要旨
衛生行政報告例(令和6年度)の第1表-1(旧食品衛生法)と第3表-1(改正食品衛生法)から、許可のいる食品営業を営業の種類別に数え、新規許可・廃業・処分・告発・調査監視指導施設数を突き合わせた。
許可のいる食品営業は1,904,239施設。 旧食品衛生法676,718+改正食品衛生法1,227,521で、改正法の割合は64.5%。2021年6月の改正で許可の区分が変わり、旧法の許可は期限が切れるまで有効なので、2つの表を足さないと総数にならない。
届出を要する営業865,122(I011)を足すと、2,769,361施設になる。
1年で1,125,567施設が調査・監視指導を受けた。許可のいる施設の59.1%である。
処分は1,175件(許可施設の0.0617%、1,621施設に1件)。 内訳は営業停止命令531・禁止命令159・処分その他443・廃棄命令23・改善命令19で、営業許可取消命令は0件。 告発は無許可営業3件だけである。
旧法の廃業率29.2%は、改正法の5.7%の5.1倍。 旧法の新規許可は年2件、改正法は359,762件で、移行はほぼ終わっている。
改正法の32業種のうち、食品の放射線照射業は0施設、特別牛乳搾取処理業は3施設。 飲食店営業946,451だけで改正法の77.1%、上位3業種で88.8%を占める。
1. はじめに
本稿には、これまでの論文の数字を直す目的がある。
I005・I011・I018・I020 で「食品営業(許可+届出)2,299,735施設」と書いてきた。だがこの2,299,735は、飲食店営業の許可1,434,613(旧488,162+新946,451)+届出865,122であって、全業種の許可を含んでいなかった。
全業種の許可を足すと1,904,239。届出を足すと2,769,361になる。 I018・I020・I021 の本文は、この数字に直してある。
そのうえで、第1表-1・第3表-1にしか無いものを数える。調査・監視指導施設数、処分、告発、営業の種類別の内訳である。
許可のいる食品営業はいくつあり、1年にどれだけ回られているのか。
2. データ
| 旧食品衛生法の許可 | 厚生労働省「衛生行政報告例」令和6年度 第1表-1(食品衛生)。営業の種類別。施設数は令和6年度末現在、他は年度中 |
| 改正食品衛生法の許可 | 同 第3表-1 |
| 届出を要する営業 | 同 第6表-1(I011 で数えたもの) |
旧法31業種・改正法32業種の足し合わせは、どちらも総数とぴたり一致する(676,718、1,227,521、いずれも差0)。
旧法の表にある「(再掲)自動販売機」18,589は、業種の足し合わせに入れていない。
第1表-1の注により、次の点に注意が要る。
- 奈良県は管理システムの都合で、飲食店営業の営業施設数が本統計表に含まれていない(中核市である奈良市分は含まれる。注1)
- 旧法の「廃業施設数」には、改正法の許可を取り直した施設は含まれない(注2)
- 調査・監視指導施設数には、奈良県と岩手県盛岡市の分が含まれていない(注3・注4)
3. 結果
3-1 許可のいる食品営業1,904,239
| 施設 | |
|---|---|
| 旧食品衛生法 | 676,718 |
| 改正食品衛生法 | 1,227,521 |
| 合わせて | 1,904,239(改正法64.5%) |
| 届出を要する営業(I011) | 865,122 |
| 許可+届出 | 2,769,361 |
2021年6月の食品衛生法改正で許可の区分が変わった。旧法の許可は期限が切れるまで有効なので、2つの表に分かれている。片方だけでは総数にならない。
3-2 移行はほぼ終わっている

図1 許可のいる食品営業1,904,239と、1年に回った1,125,567(令和6年度)。
縦軸は対数。調査・監視指導施設数には奈良県と盛岡市の分が含まれていない。
| 年度中 | 旧食品衛生法 | 改正食品衛生法 |
|---|---|---|
| 施設(年度末現在) | 676,718 | 1,227,521 |
| 営業許可(継続) | 0 | 35 |
| 営業許可(新規) | 2 | 359,762 |
| 廃業 | 197,277 | 69,605 |
| 廃業の割合 | 29.2% | 5.7% |
旧法の新規許可は、全国で年2件。 もう出ない。
旧法の廃業率29.2%は、改正法の5.7%の5.1倍である。 旧法の許可は期限切れとともに消えていく。
ただしこの「廃業」には、改正法の許可を取り直した施設は含まれない(注2)。つまり29.2%は「やめた」施設で、「切り替えた」施設ではない。
廃業は旧法197,277+改正法69,605で、合わせて266,882施設。
3-3 1年で1,125,567施設を回っている
| 調査・監視指導施設数(年度中) | 施設 |
|---|---|
| 旧食品衛生法 | 401,598 |
| 改正食品衛生法 | 723,969 |
| 合わせて | 1,125,567 |
| 分母 | 割合 |
|---|---|
| 許可施設1,904,239に対して | 59.1% |
| 許可+届出2,769,361に対して | 40.6% |
許可のいる施設の59.1%は、年に1回は回られている。
この数字は奈良県と岩手県盛岡市の分を含んでいないので、実際はこれより高い。
3-4 処分1,175件、営業許可取消0件
| 処分(年度中) | 旧法 | 改正法 | 合わせて |
|---|---|---|---|
| 営業許可取消命令 | 0 | 0 | 0 |
| 営業禁止命令 | 57 | 102 | 159 |
| 営業停止命令 | 189 | 342 | 531 |
| 改善命令 | 4 | 15 | 19 |
| 物品廃棄命令 | 9 | 14 | 23 |
| その他 | 60 | 383 | 443 |
| 合わせて | 319 | 856 | 1,175 |
| 告発(無許可営業) | 0 | 3 | 3 |
| 告発(その他) | 0 | 0 | 0 |
| 許可施設1,904,239に対して処分1,175件 | 0.0617%(1,621施設に1件) |
| 調査・監視指導1,125,567施設に対して | 0.1044% |
| もっとも多い処分 | 営業停止命令531件(処分の45.2%) |
営業許可取消命令は全国で0件である。
3-5 飲食店営業だけで77.1%
| 改正食品衛生法(施設数の多い順) | 施設 | 新規 | 処分 |
|---|---|---|---|
| 飲食店営業 | 946,451 | 285,784 | 616 |
| 菓子製造業 | 101,806 | 26,769 | 41 |
| そうざい製造業 | 41,872 | 10,264 | 35 |
| 魚介類販売業 | 29,202 | 7,102 | 44 |
| 食肉販売業 | 24,335 | 6,005 | 7 |
| 漬物製造業 | 16,318 | 6,397 | 16 |
| 水産製品製造業 | 13,199 | 3,481 | 23 |
| 調理の機能を有する自動販売機 | 7,500 | 2,607 | 3 |
| 密封包装食品製造業 | 6,831 | 2,042 | 4 |
| 麺類製造業 | 6,077 | 1,316 | 3 |
飲食店営業946,451だけで改正法の許可の77.1%、上位3業種で88.8%を占める。
3-6 制度としてはあるが、ほとんど無い業種
| 改正食品衛生法(施設数の少ない順) | 施設 |
|---|---|
| 食品の放射線照射業 | 0 |
| 特別牛乳搾取処理業 | 3 |
| 集乳業 | 35 |
| 液卵製造業 | 226 |
| 納豆製造業 | 226 |
| 複合型冷凍食品製造業 | 278 |
| 乳処理業 | 359 |
| 氷雪製造業 | 449 |
32業種のうち、食品の放射線照射業は全国で0施設。 100施設未満の業種が3つある。
特別牛乳搾取処理業は3施設。 I016 で特別牛乳を処理していたのは3都道府県(福岡31・神奈川13・北海道8キロリットル)だったから、施設の数と都道府県の数が一致している。
4. 考察
4-1 2つの表を足さないと総数にならない
これが本稿のもっとも実用的な結論である。
「日本に食品営業の許可施設はいくつあるか」を衛生行政報告例で調べると、第1表-1と第3表-1を両方見なければ答えが出ない。 片方だけを見れば、676,718か1,227,521になる。正しくは1,904,239である。
そして本稿を書くまで、私自身がこれを取り違えていた。 I005・I011・I018・I020 では「許可+届出2,299,735」と書いていたが、その1,434,613は飲食店営業だけの許可だった。I018・I020・I021 の本文は直してある。
法改正の移行期には、統計が2つに分かれる。 2021年6月の改正から令和6年度末まで3年半が経っても、まだ676,718施設が旧法の許可で営業している。
4-2 59.1%が年1回回られている
調査・監視指導を受けた施設は1,125,567。許可のいる施設の59.1%である。
I018 で計算した「1人あたり324施設」は、割り算にすぎなかった。 実際に回った施設の数がここにある。
食品衛生監視員8,558人(専従1,372人。I018)で1,125,567施設を回ったとすると、1人あたり年132施設になる。専従だけで割れば820施設。
これは「見ていない」という話ではない。 6割近くが年1回は回られている。ただし回数ではなく施設の数なので、1つの施設に何回入ったかは分からない。
I020 で見た収去は95,546点で、許可+届出2,769,361施設に対して29.0施設に1点だった。回ることと、検体を採ることは別である。 回るのは6割、採るのは29施設に1点。
4-3 1,125,567回って、処分1,175件
調査・監視指導1,125,567施設に対して処分1,175件。0.1044%、958施設に1件である。
これまでの論文と並べてみる。
| 分母 | 処分など | 率 | |
|---|---|---|---|
| 食品営業(本稿) | 調査・監視指導1,125,567施設 | 処分1,175件 | 0.1044% |
| 医療法の立入検査(I021) | 25,678件 | 処分3件 | 0.0117% |
| 医薬品の販売(I014) | 処分2,633件のうち | 取消・停止6件 | 0.063% |
| 理容所・美容所(I015) | 385,747施設 | 閉鎖命令0件 | 0% |
| 興行場(I019) | 4,826施設 | 処分0件 | 0% |
食品はこのなかでもっとも処分が多い。 それでも1,000施設に1件である。
営業許可取消命令は0件。 I015 の閉鎖命令0件、I019 の処分0件と同じで、もっとも重い処分は使われていない。
告発は無許可営業3件だけ。無許可で食品を売っていて告発されるのは、全国で年3件である。
4-4 「制度としてはあるが、ほとんど無い」が繰り返し出てくる
食品の放射線照射業0施設、特別牛乳搾取処理業3施設。
これまでに見てきたものと同じ形である。
| 食品の放射線照射業(本稿) | 0施設 |
| 特別牛乳搾取処理業(本稿) | 3施設 |
| 無殺菌の特別牛乳(I016) | 8キロリットル、北海道のみ |
| 銭湯が0の県(I009) | 山形県 |
| 分娩を扱う助産所が0の県(I021) | 6県 |
| 行商(I011) | 10,408のうち2,187が宮崎県 |
日本の許可制度には、法律上は全国で使えるが、実際には数施設しか使っていない区分がいくつもある。
これは制度の欠陥ではない。需要が無ければ施設は作られない。 ただし、「その区分がある」ことと「その商売が成り立つ」ことは別であるという点は、小規模事業者にとって実用的な意味を持つ。
4-5 飲食店営業が77.1%であることの意味
改正法の許可1,227,521のうち、飲食店営業が946,451(77.1%)。上位3業種(飲食店・菓子製造・そうざい製造)で88.8%。
食品の許可制度は、実質的に飲食店の制度である。
X001 で見たとおり、526分類の中央値は1事業所あたり14.77人。I015 で見たとおり、理容所は1.80人、美容所は2.12人。飲食店も小さい商売である。
I018 で見たとおり、それを見る食品衛生監視員は8,558人(専従1,372人)。946,451の飲食店を、1,372人の専従が見ているという関係になる。
処分は飲食店営業で616件。946,451施設の0.065%である。
5. 限界
- 2021年6月の食品衛生法改正で許可の区分が変わった。旧法の許可は期限が切れるまで有効なので、2つの表を足さないと総数にならない
- 旧法の「廃業施設数」には、改正法の許可を取り直した施設は含まれない(第1表-1の注2)。ただし一部の自治体では管理システムの都合で含まれている場合がある
- 調査・監視指導施設数には、奈良県と岩手県盛岡市の分が含まれていない(注3・注4)。実際の数はこれより多い
- 奈良県は管理システムの都合で、飲食店営業の営業施設数が本統計表に含まれていない(中核市である奈良市分は含まれる。注1)
- 「調査・監視指導施設数」は回った施設の数で、回数ではない。1つの施設に何回入ったかは分からない
- 旧法の表にある「(再掲)自動販売機」18,589は、業種の足し合わせに入れていない
- 届出を要する営業(I011)には許可が要らない。 足し合わせは施設の総数の目安である
- 処分の少なさが問題の少なさを意味するとは限らない
6. 再現の手順
- e-Stat で衛生行政報告例 令和6年度の第1表-1(旧食品衛生法)と第3表-1(改正食品衛生法)を落とす(CP932)
- どちらも「総数」の行と営業の種類の行を取る。旧法の表の「(再掲)自動販売機」と内訳の行は足さない
- 施設数を足して許可の総数を出す。片方だけでは総数にならない
- 新規許可・廃業・処分・告発・調査監視指導施設数を、旧法と改正法で並べる
- 廃業 ÷ 施設で廃業率を出し、旧法と改正法で比べる
- 注1〜注4を読む。 奈良県と盛岡市が一部の欄に含まれていない
本稿の数値は、すべて1本のスクリプト(kensan_213)の出力である。中間の数値を手で書き写していない。
この論文の位置づけ
新しい理論を主張するものではない。衛生行政報告例の第1表-1と第3表-1を営業の種類別に数えただけである。許可のいる食品営業が1,904,239(旧676,718+新1,227,521)であること、届出を足すと2,769,361になること、1年で1,125,567施設(59.1%)が調査・監視指導を受けたこと、処分が1,175件で営業許可取消は0件であること、旧法の廃業率が改正法の5.1倍であること、改正法32業種のうち食品の放射線照射業が0施設であることを示した。あわせて、I005・I011・I018・I020 で「2,299,735」としていた数が飲食店営業の許可+届出であったことを訂正し、該当する本文を直した。 調査・監視指導施設数は回った施設の数で、回数ではない。処分の少なさが問題の少なさを意味するとは限らない。
参考文献・データの出典
- 厚生労働省「衛生行政報告例」令和6年度、第1表-1・第3表-1・第6表-1(食品衛生)
- 山岸勇輝「飲食店営業の許可は、事業所の2.9倍、そして「喫茶店営業」は0.47倍」(I005)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22875863
- 山岸勇輝「「公衆浴場」23,668のうち、銭湯は2,730」(I009)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22876425
- 山岸勇輝「届出を要する食品営業は865,122」(I011)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22876599
- 山岸勇輝「薬をネットで売る店は11,910(12.8%)」(I014)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22877337
- 山岸勇輝「理容所107,995、美容所277,752」(I015)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22878037
- 山岸勇輝「乳の処理量は、上と下で20,444倍」(I016)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22879076
- 山岸勇輝「見張る側は27,227人、うち専従は2,349人」(I018)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22879207
- 山岸勇輝「映画館は1,468施設、市区町村の82.1%には1つも無い」(I019)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22879269
- 山岸勇輝「食品95,546点を調べて、不良は431点(0.45%)」(I020)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22879317
- 山岸勇輝「立入検査25,678件に対して処分3件」(I021)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22879344
- 山岸勇輝「その商売は、1事業所あたり何人か」(X001)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22877856
版の記録
| 版 | 日付 | 内容 |
|---|---|---|
| 第1版 | 2026-09-22 | 初出 |
引用のしかた
山岸勇輝(2026)「許可のいる食品営業は1,904,239。1年で1,125,567施設を回っている [I022]」Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22879400
(この DOI は concept DOI。常に最新の版を指す。引用にはこれを使う)
© 2026 山岸 勇輝(Yuuki YAMAGISHI)
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作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「許可のいる食品営業は1,904,239。1年で1,125,567施設を回っている」[I022]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22879400
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予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). 許可のいる食品営業は1,904,239。1年で1,125,567施設を回っている [I022]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/I022 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22879400
Yamagishi, Y. (2026). 1,904,239 Licensed Food Businesses, 1,125,567 Visited in a Year [I022]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/I022; DOI: 10.5281/zenodo.22879400
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