【論文943】二つの色の明るさの比は熱い星ほど一定の値に近づき、温度を読む力が落ちる

要旨

星の色は、青と緑のように二つの波長での明るさの比で表せ、黒体なら比から表面温度が読める。本稿は、黒体の $440$ nm と $550$ nm の明るさの比を温度ごとに出し、比が温度にどれだけ効くか、その効きが熱い星でどう落ちるか、比の数え方を変えると何が変わり何が変わらないかを数える。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、比は温度とともに上がり、一定の値に近づく。波長あたりの比は $3000$ K で $0.344937$、$5772$ K で $0.975636$、$10000$ K で $1.528934$、$40000$ K で $2.227526$ で、高温の極限($550$ と $440$ の比の四乗)$2.441406$ の $\mathbf{0.912395}$ まで来ていた(第2節)。

第二に、熱い星ほど、比は温度に効かない。比の対数を温度の対数で微分した効きは、$3000$ K で $2.178742$、$5772$ K で $1.103448$、$40000$ K で $\mathbf{0.101438}$ だった。比が $1$ パーセント狂うと、温度は一次の見積もりで $3000$ K なら $0.458980$ パーセント、$40000$ K なら $\mathbf{9.858223}$ パーセント狂う(第2節)。

第三に、効きと温度の積は、低温の値から半分へ移る。効きに温度を掛けると、低温の極限は $6539.895$ K、高温の極限はちょうど半分の $3269.947$ K で、$40000$ K では $4057.526$ K だった(第3節)。

第四に、数え方を変えると比の値は変わるが、効きは変わらない。振動数あたりで数えた比は、どの温度でも波長あたりの比を $1.562500$ で割った値で、効きは同じだった。二つの波長の明るさが等しくなる温度は、波長あたりで $\mathbf{5904.132}$ K、振動数あたりで $\mathbf{10393.120}$ K と違った(第4節)。

第五に、分離子は、光の粒一個のエネルギーが熱の目安より大きい側か小さい側かである。光の粒一個のエネルギーを熱の目安で割った値は、$3000$ K の $440$ nm で $10.899825$、$40000$ K で $0.817487$ だった。大きい側では比は温度に指数で効き、小さい側では比は波長の四乗の比に張り付く(第5節)。

キーワード:色温度、黒体放射、プランクの法則、表面温度、レイリー・ジーンズの近似、温度の感度。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。プランクの法則、ウィーンの変位則、長い波長の側でのレイリー・ジーンズの近似、二つの波長の明るさの比から温度を読むこと(色温度)、熱い星ほど色が温度に鈍くなることは、いずれも既知である。理想の黒体と二つの波長だけを扱う。$440$ nm と $550$ nm の二点での明るさの比で、実際のフィルターの幅、ゼロ点、色指数の値には入らない。観測を扱わない。大気と星間の塵による減光、星の光が黒体からずれること、測る器械のばらつきは扱わない。「比が $1$ パーセント狂う」は効きを言い換えるために置いた幅である。明るさと温度の図に入らない。星の明るさと温度を並べた図、星の進化は扱わない。既刊との関係:論文892 の射程注記は、色を扱わず、星の色と表面温度の対応、明るさと温度の図は扱わないと書いた。本稿はそのうち星の色と表面温度の対応の席に座る(先客なし)。論文222 は、太陽の光の山が波長で数えるか振動数で数えるかで別の所に出ることを示した。ここでは、二つの波長の明るさの比でも、比の値と明るさが等しくなる温度は数え方で変わり、温度への効きは変わらないことを数える。論文788 は、入る光と出る光の分かれ目の波長が変数の選び方に依らないことを示した。そこでは二つの物体を同じ波長で比べた。ここでは一つの物体を二つの波長で比べるので、比の値は定数倍だけ動く。加えたのは、七つの温度で比と効きを並べたこと、効きと温度の積の低温と高温の極限を出したこと、数え方で比の値と等しくなる温度が変わり効きが変わらないことを示したこと、波長の間を広げた組と比べたこと、分離子を「光の粒一個のエネルギーが熱の目安より大きい側か小さい側か」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:温度 $T$ の黒体の、波長あたりの明るさ $B_\lambda$ と振動数あたりの明るさ $B_\nu$ は、全体の定数を除いて次の形である($x=hc/(\lambda kT)$ は光の粒一個のエネルギーを熱の目安 $kT$ で割った値)。

$$B_\lambda\propto\frac{\lambda^{-5}}{e^{x}-1},\qquad B_\nu\propto\frac{\lambda^{-3}}{e^{x}-1},\qquad R(T)=\frac{B_\lambda(440\ \mathrm{nm})}{B_\lambda(550\ \mathrm{nm})}$$

比から読む温度が色温度である。温度への効き(温度の感度)を $S=d\ln R/d\ln T$ とすると、

$$S=g(x_{440})-g(x_{550}),\qquad g(x)=\frac{xe^x}{e^x-1}$$

比が $1$ パーセント狂うと、温度は一次の見積もりで $1/S$ パーセント狂う。定数は $h=6.62607015\times10^{-34}$ J s、$c=299792458$ m/s、$k=1.380649\times10^{-23}$ J/K、$hc/k=1.43877688\times10^{-2}$ m K を使った。効きは式と、温度を前後に動かした差分の両方で出した。

問い:二つの波長の明るさの比は、熱い星の温度をどれだけ読み分けられるか。その答は比の数え方に依るか。

2. 比と効き

計算 2.1:$440$ nm と $550$ nm の比(波長あたり)と効き。

温度 K 比 極限に対する割合 効き $S$ $1$ パーセントの狂いの温度の狂い(パーセント) $x_{440}$ $x_{550}$
$3000$ $0.344937$ $0.141286$ $2.178742$ $0.458980$ $10.899825$ $8.719860$
$4000$ $0.594271$ $0.243413$ $1.627815$ $0.614320$ $8.174869$ $6.539895$
$5772$ $0.975636$ $0.399621$ $1.103448$ $0.906250$ $5.665190$ $4.532152$
$6000$ $1.017328$ $0.416698$ $1.057062$ $0.946018$ $5.449912$ $4.359930$
$10000$ $1.528934$ $0.626251$ $0.576885$ $1.733448$ $3.269947$ $2.615958$
$20000$ $1.994456$ $0.816929$ $0.238265$ $4.197000$ $1.634974$ $1.307979$
$40000$ $2.227526$ $\mathbf{0.912395}$ $\mathbf{0.101438}$ $\mathbf{9.858223}$ $0.817487$ $0.653989$

効きの式と差分は七つの温度で $10^{-6}$ 以内で一致した。高温の極限の比は $(550/440)^4=2.441406$ である。

観察 2.2 比は温度とともに上がって一定の値に近づき、効きは下がる。論文222 が太陽に置いた $5772$ K では比は $0.975636$、効きは $1.103448$ で、比が $1$ パーセント狂うと温度は $0.906250$ パーセント狂う。$40000$ K では比はすでに極限の $0.912395$ で、効きは $0.101438$、比の $1$ パーセントの狂いは温度の $9.858223$ パーセントの狂いになる。同じ測り方で、熱い星ほど温度が読み分けにくい。

3. 効きと温度の積の極限

計算 3.1:$T\times S$ の値。

温度 $T\times S$(K)
低温の極限 $(hc/k)(1/440 \mathrm{nm}-1/550 \mathrm{nm})$ $6539.895$
$300$ K $6539.895$
$3000$ K $6536.226$
$5772$ K $6369.104$
$10000$ K $5768.849$
$40000$ K $4057.526$
$10^8$ K $3270.268$
高温の極限(その半分) $3269.947$

$10^9$ K の比は $2.441398$ で、極限 $2.441406$ との相対差は $3.27\times10^{-6}$ だった。

観察 3.2 効きと温度の積は、低温の値から半分へ移る。$x$ が大きい側では $g(x)$ は $x$ に近づき、$T\times S$ は二つの波長の $1/\lambda$ の差だけで決まる $6539.895$ K になる。$x$ が小さい側(レイリー・ジーンズの近似の側)では $g(x)$ は $1+x/2$ に近づき、$T\times S$ はちょうど半分の $3269.947$ K になる。$40000$ K の $4057.526$ K はその途中である。

4. 数え方を変える

計算 4.1:振動数あたりの比は、$3000$・$5772$・$10000$・$40000$ K で $0.220760$・$0.624407$・$0.978518$・$1.425617$ で、七つの温度とも波長あたりの比を $(550/440)^2=1.562500$ で割った値と $10^{-12}$ 以内で一致した。振動数あたりの効きも、差分で波長あたりと $10^{-6}$ 以内で同じだった。

計算 4.2:二つの波長の明るさが等しくなる温度。

数え方 等しくなる温度 そのときの山(波長に直して)
波長あたり $\mathbf{5904.132}$ K $490.804$ nm
振動数あたり $\mathbf{10393.120}$ K $490.656$ nm

二つの温度の比は $0.568081$ だった。山の位置には、$x=5(1-e^{-x})$ の解 $4.965114232$($hc/(kx)=2.897771955\times10^{-3}$ m K)と $x=3(1-e^{-x})$ の解 $2.821439372$ を使った。

観察 4.3 比の値と等しくなる温度は数え方で変わり、効きは変わらない。波長あたりと振動数あたりの比は、同じ二つの波長では定数 $1.562500$ だけ違う。定数倍は対数を温度で微分すると消えるので、効きは同じになる。一方「二つの色が同じ明るさの星」は、波長あたりなら $5904.132$ K、振動数あたりなら $10393.120$ K で、どちらで数えたかを言わなければ決まらない。

計算 4.4:波長の間を広げた組($365$ nm と $550$ nm)。効きは $6000$・$20000$・$40000$ K で $2.162614$・$0.497335$・$0.209995$ で、$440$ nm の組の $2.045872$・$2.087314$・$2.070174$ 倍だった。二つの組の $1/\lambda$ の差の比は $2.027397$、$10^8$ K での $T\times S$ の比は $2.027420$ だった。

5. 分離子

観察 5.1 分離子は、光の粒一個のエネルギーが熱の目安より大きい側か小さい側かである。$x$ が大きい側($3000$ K の $440$ nm で $10.899825$)では、比は $e^{-x}$ の違いで温度に指数で効く。$x$ が小さい側($40000$ K の $440$ nm で $0.817487$)に入ると、比は波長の四乗の比 $2.441406$ に張り付く。効きそのものはどちらの側でも温度とともに下がり(計算 2.1)、この側に入って変わるのは、効きと温度の積が $6539.895$ K から $3269.947$ K へ半分になることである(計算 3.1)。

観察 5.2 言わないこと。実際のフィルターと色指数の値、大気と星間の減光、黒体からのずれ、明るさと温度の図、個々の星の温度は扱わない。示したのは、理想の黒体の二つの波長で、比が熱い星ほど一定の値に近づき効きが落ちること、そして数え方で変わるものと変わらないものを分けたことである。

6. 点呼と結び

  1. 比 $R$ と効き $S$(第1節):$g(x)$ の差。
  2. $40000$ K で極限の $\mathbf{0.912395}$(計算 2.1):比は一定の値に近づく。
  3. $40000$ K で効き $\mathbf{0.101438}$、温度の狂い $\mathbf{9.858223}$ パーセント(計算 2.1):熱い星ほど読み分けにくい。
  4. $T\times S$ は $6539.895$ から $3269.947$ へ(計算 3.1):係数は半分へ移る。
  5. 等しくなる温度 $\mathbf{5904.132}$ K と $\mathbf{10393.120}$ K(計算 4.2):数え方で変わる。効きは変わらない。
  6. 熱の目安より大きい側か小さい側か(観察 5.1):分離子・論文892 の射程注記・論文222・論文788。

結び:二つの色の明るさの比は熱い星ほど一定の値に近づき、温度を読む力が落ちる。黒体の $440$ nm と $550$ nm の比は、$40000$ K で高温の極限 $2.441406$ の $0.912395$ まで来ており、温度への効きは $0.101438$ で、比の $1$ パーセントの狂いが温度の $9.858223$ パーセントになった。効きと温度の積は低温の $6539.895$ K からちょうど半分の $3269.947$ K へ移る。比の値と明るさが等しくなる温度は数え方で変わり($5904.132$ K と $10393.120$ K)、効きは変わらなかった。分離子は、光の粒一個のエネルギーが熱の目安より大きい側か小さい側かである。既刊との位置:論文892 が脇に置いた星の色と表面温度の対応を、論文222 の数え方の違いと論文788 の変数に依らない分かれ目と並べて数えた。正直に言えば、実際の星の温度の決め方は言わない。理想の黒体の二つの波長で、比がどれだけ温度を読み分けるか、そこまでである。

参考文献

  1. Planck, M. (1901). Über das Gesetz der Energieverteilung im Normalspectrum. Annalen der Physik.
  2. Rybicki, G. B., & Lightman, A. P. (1979). Radiative Processes in Astrophysics. Wiley.
  3. 山岸勇輝 (2026). 『太陽は、緑にも橙にも赤外にも輝いている』[論文222]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/222 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22120199
  4. 山岸勇輝 (2026). 『入る光と出る光は $4.245712$ μm で分かれ、この分かれ目は変数の選び方に依らない』[論文788]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/788 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23015349
  5. 山岸勇輝 (2026). 『重い星ほど燃料が多いのに早く燃え尽き、その寿命の見積もりは明るさの指数に敏感である』[論文892]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/892

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「二つの色の明るさの比は熱い星ほど一定の値に近づき、温度を読む力が落ちる」[論文943]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/943

YOI 943第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 二つの色の明るさの比は熱い星ほど一定の値に近づき、温度を読む力が落ちる [論文943]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/943

Yamagishi, Y. (2026). The Brightness Ratio of Two Colors Levels Off for Hotter Stars, and Its Power to Read Temperature Fades [Paper 943]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/943

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