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【論文571】電子レンジの 2.45 GHz は、水の共鳴ではない

要旨

電子レンジの $2.45$ GHz は、水分子の共鳴周波数だと説明されることが多い。本稿が示すのは、マイクロ波の帯での水の吸収は共鳴ではなく幅の広い緩和であり、$2.45$ GHz はその頂点から大きく外れた位置にあって、外れているからこそ中まで温まることである。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、水の吸収はデバイの緩和で書ける。20 度の代表値で緩和時間は $\mathbf{9.3621}$ ps、損失の頂点は $17$ GHz にあり、$2.45$ GHz はその $\mathbf{0.144118}$ 倍の位置である(第2節)。

第二に、それでも損失は頂点の $\mathbf{0.282370}$ 倍ある。緩和の帯は広く、頂点の半分以上を吸う帯の上下の比はちょうど $7+4\sqrt3=\mathbf{13.928203}$ 倍($\mathbf{1.143895}$ 桁)である(第2節)。

第三に、これが本稿の芯である。同じ位置に $Q=10$ の共振があったなら、吸われるのは頂点の $\mathbf{0.001503}$ 倍にすぎない。緩和は共振の $187.92$ 倍吸う。$2.45$ GHz が使えるのは、水が共鳴していないからである(第3節)。

第四に、頂点で温めないのは深さのためである。電力が $1/e$ になる深さは $2.45$ GHz で $\mathbf{16.4381}$ mm、$17$ GHz で $\mathbf{0.5314}$ mm、比は $\mathbf{30.9336}$ 倍である(第4節)。

第五に、頂点では表面が $\mathbf{24.5733}$ 倍速く温まる。だがそれは薄い皮だけを焼く、焼き網の温め方である(第4節)。

第六に、分離子は、分子に戻す力があるかどうかである。孤立した水蒸気には回転の共鳴があり、液体の水にはマイクロ波の帯で摩擦しかない(第5節)。

キーワード:電子レンジ、2.45 GHz、誘電加熱、デバイ緩和、水の誘電率。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。デバイの緩和も、誘電加熱の式も標準的である。電子レンジを設計しない。庫内の定在波、加熱むら、食品の形は扱わない。数は代表値である。20 度の純水で、静的誘電率 $80.2$、高周波側の誘電率 $5.6$、緩和周波数 $17$ GHz と置いた。緩和を一項で書いた。水にはもっと速い小さな緩和もあるが、入れていない。言うのはマイクロ波の帯だけである。液体の水もテラヘルツや赤外の帯には分子間の振動を持つ。「水にはどこにも共鳴が無い」とは書かない。塩を入れていない。食品に溶けた塩はイオンの伝導で損失を足し、浸透深さを縮めるが、本稿の外である。温度による移動を計算していない。温度が上がると緩和周波数は上へ動くが、その数は出していない。浸透深さは、平らな厚い層に垂直に入る場合だけを見る。周波数の選び方を物理だけに帰さない。$2.45$ GHz は産業・科学・医療用に割り当てられた帯であり、物理が言えるのは「その帯で使える」ことまでである。既刊との関係:論文407 は X 線の屈折率が $1$ を下回ることを、共鳴より上の周波数の側から示した。本稿は反対に、共鳴を持たない吸収の、頂点より下の側を見る。論文274 は射程注記で、緩和時間近似の中身には立ち入らないとしていた。本稿の緩和は電子の散乱ではなく分子の向きの遅れで、同じ語の別物である。論文300 は同根か別根かが判定できると示した。「$2.45$ GHz でも吸われる」と「$2.45$ GHz なら中まで入る」は、帯が広く頂点から外れているという一つの根から出る。加えたのは、デバイの一項で $2.45$ GHz の損失が頂点の $\mathbf{0.282370}$ 倍あることを閉じた式と突き合わせたこと、半値の帯が $7+4\sqrt3$ 倍に広がることを二分法と閉じた式で確かめたこと、同じ位置の共振なら $\mathbf{0.001503}$ 倍しか吸わないと並べたこと、浸透深さの $\mathbf{30.9336}$ 倍を厳密な式と近似式の二つで出したこと、分離子を「戻す力があるかどうか」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:液体の水の複素誘電率を、デバイの一項で書く。

$$\varepsilon(f)=\varepsilon_\infty+\frac{\varepsilon_s-\varepsilon_\infty}{1+i\,f/f_r}=\varepsilon'-i\varepsilon'',\qquad
\varepsilon''=\Delta\varepsilon\,\frac{x}{1+x^{2}},\quad x=\frac{f}{f_r}$$

$\Delta\varepsilon=\varepsilon_s-\varepsilon_\infty$ である。損失 $\varepsilon''$ が、電場のエネルギーが熱に変わる割合を決める。

観察 1.1 電子レンジの説明では「$2.45$ GHz は水の共鳴周波数」とよく言われる。共鳴なら、吸収はその周波数のまわりの細い帯に集まるはずである。ラジオの同調のように、少しずれれば受からない。

問い:マイクロ波の帯で、水の吸収は共鳴か。$2.45$ GHz はその中のどこにあり、そこはなぜ使えるのか。

2. 緩和の形

計算 2.1:20 度の純水の代表値($\varepsilon_s=80.2$、$\varepsilon_\infty=5.6$、$f_r=17$ GHz)で計算した。緩和時間は $\tau=1/(2\pi f_r)=\mathbf{9.3621}$ ps、$2.45$ GHz は $x=\mathbf{0.144118}$ である。

周波数 $\varepsilon'$ $\varepsilon''$
$2.45$ GHz $\mathbf{78.6821}$ $\mathbf{10.5324}$
$17$ GHz(頂点) $\mathbf{37.3000}$

観察 2.2 頂点の損失はちょうど $\Delta\varepsilon/2$ である。$37.3000$ は $74.6$ の半分と $10^{-12}$ で一致した。頂点は $x=1$、つまり $f=f_r$ にある。

計算 2.3:$2.45$ GHz の損失は頂点の $\mathbf{0.282370}$ 倍である。閉じた式 $2x/(1+x^2)$ と $10^{-12}$ で一致した。

観察 2.4 帯が広い。頂点の半分以上を吸う帯は $x=\mathbf{0.267949}$ から $\mathbf{3.732051}$ まで、二つの端はちょうど $2-\sqrt3$ と $2+\sqrt3$ で、上下の比は $7+4\sqrt3=\mathbf{13.928203}$ 倍、$\mathbf{1.143895}$ 桁にわたる。二分法で探した端と閉じた式が $10^{-9}$ で一致した。

観察 2.5 この幅は水の値に依らない。デバイの一項である限り、どの物質でも、どの温度でも同じ $13.928203$ 倍である。幅を決めているのは形であって、数ではない。

3. もし共鳴だったら

計算 3.1:比べるために、同じ頂点の位置に $Q=10$ の共振(ローレンツ振動子)を置き、頂点で $1$ に規格化した(頂点での値は $10^{-12}$ で $1$)。

緩和(水) 共振($Q=10$)
$x=0.144118$ の損失(頂点比) $\mathbf{0.282370}$ $\mathbf{0.001503}$
半値の帯の上下の比 $\mathbf{13.928203}$ $\mathbf{1.105401}$

観察 3.2 これが本稿の芯である。共振なら $2.45$ GHz ではほとんど吸われない(頂点の $0.001503$ 倍)、緩和は共振の $187.92$ 倍吸う。電子レンジが $2.45$ GHz で動くのは、水が共鳴しているからではなく、共鳴していないからである。

観察 3.3 共振の帯は細い。半値の帯の上下の比は $1.105401$ 倍で、緩和の $13.928203$ 倍とは桁が違う。「共鳴」と言うとき、人はこの細さを言っていることになる。細ければ、頂点から $7$ 分の $1$ の位置ではほとんど何も起きない。

4. 頂点で温めない理由

計算 4.1:電力が $1/e$ になる深さを、複素屈折率 $\sqrt{\varepsilon}$ の虚部から厳密に出した。

周波数 浸透深さ
$2.45$ GHz $\mathbf{16.4381}$ mm
$17$ GHz(頂点) $\mathbf{0.5314}$ mm
比 $\mathbf{30.9336}$

観察 4.2 別の式で突き合わせた。損失の小さい側の近似式 $\lambda_0\sqrt{\varepsilon'}/(2\pi\varepsilon'')$ では $2.45$ GHz で $\mathbf{16.4015}$ mm、厳密な値との比は $\mathbf{0.997778}$、二つの式が $0.2$ パーセント余りで一致した。

観察 4.3 頂点で温めれば、表面は速い。単位体積あたりの発熱は $f\varepsilon''$ に比例するので、$17$ GHz は $2.45$ GHz の $\mathbf{24.5733}$ 倍である。だがその熱は $0.5314$ mm の皮に閉じ込められ、中へは伝導で運ぶしかない。それは焼き網の温め方である。

観察 4.4 外れていることが、設計である。$2.45$ GHz は吸収の強さを頂点の $0.282370$ 倍に落とす代わりに、深さを $30.9336$ 倍もらっている。強く吸うことと、中まで届くことは、同じ周波数では両立しない。

5. 分離子

観察 5.1 分離子は、分子に戻す力があるかどうかである。共鳴には、戻す力と慣性がある。液体の水の分子は隣の分子と水素結合でつながれ、場に引かれて向きを変えようとしても、マイクロ波の帯では戻す力より摩擦が勝つ。だから吸収は緩和になり、細い頂点を持たない。

観察 5.2 同じ分子が気体になると、共鳴が現れる。孤立した水蒸気には $22.235$ GHz に細い回転の吸収線がある。「水の共鳴」は、液体の水ではなく、孤立した分子の性質である。

観察 5.3 論文407 と対になる。あちらは、共鳴より上の周波数で X 線の屈折率が $1$ を下回ることを示した。共鳴を持つ系の、頂点より上の側である。こちらは、共鳴を持たない吸収の、頂点より下の側である。

観察 5.4 論文274 の緩和とは別物である。あちらは射程注記で、緩和時間近似の中身には立ち入らないとしていた。そこでの緩和は電子の散乱であり、本稿の緩和は分子の向きの遅れである。同じ語が、別の遅れを指している。

観察 5.5 論文300 の基準では同根である。「$2.45$ GHz でも吸われる」と「$2.45$ GHz なら中まで入る」は、帯が広く頂点から外れているという一つの根から出る。帯が細ければ前者が消え、頂点に寄せれば後者が消える。

観察 5.6 言わないこと。$2.45$ GHz が物理で選ばれたとは書かない。この周波数は産業・科学・医療用に割り当てられた帯である。物理が言えるのは、その帯が水の緩和の広い裾に入っていて、吸収と深さの両方を持つということまでである。

6. 点呼と結び

  1. 緩和時間 $\mathbf{9.3621}$ ps・$2.45$ GHz は $x=\mathbf{0.144118}$(計算 2.1):頂点から大きく外れている。
  2. それでも損失は頂点の $\mathbf{0.282370}$ 倍(計算 2.3):閉じた式と一致。
  3. 半値の帯は $7+4\sqrt3=\mathbf{13.928203}$ 倍(観察 2.4):形だけで決まる幅。
  4. 共振なら $\mathbf{0.001503}$ 倍(計算 3.1):本稿の芯。
  5. 共振の帯は $\mathbf{1.105401}$ 倍(観察 3.3):細さが共鳴の意味。
  6. 浸透深さ $\mathbf{16.4381}$ mm 対 $\mathbf{0.5314}$ mm(計算 4.1):比 $\mathbf{30.9336}$。
  7. 近似式との比 $\mathbf{0.997778}$(観察 4.2):二つの式の突合せ。
  8. 頂点では表面が $\mathbf{24.5733}$ 倍速い(観察 4.3):焼き網の温め方。
  9. 分離子は戻す力(観察 5.1):共鳴か緩和か。
  10. 水蒸気には共鳴がある(観察 5.2):「水の共鳴」は孤立した分子の性質。

結び:電子レンジの $2.45$ GHz は、水分子の共鳴周波数だと説明されることが多い。ところがマイクロ波の帯で、液体の水の吸収は共鳴ではなく緩和である。20 度の代表値で緩和時間は $\mathbf{9.3621}$ ps、損失の頂点は $17$ GHz にあり、$2.45$ GHz はその $\mathbf{0.144118}$ 倍の位置にある。それでも損失は頂点の $\mathbf{0.282370}$ 倍あり、頂点の半分以上を吸う帯は上下の比でちょうど $7+4\sqrt3=\mathbf{13.928203}$ 倍、$\mathbf{1.143895}$ 桁に広がる。この幅はデバイの一項である限り、物質にも温度にも依らない。同じ位置に $Q=10$ の共振があったなら、吸われるのは頂点の $\mathbf{0.001503}$ 倍にすぎない。緩和は共振の $187.92$ 倍吸う。電子レンジが $2.45$ GHz で動くのは、水が共鳴しているからではなく、共鳴していないからである。頂点で温めないのは深さのためである。電力が $1/e$ になる深さは $2.45$ GHz で $\mathbf{16.4381}$ mm、$17$ GHz で $\mathbf{0.5314}$ mm で、比は $\mathbf{30.9336}$ 倍である。近似式でも $\mathbf{16.4015}$ mm と出て、二つの式は $0.2$ パーセント余りで一致した。頂点なら表面は $\mathbf{24.5733}$ 倍速く温まるが、その熱は薄い皮に閉じ込められる。強く吸うことと中まで届くことは同じ周波数では両立せず、$2.45$ GHz はその間にいる。分離子は、分子に戻す力があるかどうかである。液体の水では摩擦が勝って緩和になり、孤立した水蒸気では戻す力が勝って $22.235$ GHz に細い共鳴線が立つ。「水の共鳴」は、液体ではなく孤立した分子の性質である。論文300 の基準では、「吸われる」と「中まで入る」は、帯が広く頂点から外れているという一つの根から出る。既刊との位置、論文407 が共鳴を持つ系の頂点より上の側を見たのに対し、本稿は共鳴を持たない吸収の頂点より下の側を見る。論文274 の緩和は電子の散乱で、本稿の緩和は分子の向きの遅れであり、同じ語の別物である。正直に言えば、電子レンジは設計していない。数は 20 度の純水の代表値で、緩和は一項だけ、塩によるイオンの伝導も、温度による緩和周波数の移動も入れていない。浸透深さは平らな厚い層で見ただけである。そして $2.45$ GHz が物理で選ばれたとも書かない。この周波数は割り当てられた帯であり、物理が言えるのは、その帯で吸収と深さの両方が得られるということまでである。

参考文献

  1. Debye, P. (1929). Polar Molecules. Chemical Catalog Company.
  2. Hasted, J. B. (1973). Aqueous Dielectrics. Chapman and Hall.
  3. Kaatze, U. (1989). Complex Permittivity of Water as a Function of Frequency and Temperature. Journal of Chemical and Engineering Data.
  4. Metaxas, A. C., & Meredith, R. J. (1983). Industrial Microwave Heating. Peter Peregrinus.
  5. 山岸勇輝 (2026). 『ドルーデが当たったのは、二つの間違いが打ち消し合った結果である』[論文274]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22170012
  6. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  7. 山岸勇輝 (2026). 『X線に対する屈折率は $1$ 未満で、位相速度は光速を超える』[論文407]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22699506

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「電子レンジの 2.45 GHz は、水の共鳴ではない」[論文571]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.23014290

YOI 571第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 電子レンジの 2.45 GHz は、水の共鳴ではない [論文571]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/571 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014290

Yamagishi, Y. (2026). The 2.45 GHz of a Microwave Oven Is Not a Resonance of Water [Paper 571]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/571; DOI: 10.5281/zenodo.23014290

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