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【論文551】指標が動かないまま、不良率が 359 倍になる

要旨

工程能力は指数で表され、$1.33$ が慣行の目安とされる。本稿が示すのは、ばらつきだけを見る指標が偏りという別の失敗にまったく反応しないこと、そして反応しないあいだに不良率が $\mathbf{359.1607}$ 倍になることである。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、$C_p$ は中心を動かしても変わらない。規格の中心にいても $0.5$ ずれても $\mathbf{1.3333}$ のままで、$12$ 桁動かない(第2節)。

第二に、これが本稿の芯である。そのあいだに不良率は $\mathbf{359.1607}$ 倍になる。$\mathbf{63.3425}$ ppm から $\mathbf{22750.1329}$ ppm へ(第2節)。

第三に、偏りを見る指標のほうは、ちょうど半分に落ちる。$C_{pk}$ が $\mathbf{1.3333}$ から $\mathbf{0.6667}$ へ(第2節)。

第四に、慣行の $1.33$ は $\mathbf{66.0733}$ ppm を意味する。$60$ より大きく $70$ より小さい。よく引かれる $63$ ppm は中心にいる場合の値である(第3節)。

第五に、ずれを許したまま同じ指標を保つ代償は大きい。ばらつきを $\mathbf{0.5000}$ 倍にしなければならない(第3節)。

第六に、分離子は、指標が両側の余裕の小さいほうを取るかどうかである。最小を取る指標は、遠いほうの余裕をいくら広げても動かない(第4節)。

キーワード:工程能力指数、Cp と Cpk、不良率、正規分布、品質管理。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。$C_p$ と $C_{pk}$ の定義も、正規分布からの不良率も標準的である。品質管理の運用を勧めない。どの指標を使うべきかは述べない。指標が何に反応し何に反応しないかだけを見る。分布は正規と仮定した。裾の重い分布では ppm の値がそのまま変わる。指標の側の性質は変わらないが、数は当てにならない。標本からの推定を扱わない。$\mu$ と $\sigma$ は真値として与えた。少数の標本から推定する場合の誤差は別の主題である。工程が定常であるとした。中心が時間とともに漂う場合を入れていない。よく言われる「$1.5\sigma$ シフト」の慣行を採らない。本稿のずれは仮定した値であって、業界の経験則を持ち込んでいない。既刊との関係:論文317 は有意水準が「一回あたり」の約束だと示した。$C_{pk}=1.33$ も一つの特性についての約束であって、製品全体についてではない。同じ読み違いが品質でも起きる。論文375 は第一主成分を選んでいるのがデータではなく単位だと示した。データから計算される数が、実はデータ以外の何かに支配されている型である。$C_p$ は「能力」を名乗りながら、ばらつきだけに支配されている。論文550 は全体の能力が最小で決まり、和では決まらないと示した。$C_{pk}$ も両側の余裕の最小を取る。遠いほうを広げても動かないという同じ性質が、工程の並びと規格の両側で現れる。論文300 は同根か別根かが判定できると示した。「$C_p$ が偏りに反応しない」と「不良率が $359$ 倍になる」は別根である。加えたのは、$C_p$ の不動を $12$ 桁で確かめたこと、同じ条件下の不良率の比を $\mathbf{359.1607}$ 倍と測ったこと、慣行の $1.33$ が $\mathbf{66.0733}$ ppm であることと、よく引かれる $63$ ppm との違いを分けたこと、ずれたまま指標を保つ代償を逆算して $\mathbf{0.5000}$ 倍と出したこと、分離子を「最小を取るかどうか」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:規格の下限を $L$、上限を $U$、工程の平均を $\mu$、標準偏差を $\sigma$ とする。二つの指標がある。

$$C_p=\frac{U-L}{6\sigma},\qquad
C_{pk}=\min\!\left(\frac{U-\mu}{3\sigma},\ \frac{\mu-L}{3\sigma}\right)$$

観察 1.1 $C_p$ に $\mu$ が出てこない。規格の幅とばらつきだけで決まる。どこを狙っていても同じ値になる。

観察 1.2 $C_{pk}$ は最小を取る。両側の余裕のうち小さいほうだけを見る。論文550 の全体の能力と同じ形である。遠いほうの余裕をいくら広げても動かない。

問い:$C_p$ が動かないあいだに、実害はどれだけ動くか。

2. 同じ $C_p$ で、不良率が $359$ 倍になる

計算 2.1:$L=9$、$U=11$、$\sigma=0.25$ に固定し、中心 $\mu$ だけを動かした。

中心 $\mu$ $C_p$ $C_{pk}$ 不良率
$10.00$ $\mathbf{1.3333}$ $\mathbf{1.3333}$ $\mathbf{63.3425}$ ppm
$10.25$ $\mathbf{1.3333}$ $\mathbf{1.0000}$ $1350.1847$ ppm
$10.50$ $\mathbf{1.3333}$ $\mathbf{0.6667}$ $\mathbf{22750.1329}$ ppm

観察 2.2 $C_p$ が $12$ 桁動かない。中心を $0.5$ ずらしても $\mathbf{1.3333}$ のままである。定義どおりだが、定義どおりであることが問題である。

観察 2.3 これが本稿の芯である。そのあいだ不良率は $\mathbf{63.3425}$ ppm から $\mathbf{22750.1329}$ ppm へ、$\mathbf{359.1607}$ 倍になった。$300$ より大きく $400$ より小さい。閾値を先に置かず、測ってから挟んでいる。

観察 2.4 $C_{pk}$ のほうはちょうど半分になる。$\mathbf{1.3333}$ から $\mathbf{0.6667}$、偏りを見る指標は反応している。反応しないのは $C_p$ だけである。

観察 2.5 片方の側が全部を持っていく。$\mu=10.5$ では上限側の余裕が $0.5$、下限側が $1.5$ である。$C_{pk}$ は小さいほうしか見ないので、下限側の $1.5$ という余裕は指標に一切寄与しない。論文550 で遊んでいる工程が全体に寄与しなかったのと同じ形である。

観察 2.6 論文375 と同じ型である。あちらは第一主成分を選んでいるのがデータではなく単位だった。こちらは「工程能力」を名乗る数を選んでいるのが、能力の全体ではなくばらつきだけである。名前が広く、中身が狭い。

3. 慣行の $1.33$ は何 ppm か

計算 3.1:$C_{pk}=1.33$ ちょうどのときの不良率を出した。

量 値
片側の不良確率 $3.303665\times10^{-5}$
両側にすると $\mathbf{66.0733}$ ppm

観察 3.2 $60$ より大きく $70$ より小さい。実測 $\mathbf{66.0733}$、よく引かれる $63$ ppm は $C_{pk}=1.3333$ で中心にいる場合の値で、$1.33$ と $1.3333$ の差がここに出る。

観察 3.3 論文317 の読み違いが、ここでも起きる。$C_{pk}=1.33$ は一つの特性についての約束である。製品が二十の特性を持てば、全部が規格内に入る確率はそれより低い。有意水準が「一回あたり」であるのと同じ型である。

計算 3.4:中心が $10.5$ にずれたまま $C_{pk}$ を $\mathbf{1.3333}$ に戻すには、ばらつきをいくらにすればよいか、逆算した。

量 値
必要な $\sigma$ $0.125000$(元は $0.25$)
比 $\mathbf{0.5000}$ 倍

観察 3.5 逆算が検査になっている。得た $\sigma$ を戻すと $C_{pk}$ が元の値に戻る。解き損ないではないことを別に確かめた。

観察 3.6 ずれを許す代償は大きい。ばらつきを半分にするのは、たいてい狙いを $0.5$ 戻すより難しい。同じ指標に戻るのに、二つの道の労力がまったく違う。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、指標が両側の余裕の小さいほうを取るかどうかである。最小を取れば偏りに反応し、幅だけを見れば反応しない。$C_p$ と $C_{pk}$ の差はそこ一点である。

観察 4.2 最小を取る指標には、別の盲点がある。遠いほうの規格をいくら広げても $C_{pk}$ は動かない。論文550 で遊んでいる工程を広げても全体が増えなかったのと同じである。最小は、選ばれなかった側の情報を捨てる。

観察 4.3 論文300 の基準で別根である。「$C_p$ が偏りに反応しない」は定義に $\mu$ が無いという持ち物を要る。「不良率が $359$ 倍になる」は正規分布の裾という別の持ち物を要る。裾が重ければ倍率は変わるが、$C_p$ が動かないことは変わらない。

観察 4.4 言わないこと。$C_p$ を使うなとは書かない。ばらつきだけを問いたい場面では正しい指標である。問題は名前が「工程能力」と広いことであって、量そのものではない。

5. 点呼と結び

  1. $C_p$ が $\mathbf{1.3333}$ のまま(計算 2.1):$12$ 桁動かない。
  2. 不良率 $\mathbf{63.3425}$ ppm(計算 2.1):中心にいるとき。
  3. 不良率 $\mathbf{22750.1329}$ ppm(計算 2.1):$0.5$ ずれたとき。
  4. 比 $\mathbf{359.1607}$ 倍(観察 2.3):本稿の芯。
  5. $C_{pk}$ が $\mathbf{1.3333}$ から $\mathbf{0.6667}$(計算 2.1):ちょうど半分。
  6. 慣行の $1.33$ は $\mathbf{66.0733}$ ppm(計算 3.1):$63$ ppm とは別物。
  7. 必要な $\sigma$ は $\mathbf{0.5000}$ 倍(計算 3.4):逆算で得た。
  8. 戻すと $C_{pk}$ が復元する(観察 3.5):逆算の突合せ。
  9. 分離子は最小を取るかどうか(観察 4.1):$C_p$ と $C_{pk}$ の差はそこ一点。
  10. 最小は選ばれなかった側を捨てる(観察 4.2):論文550 と同じ形。

結び:工程能力は指数で表され、$1.33$ が慣行の目安とされる。ところがばらつきだけを見る指標は、偏りという別の失敗にまったく反応しない。$L=9$、$U=11$、$\sigma=0.25$ に固定して中心を $0.5$ ずらしても、$C_p$ は $\mathbf{1.3333}$ のまま $12$ 桁動かない。そのあいだに不良率は $\mathbf{63.3425}$ ppm から $\mathbf{22750.1329}$ ppm へ $\mathbf{359.1607}$ 倍になる。偏りを見る $C_{pk}$ のほうは $\mathbf{1.3333}$ からちょうど半分の $\mathbf{0.6667}$ へ落ちており、反応しないのは $C_p$ だけである。$\mu=10.5$ では上限側の余裕が $0.5$、下限側が $1.5$ で、$C_{pk}$ は小さいほうしか見ないため下限側の $1.5$ は指標に一切寄与しない。慣行の $1.33$ が意味するのは $\mathbf{66.0733}$ ppm である。よく引かれる $63$ ppm は $C_{pk}=1.3333$ で中心にいる場合の値で、$1.33$ と $1.3333$ の差がここに出る。そして論文317 の読み違いがここでも起きる。$1.33$ は一つの特性についての約束であって、二十の特性を持つ製品が全部規格内に入る確率はそれより低い。ずれを許したまま同じ指標に戻る代償は大きい。中心が $10.5$ のまま $C_{pk}$ を $\mathbf{1.3333}$ に戻すには、ばらつきを $\mathbf{0.5000}$ 倍にしなければならない。得た $\sigma$ を戻すと $C_{pk}$ が復元することを別に確かめてある。ばらつきを半分にするのは、たいてい狙いを $0.5$ 戻すより難しい。同じ指標に戻るのに、二つの道の労力がまったく違う。分離子は、指標が両側の余裕の小さいほうを取るかどうかである。最小を取れば偏りに反応し、幅だけを見れば反応しない。$C_p$ と $C_{pk}$ の差はそこ一点である。ただし最小を取る指標にも別の盲点がある。遠いほうの規格をいくら広げても $C_{pk}$ は動かない。論文550 で遊んでいる工程を広げても全体が増えなかったのと同じで、最小は選ばれなかった側の情報を捨てる。論文300 の基準では、「$C_p$ が偏りに反応しない」は定義に $\mu$ が無いことを、「不良率が $359$ 倍になる」は正規分布の裾を、それぞれ別に要る。論文375 と同じ型でもある。あちらは第一主成分を選んでいるのがデータではなく単位だった。こちらは「工程能力」を名乗る数を選んでいるのが、能力の全体ではなくばらつきだけである。名前が広く、中身が狭い。正直に言えば、品質管理の運用は勧めていない。分布は正規と仮定しており、裾が重ければ ppm の値はそのまま変わる(指標の側の性質は変わらないが、数は当てにならない)。$\mu$ と $\sigma$ は真値として与えたので、少数の標本から推定する誤差は別の主題である。中心が時間とともに漂う場合も入れておらず、業界でよく言う「$1.5\sigma$ シフト」の慣行も持ち込んでいない。そして $C_p$ を使うなとも書かない。ばらつきだけを問いたい場面では正しい指標であって、問題は名前が広いことである。

参考文献

  1. Abramowitz, M., & Stegun, I. A. (1964). Handbook of Mathematical Functions. National Bureau of Standards.
  2. Kane, V. E. (1986). Process Capability Indices. Journal of Quality Technology.
  3. Kotz, S., & Johnson, N. L. (2002). Process Capability Indices、A Review, 1992--2000. Journal of Quality Technology.
  4. Montgomery, D. C. (2019). Introduction to Statistical Quality Control (8th ed.). Wiley.
  5. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  6. 山岸勇輝 (2026). 『有意水準は「一回あたり」の約束であって、研究あたりではない』[論文317]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22208819
  7. 山岸勇輝 (2026). 『第一主成分を選んでいるのは、データではなく単位である』[論文375]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22698703
  8. 山岸勇輝 (2026). 『広げた効きは $1$ か $0$ のどちらかで、途中が無い』[論文550]. Zenodo. 10.5281/zenodo.23014187

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「指標が動かないまま、不良率が 359 倍になる」[論文551]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.23014191

YOI 551第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 指標が動かないまま、不良率が 359 倍になる [論文551]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/551 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014191

Yamagishi, Y. (2026). The Index Does Not Move While the Defect Rate Rises 359-Fold [Paper 551]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/551; DOI: 10.5281/zenodo.23014191

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