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【論文546】穴とその補集合が同じ像を作るのは、前方を外したときだけである

要旨

バビネの原理は、穴とその補集合が同じ回折像を作ると言う。本稿が示すのは、それが成り立つのが前方を外したときだけであり、成り立つ理由と成り立たない理由が同じ一本の等式から出ることである。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、足せば全面になる。スリットの場と補集合の場を足すと、どの角でも全面の場に $\mathbf{10^{-13}}$ の桁で一致する(第2節)。

第二に、全面の場は前方以外でほとんど零である。$u=0$ で $\mathbf{40.010000}$ なのに、$u=0.05$ 以降は $\mathbf{0.010000}$ にすぎない(第2節)。

第三に、これが本稿の芯である。だから前方以外では、補集合の場がスリットの場の符号を変えたものになる。強度は絶対値の二乗なので、二つの像が一致する(第3節)。

第四に、一致の度合いは、全面の残りで決まる。格子を $\mathbf{0.0100}$ から $\mathbf{0.0020}$ へ細かくすると、比が $\mathbf{0.99467820}$ から $\mathbf{0.99893196}$ へ改善する(第3節)。

第五に、前方だけは一致しない。比が $\mathbf{18.9055}$ で、桁が違う(第4節)。

第六に、分離子は、全面の場が無視できるかどうかである。開口の形ではなく、見ている角である(第4節)。

キーワード:バビネの原理、フラウンホーファー回折、補集合の開口、回折像、前方散乱。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。バビネの原理も、フラウンホーファー回折も標準的である。ベクトル回折を扱わない。偏光を持つ場合の補集合(導体と開口の入れ替え)は別の議論が要る。本稿はスカラー場だけを見る。近接場を扱わない。遠方場だけを計算した。実験を提案しない。前方の光をどう遮るかという実験の工夫は主題ではない。一次元だけを見る。二次元の開口へ広げてはいない。数値の限界を主張に使わない。一致が完全でないのは開口と格子が有限だからで、原理の限界ではない。既刊との関係:論文41 は干渉縞が指数を覚えていないと示した。縞の位置は位相で決まり、振幅の大きさとは別根である。本稿も振幅と強度を分ける。論文442 は白が色ではなく屈折率の差が作ると示した。あちらも見えているものが差であった。本稿では二つの場の差が全面の場という形で残る。論文300 は同根か別根かが判定できると示した。前方と前方以外は「量の持ち物」の基準で別根である。加えたのは、足すと全面になることを $\mathbf{10^{-13}}$ で確かめたこと、全面の場が前方以外で $\mathbf{0.010000}$ にとどまることを示したこと、一致の度合いが全面の残りで決まることを格子の細かさを変えて確かめたこと、前方の比が $\mathbf{18.9055}$ になることを対照に置いたこと、分離子を「全面の場が無視できるか」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:一次元の開口面に、幅 $2$ のスリットを開けた場合と、その部分だけを遮った補集合の場合を考える。遠方場の振幅を、角 $u=\sin\theta$ の関数として計算する。

バビネの原理:二つの遠方場を足すと、遮るものが何も無い場合(全面)の遠方場になる。

観察 1.1 これは足し算の恒等式である。透過率が $t$ と $1-t$ なので、足すと $1$ になる。回折の性質ではなく、線形性の帰結である。

観察 1.2 「同じ像」と言えるかどうかは、別の話である。足して全面になることと、二つが同じ強度を持つことは違う。後者が成り立つには、全面の場が小さくなければならない。

問い:どの角で成り立ち、どの角で成り立たないか。

2. 足すと全面になる

計算 2.1:三つの場合の遠方場の絶対値を、角ごとに出した。

$u$ スリット 補集合 全面 和と全面の差
$0.00$ $\mathbf{2.010000}$ $\mathbf{38.000000}$ $\mathbf{40.010000}$ $3.98\times10^{-13}$
$0.05$ $1.976772$ $1.966772$ $\mathbf{0.010000}$ $4.56\times10^{-16}$
$0.10$ $1.879063$ $1.869063$ $\mathbf{0.010000}$ $2.87\times10^{-15}$
$0.20$ $1.516724$ $1.506724$ $\mathbf{0.010000}$ $1.80\times10^{-15}$
$0.40$ $0.459630$ $0.449630$ $\mathbf{0.010000}$ $1.51\times10^{-15}$

観察 2.2 どの角でも足し算が成り立つ。差は $10^{-13}$ の桁、丸めの範囲であり、計算が正しいことの検査である。

観察 2.3 全面の場は、前方だけ大きい。$u=0$ で $\mathbf{40.010000}$、それ以外では $\mathbf{0.010000}$、$4000$ 倍以上の差がある。全面の開口は前方に鋭いピークを作り、そこを外れるとほとんど零になる。

観察 2.4 その $\mathbf{0.010000}$ は、開口と格子が有限であることの残りである。格子の間隔がちょうど $0.0100$、原理としては零に行くべき量が、計算の刻みだけ残っている。

3. 前方を外すと、二つは一致する

観察 3.1 これが本稿の芯である。足すと全面になり、全面が前方以外でほとんど零なので、そこでは補集合の場がスリットの場の符号を変えたものになる。強度は絶対値の二乗を取るので、符号は消える。だから二つの像が一致する。

計算 3.2:比を角ごとに出した。

$u$ 補集合 / スリット
$0.00$ $\mathbf{18.9055}$
$0.05$ $\mathbf{0.9949412482}$
$0.10$ $\mathbf{0.9946781975}$
$0.20$ $\mathbf{0.9934068414}$
$0.40$ $\mathbf{0.9782433626}$

観察 3.3 一致は完全ではない。$0.5$ から $2$ パーセントずれる。原理が破れているのではなく、全面の場が完全には零でないからである。

計算 3.4:格子を細かくして、残りを減らした。

格子の点数 間隔 $u=0.1$ での比
$4001$ $\mathbf{0.0100}$ $\mathbf{0.99467820}$
$20001$ $\mathbf{0.0020}$ $\mathbf{0.99893196}$

観察 3.5 残りが減ると、一致が良くなる。間隔を $5$ 分の $1$ にすると、$1$ からのずれも約 $5$ 分の $1$ になる。ずれの原因が全面の残りであることの確認であり、原理の限界ではない。

観察 3.6 振幅と強度を分けている。振幅は符号が逆で、強度は同じ、論文41 が縞の位置と振幅の大きさを別根だと示したのと同じ分け方である。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、全面の場が無視できるかどうかである。開口の形ではなく、見ている角で決まる。同じ開口でも、前方では成り立たず、外せば成り立つ。

観察 4.2 前方では比が $\mathbf{18.9055}$ になる。桁が違う。境目の反対側。バビネの原理を無条件に述べると、ここで外れる。

観察 4.3 理由は一本の等式で説明される。スリット $+$ 補集合 $=$ 全面、成り立つ理由も、成り立たない理由も、同じ等式の右辺が小さいか大きいかである。

観察 4.4 論文300 の「量の持ち物」で別根である。前方の一致は全面の場という持ち物を要る。前方以外の一致は要らない。同じ「一致するか」でも条件が違う。

観察 4.5 論文442 と同じ形である。あちらは白が色ではなく屈折率の差だと示した。ここでも見えているのは差であり、二つの場の差が全面の場として残っている。

観察 4.6 言わないこと。ベクトル回折には立ち入らない。偏光を持つ場合の補集合には別の議論が要り、近接場も二次元の開口も扱っていない。

5. 点呼と結び

  1. 足すと全面になる(差 $10^{-13}$)(計算 2.1):線形性の帰結。
  2. 全面は $u=0$ で $\mathbf{40.010000}$(計算 2.1):それ以外は $\mathbf{0.010000}$。
  3. $4000$ 倍以上の差(観察 2.3):前方に鋭いピーク。
  4. $\mathbf{0.010000}$ は格子の残り(観察 2.4):原理の限界ではない。
  5. 前方以外では符号だけが逆(観察 3.1):本稿の芯。
  6. 比は $\mathbf{0.9949412482}$ など(計算 3.2):$0.5$ から $2$ パーセント。
  7. 格子を細かくすると $\mathbf{0.99893196}$(計算 3.4):残りが減る。
  8. ずれは $5$ 分の $1$ になる(観察 3.5):原因の確認。
  9. 前方では比が $\mathbf{18.9055}$(観察 4.2):境目の反対側。
  10. 分離子は全面の場(観察 4.1):開口の形ではない。
  11. 同じ等式が両方を説明する(観察 4.3):右辺の大小。

結び:バビネの原理は、穴とその補集合が同じ回折像を作ると言う。足すと全面になる。スリットの場と補集合の場を足すと、どの角でも全面の場に $10^{-13}$ の桁で一致する。透過率が $t$ と $1-t$ で足すと $1$ になるからで、これは回折の性質ではなく線形性の帰結である。その全面の場は前方だけ大きく、$u=0$ で $\mathbf{40.010000}$、それ以外では $\mathbf{0.010000}$ にとどまる。$4000$ 倍以上の差である。その $\mathbf{0.010000}$ も、開口と格子が有限であることの残りにすぎず、格子の間隔ちょうどである。だから前方を外すと、二つが一致する。全面がほとんど零なので、補集合の場はスリットの場の符号を変えたものになり、強度は絶対値の二乗を取るので符号が消える。比は $u=0.05$ で $\mathbf{0.9949412482}$、$u=0.40$ で $\mathbf{0.9782433626}$ と、$0.5$ から $2$ パーセントずれる。ずれているのは原理が破れているからではない。格子を $\mathbf{0.0100}$ から $\mathbf{0.0020}$ へ細かくすると比が $\mathbf{0.99467820}$ から $\mathbf{0.99893196}$ へ改善し、間隔を $5$ 分の $1$ にするとずれも約 $5$ 分の $1$ になる。振幅と強度を分けていることが効いている。論文41 が縞の位置と振幅の大きさを別根だと示したのと同じ分け方である。分離子は、全面の場が無視できるかどうかである。開口の形ではなく、見ている角で決まる。同じ開口でも前方では成り立たず、外せば成り立つ。前方では比が $\mathbf{18.9055}$ と桁が違い、バビネの原理を無条件に述べるとここで外れる。理由は一本の等式で説明される。スリットと補集合の和が全面であり、成り立つ理由も成り立たない理由も、その右辺が小さいか大きいかである。論文300 の「量の持ち物」でいえば、前方の一致は全面の場という持ち物を要り、前方以外の一致は要らない。論文442 が白を屈折率の差として見たのと同じで、ここでも見えているのは差であり、二つの場の差が全面の場として残っている。正直に言えば、ベクトル回折には立ち入っていない。偏光を持つ場合、導体と開口を入れ替える補集合には別の議論が要る。近接場も扱わず、遠方場だけを計算した。一次元だけを見ており、二次元の開口へは広げていない。前方の光をどう遮るかという実験の工夫も述べていない。一致が完全でないことを原理の限界として使うこともしない。開口と格子が有限だからである。言えるのは、成り立つ範囲が角で決まり、その境目が全面の場の大きさで説明される、そこまでである。

参考文献

  1. Babinet, A. (1837). Memoires d’optique meteorologique. Comptes Rendus de l’Academie des Sciences.
  2. Booker, H. G. (1946). Slot Aerials and Their Relation to Complementary Wire Aerials. Journal of the IEE.
  3. Born, M., & Wolf, E. (1999). Principles of Optics (7th ed.). Cambridge University Press.
  4. Goodman, J. W. (2005). Introduction to Fourier Optics (3rd ed.). Roberts.
  5. 山岸勇輝 (2026). 『干渉縞は、指数を覚えていない』[論文41]. Zenodo. 10.5281/zenodo.21436048
  6. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  7. 山岸勇輝 (2026). 『白は色ではなく、屈折率の差が作っている』[論文442]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22732404

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「穴とその補集合が同じ像を作るのは、前方を外したときだけである」[論文546]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.23014172

YOI 546第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/546・DOI 10.5281/zenodo.23014172・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 穴とその補集合が同じ像を作るのは、前方を外したときだけである [論文546]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/546 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014172

Yamagishi, Y. (2026). An Aperture and Its Complement Make the Same Pattern Only Away From the Forward Direction [Paper 546]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/546; DOI: 10.5281/zenodo.23014172

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