【論文946】ランダムグラフのいちばん大きな塊は、平均の隣の数で育ち方の冪が三つに分かれる

要旨

点をたくさん置き、でたらめに選んだ二点を辺で結んでいくと、つながった塊ができる。本稿は、点一つあたりの平均の隣の数 $c$ を $0.5$・$1$・$2$ に置き、点の数を $1000$ から $64000$ まで $4$ 倍ずつ増やして、いちばん大きな塊の育ち方を測り、二番目の塊と小さな塊の平均の大きさも $c$ ごとに比べる。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、c が 1 より少ないと、いちばん大きな塊は点の数の対数ほどにしか育たない。$c=0.5$ でいちばん大きな塊の平均は $11.025$・$16.450$・$20.500$・$26.200$ で、点の数を $64$ 倍にした通しの冪は $\mathbf{0.208131}$、対数の式の値 $10.749$・$15.559$・$20.736$・$26.181$ との差は標準誤差の $2$ 倍以内だった(第2節)。

第二に、c が 1 を超えると、いちばん大きな塊は点の数に比例する。$c=2$ で通しの冪は $\mathbf{1.000894}$、点 $64000$ の塊の割合は $0.797359$ で、式 $s=1-\exp(-cs)$ の解 $0.796812$ に近かった(第2節)。

第三に、c がちょうど 1 では、その中ほどの冪で育つ。$c=1$ でいちばん大きな塊の平均は $90.290$・$226.305$・$590.260$・$1643.225$ で、通しの冪は $\mathbf{0.697637}$ だった(第2節)。

第四に、二番目の塊と小さな塊の大きさは境の近くで大きい。点 $16000$ で二番目の塊は $c=1.1$ で最大の $277.200$、$c=2$ では $11.200$ だった。境から離れた $c=0.6$・$0.8$・$1.5$・$2$ では、小さな塊の平均の大きさが式と相対 $0.037917$ 以内で合った(第3節)。

第五に、分離子は、塊を点の数に対する割合で見るか、点を増やしたときの冪で見るかである。割合で見ると c が 1 以下の塊はどれも $0$ に近づいて区別がつかないが、冪で見ると対数・中ほど・比例の三つに分かれる(第4節)。

キーワード:ランダムグラフ、巨大な塊、エルデシュ=レーニイ、連結成分、有限の点の数、冪の測定。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。辺をでたらめに引いたグラフで平均の隣の数 $1$ を境にいちばん大きな塊が現れること(エルデシュとレーニイ)、その割合の式 $s=1-\exp(-cs)$、境の下で塊が対数ほど・境で点の数の $2/3$ 乗ほどの大きさになることは、いずれも既知である。有限の点で測る。点は $64000$ までで、冪は有限の点の数の値である。$c=1$ の冪 $0.697637$ を極限の値と同じとは言わない。辺の引き方:二点を独立にでたらめに選んで $cn/2$ 本引き、同じ二点や同じ点どうしを選ぶことも許した。実在のネットワークを扱わない。人のつながり、通信網、感染の広がりには対応させない。既刊との関係:論文264 は、同じ現象の中に格子で変わる数と変わらない数が同居していることを示した。ここでは格子の無いグラフで、塊の育ち方の冪が平均の隣の数で三つに分かれることを数える。論文271 は、平均場は次元を見ないが外れ方は次元だけで決まることを示した。ここでは次元の無いグラフで、育ち方を点の数の冪として測る。論文511 は、流行の閾値と最終規模が同じ $R_{0}$ から出ることを示し、最終規模を $z=1-e^{-R_{0}z}$ から出した。ここではいちばん大きな塊の割合が同じ形の式の値($c=2$ で $0.796812$)として現れる。加えたのは、三つの $c$ で点の数を $64$ 倍にした育ち方の冪を出したこと、境の下の塊を対数の式と突き合わせたこと、二番目の塊が最大になる $c$ と小さな塊の平均の大きさを並べたこと、分離子を「割合で見るか、冪で見るか」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:点を $n$ 個置き、でたらめに選んだ二点を結ぶ辺を $cn/2$ 本引く。$c$ は点一つあたりの平均の隣の数である。つながった点の集まりを塊と呼ぶ。平均の隣の数 $c>1$ のとき、いちばん大きな塊の割合 $s$ は次の式の解に近づくことが知られている。

$$s=1-e^{-cs}$$

式の解は $c=1.5$・$2$・$3$ で $0.582812$・$0.796812$・$0.940480$、$c\le1$ では $0$ である。

測り方:$n=1000$・$4000$・$16000$・$64000$ で、いちばん大きな塊の大きさの平均と標準誤差を出す($c=1$ は $400$・$200$・$100$・$40$ 回)。点の数を $4$ 倍にしたときの $\log(\text{大きさの比})/\log4$ を「$4$ 倍ごとの冪」、$1000$ から $64000$ までを「通しの冪」とする。

問い:いちばん大きな塊は、点の数を増やしたときにどう育つか。それは平均の隣の数でどう変わるか。

2. いちばん大きな塊の育ち方

計算 2.1:いちばん大きな塊の平均(括弧は標準誤差)。

$c$ $n=1000$ $n=4000$ $n=16000$ $n=64000$ 通しの冪
$0.5$ $11.025$($0.388$) $16.450$($1.070$) $20.500$($1.416$) $26.200$($1.772$) $\mathbf{0.208131}$
$1$ $90.290$($2.024$) $226.305$($7.848$) $590.260$($27.244$) $1643.225$($147.650$) $\mathbf{0.697637}$
$2$ $794.400$($2.337$) $3184.200$($5.848$) $12744.600$($16.452$) $51031.000$($36.474$) $\mathbf{1.000894}$

$4$ 倍ごとの冪は、$c=0.5$ で $0.288654$・$0.158768$・$0.176971$、$c=1$ で $0.662815$・$0.691541$・$0.738554$、$c=2$ で $1.001497$・$1.000442$・$1.000744$ だった。

計算 2.2:$c=0.5$ の比べる式 $(\ln n-2.5\ln\ln n)/(c-1-\ln c)$($c-1-\ln c=0.193147$)は $10.749$・$15.559$・$20.736$・$26.181$ で、四つの $n$ とも平均との差は標準誤差の $2$ 倍以内だった。$c=2$・$n=64000$ の割合は $0.797359$(式 $0.796812$)だった。

観察 2.3 同じ「いちばん大きな塊」が、育ち方の冪で三つに分かれる。$c=2$ では点の数を $4$ 倍にすると塊もほぼ $4$ 倍になり、冪は $1$ に近い。$c=0.5$ では冪が $0.288654$ から $0.176971$ へと小さくなり、対数の式に沿う。$c=1$ はその間で、通しの冪は $0.697637$ だった(有限の $n$ の値で、回数を増やしても $n=64000$ の標準誤差は $147.650$ ある)。

3. 二番目の塊と小さな塊

計算 3.1:$n=16000$・各 $10$ 回。小さな塊の平均の大きさは、いちばん大きな塊を除いた点がでたらめに選ばれたとき、その点の属する塊の大きさの平均($c<1$ の式 $1/(1-c)$、$c>1$ の式 $1/(1-c(1-s))$)。

$c$ 二番目の塊 小さな塊の平均の大きさ 式
$0.6$ $23.800$ $2.493888$ $2.500000$
$0.8$ $58.600$ $5.189587$ $5.000000$
$0.9$ $103.500$ $9.214250$ $10.000000$
$1.0$ $240.500$ $40.196050$ 発散
$1.1$ $\mathbf{277.200}$ $19.585278$ $10.666945$
$1.2$ $108.300$ $6.707084$ $5.667713$
$1.5$ $27.400$ $2.628430$ $2.672243$
$2.0$ $11.200$ $1.684342$ $1.684567$

境から離れた $c=0.6$・$0.8$・$1.5$・$2$ の式との相対差は $0.002445$・$0.037917$・$0.016396$・$0.000134$ だった。

観察 3.2 境の近くでは、二番目の塊も小さな塊も大きくなる。二番目の塊は八つの $c$ のうち $1.1$ で最大だった。境から離れると小さな塊の平均の大きさは式と合うが、$c=0.9$・$1.1$・$1.2$ では式からずれた(点の数を変えてずれの出どころを確かめてはいない)。二番目の塊が最大になる $c$ が $1$ ちょうどかどうかは、この点の数と回数では言わない。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、塊を点の数に対する割合で見るか、点を増やしたときの冪で見るかである。割合で見ると、$c=0.5$ の $26.200/64000$ も $c=1$ の $1643.225/64000$ も点を増やせば $0$ に近づき、$c=2$ だけが $0.797359$ に残る。冪で見ると、$0$ に近づく二つも $0.208131$ と $0.697637$ で分かれ、$c=2$ の $1.000894$ と合わせて三つの育ち方になる。

観察 4.2 言わないこと。極限の冪の値、二番目の塊が最大になる $c$ の正確な位置、実在のネットワーク、格子の上の浸透は扱わない。示したのは、$64000$ 点までのでたらめなグラフで、いちばん大きな塊の育ち方の冪が平均の隣の数で三つに分かれたことである。

5. 点呼と結び

  1. 辺を $cn/2$ 本引くグラフと式 $s=1-e^{-cs}$(第1節):境は $c=1$。
  2. $c=0.5$ の通しの冪 $\mathbf{0.208131}$(計算 2.1・2.2):対数ほど。
  3. $c=2$ の通しの冪 $\mathbf{1.000894}$(計算 2.1):比例、割合 $0.797359$。
  4. $c=1$ の通しの冪 $\mathbf{0.697637}$(計算 2.1):その中ほど。
  5. 二番目の塊は $c=1.1$ で $\mathbf{277.200}$(計算 3.1):境の近くで大きい。
  6. 割合か、冪か(観察 4.1):分離子・論文264・論文271・論文511。

結び:ランダムグラフのいちばん大きな塊は、平均の隣の数で育ち方の冪が三つに分かれる。点の数を $1000$ から $64000$ まで増やすと、平均の隣の数 $0.5$ では通しの冪 $0.208131$ で対数の式に沿い、$2$ では $1.000894$ で割合 $0.797359$ に残り、$1$ では $0.697637$ だった。二番目の塊は $c=1.1$ で最大の $277.200$ になり、境から離れた四つの $c$ では小さな塊の平均の大きさが式と合った。分離子は、塊を点の数に対する割合で見るか、点を増やしたときの冪で見るかである。既刊との位置:論文264・271 が格子と次元で見た境を、格子も次元も無いグラフで点の数の冪として測り、論文511 の最終規模と同じ形の式の値を塊の割合として見た。正直に言えば、極限の値は言わない。有限の点で、同じいちばん大きな塊が冪で三つに分かれて見えること、そこまでである。

参考文献

  1. Bollobás, B. (2001). Random Graphs (2nd ed.). Cambridge University Press.
  2. Erdős, P., & Rényi, A. (1960). On the evolution of random graphs. Publications of the Mathematical Institute of the Hungarian Academy of Sciences.
  3. 山岸勇輝 (2026). 『同じ現象の中に、格子で変わる数と変わらない数が同居している』[論文264]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/264 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22169720
  4. 山岸勇輝 (2026). 『平均場は次元を見ないが、外れ方は次元だけで決まる』[論文271]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/271 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22169925
  5. 山岸勇輝 (2026). 『閾値と最終規模は、同じ $R_{0}$ から出るのに、比が一定にならない』[論文511]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/511 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22862074

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「ランダムグラフのいちばん大きな塊は、平均の隣の数で育ち方の冪が三つに分かれる」[論文946]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/946

YOI 946第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS

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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/946・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). ランダムグラフのいちばん大きな塊は、平均の隣の数で育ち方の冪が三つに分かれる [論文946]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/946

Yamagishi, Y. (2026). The Largest Cluster of a Random Graph Grows by Three Different Powers Depending on the Mean Number of Neighbours [Paper 946]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/946

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