【F044】連敗の最長は、勝率と件数でほぼ決まる

要旨

本稿が問うのは、何連敗すれば異常なのか、である。答えは、目安は勝率と件数だけで決まる。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。

第一に、これが本稿の芯である。★ 最長連敗は、log(件数) ÷ log(1 ÷ 敗率) という目安に乗る。 四つの設定で 1.0219・0.8255・1.0863・1.0808、中央 1.0514 である(第4節)。

第二に、★ 合成乱数でも同じ目安に乗る。 中央 0.8727 である。この目安は市場の性質ではなく、独立な勝ち負けの算術である(第7節)。

第三に、★ 並べ替えだけで、最長連敗は大きく動く。 四銘柄の中央で、最小 7.0 から最大 23.0 まで、最大 ÷ 最小が 3.3333 倍になる(第5節)。

第四に、★ 予言③は外れた。16 通りのうち 3 が百分位 0.95 を超えた。 ただし 3 つとも GBPUSD であり、独立な 3 件ではない(第5節)。

第五に、★ 予言①も外れた。勝率は 0.4682 から 0.6077 までしか動かなかった。 利確が遠いと期限で決まってしまうためで、期限で決まった割合は 0.2203 から 0.7034 まで上がる(第3節)。

第六に、勝率と件数は並べ替えで動かない。 ★ 定義から動かないので、検算にはなるが発見ではない(第6節)。

本稿の射程(scope note):新しい数学定理も新しい法則も主張しない。独立な試行における最長連の目安は古典的な結果である。特定の商材や提唱者を論じない。実在の教材、その著者、販売元は主題ではなく、一切名指さない。売買を論じない。損益ではなく勝ち負けの並びだけを扱い、コストも入れていない(第7節)。予言①③が外れた。勝率の幅が出ず、16 通りのうち 3 が端に出た(第3節・第5節・第7節)。目安は近似である。厳密な分布ではなく、桁を見るためのものである(第7節)。端に出た 3 件は同じ銘柄である。独立な 3 件として数えてはいけない(第5節)。射程は日中・少数銘柄に限る。四銘柄・六年・1 時間足の測定である。月次の時系列モメンタム(数十市場・保有1〜12ヶ月)は学術的に文書化されており、本稿はそれを否定しない。予測を主張しない。

1. 記法と問い

「十七連敗した」「この手法は壊れた」。どちらもよく言われる。

言われること 言われないこと
十七連敗した 何連敗すれば異常なのか
手法が壊れた 同じ勝率・同じ件数なら、それが普通かもしれないこと
こんなに続くのはおかしい 件数が増えれば最長連敗も伸びること

観察 1.1:★ 連敗の長さは、勝率と件数だけで目安が立つ。 独立な試行なら、最長の連は log(件数) ÷ log(1 ÷ 敗率) のあたりに来る。

観察 1.2:そして順序を変えれば、同じ勝ち負けの集合でも最長連敗は変わる。 ★ 合計も勝率も変わらないのに、途中の並びだけが変わる。 最大ドローダウンが取引の順序に属することは [F031] で測ってある。本稿は同じ問いを、損益ではなく勝ち負けの並びで立てる。

観察 1.3:分離子は、取引を並べる順序である。 勝ち負けの集合・件数・勝率をすべて固定し、並べる順番だけを変える。

問い:実際の並びの最長連敗は、目安からどれだけ離れているのか。

2. 測る量と設計を、先に書く

走らせる前に宣言し、実行時には変えていない。

格子 1 時間足(中値・完成足のみ)
取引 移動平均 20/80 のクロスの向きで、24 本ごとに一件(重ならない)
勝敗 利確 = k × σ、損切り = σ の先着。期限(24 本)に達したら最終の符号で決める
σ 選択期間(〜2022-01-01)の 24 本先の値動きの標準偏差
k 0.5 / 1 / 2 / 4
並べ替え 1,000 回(種は固定)
目安 log(件数) ÷ log(1 ÷ 敗率)
測る量 勝率/最長連敗/最長連勝/並べ替えの分布と百分位/目安との比
基準線 足の中まで合成乱数(3 系列)
分離子 取引を並べる順序
銘柄・期間 USDJPY・EURUSD・GBPUSD・XAUUSD/2019–2024

観察 2.1:★ 同じ足で利確と損切りの両方に触れたら、損切りを先とする。 不利な側を先に取る規約である。

観察 2.2:件数は 1,450 から 1,519 件である。 σ は USDJPY の 44.8971 から XAUUSD の 167.3431 pips である。

観察 2.3:★ k を変えるのは勝率を動かすためである。 利確を近くすれば勝率は上がり、遠くすれば下がるはずである。

観察 2.4:目安は近似である。 ★ 厳密な分布ではなく、桁を見るためのものである。

予言(測る前に書いた)

① 利確と損切りの比を変えると、勝率は設計どおり大きく動く。

② 最長連敗は、log(件数) ÷ log(1 ÷ 敗率) にほぼ乗る。

③ 実際の並びの最長連敗は、並べ替えた分布の中にある(百分位が 0.95 を超えない)。

④ 合計と勝率は、並べ替えでまったく動かない(=検算)。

⑤ 合成乱数でも ② が成り立つ。

3. 勝率を設計で動かす

同じ取引・同じ向き。違うのは利確と損切りの比だけである。

計算 3.1 四つの設定(四銘柄の中央)

k 件数 勝率 敗率 最長連敗 最長連勝
0.5 1,518 0.6077 0.3923 8.0 13.0
1.0 1,518 0.5091 0.4909 8.5 10.5
2.0 1,518 0.4699 0.5301 12.5 9.5
4.0 1,518 0.4682 0.5318 12.5 9.5

観察 3.2:★ 予言①は外れた。 勝率は 0.4682 から 0.6077 までしか動かない(1.2980 倍)。k=2 と k=4 はほとんど同じである。

計算 3.3 なぜ勝率が思ったほど動かないか(★ 後から足した)

ここは後出しである。予言①が外れてから、その理由を測った。

k 勝率 期限で決まった割合
0.5 0.6077 0.2203
1.0 0.5091 0.4440
2.0 0.4699 0.6402
4.0 0.4682 0.7034

観察 3.4:★ 利確が遠いと、期限までに触れず、最終の符号で決まってしまう。 期限で決まった割合は 0.2203 から 0.7034 まで上がる。

観察 3.5:★ だから k=2 と k=4 はほぼ同じ勝率になる。 どちらも大半が「24 本後の符号」で決まっており、利確の位置がもう効いていない。

観察 3.6:銘柄ごとに見ても同じである。 k=4 の勝率は 0.4460 から 0.4862 の範囲にある。

4. 最長連敗は、目安に乗るか

目安 = log(件数) ÷ log(1 ÷ 敗率)。勝率と件数だけで決まる。

計算 4.1 実測と目安(四銘柄の中央)

k 敗率 最長連敗 実測 目安 実測 ÷ 目安 並べ替えの中央
0.5 0.3923 8.0 7.8282 1.0219 7.0
1.0 0.4909 8.5 10.2969 0.8255 9.2
2.0 0.5301 12.5 11.5069 1.0863 10.0
4.0 0.5318 12.5 11.5650 1.0808 10.5

観察 4.2:★ これが本稿の芯である。予言②は当たった。 実測 ÷ 目安は 1.0219・0.8255・1.0863・1.0808、中央 1.0514 である。

観察 4.3:★ 並べ替えの中央も目安に乗る。 0.8942・0.8983・0.8690・0.9079、中央 0.8963 である。目安がわずかに大きめに出るが、桁は合っている。

計算 4.4 銘柄ごと(最長連敗 実測 / 目安)

銘柄 k=0.5 k=1.0 k=2.0 k=4.0
USDJPY 8 / 7.86 8 / 10.29 13 / 11.82 13 / 12.40
EURUSD 7 / 7.38 8 / 10.30 9 / 11.56 9 / 11.61
GBPUSD 11 / 7.79 11 / 10.16 15 / 10.92 15 / 11.00
XAUUSD 8 / 7.87 9 / 10.52 12 / 11.45 12 / 11.52

観察 4.5:★ GBPUSD だけ、四つの設定すべてで目安より長い。 11 対 7.79、11 対 10.16、15 対 10.92、15 対 11.00 である。

観察 4.6:残る三銘柄は、目安の上にも下にも出る。 ★ EURUSD は k=2 と k=4 で 9 対 11.56 と、むしろ短い。

図1 最長連敗は、勝率と件数だけの目安に乗る

図1:横が目安 log(件数) ÷ log(1 ÷ 敗率)、縦が実測の最長連敗。色つきが四銘柄、灰色が合成乱数、破線が一致する線である。

5. 実際の並びは、分布のどこに来るか

計算 5.1 並べ替え 1,000 回(四銘柄の中央)

k 実測 並べ替え 最小 並べ替え 中央 並べ替え 最大 百分位
0.5 8.0 5.0 7.0 14.5 0.5670
1.0 8.5 6.0 9.2 20.0 0.1430
2.0 12.5 7.0 10.0 23.0 0.7670
4.0 12.5 7.0 10.5 19.5 0.7115

観察 5.2:★ 並べ替えだけで、最長連敗は大きく動く。 k=1.0 では 6.0 から 20.0 まで、最大 ÷ 最小が 3.3333 倍である。

観察 5.3:★ 予言③は外れた。 百分位は中央 0.6325、幅 0.0540 から 0.9720 で、16 通りのうち 3 が 0.95 を超えた。

観察 5.4:最長連勝のほうは中央 0.4440 で、0.95 超えは 2 である。 ★ 敗と勝で、端に出る数はさほど違わない。

計算 5.5 端に出た三つ(★ 後から足した)

銘柄 k 実測 並べ替え 中央 百分位 目安
GBPUSD 0.5 11 7.0 0.9650 7.7931
GBPUSD 2.0 15 10.0 0.9700 10.9168
GBPUSD 4.0 15 10.0 0.9720 11.0011

観察 5.6:★ 三つとも GBPUSD である。 独立な 3 件ではない。同じ一本の取引の列を、k を変えて見ているだけである。

観察 5.7:★ そして端に出たものも、目安そのものからは大きく離れていない。 11 対 7.7931、15 対 10.9168、15 対 11.0011 である。

観察 5.8:中立なら 16 通りのうち 0.8 通りが 0.95 を超える。 ★ 3 は少し多いが、独立でない 3 件なので、そこから何かを結論することはしない。

6. 動かないもの(検算)

観察 6.1:勝率は並べ替えで動かない。 同じ列を並べ替えただけだからである。

観察 6.2:件数も動かない。 ★ どちらも定義から動かないので、検算にはなるが発見ではない。

観察 6.3:勝率が高いほど最長連敗は短く、最長連勝は長い。 k=0.5 では 8.0 と 13.0、k=4.0 では 12.5 と 9.5 である。★ 目安の式どおりの向きである。

図2 勝率が下がれば、連敗は長くなる

図2:横が勝率、縦が最長連敗。四銘柄をそれぞれの色で描いている。

7. 基準線と限界

計算 7.1 合成乱数で同じことをする

k 実測 ÷ 目安 乱数 ÷ 目安 実測の百分位 乱数の百分位
0.5 1.0219 0.8083 0.5670 0.0765
1.0 0.8255 0.9354 0.1430 0.3680
2.0 1.0863 0.8727 0.7670 0.2460
4.0 1.0808 0.8727 0.7115 0.2545

観察 7.2:★ 予言⑤は当たった。合成乱数でも同じ目安に乗る。 中央 0.8727 である。

観察 7.3:★ つまりこの目安は市場の性質ではなく、独立な勝ち負けの算術である。 方向の情報がゼロの系列でも、同じ長さの連敗が出る。 この基準線が何についてゼロなのかは [F033] で測ってある。

観察 7.4:合成乱数の百分位は中央で実測より低い。 ★ だが四つとも 0.95 を超えていないという点では同じである。

限界

  1. ⚠️ 予言①と③が外れた。 勝率の幅が出ず、16 通りのうち 3 が端に出た。本稿はその外れを書き、①については理由(期限で決まる割合)まで測っている。
  2. 端に出た 3 件は同じ銘柄である。 独立な 3 件として数えてはいけない。
  3. 目安は近似である。 厳密な分布ではなく、桁を見るためのものである。
  4. 勝敗の決め方を一通りに固定している。 期限に達したら最終の符号で決める。
  5. 取引の列を一つに固定している。 移動平均 20/80 の向きだけである。
  6. 損益を見ていない。 勝ち負けの並びだけを扱っており、コストも入れていない。
  7. 並べ替えは 1,000 回である。 百分位は千分の一までしか分けられない。
  8. 四銘柄・六年・1 時間足である。 他の市場、他の期間について述べるものではない。

結び

「十七連敗した」「この手法は壊れた」。だが何連敗すれば異常なのかは、勝率と件数だけで目安が立つ。

★ 最長連敗は、log(件数) ÷ log(1 ÷ 敗率) に乗る。 四つの設定で実測 ÷ 目安は 1.0219・0.8255・1.0863・1.0808、中央 1.0514 である。

★ 合成乱数でも同じ目安に乗る。 中央 0.8727。この目安は市場の性質ではなく、独立な勝ち負けの算術である。方向の情報がゼロの系列でも、同じ長さの連敗が出る。

★ そして並べ替えだけで、最長連敗は大きく動く。 k=1.0 では 6.0 から 20.0 まで、3.3333 倍である。合計も勝率も件数も変わらないのに、途中の並びだけが変わる。

★ 予言は二つ外れた。 勝率は 0.4682 から 0.6077 までしか動かなかった。利確が遠いと期限までに触れず、最終の符号で決まってしまうためで、期限で決まった割合は 0.2203 から 0.7034 まで上がる。k=2 と k=4 がほとんど同じ勝率になるのはそのためである。

★ もう一つは、16 通りのうち 3 が百分位 0.95 を超えたことである。 中立なら 0.8 通りなので少し多い。だが三つとも GBPUSD であり、独立な 3 件ではない。同じ取引の列を k を変えて見ているだけである。 そして端に出たものも、目安からは離れていない(11 対 7.7931、15 対 10.9168、15 対 11.0011)。

したがって、連敗の長さを報告するときに必要なのは、勝率と件数から出る目安である。 ★ 「十七連敗」が異常かどうかは、その二つを言わなければ判定できない。 そして同じ勝ち負けの集合でも、並びを変えれば最長連敗は三倍以上動く。

データと再現

データ 為替は Dukascopy 由来のティック(2019 年以降はミリ秒・bid・ask まで一致することを確認済み)。金は Dukascopy
期間 2019–2024(六年)
銘柄 USDJPY・EURUSD・GBPUSD・XAUUSD
足 1 時間足・中値・完成足のみ。ティックの無い足は作らない
取引 移動平均 20/80 のクロスの向きで、24 本ごとに一件(重ならない)
勝敗 利確 = k × σ、損切り = σ の先着(k = 0.5・1・2・4)。期限(24 本)に達したら最終の符号。同じ足で両方に触れたら損切りを先とする
σ 選択期間(〜2022-01-01)の 24 本先の値動きの標準偏差
並べ替え 1,000 回(種は固定)
目安 log(件数) ÷ log(1 ÷ 敗率)
測る量 勝率/最長連敗/最長連勝/並べ替えの分布と百分位/目安との比/期限で決まった割合
基準線 足の中まで合成乱数(3 系列)。一定のばらつきの差を足して作る
検算 検算/F044.py(--zu で図も書き出す)。本文の数字はすべて 検算/F044_output.txt から取っている
図 図/F044_zu1・図/F044_zu2(png・svg・英語版)
乱数の種 固定。再実行しても同じ値が出る
土台の検査 _ツール/audit_bars.py(足の先読み・夏時間・日の区切り)。記録は _土台の検査.txt

参考文献

  • 山岸勇輝 (2026). 最大ドローダウンは、取引の順序に属している [F031]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22893510
  • 山岸勇輝 (2026). 合成乱数には、ボラティリティの群れが無い [F033]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22893674

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「連敗の最長は、勝率と件数でほぼ決まる」[F044]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22895010

YOI F044FX と金融ビットコインに記録済み

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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F044・DOI 10.5281/zenodo.22895010・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 連敗の最長は、勝率と件数でほぼ決まる [F044]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F044 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22895010

Yamagishi, Y. (2026). The Longest Losing Streak Is Set by the Win Rate and the Count [F044]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/F044; DOI: 10.5281/zenodo.22895010

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指紋(SHA-256)と確かめ方
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