【X001】その商売は、1事業所あたり何人か

要旨

産業小分類526のそれぞれについて、1事業所あたりの従業者数を経済センサス(令和3年)から求め、その分類が全国1,889市区町村のうちいくつにあるかと並べた。

全産業では 62,427,908 人 ÷ 5,288,891 事業所 = 11.80 人。 分類ごとの中央値は 14.77 人、最小は著述・芸術家業の 1.57 人、最大は製鉄業の 746.22 人で、475倍の開きがある。

10人未満の分類が 170(32.3%)、30人未満が 408(77.6%)ある。 日本の産業分類の8割近くは、1事業所あたり30人に届かない。

1事業所あたりが小さい分類ほど、多くの市区町村にある(1事業所あたりの常用対数と、その分類がある市区町村の数の相関 r = −0.417)。1事業所あたりの大きさで4等分すると、小さいほうの4分の1は中央値 1,279市区町村にあり、大きいほうの4分の1は 339市区町村にしかない。

釧路総合振興局管内の1事業所あたりは6.62人(弟子屈町)から10.62人(白糠町)。全国1,889市区町村の中央値は9.58人である。

526分類の一覧を CSV で付した。

1. はじめに

R001 は市区町村にある産業小分類の数を、R002 はその分類が現れる人口を、R003 は「1軒だけ」の分類を数えた。どれも事業所の数を数えたものである。

I004 は理容所・美容所が1店あたり1.80人・2.12人であることを、I008 はクリーニングの洗う施設が1.68人であることを示した。どれも1業種ずつだった。

事業所の数と従業者の数は、経済センサスの別の表として同じ形で公表されている。 割れば、526分類すべてについて「1事業所あたり何人か」が出る。

その商売は、1事業所あたり何人でやっているのか。そしてそれは、その商売がどこにあるかと関係するのか。

2. データ

事業所数 「令和3年 経済センサス-活動調査」第9-1A表 産業(小分類)別 全事業所数(令和3年6月1日)
従業者数 同 第9-1B表 産業(小分類)別 従業者数(同)
市区町村 総務省「住民基本台帳に基づく人口」2026年1月1日(R001 でいう単位A、1,892市区町村)

産業小分類は 526、名前はすべて読めた。

全国の全産業は 事業所 5,288,891/従業者 62,427,908。単位Aの1,892市区町村を足した従業者は 62,012,734 で、全国との差は 415,174 である(境界未定地域などの分)。

従業者数の表に秘匿(X)は無い。 事業所数の表にはある。したがって「その分類がある市区町村の数」は、秘匿を除いて数えた。

業種の表にもある市区町村は 1,889(単位A の1,892のうち)。

3. 結果

3-1 全産業で11.80人、分類の中央値は14.77人

全国の従業者 62,427,908
全国の事業所 5,288,891
1事業所あたり 11.80人

526分類それぞれの1事業所あたりを見ると、

人
中央値 14.77
下から4分の1 8.16
上から4分の1 27.47
最小 1.57
最大 746.22

分類の中央値(14.77)が全産業の値(11.80)より大きい。 事業所の数が多い分類ほど小さいからである(1事業所あたりと事業所数の相関 r = −0.445)。

1事業所あたり 分類の数 割合
3人未満 15 2.9%
5人未満 57 10.8%
10人未満 170 32.3%
30人未満 408 77.6%
100人未満 500 95.1%

産業分類の8割近くが、1事業所あたり30人に届かない。

3-2 上と下で475倍

大きい分類 1事業所あたり 事業所数
221 製鉄業 746.2人 55
191 タイヤ・チューブ製造業 313.1人 83
491 郵便業(信書便事業を含む) 305.4人 335
831 病院 288.2人 8,341
222 製鋼・製鋼圧延業 264.3人 99
105 たばこ製造業 233.8人 6
561 百貨店,総合スーパー 228.0人 1,097
816 高等教育機関 226.6人 2,442
381 公共放送業(有線放送業を除く) 215.3人 56
小さい分類 1事業所あたり 事業所数
942 仏教系宗教 2.65人 61,064
693 駐車場業 2.59人 24,619
943 キリスト教系宗教 2.59人 7,696
835 療術業 2.57人 78,918
783 美容業 2.52人 162,431
949 その他の宗教 2.40人 13,011
723 行政書士事務所 1.98人 7,350
782 理容業 1.94人 87,048
903 表具業 1.92人 1,989
727 著述・芸術家業 1.57人 983

上と下で 475倍(746.22 ÷ 1.57)の開きがある。

上位には、事業所が少ないものが並ぶ。 製鉄業55、たばこ製造業6、公共放送業56。下位には、事業所が多いものが並ぶ。 美容業162,431、理容業87,048、療術業78,918。

I004 では、衛生行政報告例で理容所1.80人・美容所2.12人だった。経済センサスでは理容業1.94人・美容業2.52人。 数え方(施設と事業所)が違うので一致はしないが、同じ水準である。

3-3 小さい商売ほど、多くの市区町村にある

散布図。横軸は1事業所あたりの従業者数(対数)、縦軸はその分類がある市区町村の数。526分類の点が右下がりに散らばり、あてはめた直線を引いている。

図1 1事業所あたりの従業者数と、その分類がある市区町村の数(産業小分類526、1,889市区町村)。
灰色の点は産業小分類、青の直線は最小二乗のあてはめ(横軸は常用対数)。

相関(526分類) r
1事業所あたり(対数)× ある市区町村の数 −0.417
事業所数(対数)× ある市区町村の数 +0.921
1事業所あたり(対数)× 事業所数(対数) −0.445

1事業所あたりが小さい分類ほど、多くの市区町村にある。

4等分して見ると、はっきり分かれる。

1事業所あたりの大きさ その範囲 ある市区町村の数(中央値)
小さいほう1/4 1.6〜8.1人 1,279
2番目 8.2〜14.7人 814
3番目 14.8〜27.4人 594
大きいほう1/4 27.4〜746.2人 339

小さいほうの4分の1は、大きいほうの4分の1の3.8倍の市区町村にある。

ただし、もっとも強い相関は 事業所数との相関(r = +0.921) である。事業所が多い分類が多くの市区町村にあるのは当たり前で、1事業所あたりの大きさはその裏側にある。1事業所あたりが小さいことと、事業所が多いことは、同じ現象の2つの見え方である(両者の相関 r = −0.445)。

3-4 釧路総合振興局管内

市町村 事業所 従業者 1事業所あたり
釧路市 7,989 74,401 9.31
釧路町 1,009 9,856 9.77
厚岸町 531 4,029 7.59
浜中町 304 2,378 7.82
標茶町 435 3,192 7.34
弟子屈町 468 3,099 6.62
鶴居村 140 1,262 9.01
白糠町 399 4,236 10.62

全国1,889市区町村の中央値は 9.58人、最小2.57、最大46.33。

管内で中央値を上回るのは釧路町(9.77)と白糠町(10.62)だけで、残る6市町村は下回る。弟子屈町の6.62がもっとも小さい。 I006 で見たとおり弟子屈町は宿泊業が突出して多く、宿は小さい事業所が多い。

釧路市は9.31で、全国の中央値をわずかに下回る。

3-5 526分類の一覧

kensan_199_1事業所あたり.csv に、産業小分類526について次の列を出した。

列 中身
産業小分類 3桁のコード
名前 分類名
事業所数 全国(令和3年)
従業者数 全国(令和3年)
1事業所あたり従業者数 従業者 ÷ 事業所
ある市区町村数 1,889のうち(秘匿を除く)
秘匿の市区町村数 事業所数が X の市区町村

4. 考察

4-1 「その業種の平均は何人か」に答えられる

小規模事業者に向けて業種の話をするとき、「あなたの業種は1事業所あたり何人です」は基本的な数である。だが業種ごとに統計を探すと手間がかかる。

経済センサスの2つの表を割るだけで、526分類すべてについて出る。 本稿の CSV は、その一覧である。

ただしこれは平均である。 美容業2.52人は、2人の店がほとんどという意味ではなく、1人の店と20人の店を合わせた平均である。分布は本稿では見ていない。

4-2 小さい商売は、広く薄く

1事業所あたりが小さい分類ほど多くの市区町村にある(r = −0.417)。4等分すると1,279対339で3.8倍の差がつく。

R002 では、理容業・美容業の「50%到達人口」が最小の155人だった。小さい商売は、小さい町にも現れる。 本稿はそれを526分類の全体で確かめたことになる。

理由としては、1事業所あたりが小さい商売は、必要な客の数も少ないからと考えられる。製鉄業は1か所に746人を集める必要があり、そのための需要は全国から集めるしかない。理容業は1.94人で足り、その需要は町の中で足りる。

ただし本稿は需要を見ていないので、これは説明であって検証ではない。

4-3 事業所の数と、1事業所あたりの大きさ

3つの相関のうち、もっとも強いのは事業所数とある市区町村の数(r = +0.921)である。当たり前のことで、事業所が多ければ多くの町にある。

1事業所あたりの大きさは、その裏側にある(1事業所あたりと事業所数の相関 r = −0.445)。「小さいから多い」のか「多いから小さく見える」のかを、本稿は分けていない。

言えるのは、3つの数(事業所の数・1事業所あたりの人数・ある市区町村の数)が、同じ向きで動いているということである。

4-4 他の論文との接続

  • I004・I008 との比較。 理容業1.94人(センサス)は衛生行政報告例の1.80人(施設あたり)に、美容業2.52人は2.12人に近い。単位が違っても水準は合う
  • R002・R003 との接続。 小さい商売が小さい町にも現れることを、526分類で確かめた
  • 業種ごとの記事から引ける。 CSV のその行を引けば、どの業種のページからでも同じ1本を参考文献にできる

5. 限界

  • 経済センサスは令和3年6月1日、人口は2026年1月1日。時点が違う
  • 従業者数には、その事業所で働く人(有給役員・常用雇用者・臨時雇用者ほか)が入る。常勤・非常勤を区別しない
  • 事業所数の表には秘匿(X)がある。 「ある市区町村の数」は秘匿を除いて数えたので、実際より小さくなりうる
  • 1事業所あたりの人数は平均であって、その分類の事業所の大きさの分布は見ていない
  • 売上・利益は見ていない。人数は商売の大きさの一面にすぎない
  • 全国の1事業所あたりは全国の合計から出した。市区町村ごとの平均とは違う
  • 単位Aの1,892市区町村を足した従業者は全国より415,174人少ない(境界未定地域などの分)
  • 「小さいから広い」という因果を、本稿は示していない

6. 再現の手順

  1. e-Stat から令和3年 経済センサス-活動調査の 第9-1A表(産業小分類別 全事業所数)と 第9-1B表(同 従業者数)を取得する
  2. どちらも同じ形なので、市区町村コードと産業小分類の3桁コードで表にする(_ツール/gyoshu_shichoson.py と _ツール/jugyosha_shichoson.py)
  3. 全国の行(00000)で、分類ごとに 従業者 ÷ 事業所 を出す
  4. 住民基本台帳の単位A(1,892市区町村)のうち、業種の表にもある1,889で、分類ごとに事業所数が1以上の市区町村を数える(秘匿は数えない)
  5. 1事業所あたりの常用対数と、ある市区町村の数の相関を出す

本稿の数値は、すべて1本のスクリプト(kensan_199)の出力である。中間の数値を手で書き写していない。

この論文の位置づけ

新しい理論を主張するものではない。経済センサスの事業所数と従業者数を割って、産業小分類526すべての「1事業所あたり何人か」を一覧にし、その分類がどれだけ多くの市区町村にあるかと並べたものである。R002・R003 が事業所の数で見たものを、大きさの側から見た。因果は示していない。業種ごとの記事から引けるように、一覧を CSV で付した。

参考文献・データの出典

  1. 総務省統計局・経済産業省「令和3年 経済センサス-活動調査」第9-1A表(産業小分類別 全事業所数)・第9-1B表(同 従業者数)
  2. 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」2026年1月1日現在
  3. 山岸勇輝「市区町村の人口と、そこにある産業小分類の数」(R001)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22872218
  4. 山岸勇輝「その商売は、人口何人の町から現れるか」(R002)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22872356
  5. 山岸勇輝「町に1軒だけの商売」(R003)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22872474
  6. 山岸勇輝「理容所と美容所、1店あたり2人」(I004)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22875820
  7. 山岸勇輝「クリーニング所の7割は、洗っていない」(I008)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22876239

版の記録

版 日付 内容
第1版 2026-09-21 初出

引用のしかた

山岸勇輝(2026)「その商売は、1事業所あたり何人か、産業小分類526の一覧と、小さい商売ほど多くの町にあるという関係 [X001]」Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22877856

(この DOI は concept DOI。常に最新の版を指す。引用にはこれを使う)

© 2026 山岸 勇輝(Yuuki YAMAGISHI)

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書誌

山岸勇輝(2026)「その商売は、1事業所あたり何人か」[X001]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22877856

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). その商売は、1事業所あたり何人か [X001]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/X001 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22877856

Yamagishi, Y. (2026). How Many Workers per Establishment? A Table of 526 Industrial Subcategories, and How the Smaller Trades Reach More Towns [X001]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/X001; DOI: 10.5281/zenodo.22877856

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