要旨
探査機が「太陽系を出た」と報じられる。本稿が問うのは、どの果てを出たのかである。答は、果ては五つあり、そのうち二番目に内側のものであるである。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。
第一に、五つの定義は $50$ AU から $\mathbf{255302}$ AU まで並び、比は $\mathbf{5106.0345}$ 倍である(第2節)。
第二に、これが本稿の芯である。五つは順位ではなく、それぞれ別の「何が終わるか」を指している(第3節)。
第三に、最も外側のヒル半径は、本稿で銀河の回転から計算した。$\mathbf{1.237738}$ pc で、通説の 約 $1$ pc に入る(第2節)。
第四に、太陽の重力の縄張りは、プロキシマまでの $\mathbf{95.07}$ パーセントに届く(第4節)。
第五に、光で行くとヘリオポーズまで $16.8553$ 時間、ヒル半径まで $4.0370$ 年である(第4節)。
第六に、分離子は「何が終わるか」である(第5節)。
射程(何を示さないか)
新しい数学定理も新しい法則も主張しない。ヒル半径、ヘリオポーズ、オールトの雲、カイパーベルト、銀河回転曲線はいずれも標準的である。天体力学を作らない。三体問題やヒル半径の導出そのものには立ち入らない。式は与えられたものとして使う。太陽風の物理を扱わない。末端衝撃波面やヘリオシースの構造、磁場の巻き込みには入らない。触れるにとどめる。オールトの雲の存否を裁定しない。直接観測されていないことは明記する。数は通説の見積もりである。星間空間を扱わない。局所恒星間雲や星間磁場には立ち入らない。探査機の運用を扱わない。どの機体がいつ何を測ったかの詳細には入らない。既刊との関係:論文306 は「基本」単位の個数が約束だと示した。本稿の五つも約束だが、どれも恣意的ではなく、それぞれ別の物理量が終わる場所を指している。約束が複数あることと、どれかが正しいことは、別である。論文297 は宇宙の距離が七段のはしごだと示した。そこでは同じ量(距離)を七つの方法で測り、本稿では同じ場所(果て)を五つの基準で置いている。方法の多さと、定義の多さは別である。論文300 は同根か別根かは判定できると示した。本稿の五つは、判定に掛ければ互いに別根である。論文328 は同じ楕円が三ヶ月ずれていたことが原因の違いの証拠になったと示した。そこでも本稿でも、天文の同じ対象に二つ以上の別々の量が乗っている。加えたのは五つを同じ単位で一表に並べたこと、ヒル半径を銀河の回転曲線から自分で計算し、地球のヒル半径で道具を試したこと、隣どうしの飛びを出して並びが均等でないことを示したこと、分離子を「何が終わるか」に置いたことである。
1. 記法と問い
設定:「太陽系の果て」という言い方は、日常でも報道でも使われる。だが何をもって果てとするかは、一つに決まっていない。
観察 1.1 ボイジャー1号が「太陽系を出た」と報じられたのは $2012$ 年である。同じ機体が、別の基準ではまだ出ていない。矛盾ではなく、基準が違う。
観察 1.2 本稿の測り方を先に固定する。距離はすべて天文単位(AU)に揃え、$1$ AU $=1.495978707\times10^{11}$ m とする。単位が違うと比が見えないからである。
観察 1.3 五つのうち四つは通説の値、一つは本稿で計算する。ヒル半径だけは、銀河の回転から自分で出す。どこまでが引用でどこからが計算かを分けて書く。
問い:果ては何個あり、どれだけひらいているのか。
2. 五つの果てを、同じ単位で並べる
検算 2.1:ヒル半径を銀河の回転曲線から計算する(本稿で計算)。太陽が銀河中心から $R_0=8$ kpc、回転速度 $v_c=220$ km/s の円軌道にあるとすると、囲み質量は $M=v_c^2R_0/G$ で、ヒル半径は $R_H=R_0(M_\odot/3M)^{1/3}$ である。
| 量 | 値 |
|---|---|
| 囲み質量 $M(<8 \text{kpc})$ | $\mathbf{9.0004\times10^{10}} M_\odot$ |
| ヒル半径 | $\mathbf{1.237738}$ pc |
| 同 | $\mathbf{255301.7}$ AU |
| 同 | $\mathbf{4.0370}$ 光年 |
観察 2.2 自己検査を二つ置く。(a)囲み質量 $9.0004\times10^{10} M_\odot$ は、通説の $10^{11} M_\odot$ の桁に入る。(b)同じ式を地球に当てると $0.010003$ AU $=1496433$ km となり、通説の 約 $150$ 万 km と合う。道具を、答の分かっている別の天体で試してから使う。
検算 2.3:五つを同じ単位で並べる(ヒル半径以外は通説の値)。
| 定義 | 距離 [AU] | 何が終わるか |
|---|---|---|
| カイパーベルト外縁 | $50$ | 氷天体の分布が切れる |
| ヘリオポーズ | $121.6$ | 太陽風が星間物質に負ける |
| オールトの雲 内縁 | $2000$ | 長周期彗星の供給源が始まる |
| オールトの雲 外縁 | $100000$ | 同 外側 |
| ヒル半径(本稿の計算) | $\mathbf{255301.7}$ | 太陽の重力が銀河に負ける |
観察 2.4 最小と最大の比は $\mathbf{5106.0345}$ 倍である。同じ「太陽系の果て」という一語が、三桁半にわたる範囲を指している。
検算 2.5:隣どうしの飛びを見る(本稿で計算)。
| 区間 | 比 |
|---|---|
| カイパーベルト外縁 $\to$ ヘリオポーズ | $2.4320$ |
| ヘリオポーズ $\to$ オールトの雲 内縁 | $16.4474$ |
| オールトの雲 内縁 $\to$ 外縁 | $\mathbf{50.0000}$ |
| オールトの雲 外縁 $\to$ ヒル半径 | $2.5530$ |
観察 2.6 飛びは均等ではない。最大の $50.0000$ 倍と最小の $2.4320$ 倍で、$20.5592$ 倍ちがう。五つが等間隔に並んでいるのではない。オールトの雲が、それ自体で二桁近い幅を持っている。
3. 芯:五つは順位ではなく、別々の量が終わる場所である
設定:五つを、何が終わるかで分けて書く。
| 定義 | 終わるもの | 種類 |
|---|---|---|
| カイパーベルト外縁 | 天体の分布 | 物質 |
| ヘリオポーズ | 太陽風の圧力 | 流体 |
| オールトの雲 | 彗星の供給源 | 物質 |
| ヒル半径 | 太陽の重力の優位 | 力 |
観察 3.1 これが本稿の芯である。五つは「どこまで数えるか」の違いではない。終わっている物理量が、そもそも別である。物質の分布、流体の圧力、重力の優位は、互いに換算できない。
観察 3.2 論文300 の基準に当てる。
| 基準 | 結果 |
|---|---|
| 恒等式を保つ対応があるか | 無い。圧力の釣り合いと重力の釣り合いは別の式 |
| 同じ量が現れるか | 現れない。$\rho v^2$ と $GM/r^2$ |
| 変数を動かして一致し続けるか | しない。太陽風が強まればヘリオポーズだけ動く |
観察 3.3 三行とも別根を指している。ヘリオポーズは太陽の活動周期で年ごとに動き、ヒル半径は銀河の質量分布で決まる。片方を動かしても、もう片方は動かない。
観察 3.4 だから「どれが本当の果てか」という問いは、うまく立っていない。問うべきは何の果てかである。論文306 が「基本単位の個数は約束である」と書いたのと同じ立場だが、ここでは約束が五つあり、そのどれもが恣意的でない。
観察 3.5 論文297 との違いを明示する。297 は距離のはしごが七段だと書いた。そこでは同じ一つの量(距離)を七つの方法で測っていた。本稿では、測っている量そのものが五つとも違う。方法が多いことと、定義が多いことは別である。
観察 3.6 正直に書くべき点、オールトの雲は直接観測されていない。長周期彗星の軌道の統計から推定された構造である。五つのうち二つ(内縁と外縁)は、他の三つと証拠の強さが違う。同じ表に並べたが、同じ確からしさではない。
4. 光で行くとどれだけかかるか
検算 4.1:五つの果てまでの光の到達時間(本稿で計算)。
| 定義 | 距離 [AU] | 光での到達時間 |
|---|---|---|
| カイパーベルト外縁 | $50$ | $6.9306$ 時間 |
| ヘリオポーズ | $121.6$ | $\mathbf{16.8553}$ 時間 |
| オールトの雲 内縁 | $2000$ | $277.2249$ 時間($11.6$ 日) |
| オールトの雲 外縁 | $100000$ | $1.5813$ 年 |
| ヒル半径 | $255301.7$ | $\mathbf{4.0370}$ 年 |
観察 4.2 ヘリオポーズまでは、光で一日かからない。$16.8553$ 時間である。ボイジャーが $35$ 年かけた距離を、光は寝ている間に通る。
観察 4.3 ヒル半径までは $4.0370$ 年かかる。同じ「太陽系」の内側で、時間で見ると $5106$ 倍が実感になる。
検算 4.4:最も近い恒星と比べる(本稿で計算)。
| 量 | 値 |
|---|---|
| 太陽のヒル半径 | $\mathbf{4.0370}$ 光年 |
| プロキシマ・ケンタウリまでの距離 | $4.2465$ 光年 |
| 比 | $\mathbf{0.9507}$ |
観察 4.5 太陽の重力の縄張りは、最も近い恒星までの $95.07$ パーセントに届いている。つまり恒星間の空間には、ほとんど隙間が無い。太陽系の外側と、隣の星系の外側が、ほぼ接している。
観察 4.6 正直に書くべき点、ヒル半径は銀河の潮汐に対する縄張りであって、隣の恒星に対するものではない。$0.9507$ という比は、二つの別の基準の値をたまたま並べたものである。隣の恒星との重力的な境界(等ポテンシャル面)は、また別の計算になる。本稿はそこには立ち入らない。
5. 分離子:何が終わるか
観察 5.1 分離子、その境界で終わっているのが、物質の分布か、流体の圧力か、力の優位か。
| 終わるもの | 何で決まるか | 時間で動くか | |
|---|---|---|---|
| 分布 | 天体の数密度 | 形成の歴史 | 動かない |
| 圧力 | 太陽風 | 太陽の活動 | 動く |
| 力 | 重力の優位 | 銀河の質量 | 動かない |
観察 5.2 右端の列が、五つを二つに割る。ヘリオポーズだけが、太陽の活動周期で年ごとに動く。「太陽系を出た日」が意味を持つのは、この境界だけである。他の四つには、出た日が無い。
観察 5.3 分離子は動かせる。太陽風を止めればヘリオポーズは消え、銀河の質量を変えればヒル半径だけが動く。五つは独立に動かせるので、独立な五つである。
観察 5.4 報道の言い方は、どの果てかを言わない。「太陽系を出た」と言うとき、$121.6$ AU と $255302$ AU のどちらの話かが分からない。$2099.5206$ 倍ちがう二つが、同じ一語で呼ばれている。
観察 5.5 正直に書くべき点、どれか一つを「正しい果て」に決める必要は無い。必要なのは、どの果ての話かを毎回言うことである。論文306 が単位の個数について書いたのと同じで、約束が悪いのではなく、約束を言わないことが悪い。
観察 5.6 最後に一つ、一番外側の果てだけが、太陽自身の性質で決まっていない。ヒル半径を決めているのは、銀河が太陽をどれだけ強く引いているかである。太陽系の一番外側の輪郭は、太陽が描いたのではなく、外から与えられている。
6. 点呼と結び
- 五つの果ては $50$〜$255301.7$ AU(検算2.3):比は $5106.0345$ 倍。
- ヒル半径 $1.237738$ pc(検算2.1):銀河の回転から計算。
- 地球のヒル半径 $1496433$ km(観察2.2):同じ式で通説と一致。
- 飛びは $2.4320$ から $50.0000$ 倍(検算2.5):等間隔ではない。
- 終わっている物理量が五つとも違う(観察3.1):分布・圧力・力。
- 論文300 の基準で三行とも別根(観察3.2):換算できない。
- ヘリオポーズまで光で $16.8553$ 時間(検算4.1):一日かからない。
- ヒル半径まで光で $4.0370$ 年(検算4.1):同じ太陽系の内側で。
- プロキシマまでの $95.07$ パーセント(検算4.4):隙間がほとんど無い。
- 動くのはヘリオポーズだけ(観察5.2):「出た日」があるのはここだけ。
結び:「太陽系の果て」という一語は、五つの別々の場所を指している。カイパーベルト外縁 $50$ AU、ヘリオポーズ $121.6$ AU、オールトの雲の内縁 $2000$ AU と外縁 $100000$ AU、そして本稿が銀河の回転から計算したヒル半径 $\mathbf{255301.7}$ AU($\mathbf{1.237738}$ pc)である。最小と最大の比は $\mathbf{5106.0345}$ 倍で、同じ一語が三桁半にわたる範囲を指している。そして五つは、順位ではない。終わっている物理量が、そもそも別である。カイパーベルト外縁は天体の分布が、ヘリオポーズは太陽風の圧力が、ヒル半径は太陽の重力の優位が終わる場所であり、これらは互いに換算できない。論文300 の基準に当てると三行とも別根を指す。だから「どれが本当の果てか」という問いは、うまく立っていない。問うべきは何の果てかである。論文306 が単位の個数について書いたのと同じ立場だが、ここでは約束が五つあり、そのどれもが恣意的ではない。光で行くと、この差が時間になる。ヘリオポーズまでは $\mathbf{16.8553}$ 時間で、ボイジャーが $35$ 年かけた距離を光は寝ている間に通る。ヒル半径までは $\mathbf{4.0370}$ 年かかる。同じ「太陽系」の内側で。そのヒル半径は、最も近い恒星までの $\mathbf{95.07}$ パーセントに届いている。プロキシマ・ケンタウリまでが $4.2465$ 光年である。恒星間の空間には、ほとんど隙間が無い。ただしヒル半径は銀河の潮汐に対する縄張りであって、隣の恒星に対するものではない。この比は二つの別の基準を並べたものである。分けるものは一つ、その境界で終わっているのが、物質の分布か、流体の圧力か、力の優位か。そして五つのうちヘリオポーズだけが、太陽の活動周期で年ごとに動く。「太陽系を出た日」が意味を持つのはこの境界だけで、他の四つには出た日が無い。報道が「太陽系を出た」と言うとき、$121.6$ AU と $255302$ AU の $2099.5206$ 倍ちがう二つが、同じ一語で呼ばれている。正直に書いておく。オールトの雲は直接観測されていない。長周期彗星の軌道の統計から推定された構造であり、同じ表に並べたが同じ確からしさではない。そしてどれか一つを「正しい果て」に決める必要も無い。必要なのは、どの果ての話かを毎回言うことである。最後に一つ、一番外側の果てだけが、太陽自身の性質で決まっていない。ヒル半径を決めているのは、銀河が太陽をどれだけ強く引いているかである。太陽系の一番外側の輪郭は、太陽が描いたのではなく、外から与えられている。
参考文献
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- Oort, J. H. (1950). The Structure of the Cloud of Comets Surrounding the Solar System. Bulletin of the Astronomical Institutes of the Netherlands, 11.
- Kuiper, G. P. (1951). On the Origin of the Solar System. In: Astrophysics: A Topical Symposium. New York: McGraw-Hill.
- Stone, E. C., Cummings, A. C., McDonald, F. B., Heikkila, B. C., Lal, N., Webber, W. R. (2013). Voyager 1 Observes Low-Energy Galactic Cosmic Rays in a Region Depleted of Heliospheric Ions. Science, 341(6142).
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- 山岸勇輝 (2026). 宇宙の距離は七段のはしごで、直接測られているのは一段目だけである [論文297]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171788
- 山岸勇輝 (2026). 三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる [論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
- 山岸勇輝 (2026). 「基本」単位の個数は、約束である [論文306]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22172149
- 山岸勇輝 (2026). 同じ楕円が三ヶ月ずれていたことが、原因が別だという証拠になった [論文328]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22210340
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「太陽系の「果て」は五つあり、最小と最大は 5106 倍ひらく」[論文337]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22681940
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). 太陽系の「果て」は五つあり、最小と最大は 5106 倍ひらく [論文337]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/337 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22681940
Yamagishi, Y. (2026). The Edge of the Solar System Is Five Edges, and the Innermost and Outermost Differ by a Factor of 5106 [Paper 337]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/337; DOI: 10.5281/zenodo.22681940
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