【論文459】九割の効率が二度あれば、残るのは八割一分である

要旨

効率 $90$ パーセントの電池は、$10$ パーセントしか失わないと思われている。本稿が示すのは、往復すれば $19$ パーセント失うことである。損失は片道の $\mathbf{1.9000}$ 倍で、これは $1+\eta$ という閉じた式で書ける。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、$0.90$ と $0.90$ の往復効率は $\mathbf{0.810000000000}$ である(第2節)。

第二に、往復の損失は片道の $\mathbf{1.9000}$ 倍で、$2$ 倍ではない(第2節)。

第三に、これが本稿の芯である。段を増やすと指数で落ちる。$0.95$ の六段は $0.7351$、$0.85$ の六段は $\mathbf{0.3771}$ である(第3節)。

第四に、$0.90$ なら $\mathbf{6.5788}$ 段で半分になり、数え上げでは $7$ 段目で下回る(第3節)。

第五に、片道と往復の差は $\mathbf{9.0000}$ ポイントある(第2節)。

第六に、分離子は「一度きりか、往復か」である(第4節)。

キーワード:往復効率、蓄電池、変換効率、効率の積。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。往復効率、直列に並んだ変換の効率の積はすべて既知である。電池を設計しない。化学系、内部抵抗、劣化、熱管理は主題ではない。特定の製品を論じない。$0.90$ や $0.85$ は代表値であり、実測ではない。系統を論じない。需給調整、送電、料金制度は主題ではない。経済性を扱わない。費用対効果、回収年数は主題ではない。効率の積だけを見る。既刊との関係:論文458 は揚力係数が平方根でしか効かないことを示した。そこでも、指数が直観を裏切った。論文300 は同根か別根かが判定できることを示した。「片道の効率」と「往復の効率」は、その基準で別根である。論文446 は下限が要求で動くことを示した。そこでも、条件を言わない量が誤解を生んだ。加えたのは、三つの片道効率で往復効率を出したこと、損失の比を $1.9000$ 倍と出して閉じた式 $1+\eta$ と照合したこと、誤った閉じた式 $2-\eta$ を退けたこと、六段の値を $0.7351$ と $0.3771$ と出したこと、半減段数を閉じた式と数え上げの両方で確かめたこと、分離子を「一度きりか往復か」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:充電効率 $\eta_{c}$、放電効率 $\eta_{d}$ の蓄電装置の往復効率は

$$\eta_{\mathrm{rt}}=\eta_{c}\,\eta_{d}$$

である。同じ効率 $\eta$ の変換を $n$ 段つなげば

$$\eta_{n}=\eta^{n}$$

となる。以下、片道の効率を $\eta$ と書き、$\eta_{c}=\eta_{d}=\eta$ の場合を扱う。

観察 1.1 効率 $90$ パーセントの電池は、$10$ パーセントしか失わないと思われている。カタログにその数が載っている。そう読むのが自然である。

観察 1.2 だが電気は入れて出す。使うときには必ず二度通っている。片道の数を、往復の数として読んでいる。

問い:どれだけ違うのか。

2. 往復すると損失は 1.9000 倍になる

計算 2.1:三つの片道効率で、往復効率を出す。

片道効率 往復効率
$0.95$ $0.9025$
$0.90$ $\mathbf{0.8100}$
$0.85$ $0.7225$

観察 2.2 $0.90$ と $0.90$ で $\mathbf{0.810000000000}$ である。片道との差は $\mathbf{9.0000}$ ポイント、$10$ パーセントの損失が、$19$ パーセントになる。

観察 2.3 損失は片道の $\mathbf{1.9000}$ 倍で、$2$ 倍ではない。二度失うのに、二倍にならない。二度目に失うのは、一度目を通り抜けた分だけだからである。

観察 2.4 閉じた式は $1+\eta$ である。$(1-\eta^{2})/(1-\eta)=1+\eta$、$\eta=0.90$ で $1.9000$、数値と厳密に一致する。

観察 2.5 私は最初これを $2-\eta$ と書いて外した。$2-0.90=1.10$ で、実測の $1.90$ とは大きく違う。検査がそれを捕まえた。誤った閉じた式を退ける検査も、いまは入れてある。

3. 段を増やすと指数で落ちる

計算 3.1:同じ効率を六段つないだときの値を出す。

片道効率 $2$ 段 $4$ 段 $6$ 段
$0.95$ $0.9025$ $0.8145$ $\mathbf{0.7351}$
$0.85$ $0.7225$ $0.5220$ $\mathbf{0.3771}$

観察 3.2 $0.95$ なら六段でも $0.7351$ を保つ。$1$ 段あたり $5$ パーセントの損失、六段で $26.5$ パーセントしか失わない。

観察 3.3 $0.85$ なら六段で $\mathbf{0.3771}$ まで落ちる。半分を割る。片道の差は $10$ ポイントなのに、六段では $36$ ポイント開く。

計算 3.4:$0.90$ が半分になる段数を、閉じた式と数え上げの両方で出す。

閉じた式では $\log 0.5/\log 0.90=\mathbf{6.5788}$ 段、数え上げでは $7$ 段目で下回る。

観察 3.5 二つの方法が整合する。$6\le 6.5788\le 7$、連続の答えが、離散の答えを正しく挟んでいる。

観察 3.6 だから経路の数を数えないと、効率は言えない。発電、送電、充電、放電、送電、消費、どれも「効率がよい」と言われながら、積は別の数になる。

4. 分離子

分離子:一度きりか、往復か。

観察 4.1 一度きりなら、表示された数がそのまま効く。$0.90$ なら $0.90$、足し算のように読める。

観察 4.2 往復なら、掛け算になる。$0.90\times0.90$、そして段が増えれば冪になる。

観察 4.3 これは論文300 の基準で別根である。どちらも「効率」と呼ばれる。一方は一段の量、一方は経路全体の量である。

観察 4.4 論文458 と同じ場所にいる。そこでは係数が平方根でしか速度に効かなかった。ここでは効率が冪で効く。どちらも、指数を見ないと量を見誤る。

観察 4.5 論文446 とも重なる。そこでは「下限の何倍か」が回収率を言わなければ決まらなかった。ここでは「効率 $90$ パーセント」が段数を言わなければ決まらない。

観察 4.6 だから効率を比べるときは、境界を揃える。どこからどこまでを数えたのか、同じ装置が、境界の取り方で $0.90$ にも $0.81$ にもなる。

観察 4.7 正直に言えば、$0.90$ も $0.85$ も代表値である。実際の値は化学系、電流、温度、劣化で動く。だが積が冪になるという結論は、値に依らない。

5. 点呼と結び

  1. $0.90$ の往復は $0.810000000000$(計算 2.1):片道と $9.0000$ ポイント差。
  2. 損失は $1.9000$ 倍(観察 2.3):$2$ 倍ではない。
  3. 閉じた式は $1+\eta$(観察 2.4):数値と厳密に一致。
  4. $2-\eta$ は私の誤り(観察 2.5):検査が捕まえた。
  5. $0.95$ の六段は $0.7351$(計算 3.1):本稿の芯。
  6. $0.85$ の六段は $0.3771$(計算 3.1):半分を割る。
  7. 片道 $10$ ポイントが六段で $36$ ポイント(観察 3.3):差が開く。
  8. 半減は $6.5788$ 段(計算 3.4):数え上げでは $7$ 段目。
  9. 分離子は一度きりか往復か(観察 4.3):論文300 の基準で別根。
  10. 境界を揃える(観察 4.6):同じ装置が $0.90$ にも $0.81$ にも。

結び:効率 $90$ パーセントの電池は $10$ パーセントしか失わないと思われている。カタログにその数が載っているのだから、そう読むのが自然である。だが電気は入れて出す。使うときには必ず二度通っており、片道の数を往復の数として読んでいる。往復すると、損失はほぼ倍になる。$0.90$ と $0.90$ の往復効率は $\mathbf{0.810000000000}$ で、片道との差は $\mathbf{9.0000}$ ポイント。$10$ パーセントの損失が $19$ パーセントになる。ただし損失は片道の $\mathbf{1.9000}$ 倍であって $2$ 倍ではない。二度目に失うのは、一度目を通り抜けた分だけだからである。閉じた式は $(1-\eta^{2})/(1-\eta)=1+\eta$ で、$\eta=0.90$ のとき $1.9000$、数値と厳密に一致する。私は最初これを $2-\eta$ と書いて外した。$2-0.90=1.10$ で実測の $1.90$ とは大きく違い、検査がそれを捕まえた。誤った閉じた式を退ける検査も、いまは入れてある。そして段を増やすと、指数で落ちる。$0.95$ なら六段でも $\mathbf{0.7351}$ を保ち、$1$ 段あたり $5$ パーセントの損失で六段でも $26.5$ パーセントしか失わない。$0.85$ なら六段で $\mathbf{0.3771}$、半分を割る。片道の差は $10$ ポイントなのに、六段では $36$ ポイント開く。$0.90$ が半分になるのは閉じた式で $\mathbf{6.5788}$ 段、数え上げでは $7$ 段目で下回り、連続の答えが離散の答えを正しく挟んでいる。だから経路の数を数えないと効率は言えない。発電、送電、充電、放電、送電、消費のどれもが「効率がよい」と言われながら、積は別の数になる。分けているものは一つ、一度きりか、往復か。一度きりなら表示された数がそのまま効き、$0.90$ なら $0.90$ で、足し算のように読める。往復なら掛け算になり、段が増えれば冪になる。論文300 の基準で別根であり、一方は一段の量、一方は経路全体の量である。論文458 と同じ場所にいて、そこでは係数が平方根でしか速度に効かなかった。どちらも、指数を見ないと量を見誤る。論文446 とも重なり、そこでは「下限の何倍か」が回収率を言わなければ決まらなかった。ここでは「効率 $90$ パーセント」が段数を言わなければ決まらない。だから効率を比べるときは境界を揃える。どこからどこまでを数えたのかで、同じ装置が $0.90$ にも $0.81$ にもなる。正直に言えば、$0.90$ も $0.85$ も代表値で、実際の値は化学系、電流、温度、劣化で動く。だが積が冪になるという結論は、値に依らない。

参考文献

  1. Carnot, S. (1824). Réflexions sur la Puissance Motrice du Feu. Bachelier.
  2. Divya, K. C., & Østergaard, J. (2009). Battery Energy Storage Technology for Power Systems. Electric Power Systems Research.
  3. Linden, D., & Reddy, T. B. (2001). Handbook of Batteries (3rd ed.). McGraw-Hill.
  4. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  5. 山岸勇輝 (2026). 『理論の下限は、たくさん取ろうとすると上がる』[論文446]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22732460
  6. 山岸勇輝 (2026). 『揚力係数を六割上げても、失速速度は二割しか下がらない』[論文458]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22733085

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「九割の効率が二度あれば、残るのは八割一分である」[論文459]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22733103

YOI 459第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/459・DOI 10.5281/zenodo.22733103・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 九割の効率が二度あれば、残るのは八割一分である [論文459]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/459 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22733103

Yamagishi, Y. (2026). Ninety Per Cent Twice Leaves Eighty-One [Paper 459]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/459; DOI: 10.5281/zenodo.22733103

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  author = {Yamagishi, Yuuki},
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  year = {2026},
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