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【論文591】肝臓の抽出率が高い薬では、静注の効き目は血流で、飲み薬の効き目は酵素で決まる

要旨

肝臓の働きが落ちると、薬が効きすぎる、と言われる。本稿が示すのは、同じ肝臓の変化が静注と飲み薬とで別の向きに効き、肝臓が薬をほぼ取り切る(抽出率の高い)薬では、静注の効き目は肝血流で、飲み薬の効き目は肝臓の酵素の働きで決まることである。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、抽出率の高い薬は、飲むとほとんど体に届かない。肝血流 $90$ L/h で抽出率 $0.95$ の薬は、飲むと肝臓を一度通るあいだに体に届くのが $\mathbf{0.050000}$ で、静注と同じだけ効かせるには $\mathbf{20.000000}$ 倍の量が要る(第2節)。

第二に、これが本稿の芯である。肝臓の酵素の働きが半分になると、静注の曝露は $\mathbf{1.050000}$ 倍にしかならないのに、飲み薬の曝露はちょうど $\mathbf{2.000000}$ 倍になる。同じ肝臓の変化が、投与の道で二倍近く違って効く(第3節)。

第三に、肝血流が $7$ 割に落ちると、向きが入れ替わる。静注の曝露は $\mathbf{1.407143}$ 倍になり、飲み薬の曝露は $\mathbf{1.000000}$ 倍のまま動かない。飲み薬の曝露は投与量を酵素の処理する力で割ったもので、肝血流を含まないからである(第3節)。

第四に、抽出率 $0.05$ の薬では、二つの道がそろう。酵素の働きが半分になると、静注は $\mathbf{1.950000}$ 倍、飲み薬は $\mathbf{2.000000}$ 倍で、どちらもほぼ倍になる(第3節)。

第五に、体と肝臓の二つの箱の運動方程式を数値で解いても同じである。八つの曝露が、閉じた式と相対差 $5.4\times10^{-7}$ 以内で一致する(第4節)。

第六に、分離子は、抽出率が $1$ に近いか $0$ に近いかである。$1$ に近い薬では、静注の曝露は肝血流が、飲み薬の曝露は酵素が握る。$0$ に近い薬では、どちらも酵素が握る(第5節)。

キーワード:薬物動態、肝抽出率、生物学的利用能、クリアランス、初回通過効果。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。肝臓の中がよく混ざっているとする模型、抽出率、生物学的利用能、曝露(血中濃度の時間の積分)とクリアランスの関係は、すべて標準的である。最も単純な模型に限る。飲み薬は完全に吸収されるとし、消化管の壁での代謝、肝臓以外での消失、胆汁から腸へ戻る循環、血中の蛋白との結合の変化は入れない。肝血流 $90$ L/h は代表値である。二つの薬は抽出率 $0.95$ と $0.05$ で置き、薬の名前は挙げない。服薬を指示しない。量の調整は医師と薬剤師が決めることで、本稿は式の形を見るだけである。既刊との関係:論文578 は、飲む間隔を決めるのが半減期と治療域の幅の二つであることを示し、射程注記で吸収を瞬時とし、肝臓の働きによる人の違いを扱わないとした。本稿はその席に座り、肝臓の働きが変わると、静注と飲み薬とで曝露が別の向きに動くことを示す。論文300 は同根か別根かが判定できると示した。静注の曝露と飲み薬の曝露は同じ一つの式から出る同根で、抽出率の極限が二つを分ける。加えたのは、二つの薬と三つの変化で曝露の比を並べたこと、飲み薬の曝露が肝血流に依らず、酵素が半分でちょうど $2$ 倍になることを、閉じた式と運動方程式の二つの道で確かめたこと、分離子を抽出率に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:肝血流を $Q$、肝臓の酵素が薬を処理する力(血中の蛋白に結合していない薬についての固有クリアランス)を $C$ とする。肝臓の中がよく混ざっているとする模型では、肝臓が血から薬を取り除く速さ(肝クリアランス)、一度通るあいだに取り除く割合(抽出率)、飲み薬が肝臓を抜けて体に届く割合は

$$CL_H=\frac{QC}{Q+C},\qquad E=\frac{C}{Q+C},\qquad F=\frac{Q}{Q+C}$$

である。投与量を $D$ とすると、静注の曝露(血中濃度の時間の積分)は $D/CL_H$、飲み薬の曝露は $FD/CL_H=D/C$ になる。

観察 1.1 肝臓の働きが落ちると、薬が効きすぎる、と言われる。肝臓が薬を片づけるのだから、片づけが遅れれば薬が残る。それが静注にも飲み薬にも同じだけ当てはまるかは、別の問いである。

問い:同じ肝臓の変化は、静注と飲み薬に同じだけ効くのか。

2. 抽出率の高い薬と低い薬

計算 2.1:肝血流を $90$ L/h とし、抽出率が $0.95$ と $0.05$ になるように固有クリアランスを置いた。

薬 固有クリアランス(L/h) 肝クリアランス(L/h) 抽出率 飲み薬で届く割合
抽出率の高い薬 $1710.000000$ $85.500000$ $0.950000$ $\mathbf{0.050000}$
抽出率の低い薬 $4.736842$ $4.500000$ $0.050000$ $0.950000$

観察 2.2 抽出率の高い薬は、飲むと肝臓を一度通るあいだに $95$ パーセントが消える。飲み薬で静注と同じだけ効かせるには $\mathbf{20.000000}$ 倍の量が要る。肝臓は腸から来た血を最初に受け取るので、飲み薬は体に回る前に一度ふるいにかけられる。

3. 肝臓が変わったとき

計算 3.1:肝臓の酵素の働きを半分と $2$ 倍に、肝血流を $7$ 割にして、曝露が元の何倍になるかを出した。

薬と変化 静注の曝露 飲み薬の曝露 飲み薬で届く割合
高い・酵素が半分 $\mathbf{1.050000}$ $\mathbf{2.000000}$ $0.050000\to0.095238$
高い・血流が $7$ 割 $\mathbf{1.407143}$ $\mathbf{1.000000}$ $0.050000\to0.035533$
高い・酵素が $2$ 倍 $0.975000$ $0.500000$ $0.050000\to0.025641$
低い・酵素が半分 $\mathbf{1.950000}$ $2.000000$ $0.950000\to0.974359$
低い・血流が $7$ 割 $1.021429$ $1.000000$ $0.950000\to0.930070$
低い・酵素が $2$ 倍 $0.525000$ $0.500000$ $0.950000\to0.904762$

観察 3.2 これが本稿の芯である。抽出率の高い薬では、酵素が半分になっても静注の曝露は $1.05$ 倍にしかならないが、飲み薬の曝露はちょうど $2$ 倍になる。静注では、肝臓はもともと流れてくる血をほぼ全部きれいにしており、酵素が半分でもまだほぼ全部きれいにする。飲み薬では、肝臓を一度通って残る割合が $0.050000$ から $0.095238$ へほぼ倍になる。

観察 3.3 肝血流が $7$ 割になると、向きが入れ替わる。静注の曝露は $1.407143$ 倍になり、飲み薬の曝露は $1$ 倍のまま動かない。飲み薬の曝露は $D/C$ で、肝血流 $Q$ を含まない。血流が減ると届く割合は $0.035533$ に下がるが、体から消える速さも同じだけ遅くなり、ちょうど打ち消し合う。

観察 3.4 抽出率の低い薬では、二つの道がそろって応じる。酵素が半分になると、静注は $1.950000$ 倍、飲み薬は $2.000000$ 倍、肝臓は流れてくる血のわずかしかきれいにしていないので、酵素の力がそのまま消える速さを決める。

4. 二つの箱で確かめる

計算 4.1:閉じた式とは別の道として、体と肝臓の二つの箱を肝血流でつなぎ、肝臓で薬が酵素の力に比例して消える運動方程式を数値で解いた(ルンゲ=クッタ法)。静注は体の箱に、飲み薬は肝臓の箱に入れ、体の濃度を時間で積んだ。抽出率の高い薬の基準・酵素が半分・血流が $7$ 割と、低い薬の基準の、それぞれ静注と飲み薬の八つの曝露が、閉じた式と相対差 $5.4\times10^{-7}$ 以内で一致した。

観察 4.2 箱の式からも、飲み薬の曝露が肝血流に依らないことがそのまま出る。抽出率の高い薬で血流を $7$ 割にしても、飲み薬の曝露は基準と同じ $0.058480$ だった。飲み薬は、肝臓を通るたびに酵素に処理される。何度通っても、処理される総量を決めるのは酵素の力だけである。

5. 分離子

観察 5.1 分離子は、抽出率が $1$ に近いか $0$ に近いかである。$1$ に近い薬では、静注の曝露は肝血流が、飲み薬の曝露は酵素が握る。$0$ に近い薬では、静注も飲み薬も酵素が握る。「肝臓の働きが落ちると効きすぎる」は、どの働き(血流か酵素か)が、どの道(静注か飲み薬か)で、どの薬(抽出率)について落ちたかを言わなければ、正しくも誤りにもならない。

観察 5.2 論文578 の席に座る。あちらは、飲む間隔を決めるのが半減期と治療域の幅であることを一コンパートメント模型で示し、射程注記で吸収を瞬時とし、肝臓の働きによる人の違いを扱わないとした。本稿は、その肝臓の働きの違いが、投与の道によって別の向きに効くことを示した。

観察 5.3 論文300 の基準では同根である。静注の曝露も飲み薬の曝露も、同じ一つの式から出る。二つを分けているのは、抽出率の極限だけである。

観察 5.4 言わないこと。服薬を指示しない。薬の名前も挙げない。消化管の壁での代謝や、胆汁から腸へ戻る循環も入れていない。示したのは、同じ肝臓の変化が投与の道で別の向きに効くという、式の形だけである。

6. 点呼と結び

  1. 抽出率 $0.95$ の薬は飲むと $\mathbf{0.050000}$ しか届かない(計算 2.1):静注の $\mathbf{20.000000}$ 倍の量が要る。
  2. 酵素が半分で静注は $\mathbf{1.050000}$ 倍(計算 3.1):ほとんど動かない。
  3. 酵素が半分で飲み薬はちょうど $\mathbf{2.000000}$ 倍(観察 3.2):本稿の芯。
  4. 血流 $7$ 割で静注は $\mathbf{1.407143}$ 倍(計算 3.1):向きが入れ替わる。
  5. 血流 $7$ 割で飲み薬は $\mathbf{1.000000}$ 倍(観察 3.3):曝露は $D/C$ で、血流を含まない。
  6. 抽出率 $0.05$ の薬では $\mathbf{1.950000}$ 倍と $2$ 倍(観察 3.4):二つの道がそろう。
  7. 二つの箱の運動方程式で相対差 $5.4\times10^{-7}$ 以内(計算 4.1):二つの道。
  8. 箱の式でも飲み薬は血流に依らない(観察 4.2):$0.058480$ のまま。
  9. 論文578 の席に座る(観察 5.2):肝臓の働きの違い。
  10. 分離子は抽出率が $1$ に近いか $0$ に近いか(観察 5.1):血流が握るか、酵素が握るか。

結び:肝臓の働きが落ちると、薬が効きすぎる、と言われる。それは、どの働きがどの道で落ちたかによる。肝血流 $90$ L/h で抽出率 $0.95$ の薬は、飲むと体に届くのが $\mathbf{0.050000}$ で、静注の $\mathbf{20.000000}$ 倍の量が要る。肝臓の酵素の働きが半分になると、静注の曝露は $\mathbf{1.050000}$ 倍にしかならないのに、飲み薬の曝露はちょうど $\mathbf{2.000000}$ 倍になる。肝血流が $7$ 割に落ちると向きが入れ替わり、静注は $\mathbf{1.407143}$ 倍、飲み薬は $1$ 倍のまま動かない。飲み薬の曝露は投与量を酵素の処理する力で割ったもので、肝血流を含まないからである。抽出率 $0.05$ の薬では、酵素が半分で静注 $\mathbf{1.950000}$ 倍・飲み薬 $2$ 倍と、二つの道がそろう。体と肝臓の二つの箱の運動方程式を数値で解いても、八つの曝露は閉じた式と相対差 $5.4\times10^{-7}$ 以内で一致した。分離子は、抽出率が $1$ に近いか $0$ に近いかである。$1$ に近い薬では、静注は血流が、飲み薬は酵素が握る。論文300 の基準で、二つは同じ式から出る同根である。既刊との位置、論文578 が射程注記で空けていた、肝臓の働きによる違いと吸収の席に座った。正直に言えば、肝臓の中がよく混ざるとする最も単純な模型で、吸収は完全とし、消化管の壁での代謝、肝臓以外での消失、胆汁から腸へ戻る循環、蛋白との結合の変化は入れていない。肝血流は代表値で、薬の名前は挙げず、服薬も指示しない。

参考文献

  1. Rowland, M., Benet, L. Z., & Graham, G. G. (1973). Clearance Concepts in Pharmacokinetics. Journal of Pharmacokinetics and Biopharmaceutics.
  2. Rowland, M., & Tozer, T. N. (2011). Clinical Pharmacokinetics and Pharmacodynamics: Concepts and Applications (4th ed.). Lippincott Williams & Wilkins.
  3. Wilkinson, G. R., & Shand, D. G. (1975). A Physiological Approach to Hepatic Drug Clearance. Clinical Pharmacology and Therapeutics.
  4. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  5. 山岸勇輝 (2026). 『飲む間隔を決めるのは、半減期と治療域の幅の二つである』[論文578]. Zenodo. 10.5281/zenodo.23014328

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「肝臓の抽出率が高い薬では、静注の効き目は血流で、飲み薬の効き目は酵素で決まる」[論文591]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.23014386

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 肝臓の抽出率が高い薬では、静注の効き目は血流で、飲み薬の効き目は酵素で決まる [論文591]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/591 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014386

Yamagishi, Y. (2026). For a Drug the Liver Extracts Almost Completely, Blood Flow Sets the Injection and Enzymes Set the Pill [Paper 591]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/591; DOI: 10.5281/zenodo.23014386

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