9$(計算 3.1):最善より $1$ 石悪い。
  9. 読み切りと打ち合わせが一致(観察 2.2):別々の出し方。
  10. 一手の数か、最後の差か(観察 4.1):分離子・論文846・633。

結び:$4\times4$ のオセロでは、目先にいちばん多く返す手が最善手と重なるのは、半分をわずかに超える局面だけである。読み切ると局面は $58533$ 個で、互いに最善なら黒は $-8$ で負け、手が二つ以上ある局面のうち多く返す手が最善手になるのは $0.542112$ である。返した石は次の手で返され得るので、一手の多さは最後の差を約束しないからである。最善どうしなら負ける黒も、読み切って打てば多く返す白に $+2$ で勝ち、多く返す手で打てば読み切る白に $-9$ で負ける。食い違いは勝ち負けに出る。既刊との位置:論文846 の「後ろから塗れば分かる」と論文633 の「目先の最大が外れる一例」の隣に、その外れがどれだけの局面で起きるかを置いた。正直に言えば、数えたのは $4\times4$ の盤だけで、大きい盤でも同じ割合だとは言わない。

参考文献

  1. Knuth, D. E., & Moore, R. W. (1975). An Analysis of Alpha-Beta Pruning. Artificial Intelligence.
  2. 山岸勇輝 (2026). 『大きい硬貨から払う両替は、円なら必ず最少枚数だが、旧英貨では 48 ペンスで一枚多くなる』[論文633]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/633 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014568
  3. 山岸勇輝 (2026). 『勝てるかどうかは後ろから塗れば分かる。何手で勝てるかは、その札からは読めない』[論文846]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/846

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「4×4 のオセロで最も多く返す手が最善手と重なるのは、半分をわずかに超える局面だけ」[論文886]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/886

YOI 886第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS

予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS

住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/886・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 4×4 のオセロで最も多く返す手が最善手と重なるのは、半分をわずかに超える局面だけ [論文886]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/886

Yamagishi, Y. (2026). On a 4×4 Othello Board, the Move That Flips the Most Is a Best Move in Only a Little Over Half of the Positions [Paper 886]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/886

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  author = {Yamagishi, Yuuki},
  title = {On a 4×4 Othello Board, the Move That Flips the Most Is a Best Move in Only a Little Over Half of the Positions},
  year = {2026},
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