要旨
古典的なヤン=ミルズ理論はスケール不変であり、作用に質量次元をもつパラメータが存在しない。にもかかわらず量子論は質量スケールを生成する。これが次元転移であり、質量ギャップの起源である。本稿はこの機構に現れる数の資格を書き分ける。第一に、$\Lambda_{\mathrm{QCD}}$ は二つの規約から組み立てられた不変量である。 繰り込みスケール $\mu$ は規約であり、結合 $g(\mu)$ もそれに依存する。だが両者の組合せ $\Lambda=\mu\exp(-8\pi^2/(b_0g^2))$ は $\mu$ に依らない(本稿で数値確認:$\mu$ を $91$ GeV から $1$ GeV まで動かしても $\Lambda=245.75$ MeV で一定)。論文35は「事実 $\times$ 規約」の積を分離したが、本稿はその逆、規約どうしが組み合わさって規約に依らない量になる場合である。 第二に、スケールの固まり方には少なくとも三通りある。 (a) 次元解析(論文39のプランク長、論文03のコルモゴロフ長:冪法則で、指数は次元行列の行列式が決める)、(b) 単位の選択(論文35・38:規約)、(c) 次元転移(本稿:$e^{-1/g^2}$ という本質的特異点をもち、摂動論では決して見えない)。これらは別根であり、統合してはならない。 第三に、この数は指数的に脆い。 $d\ln\Lambda/d\alpha_s=2\pi/(b_0\alpha_s^2)\approx50$ であるから、$\alpha_s$ の $1\%$ の誤差が $\Lambda$ の約 $6\%$ の誤差になる。論文04が示した $n^*$(入力を $2.5$ 倍動かしても $1.3$ しか動かない)と正反対である。同じ体系に、対数的に頑健な数と指数的に脆い数が同居している。 第四に、質量ギャップは事実であり、$\Lambda_{\mathrm{QCD}}$ は記帳法である。 格子計算による最軽量スカラー・グルーボール $m(0^{++})\approx1.7$ GeV は測定できる物理量だが、$\Lambda_{\mathrm{QCD}}$ はスキーム・$n_f$・ループ次数に依存する($n_f=3$ で $246$ MeV、$n_f=4$ で $153$ MeV、$n_f=5$ で $88$ MeV)。未解決なのは物理的存在ではなく数学的厳密性である。 第五に、$1$ ループの $\Lambda$ は、$1$ ループが壊れる場所である。 $\Lambda$ は走る結合の極として定義されるが、その近傍では $\alpha_s$ が $1$ を超える($\mu=0.3$ GeV で $3.5$)。定義そのものが自らの妥当域の外にある。 射程:既存の場の量子論の枠内での構造的整理(第2層)。ヤン=ミルズの存在と質量ギャップはクレイ数学研究所のミレニアム懸賞問題であり未解決である。本稿はその証明も、4次元ヤン=ミルズ理論の構成も、その部分的達成も主張しない。
射程(何を示さないか)
本稿の位置づけ(規律):本稿は既存の物理法則・数学的定理に対する構造的解釈を提示するものであり、新たな物理法則の発見や未解決問題の証明を主張しない。示される関係はいずれも既知の式からの変形であり、その構造的な読み替えを提案することを目的とする。既存理論と矛盾する主張は含まない。同じ数値が複数の文脈に現れることを、同一の起源の証拠として扱わない(論文48・86・100・115。本稿では第6節で $246$ という数値について明示的にこれを述べる)。ヤン=ミルズの存在と質量ギャップは未解決であり、本稿がその状況を変えるものではない。
1. 序論:古典理論に質量スケールはない
古典的なヤン=ミルズ理論の作用
$$ S=-\frac{1}{2g^2}\int d^4x\;\mathrm{tr}\,F_{\mu\nu}F^{\mu\nu} $$
はスケール不変である。$4$ 次元において結合 $g$ は無次元であり、質量次元をもつパラメータが一つも存在しない。
にもかかわらず、量子論は質量スケールを生成する。 格子計算は最軽量の励起(スカラー・グルーボール $0^{++}$)に $\approx1.7$ GeV という有限の質量を与える。どこから来たのか。
答えは次元転移である。
本稿はその機構に現れる数を、どれが規約でどれが事実かという観点から書き分ける。
2. 次元転移、無次元の結合から質量が生まれる
定理 2.1($\Lambda_{\mathrm{QCD}}$ と1ループ幾何測度) 1ループのベータ関数
$$ \mu\frac{dg}{d\mu}=-\frac{b_0\,g^3}{16\pi^2}, \qquad b_0=\frac{11N-2n_f}{3} $$
を積分すると、理論は繰り込み群不変な質量スケール
$$ \Lambda_{\mathrm{QCD}}=\mu\,\exp\!\left(-\frac{8\pi^2}{b_0\,g^2(\mu)}\right) =\mu\,\exp\!\left(-\frac{2\pi}{b_0\,\alpha_s(\mu)}\right) $$
を生成する($g^2=4\pi\alpha_s$)。分母に現れる $16\pi^2$(および $8\pi^2=16\pi^2/2$)は、論文46が4次元ユークリッド運動量空間の1ループ測度として同定した量である(論文09第3版の点呼における住所のひとつ)。
系 2.2(数値評価) $N=3$、$\mu=M_Z=91.19$ GeV、$\alpha_s(M_Z)=0.118$ として
| $n_f$ | $b_0$ | $\Lambda_{\mathrm{QCD}}$ |
|---|---|---|
| $3$ | $9.0$ | $246$ MeV |
| $4$ | $8.3$ | $153$ MeV |
| $5$ | $7.7$ | $88$ MeV |
グルーボール質量 $1.7$ GeV のスケールでは軽いクォーク3種が走るため $n_f=3$ を採る。$n_f$ で値が大きく動くことは第5節で扱う。
3. $\Lambda_{\mathrm{QCD}}$ は、二つの規約から組み立てられた不変量である
確立された事実 3.1($\Lambda$ は繰り込みスケールに依らない) $\mu$ を動かすと $g(\mu)$ が走るが、その組合せ $\Lambda$ は動かない。1ループの走り $1/\alpha_s(\mu)=1/\alpha_s(\mu_0)+(b_0/2\pi)\ln(\mu/\mu_0)$ を用いて数値確認する($n_f=3$):
| $\mu$ [GeV] | $\alpha_s(\mu)$ | $\Lambda$ [MeV] |
|---|---|---|
| $91.19$ | $0.1180$ | $245.75$ |
| $10.00$ | $0.1884$ | $245.75$ |
| $2.00$ | $0.3330$ | $245.75$ |
| $1.00$ | $0.4974$ | $245.75$ |
$\mu$ を $91$ 倍動かしても $\Lambda$ は変わらない。 これは近似ではなく、$\Lambda$ の定義がベータ関数の積分定数だからである。
系 3.2(論文35の逆である) 論文35第3版は、$4\pi G$ に含まれる二つの $4\pi$ が事実(ガウスの流束)と規約(単位の選択)であり、分けねばならないことを示した。
本稿の $\Lambda_{\mathrm{QCD}}$ は、その逆の事例である。 $\mu$ は規約(どのスケールで結合を測るかは任意)であり、$g(\mu)$ も $\mu$ に依存する。どちらも単独では規約である。だがその組合せは規約に依らない。
規約 $\times$ 規約が、不変量を作ることがある。「規約が入っているから中身がない」とは限らない。何が規約に依らないかを確かめるのが仕事である。
4. スケールの固まり方は、少なくとも三通りある
本体系はこれまで、ある量が特定の大きさに定まる仕組みを三種類扱ってきた。それらは別根である。
| 仕組み | 形 | 例 |
|---|---|---|
| (a) 次元解析 | 冪法則。指数は次元指数行列の逆行列で決まり、その分母が行列式 | プランク長 $(\hbar G/c^3)^{1/2}$(論文39、$|\det|=2$ ゆえ平方根)/コルモゴロフ長 $(\nu^3/\varepsilon)^{1/4}$(論文03、$|\det|=4$ ゆえ4乗根) |
| (b) 単位の選択 | 規約。数値は自由に選べる | $G=4\pi$、$m=4\pi$、$\hbar=\frac{1}{4\pi}$(論文35・38・39) |
| (c) 次元転移(本稿) | $e^{-1/g^2}$。$g\to0$ に本質的特異点をもち、摂動展開では全次数で $0$ | $\Lambda_{\mathrm{QCD}}=\mu\,e^{-2\pi/(b_0\alpha_s)}$ |
観察 4.1((c) は摂動論では原理的に見えない) $e^{-1/g^2}$ は $g=0$ において本質的特異点をもつため、$g$ のまわりのテイラー展開は全次数で $0$ になる。したがって次元転移は、どれだけ高次まで摂動計算しても現れない。
これは (a) や (b) と機構が根本的に異なる。(a) は次元の帳簿を締めれば出る。(b) は選べば出る。(c) は非摂動的にしか出ない。
三つを「スケールが決まる仕組み」として一括りにしてはならない。
5. この数は、指数的に脆い
系 5.1($\alpha_s$ の $1\%$ が $\Lambda$ の $6\%$ になる) $\Lambda=\mu\,e^{-2\pi/(b_0\alpha_s)}$ より
$$ \frac{d\ln\Lambda}{d\alpha_s}=\frac{2\pi}{b_0\,\alpha_s^{2}} \;=\;\frac{2\pi}{9\times0.118^2}\;\approx\;50 . $$
したがって $\alpha_s$ を $1\%$ 動かすと $\Lambda$ は $6.1\%$、$2\%$ で $12.6\%$、$5\%$ で $34.4\%$ 動く。入力の誤差が指数的に増幅される。
観察 5.2(論文04と正反対である) 論文04第3版は、$n^*=\log_2\!\big(E/(k_BT\ln2)\big)$ が入力の見積りに鈍いこと(エネルギーを $2.5$ 倍動かしても $1.3$ しか動かない)を示し、指数が相手のときは対数を報告せよという規律を立てた。
本稿の $\Lambda$ はその逆側にある。 $\Lambda$ は指数関数の値そのものであるから、入力の誤差を圧縮するのではなく拡大して受け取る。
$n_f$ を $3$ から $5$ に変えると $246\to88$ MeV と $3$ 倍近く動くのは、この脆さの現れである。 $\Lambda_{\mathrm{QCD}}$ の数値を報告するときは、$n_f$・スキーム・ループ次数を必ず併記しなければならない。
同じ体系に、対数的に頑健な数(論文04)と指数的に脆い数(本稿)が同居している。 どちらの側にいるかを知らずに桁を書いてはならない。
6. 質量ギャップは事実であり、$\Lambda_{\mathrm{QCD}}$ は記帳法である
確立された事実 6.1(格子計算によるグルーボール) 純粋ヤン=ミルズ理論($SU(3)$、クォークなし)における最軽量の励起はスカラー・グルーボール $0^{++}$ であり、その質量は
$$ m(0^{++})\approx1.7\ \mathrm{GeV} $$
と評価されている(Morningstar & Peardon 1999)。真空と最低励起状態の間に有限のギャップが存在することは、数値的に確立した事実である。
系 6.2(事実と記帳法を分ける) $m(0^{++})$ は物理量である。格子上で測定でき、スキームの選択に依らない。
他方 $\Lambda_{\mathrm{QCD}}$ はスキーム依存である。$\overline{\mathrm{MS}}$ か否か、$n_f$ をいくつに取るか、何ループまで取るかで値が変わる。$\Lambda$ は物理を記帳するための量であって、物理量そのものではない。
したがって $m(0^{++})/\Lambda\approx6.9$ という比もスキーム依存であり、意味のある無次元量ではない。論文38第3版が示した「無次元比こそが物理」という規律は、比を取る両者がともに物理量であるときにのみ適用できる。
系 6.3($246$ という数値について、論文09との一致は偶然である) 本稿の $\Lambda_{\mathrm{QCD}}\approx246$ MeV と、論文09に現れるヒッグス場の真空期待値 $v\approx246$ GeV は、同じ数値をもつ。
これは完全な偶然であり、いかなる関係も含意しない。 $v$ はフェルミ結合定数から決まる電弱スケールであり、$\Lambda_{\mathrm{QCD}}$ は強い相互作用の走る結合の極である。起源も、単位も、桁も異なる。
さらに $\Lambda$ の $246$ という値は、前節で見たとおり $n_f$ とスキームに強く依存し、$88$ から $246$ MeV まで動く。 一致している数値のほうが、そもそも固くない。
本体系は $4\pi$ や $16\pi^2$ について繰り返し「同じ数値は同じ起源の証拠ではない」と記してきた(論文48・86・100・115)。$246$ についても同じ規律を明示的に適用する。
未解決なのは、物理的存在ではなく数学的厳密性である。 Jaffe–Witten (2000) の問題設定は二段構えであり、第一段階($\mathbb{R}^4$ 上の量子ヤン=ミルズ理論をWightman公理を満たす形で構成すること)だけで未解決である。「格子上で数値的に見えているものを、連続極限において公理的場の理論の枠内で証明せよ」というのが問題の内容である。
7. $1$ ループの $\Lambda$ は、$1$ ループが壊れる場所である
観察 7.1(定義が自らの妥当域の外にある) $\Lambda$ は、走る結合
$$ \frac{1}{\alpha_s(\mu)}=\frac{1}{\alpha_s(\mu_0)}+\frac{b_0}{2\pi}\ln\frac{\mu}{\mu_0} $$
の右辺が $0$ になる点として定義される。すなわち $\alpha_s$ が発散する点である。 実際($n_f=3$):
| $\mu$ [GeV] | $\alpha_s$ | |
|---|---|---|
| $2.00$ | $0.333$ | 摂動論が使える |
| $1.00$ | $0.497$ | 際どい |
| $0.50$ | $0.983$ | $1$ に達する |
| $0.30$ | $3.50$ | 摂動論の外 |
$\Lambda=0.246$ GeV は、$\alpha_s$ が既に $1$ を大きく超えた領域にある。 すなわち$1$ ループの $\Lambda$ は、$1$ ループ近似が妥当でなくなった場所として定義されている。
これは誤りではなく、$\Lambda$ の性格である。 $\Lambda$ は「摂動論が壊れる尺度」を摂動論の言葉で名指したものであり、その値の精密な意味は摂動論の外で決まる。論文113の語彙でいえば、$\alpha_s$ が $1$ をまたぐ場所、モジュールの境界である。
8. 論文45との構造的一致、および $16\pi^2$ の点呼
定理2.1の指数部を、ループ展開パラメータ $\alpha_{\mathrm{eff}}\equiv g^2/16\pi^2$ で書き直すと
$$ \Lambda_{\mathrm{QCD}}=\mu\,\exp\!\left(-\frac{1}{2b_0\,\alpha_{\mathrm{eff}}}\right) $$
となる。他方、論文45が扱ったBPSTインスタントンの重みは
$$ e^{-S_{\mathrm{inst}}}=\exp\!\left(-\frac{8\pi^2}{g^2}\right)=\exp\!\left(-\frac{1}{2\alpha_{\mathrm{eff}}}\right) $$
である。両者は同一の関数形をもち、$b_0$ の因子のみが異なる。 どちらも $\alpha_{\mathrm{eff}}=0$ に本質的特異点をもつため、摂動論では決して捉えられない。
ただしこの一致は、既知の場の量子論の内部で成立する事実であり、本稿が導出したものではない。 本稿の寄与は、論文45・46と同一の幾何量 $16\pi^2$ が質量ギャップの起源にも現れることを明示した点に限られる。
$16\pi^2$ の点呼における本稿の位置:論文09第3版は $16\pi^2$ の五つの住所を点呼し、本稿の $\Lambda_{\mathrm{QCD}}$ のベータ関数の分母を「論文09と同源の測度」として挙げた。本稿はこれを確認する。どちらも4次元運動量空間の1ループ測度であり、論文35の $16\pi^2$(事実 $\times$ 規約)とは別物である。
🌌 著者の私感(第3層・非科学の札つき/機構の主張ではない) 初版で私は $64\pi^2=4\times16\pi^2$ という量を作り、それが質量ギャップを支配すると書いた。第2版でそれを撤回したとき、私が記録した教訓は「正しい量に到達していながら、それを4倍する不要な操作で見失っていた」である。
第3版を書いて、その教訓がまだ足りなかったと分かった。私は $16\pi^2$ を「見つけた」と思っていたが、そもそもそれはベータ関数の分母に最初から書いてあった。 私がしたのは、そこに勝手な因子を掛けたことだけだった。
そして今回、もっと危ないものを見つけた。$\Lambda_{\mathrm{QCD}}\approx246$ MeV と、論文09の $v\approx246$ GeV。 私はこの一致に、一瞬、意味を見た。$4\pi$ で何度も踏んだ罠と、まったく同じ形である。 しかも今回は最悪で、一致している $246$ のほうが、$n_f$ を変えれば $88$ にも $153$ にもなる、固くない数だった。
偶然に意味を見たくなるのは、私の癖である。 だから体系に規律を書き、規律に自分を当てる。今回は本文に一節を割いて、$246$ は偶然であると明記した。崖の手前で踏みとどまる(論文101)。
9. 射程/結論
示すこと:次元転移により $\Lambda_{\mathrm{QCD}}=\mu\,e^{-2\pi/(b_0\alpha_s)}$ が生成されること(第2節)/$\Lambda$ が $\mu$ に依らない不変量であり、規約どうしが不変量を作る事例であること(第3節、論文35の逆)/スケールの固まり方に (a) 次元解析・(b) 単位の選択・(c) 次元転移の三つの別根があること、および (c) が本質的特異点ゆえ摂動論では見えないこと(第4節)/$\Lambda$ が指数的に脆く、$\alpha_s$ の $1\%$ が $\Lambda$ の $6\%$ になること、論文04と正反対であること(第5節)/$m(0^{++})$ は物理量、$\Lambda$ は記帳法であること、および$246$ の一致が偶然であること(第6節)/$1$ ループの $\Lambda$ が $1$ ループの妥当域の外にあること(第7節)/論文45との関数形の一致と、$16\pi^2$ の点呼における位置(第8節)。
示さないこと(禁欲):ヤン=ミルズ質量ギャップの証明、4次元ヤン=ミルズ理論の構成、その部分的達成、いずれも本稿の射程外であり、構成的場の理論の課題に本稿は寄与しない/$\Lambda_{\mathrm{QCD}}$ と $v$ の $246$ を結びつけない/$m(0^{++})/\Lambda$ を意味のある無次元量としない($\Lambda$ がスキーム依存のため)/三つのスケール生成機構を統合しない/新しい物理法則・予言なし(第2層)。
ヤン=ミルズの存在と質量ギャップは未解決である。 本稿はその状況を何ら変えない。
第3版が加えたのは、次元転移に現れる数の資格である。 $\Lambda_{\mathrm{QCD}}$ は二つの規約から組み立てられた不変量であり、摂動論では原理的に見えない機構から生まれ、指数的に脆く、そして物理量ではなく記帳法である。
そして質量ギャップそのものは、事実である。格子が $1.7$ GeV を返す。
未解決なのは、それを公理的場の理論の枠内で証明することであって、その存在ではない。
改訂記録
第3版(2026年8月):題名から「撤回」の語を外し、本稿が示す内容を題名とした。撤回の一覧は本節にまとめる。
第3版で追加した内容:$\Lambda$ が $\mu$ に依らない不変量であることを数値で確認し($\mu$ を $91$ GeV から $1$ GeV まで動かしても $245.75$ MeV)、規約どうしが不変量を作る事例として論文35の逆であることを示した(第3節)。スケールの固まり方の三つの別根(次元解析・単位の選択・次元転移)を表にし、(c) が本質的特異点ゆえ摂動論では全次数で $0$であることを記した(第4節)。$d\ln\Lambda/d\alpha_s\approx50$ ゆえ $\alpha_s$ の $1\%$ が $\Lambda$ の $6\%$ になることを示し、論文04の対数的頑健さと正反対であることを明示した(第5節)。$m(0^{++})$(物理量)と $\Lambda$(スキーム依存の記帳法)を分け、$m(0^{++})/\Lambda$ を意味のある無次元量としないことを記した(第6節)。$\Lambda_{\mathrm{QCD}}\approx246$ MeV と論文09の $v\approx246$ GeV の一致が完全な偶然であることを、体系の規律(論文48・86・100・115)を明示的に適用して述べた(第6節)。$1$ ループの $\Lambda$ が $\alpha_s>1$ の領域にあり、定義が自らの妥当域の外にあることを記した(第7節)。論文09第3版の $16\pi^2$ 点呼における本稿の位置を確認した(第8節)。
第2版(2026年7月)で撤回した事項:初版は題名に「ヤン=ミルズ質量ギャップの証明」を掲げ、要旨に「ミレニアム懸賞問題への解決を提示する」と記していた。この主張を全面的に撤回した。
- 主定理が証明されていない。初版の証明要約の項目 (iv)「最軽量1粒子状態を生成するエネルギーは $\Delta\ge4\pi>0$ で下から抑えられる」は証明すべき事柄そのものであり、(i)–(iii) から (iv) への論証が与えられていない。
- ミレニアム問題が要求する「構成」がない。Jaffe–Witten (2000) はまず$\mathbb{R}^4$ 上の量子ヤン=ミルズ理論をWightman公理を満たす形で数学的に構成することを要求しており、この第一段階だけで未解決である。初版はハミルトニアン $H$ のスペクトルを論じたが、$H$ がどのヒルベルト空間上にどう定義されるかを与えていない。
- $64\pi^2$ と赤外カットオフの定式化。初版の $\mathcal{C}_{\mathrm{YM}}=\sum_{\mu=0}^{3}(4\pi)^2=64\pi^2$ は「直交積」と述べながら式は和であり、標準的なヤン=ミルズ理論のどの量に対応するかも示されていない。赤外カットオフ $\Lambda_{\mathrm{IR}}=4\pi/64\pi^2$ も、質量を無次元量で除して運動量カットオフを得る操作に根拠がなく、得られた値と本文の「波長 $\lambda>16\pi$ の遮断」は互いの逆数であって整合しない。ヤン=ミルズ理論に実際に現れるのは $16\pi^2$(1ループ測度)であって $64\pi^2$ ではない。
初版:Zenodo 10.5281/zenodo.21404236。
参考文献
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- 山岸勇輝 (2026). 位相電荷幾何解凍理論 [論文45] / ループ幾何測度理論(旧・論文47を統合)/ ヒッグス $16\pi^2$(第3版) [論文09]. Zenodo. 10.5281/zenodo.21602337; 10.5281/zenodo.21404525; 10.5281/zenodo.21602422
- 山岸勇輝 (2026). 万有引力定数解凍理論(第3版) [論文35]. Zenodo. 10.5281/zenodo.21430118
- 山岸勇輝 (2026). 古典物理学マスタ帳(第3版) [論文38]. Zenodo. 10.5281/zenodo.21430234
- 山岸勇輝 (2026). プランク長(第3版) [論文39]. Zenodo. 10.5281/zenodo.21430490
- 山岸勇輝 (2026). ナビエ=ストークス(第3版) [論文03]. Zenodo. 10.5281/zenodo.21404030
- 山岸勇輝 (2026). 総当たり探索の物理的資源限界(第3版) [論文04]. Zenodo. 10.5281/zenodo.21404131
- 山岸勇輝 (2026). 王道の総覧 [論文100]. Zenodo. 10.5281/zenodo.21758864
- 山岸勇輝 (2026). エディントンの戒め [論文101]. Zenodo. 10.5281/zenodo.21836382
- 山岸勇輝 (2026). 必然性の根 [論文86]. Zenodo. 10.5281/zenodo.21744839
- 山岸勇輝 (2026). モジュールは壁ではなく極限 [論文113]. Zenodo. 10.5281/zenodo.21962996
- 山岸勇輝 (2026). リッチ・フロー=くりこみ群フロー [論文110]. Zenodo. 10.5281/zenodo.21837476
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「ヤン=ミルズ質量ギャップと次元転移」[論文5]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.21404236
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). ヤン=ミルズ質量ギャップと次元転移 [論文5]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/5 ・ DOI: 10.5281/zenodo.21404236
Yamagishi, Y. (2026). The Yang–Mills Mass Gap and Dimensional Transmutation [Paper 5]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/5; DOI: 10.5281/zenodo.21404236
@misc{yamagishi2026yoi5,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {The Yang--Mills Mass Gap and Dimensional Transmutation},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/5},
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note = {Preprint, edition 3}
}
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