【論文893】信号の段数を増やしても、列車の間隔はブレーキ距離と列車の長さの和より短くならない

要旨

信号の段数を増やせば、列車はいくらでも詰めて走れる、と思いやすい。本稿は、段数の違う信号と、前の列車の最後尾から測る方式で、全速のまま走り続けられる間隔と一時間の本数を数える。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、段を増やすと間隔は縮む。頭どうしの間隔は $3$ 段で $\mathbf{1830.015432}$ m、$4$ 段で $1422.511574$ m、$5$ 段で $1286.676955$ m、$6$ 段で $1218.759645$ m である(第2節)。

第二に、段を一つ足す効き目は、足すほど小さい。一時間の本数は $3$ 段から $4$ 段で $1.286468$ 倍、$4$ 段から $5$ 段で $1.105570$ 倍、$5$ 段から $6$ 段で $1.055727$ 倍である(第2節)。

第三に、これが本稿の芯である。間隔はブレーキ距離と列車の長さの和より短くならない。前の列車の最後尾から測る方式の間隔 $\mathbf{1015.007716}$ m は、ブレーキ距離 $815.007716$ m と列車の長さ $200$ m の和で、段をいくら増やしてもここに近づくだけである(第3節)。

第四に、その下限の大部分はブレーキ距離である。$6$ 段から最後尾で測る方式に替えても本数は $\mathbf{1.200739}$ 倍で、その間隔の $\mathbf{0.802957}$ をブレーキ距離が占める(第3節)。

第五に、間隔は位置をずらして探しても同じである。閉塞の中の後ろの列車の位置を $4000$ 通りずらして探した最小の間隔は、$3$〜$6$ 段のすべてで式の値と同じだった(第2節)。

第六に、分離子は、線路を決まった区間で切るか、前の列車の最後尾から測るかである。区間で切ると、区間の数だけ余分な長さが間隔に入る。最後尾から測るとその余分は消えるが、ブレーキ距離は残る(第4節)。

キーワード:閉塞、信号の段数、移動閉塞、ブレーキ距離、運転間隔、線路容量。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。線路を閉塞に区切って一つの区間に一本だけ入れること、信号の段数を増やすと閉塞を短くできること、前の列車の位置から間隔を測る方式で間隔が縮むこと、列車の間隔の下限にブレーキ距離が効くことは、いずれも鉄道の信号で既知である。実在の路線を主張しない。速さ $130$ km/h、減速度 $0.8$ m/s²、列車の長さ $200$ m、閉塞の長さをブレーキ距離を $n-2$ で割った値にとる約束は模型の値で、どの路線の信号方式にも対応しない。余裕を入れない。運転士が信号を見る距離、止まる位置の余裕、駅での停車、加速と減速にかかる時間は入れない。速さの最適を扱わない。本数を最も多くする速さは扱わない。既刊との関係:論文394 は、同じ交通量が二つの別の状態で実現し、流量を測ってもどちらにいるかは分からないことを示した。本稿はその隣に置く。あちらは道路で、車の詰まり方が状態を決めた。ここは線路で、車間の下限をブレーキ距離が決め、信号の段数はその下限に近づけるだけである。加えたのは、$3$〜$6$ 段と最後尾で測る方式で間隔と本数を並べたこと、段を一つ足す効き目が縮むことを測ったこと、最後尾で測る方式でもブレーキ距離が間隔の $0.802957$ を占めることを測ったこと、分離子を「区間で切るか、最後尾から測るか」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:列車は速さ $v=130$ km/h($36.111111$ m/s)で走り、減速度 $b=0.8$ m/s² で止まる。列車の長さは $L=200$ m とする。$n$ 段の信号では、止まれの一つ手前から $n-2$ 個の閉塞で止まれるように、閉塞の長さを $D/(n-2)$ にとる。後ろの列車が全速のまま走り続けるには、入ろうとする閉塞を含めて $n-1$ 個の閉塞が空き、その先に前の列車の最後尾がなければならない。

$$D=\frac{v^{2}}{2b},\qquad
s_{n}=(n-1)\frac{D}{n-2}+L,\qquad
s_{\infty}=D+L$$

$s_\infty$ は、前の列車の最後尾から測る方式の間隔である。運転間隔は間隔を速さで割り、一時間の本数は $3600$ 秒を運転間隔で割った。式とは別に、後ろの列車の頭を閉塞の中で $4000$ 通りずらし、どの位置でも全速でいられる最小の間隔を探した。

問い:信号の段数を増やせば、列車の間隔はいくらでも詰められるのか。

2. 段数と間隔

計算 2.1:ブレーキ距離は $D=815.007716$ m である。段数ごとに間隔、運転間隔、一時間の本数を出した。

信号 頭どうしの間隔(m) 運転間隔(s) 一時間の本数
$3$ 段 $1830.015432$ $50.677350$ $71.037652$
$4$ 段 $1422.511574$ $39.392628$ $91.387657$
$5$ 段 $1286.676955$ $35.631054$ $101.035462$
$6$ 段 $1218.759645$ $33.750267$ $106.665823$
最後尾から測る $1015.007716$ $28.107906$ $128.077844$

観察 2.2 段を増やすと間隔は縮むが、足すほど効き目は小さい。一時間の本数は、$3$ 段から $4$ 段で $1.286468$ 倍、$4$ 段から $5$ 段で $1.105570$ 倍、$5$ 段から $6$ 段で $1.055727$ 倍になる。閉塞の中で位置を $4000$ 通りずらして探した最小の間隔は、$3$〜$6$ 段のすべてで表の値と同じだった。いちばん厳しいのは、後ろの列車が閉塞に入った瞬間である。

3. 最後尾から測る方式とブレーキ距離

計算 3.1:$6$ 段から最後尾で測る方式に替えたときと、$3$ 段から替えたときの本数の比を出した。$6$ 段からは $1.200739$ 倍、$3$ 段からは $1.802957$ 倍である。

観察 3.2 これが本稿の芯である。間隔はブレーキ距離と列車の長さの和より短くならない。段数 $n$ を増やすと $(n-1)/(n-2)$ は $1$ に近づき、間隔 $s_n$ は $D+L=1015.007716$ m に近づくだけである。最後尾から測る方式はその値に着くが、その間隔の $0.802957$ はブレーキ距離 $815.007716$ m が占める。$3$ 段から替えたときの $1.802957$ 倍から $1$ を引いた値がちょうどこの割合になるのは、$3$ 段の間隔 $2D+L$ と $D+L$ の比だからである。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、線路を決まった区間で切るか、前の列車の最後尾から測るかである。決まった区間で切ると、前の列車が区間のどこにいても区間まるごとを塞ぐので、間隔に $D/(n-2)$ の余分が入る。最後尾から測ればその余分は消える。しかしブレーキ距離は、どちらの方式でも間隔に残る。

観察 4.2 論文394 の隣に置く。394 は、道路では同じ流量が二つの状態で実現し、流量からはどちらか分からないことを示した。ここは線路で、車間の下限をブレーキ距離が決め、信号の段数と測り方はその下限にどれだけ近づけるかを決める。

観察 4.3 言わないこと。実在の路線の信号方式や本数、信号を見る距離や止まる位置の余裕、駅での停車、本数を最も多くする速さは扱わない。示したのは、この模型で、段数を増やしても間隔がブレーキ距離と列車の長さの和より短くならないことである。

5. 点呼と結び

  1. 間隔 $s_n=(n-1)D/(n-2)+L$(第1節):$n$ 段の信号。
  2. ブレーキ距離 $815.007716$ m(計算 2.1):$130$ km/h・$0.8$ m/s²。
  3. $3$ 段で $\mathbf{1830.015432}$ m(計算 2.1):本数 $71.037652$。
  4. $6$ 段で $1218.759645$ m(計算 2.1):本数 $106.665823$。
  5. 段を足す効き目 $1.286468$ から $1.055727$ 倍(観察 2.2):縮む。
  6. 位置を $4000$ 通りずらしても同じ(観察 2.2):入った瞬間が厳しい。
  7. 最後尾から測って $\mathbf{1015.007716}$ m(観察 3.2):本稿の芯。
  8. $6$ 段から替えて $\mathbf{1.200739}$ 倍(計算 3.1):まだ増える。
  9. ブレーキ距離の割合 $\mathbf{0.802957}$(観察 3.2):下限の大部分。
  10. 区間で切るか、最後尾から測るか(観察 4.1):分離子・論文394。

結び:信号の段数を増やしても、列車の間隔はブレーキ距離と列車の長さの和より短くならない。$130$ km/h・減速度 $0.8$ m/s² で、全速のまま走り続けられる頭どうしの間隔は、$3$ 段で $1830.015432$ m、$6$ 段で $1218.759645$ m で、段を一つ足す効き目は $1.286468$ 倍から $1.055727$ 倍へ縮んだ。段を増やしても、間隔はブレーキ距離 $815.007716$ m と列車の長さ $200$ m の和 $1015.007716$ m に近づくだけである。前の列車の最後尾から測る方式はその値に着き、$6$ 段から替えれば本数は $1.200739$ 倍になるが、その間隔の $0.802957$ はブレーキ距離が占める。区間で切る余分は測り方で消せても、止まるのに要る距離は消えない。既刊との位置:論文394 の「同じ流量が二つの状態で実現する」道路の隣に、ブレーキ距離が車間の下限を決める線路を置いた。正直に言えば、速さ・減速度・列車の長さと閉塞の約束は模型の値で、信号を見る距離や止まる位置の余裕は入れていない。

参考文献

  1. 山岸勇輝 (2026). 『同じ交通量が、二つの別の状態で実現する。流量を測っても、どちらにいるかは分からない』[論文394]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/394 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22699272

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「信号の段数を増やしても、列車の間隔はブレーキ距離と列車の長さの和より短くならない」[論文893]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/893

YOI 893第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/893・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 信号の段数を増やしても、列車の間隔はブレーキ距離と列車の長さの和より短くならない [論文893]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/893

Yamagishi, Y. (2026). Adding Signal Aspects Cannot Bring Trains Closer Than the Braking Distance Plus the Train Length [Paper 893]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/893

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