【論文914】影を二つ測れば太陽の向きは周長から消え、残るのは角度の読みと南北の距離である

要旨

地球の周長は、南北に離れた二つの町で同じ日の正午の影を測り、角度の差と町の距離から出せる。本稿は、この出し方で何が結果を動かし、何が動かさないかを、代表の座標(アレクサンドリアとアスワン)と球の地球で数える。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、影を二つ測れば、太陽の向きは消える。二つの町の南中の天頂角は $7.76$ 度と $0.65$ 度で、差 $7.11$ 度は緯度差そのものだった。太陽の赤緯を $1$ 度動かしても差は変わらない(差 $0$)(第2節)。

第二に、影を一つしか測らないと、太陽の向きが角度に入る。南の町で太陽が真上と置くと、角度は緯度差の $\mathbf{1.091421}$ 倍に読まれ、周長は $0.916237$ 倍になる。そのとき南の町に落ちている棒の影は、高さの $0.011345$ 倍である(第2節)。

第三に、距離は南北の成分だけが効く。二つの町の大円距離は $843.208$ km、南北の成分は $790.597$ km で、大円距離を使うと周長は $\mathbf{1.066546}$ 倍になる。南北の成分なら球の周長 $40030.229$ km に戻る(第3節)。

第四に、残る角度の読みと長さの単位も、周長を動かす。角度を $0.1$ 度小さく読むと周長は $\mathbf{1.4085}$ パーセント大きくなり、$1/50$ 周・$5000$ スタディオンの周長は、スタディオンを $157.5$ m と $185$ m のどちらに取るかで $1.174603$ 倍違う(第3節)。

第五に、分離子は、太陽の天頂角を片方の町で $0$ と置くか、両方で測るかである。両方で測れば太陽の向きは引き算で消え、周長を動かすのは角度の読みと距離の側だけになる(第4節)。

キーワード:エラトステネス、地球の周長、天頂角、太陽の赤緯、大円距離、誤差の伝わり方。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。二つの町の影から地球の周長を出す方法、南中の天頂角が緯度と太陽の赤緯の差であること、球面上の大円距離は、いずれも標準的である。歴史を裁かない。エラトステネスが実際に何を測り、どのスタディオンを使ったか、どの値が正しかったかは扱わない。二つの長さは代表値として並べるだけである。座標は代表値である。アレクサンドリア北緯 $31.20$ 度・東経 $29.92$ 度、アスワン北緯 $24.09$ 度・東経 $32.90$ 度、夏至の太陽の赤緯 $23.44$ 度、地球の平均半径 $6371.0088$ km を使う。地球を球と置く。扁平・大気の屈折・太陽の見かけの大きさによる影のぼけは入れない。既刊との関係:論文814 は、月までの距離が月食の影と時計だけで出ることを示した。ここでは、その前に要る地球の大きさを、正午の影の角度と町の距離から出すときの誤差の入り方を数える。論文297 は、宇宙の距離が七段のはしごで、直接測られているのは一段目だけであることを示した。ここでは、はしごの足元にある地球の大きさを、影二つで測るときに何が効くかを分ける。論文340 は、同じ半径 $6371.0088$ km の球で、最短の道と一定の方位で進む道が別物であることを示した。ここでは、二つの町を結ぶ大円距離と、周長に効く南北の成分が別物であることを数える。加えたのは、影二つの角度の差から太陽の赤緯が消えることを確かめたこと、影一つで角度が緯度差の $1.091421$ 倍に読まれることを出したこと、大円距離を使うと周長が $1.066546$ 倍になることを出したこと、角度の読みと長さの単位の効き方を並べたこと、分離子を「天頂角を片方で $0$ と置くか、両方で測るか」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:北の町 A と南の町 S が南北に離れているとし、同じ日の正午に棒の影から太陽の天頂角 $z_A$・$z_S$ を測る。緯度を $\varphi$、太陽の赤緯を $\delta$ とすると、南中の天頂角は次のとおりである。

$$z_A=\varphi_A-\delta,\qquad z_S=\varphi_S-\delta,\qquad z_A-z_S=\varphi_A-\varphi_S$$

町の距離を $d$、角度の差を $\theta$(度)とすると、周長は $C=360 d/\theta$ である。検算では、アレクサンドリア(A)とアスワン(S)の代表の座標を球の地球に置き、大円距離と南北の成分を別々に出した。

問い:影から周長を出すとき、何が結果を動かし、何が動かさないか。

2. 影一つと、影二つ

計算 2.1:夏至($\delta=23.44$ 度)の南中の天頂角。

町 緯度(度) 南中の天頂角(度)
アレクサンドリア $31.20$ $7.76$
アスワン $24.09$ $0.65$
差 $7.11$ $7.11$

天頂角の差は緯度差そのもので、赤緯を $1$ 度動かしても差は変わらなかった(差 $0$)。

計算 2.2:南の町で太陽が真上と置いた場合(影一つ)。北の町の天頂角 $7.76$ 度をそのまま角度に使うと、角度は緯度差の $\mathbf{1.091421}$ 倍に読まれ、周長は $0.916237$ 倍になる。南の町の棒の影の長さは棒の高さの $0.011345$ 倍だった。

観察 2.3 影を二つ測れば、太陽の向きは引き算で消える。影を一つしか測らないと、南の町で太陽が真上から外れているぶんがそのまま角度に入る。そのずれは、南の町の棒に高さの $0.011345$ 倍の影として残っている。

3. 距離と角度の読み

計算 3.1:距離の取り方(緯度差 $7.11$ 度)。

距離の取り方 距離(km) 周長(km)
南北の成分 $790.597$ $40030.229$
大円距離 $843.208$ $42694.064$

南北の成分で出した周長は球の周長と $10^{-11}$ km の桁で一致し、大円距離を使うと $\mathbf{1.066546}$ 倍になった。

計算 3.2:角度の読みと長さの単位。

条件 周長
角度を $0.1$ 度小さく読む $1.014085$ 倍($1.4085$ パーセント大きい)
角度を $0.5$ 度小さく読む $1.074627$ 倍($7.4627$ パーセント大きい)
$7.2$ 度・$5000$ スタディオン × $157.5$ m $39375.0$ km(球の $0.983632$ 倍)
$7.2$ 度・$5000$ スタディオン × $185$ m $46250.0$ km(球の $1.155377$ 倍)

二つのスタディオンの周長の比は $1.174603$、$1/50$ 周の $7.2$ 度とこの座標の緯度差 $7.11$ 度の比は $1.012658$ だった。

観察 3.3 影二つで太陽の向きが消えたあと、周長を動かすのは角度の読みと距離の側である。距離は道のりではなく南北の成分だけが効き、角度の $0.1$ 度は周長の $1.4085$ パーセントに効く。長さの単位の選び方は、それよりずっと大きく周長を動かす。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、太陽の天頂角を片方の町で $0$ と置くか、両方で測るかである。片方で $0$ と置けば、太陽の赤緯と町の緯度の差がそのまま角度に入り、この座標では角度が $1.091421$ 倍になる。両方で測れば赤緯は引き算で消え、残るのは角度の読みと、南北の成分としての距離と、その長さの単位である。

観察 4.2 言わないこと。エラトステネスが実際に何を測ったか、どのスタディオンが正しいか、扁平や大気の屈折は扱わない。示したのは、影二つの差が太陽の向きを消し、残る誤差が距離と角度の読みから来ることである。

5. 点呼と結び

  1. $z_A-z_S=\varphi_A-\varphi_S$(第1節):赤緯が消える。
  2. 天頂角 $7.76$・$0.65$ 度、差 $7.11$ 度(計算 2.1):緯度差。
  3. 影一つで $\mathbf{1.091421}$ 倍(計算 2.2):周長 $0.916237$ 倍。
  4. 大円距離で $\mathbf{1.066546}$ 倍(計算 3.1):南北の成分なら $40030.229$ km。
  5. $0.1$ 度で $\mathbf{1.4085}$ パーセント(計算 3.2):角度の読み。
  6. スタディオンで $1.174603$ 倍(計算 3.2):長さの単位。
  7. 片方で $0$ か、両方で測るか(観察 4.1):分離子・論文814・297・340。

結び:影を二つ測れば太陽の向きは周長から消え、残るのは角度の読みと南北の距離である。二つの町の南中の天頂角の差は緯度差そのもので、太陽の赤緯を動かしても変わらなかった。南の町で太陽が真上と置くと、この座標では角度が $1.091421$ 倍に読まれた。距離は南北の成分だけが効き、大円距離を使うと周長は $1.066546$ 倍になった。角度の $0.1$ 度は $1.4085$ パーセントに効き、長さの単位の選び方はそれより大きく効く。分離子は、太陽の天頂角を片方の町で $0$ と置くか、両方で測るかである。既刊との位置:論文814 が影と時計で月までの距離を出した手前にある地球の大きさを、論文297 のはしごの足元として、論文340 の大円と同じ球の上で数えた。正直に言えば、どの長さが正しかったかは言わない。影二つが何を消し、何を残すか、そこまでである。

参考文献

  1. Heath, T. L. (1921). A History of Greek Mathematics. Clarendon Press.
  2. 山岸勇輝 (2026). 『宇宙の距離は七段のはしごで、直接測られているのは一段目だけである』[論文297]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/297 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22171788
  3. 山岸勇輝 (2026). 『最短の道は、航海者が舵を切る道ではない』[論文340]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/340 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22682089
  4. 山岸勇輝 (2026). 『月までの距離は影と時計だけで出るが、影のすぼまりを入れないと四割遠くなる』[論文814]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/814 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23015478

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「影を二つ測れば太陽の向きは周長から消え、残るのは角度の読みと南北の距離である」[論文914]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/914

YOI 914第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/914・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 影を二つ測れば太陽の向きは周長から消え、残るのは角度の読みと南北の距離である [論文914]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/914

Yamagishi, Y. (2026). With Two Shadows the Sun Drops Out of Earth’s Circumference, Leaving the Angle Reading and the North-South Distance [Paper 914]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/914

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