Yamagishi Complexity Torus Lab山岸勇輝ラボ

【論文563】リベットで留めた板は、半分しか板ではない

要旨

継手を強くしたければ、リベットを増やせばよいと考えられる。本稿が示すのは、リベットを入れるには孔をあけねばならず、その孔が板を削るので、継手の効率には $1$ より小さい上限があることである。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、二つの耐力は逆向きに動く。ピッチを広げれば板の耐力は増えるが、リベットの耐力は $\mathbf{78.5398}$ kN で動かない(第2節)。

第二に、これが本稿の芯である。二つが釣り合うところで効率が最大になる。ピッチはリベット径の $\mathbf{1.981748}$ 倍、効率は $\mathbf{0.495395}$ である(第2節)。

第三に、どちらへ動かしても下がる。$25$ mm では $\mathbf{0.200000}$、$80$ mm では $\mathbf{0.245437}$ になる(第3節)。

第四に、詰めきると効率は $0$ になる。ピッチをリベット径まで詰めると板が残らない(第3節)。

第五に、二列にすれば上がるが、$1$ には届かない。$\mathbf{0.662561}$ まで(第3節)。

第六に、分離子は、留め具が留める相手を削るかどうかである。削らない留め方なら、この上限は無い(第4節)。

キーワード:リベット継手、継手効率、有効断面、穴による欠損、構造設計。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。リベット継手の効率も、板の有効断面も標準的である。継手を設計しない。安全率も、縁端距離も、板の座屈も入れていない。支圧破壊を入れない。実際には板がリベットに押しつぶされる壊れ方もある。本稿は板の引張とリベットのせん断の二つだけを見ており、三つ目を入れれば上限はさらに下がる。千鳥配置を扱わない。二列は「同じピッチに二本」として数えたもので、破断線が斜めに走る場合の計算はしていない。摩擦を入れない。高力ボルト継手のように摩擦で伝える場合は、まったく別の勘定になる。孔の応力集中を入れない。有効断面だけで数えており、孔の縁の応力集中は論文343 の射程である。「リベットは劣る」とは書かない。上限があることと、使うべきでないことは別である。既刊との関係:論文550 は全体の能力が最小で決まり、広げた効きが $1$ か $0$ しかないと示した。本稿の継手の耐力も二つの最小で決まる。ただしあちらは片方だけを広げたので効きが階段になり、こちらはピッチを動かすと二つが同時に動くので、山ができる。同じ最小則でも、動かすつまみが何に効くかで形が変わる。論文557 は歯を強くする角度が伝動をなめらかにする角度と逆を向いていると示した。本稿のピッチも同じ形で、一つのつまみが二つの良いことを逆向きに動かす。ただしあちらは交点が無く選ぶしかなかったが、こちらは交点が最適になる。対立に頂上があるかどうかが違う。論文300 は同根か別根かが判定できると示した。「効率に上限がある」と「最適が二つの交点にある」は別根である。加えたのは、釣り合うピッチをリベット径の $\mathbf{1.981748}$ 倍と出し、そこで両者が一致することを逆算で確かめたこと、最大の効率を $\mathbf{0.495395}$ と測り、山の両側で下がることを見たこと、ピッチをリベット径まで詰めると効率が $0$ になることを $12$ 桁で確かめたこと、二列にしたときの $\mathbf{0.662561}$ を対照に置いたこと、分離子を「留め具が留める相手を削るか」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:厚さ $t$ の板を、直径 $d$ のリベットでピッチ $p$ ごとに留める。ピッチ一区間が持つ力は、二つのうち低いほうである。

$$F=\min\bigl(\sigma_t\,t\,(p-d),\ \tau\,\pi d^{2}/4\bigr)$$

前者は孔のあいだの板が切れる力、後者はリベットが切れる力である。継手効率を $\eta=F/(\sigma_t t p)$、すなわち孔のない板に対する比とする。

観察 1.1 分子には $p-d$ が、分母には $p$ がある。孔の直径ぶんだけ、板は最初から失われている。$\eta$ が $1$ に達するには $d=0$ でなければならない。

観察 1.2 最小が出てくる。論文550 が扱った直列工程と同じ形である。低いほうだけが効き、高いほうは遊ぶ。

問い:ピッチをどこに置くと、効率が最大になるか。

2. 二つの耐力が交わるところ

計算 2.1:板厚 $10$ mm・引張強さ $400$ MPa、リベット径 $20$ mm・せん断強さ $250$ MPa とした。

量 値
リベット一本のせん断耐力 $\mathbf{78.5398}$ kN
板の耐力(ピッチ $p$) $4000.0000$ kN/m $\times (p-d)$

観察 2.2 片方は動き、片方は動かない。ピッチを広げれば板の耐力は一次で増えるが、リベットの耐力は $\mathbf{78.5398}$ kN のままである。だから低いほうが途中で入れ替わる。

計算 2.3:二つが等しくなるピッチを求めた。

量 値
釣り合うピッチ $\mathbf{0.039635}$ m(リベット径の $\mathbf{1.981748}$ 倍)
そこでの継手効率 $\mathbf{0.495395}$

観察 2.4 これが本稿の芯である。最良でも $\mathbf{0.495395}$、つまり孔のない板の半分に届かない。$0.49$ より大きく $0.50$ より小さい。実測してから挟んだ。

観察 2.5 逆算が検査になっている。そのピッチで板とリベットの耐力が一致する。解き損ないではないことを別に確かめた。

観察 2.6 効率は必ず $1$ 未満である。孔があるかぎり $p-d<p$ だから、どんなに上手にピッチを選んでも、板の一部は最初から捨てている。

3. どちらへ動かしても下がる

計算 3.1:ピッチを動かして、全体の耐力と効率を見た。

ピッチ 板 リベット 効率
$25$ mm $20.0000$ kN $78.5398$ kN $\mathbf{0.200000}$
$30$ mm $40.0000$ kN $78.5398$ kN $0.333333$
$39.6$ mm $78.5398$ kN $78.5398$ kN $\mathbf{0.495395}$
$50$ mm $120.0000$ kN $78.5398$ kN $0.392699$
$80$ mm $240.0000$ kN $78.5398$ kN $\mathbf{0.245437}$

観察 3.2 山の両側で下がる。最適の $0.9$ 倍でも $1.1$ 倍でも効率が小さい。一点だけを見て「最大」と言わない。

観察 3.3 下がり方が左右で違う。詰めた側では板が足りず、広げた側ではリベットが足りない。左では孔が近すぎ、右では孔が少なすぎる。同じ「効率が下がる」でも、足りていないものが別である。

観察 3.4 詰めきると $0$ になる。ピッチをリベット径まで詰めると効率がちょうど $0$($12$ 桁)、孔が隣り合って板が残らない。境目である。

計算 3.5:同じピッチに二本入れた場合を計算した。ピッチ $\mathbf{0.059270}$ m で、効率は $\mathbf{0.662561}$ になる。

観察 3.6 上がるが、$1$ には届かない。$0.65$ より大きく $0.68$ より小さい。列を増やせば孔一つあたりが持つ力が増えるので、同じ板でより広いピッチが取れる。それでも孔がある以上、上限は $1$ の手前にある。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、留め具が留める相手を削るかどうかである。リベットもボルトも、入れるために孔をあける。溶接や接着は削らないので、この上限を持たない。かわりに別の上限を持つ(論文561 の重ね継手のように)。「効率が $1$ 未満」はリベットの弱さではなく、孔を要する留め方の性質である。

観察 4.2 論文550 とは、動かすつまみが違う。あちらは律速の工程だけを広げたので、効きが $1$ から $0$ へ階段になった。こちらはピッチを動かすと二つの耐力が同時に動く(板は増え、効率の分母も増える)。だから階段ではなく山ができる。同じ最小則でも、つまみが片方だけに効くか両方に効くかで形が変わる。

観察 4.3 論文557 とも形が違う。あちらは圧力角が歯の強さとかみ合い率を逆に動かし、交点が無いので選ぶしかなかった。こちらは交点そのものが最適である。同じ「一つのつまみ、二つの良いこと」でも、対立に頂上があるかどうかが違う。

観察 4.4 論文300 の基準で別根である。「効率に上限がある」は孔が板を削るという持ち物を要る。「最適が二つの交点にある」は二つの耐力が逆向きに動くという別の持ち物を要る。孔が無限に小さければ前者は消え、後者は残る。

観察 4.5 言わないこと。「リベットは劣る」とは書かない。上限があることと、使うべきでないことは別である。支圧破壊も摩擦も入れていないので、実際の設計はこれより複雑である。

5. 点呼と結び

  1. リベット一本 $\mathbf{78.5398}$ kN(計算 2.1):ピッチに依らない。
  2. 釣り合うピッチ 径の $\mathbf{1.981748}$ 倍(計算 2.3):二つの交点。
  3. 最大効率 $\mathbf{0.495395}$(計算 2.3):本稿の芯・半分に届かない。
  4. そこで両者が一致(観察 2.5):逆算の突合せ。
  5. $25$ mm で $\mathbf{0.200000}$(計算 3.1):詰めた側。
  6. $80$ mm で $\mathbf{0.245437}$(計算 3.1):広げた側。
  7. 径まで詰めると $0$(観察 3.4):境目・$12$ 桁。
  8. 二列で $\mathbf{0.662561}$(計算 3.5):上がるが $1$ に届かない。
  9. 分離子は留め具が削るか(観察 4.1):削らない留め方には無い上限。
  10. 論文550 は階段、本稿は山(観察 4.2):つまみの効き方が違う。

結び:継手を強くしたければ、リベットを増やせばよいと考えられる。ところがリベットを入れるには孔をあけねばならず、その孔が板を削る。ピッチ一区間が持つ力は「孔のあいだの板が切れる力」と「リベットが切れる力」の低いほうで、前者はピッチとともに増え、後者は $\mathbf{78.5398}$ kN のまま動かない。だから二つが釣り合うところで効率が最大になり、そのピッチはリベット径の $\mathbf{1.981748}$ 倍、効率は $\mathbf{0.495395}$ である。$0.49$ より大きく $0.50$ より小さく、実測してから挟んだ。そのピッチで両者が一致することも逆算で確かめてある。最良でも孔のない板の半分に届かない。効率が $1$ 未満なのは、孔があるかぎり $p-d<p$ だからで、どんなに上手にピッチを選んでも板の一部は最初から捨てている。そしてどちらへ動かしても下がる。$25$ mm では $\mathbf{0.200000}$、$80$ mm では $\mathbf{0.245437}$ で、最適の $0.9$ 倍でも $1.1$ 倍でも小さい。ただし下がり方が左右で違う。詰めた側では板が足りず、広げた側ではリベットが足りない。同じ「効率が下がる」でも、足りていないものが別である。詰めきってピッチをリベット径にすると効率はちょうど $0$ になる。孔が隣り合って板が残らない。同じピッチに二本入れれば $\mathbf{0.662561}$ まで上がるが、それでも $1$ には届かない。分離子は、留め具が留める相手を削るかどうかである(リベットもボルトも入れるために孔をあけるが、溶接や接着は削らないのでこの上限を持たない(かわりに別の上限を持つ)論文561 の重ね継手がそれである)。「効率が $1$ 未満」はリベットの弱さではなく、孔を要する留め方の性質である。論文300 の基準では、「効率に上限がある」は孔が板を削ることを、「最適が二つの交点にある」は二つの耐力が逆向きに動くことを、それぞれ別に要る。既刊との位置、論文550 も最小則だったが、あちらは律速の工程だけを広げたので効きが $1$ から $0$ への階段になった。こちらはピッチを動かすと二つの耐力が同時に動くので、階段ではなく山ができる。同じ最小則でも、つまみが片方だけに効くか両方に効くかで形が変わる。論文557 も「一つのつまみ、二つの良いこと」だったが、あちらは交点が無く選ぶしかなかった。こちらは交点そのものが最適である。対立に頂上があるかどうかが違う。正直に言えば、継手を設計していない。安全率も縁端距離も板の座屈も入れておらず、支圧破壊(板がリベットに押しつぶされる壊れ方)も入れていないので、三つ目を数えれば上限はさらに下がる。二列は「同じピッチに二本」として数えたもので、千鳥配置の斜めの破断線は計算していない。摩擦で伝える高力ボルト継手はまったく別の勘定になり、孔の縁の応力集中は論文343 の射程である。そして「リベットは劣る」とも書かない。上限があることと、使うべきでないことは別である。

参考文献

  1. Bruhn, E. F. (1973). Analysis and Design of Flight Vehicle Structures. Jacobs Publishing.
  2. Kulak, G. L., Fisher, J. W., & Struik, J. H. A. (2001). Guide to Design Criteria for Bolted and Riveted Joints (2nd ed.). AISC.
  3. Niu, M. C. Y. (1988). Airframe Structural Design. Conmilit Press.
  4. Volkersen, O. (1938). Die Nietkraftverteilung in zugbeanspruchten Nietverbindungen mit konstanten Laschenquerschnitten. Luftfahrtforschung.
  5. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  6. 山岸勇輝 (2026). 『穴の大きさは、応力集中の式に入っていない』[論文343]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22682218
  7. 山岸勇輝 (2026). 『広げた効きは $1$ か $0$ のどちらかで、途中が無い』[論文550]. Zenodo. 10.5281/zenodo.23014187
  8. 山岸勇輝 (2026). 『歯を強くする角度は、伝動をなめらかにする角度と逆を向いている』[論文557]. Zenodo. 10.5281/zenodo.23014224
  9. 山岸勇輝 (2026). 『重ねを倍にしても、耐力は $1$ パーセントも増えない』[論文561]. Zenodo. 10.5281/zenodo.23014246

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「リベットで留めた板は、半分しか板ではない」[論文563]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.23014254

YOI 563第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS

予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS

住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/563・DOI 10.5281/zenodo.23014254・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). リベットで留めた板は、半分しか板ではない [論文563]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/563 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014254

Yamagishi, Y. (2026). A Riveted Plate Is Only Half a Plate [Paper 563]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/563; DOI: 10.5281/zenodo.23014254

@misc{yamagishi2026yoi563,
  author = {Yamagishi, Yuuki},
  title = {A Riveted Plate Is Only Half a Plate},
  year = {2026},
  howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/563},
  doi = {10.5281/zenodo.23014254},
  note = {Preprint, edition 1}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
6b3f5ae2022926cb40c2c23c56cdf52241d2943a5ffdd159c92e65c7babb16db yamagishi_yoi563_v1_jp.pdf
e38903211730e97aa529cda5c36a8e039a4449a2d2e5348f16fceec6e64f307e yamagishi_yoi563_v1_en.pdf

PDF と .ots を同じ場所に保存し、opentimestamps.org に .ots、続けて PDF を落とすと、記録された日時が表示されます。PDF が 1 バイトでも変わっていれば通りません。