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【論文592】ゴム気球は上がるほど膨らむが、上昇の速さは空気の密度の -1/6 乗でしか速くならない

要旨

気球は上がるほど膨らみ、空気が薄くなるので、だんだん浮かなくなる、と思われやすい。本稿が示すのは、ゴム気球では中の気体の量が変わらないので浮く力は高度に依らず一定で、膨らむことが浮力を保ち、上昇の速さは空気の密度の $-1/6$ 乗でしか変わらないことである。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、体積は空気の密度に反比例して膨らむ、直径 $1.5$ m で打ち上げた気球は、高度 $20000$ m で体積が $\mathbf{13.9149}$ 倍、直径が $\mathbf{2.4053}$ 倍になる(第2節)。

第二に、浮く力は一定である。空気の密度と体積の積が変わらないので、押しのけた空気の重さからヘリウムの重さを引いた浮力(押しのけた空気の重さの $\mathbf{0.861810}$)は高度に依らない(第2節)。

第三に、これが本稿の芯である。上昇の速さは空気の密度の $-1/6$ 乗で決まる。抗力は空気の密度と断面積の積に比例し、断面積は体積の $2/3$ 乗、つまり密度の $-2/3$ 乗なので、積は密度の $1/3$ 乗でしか減らない。$20000$ m で $\mathbf{1.550887}$ 倍、破裂する $29608.6$ m でちょうど $\mathbf{2.000000}$ 倍、破裂と打ち上げの直径の比の平方根である(第3節)。

第四に、破裂までの時間は、一定の速さの見積もりより短い。$73.40$ 分で、打ち上げの速さのまま上がるとした $98.70$ 分の $\mathbf{0.743667}$ 倍である(第3節)。

第五に、硬い気球は止まる。体積が変わらないと浮力は密度に比例して落ち、打ち上げで重さより $1$ 割多く浮く気球は $981.8$ m、$3$ 割なら $2650.3$ m で釣り合って止まる(第4節)。

第六に、分離子は、気球が膨らめるかどうかである。膨らめる気球は浮く力を保って破裂まで上がり、膨らめない気球は浮く力を失って止まる(第5節)。

キーワード:ゴム気球、上昇速度、浮力、標準大気、抗力。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。標準大気、浮力、抗力の式は、すべて標準的である。標準大気は $1976$ 年米国標準大気を使う。高度はジオポテンシャル高度で、$0$〜$32$ km の三つの層だけを使う。中の気体は周りの空気と同じ温度と圧力とした。日射による加熱と、ゴムの張力による過圧は入れない。抗力係数は一定とした。速さの比は抗力係数の値に依らないが、レイノルズ数による抗力係数の変化は入れていない。打ち上げの直径 $1.5$ m、破裂の直径 $6$ m、打ち上げの上昇速度 $5$ m/s は代表値である。横風、ゴムの伸びの性質、破裂の仕組みは扱わない。気球を設計しない。既刊との関係:論文326 は、二乗三乗の関係が法則ではなく恒等式であることを示した。本稿では、断面積が体積の $2/3$ 乗であるというその恒等式が、上昇の速さの指数 $-1/6$ を決める。論文300 は同根か別根かが判定できると示した。膨らむ気球と硬い気球は同じ浮力の式から出る同根で、分けるのは体積が変わるかどうかだけである。加えたのは、標準大気の上で体積・直径・上昇の速さを高度ごとに出したこと、$-1/6$ 乗を力の釣り合いと閉じた式の二つの道で確かめたこと、破裂のときの速さの比が直径の比の平方根になることを示したこと、硬い気球と並べたことである。

1. 記法と問い

設定:ゴム気球の中の気体の量は変わらず、温度と圧力は周りの空気と同じとする。すると体積は空気の密度に反比例し、押しのけた空気の重さは変わらない。打ち上げの密度と体積を $\rho_0, V_0$、気球と荷物の重さを $mg$、抗力係数を $C_D$、断面積を $A$ とすると、

$$\rho V=\rho_0V_0,\qquad F=\Bigl(1-\frac{M_{\mathrm{He}}}{M_{\mathrm{air}}}\Bigr)\rho_0V_0\,g-mg,\qquad \frac{1}{2}\rho v^2C_DA=F$$

で、断面積は体積の $2/3$ 乗に比例する。

観察 1.1 気球は上がるほど膨らみ、空気が薄くなるので、だんだん浮かなくなる、と思われやすい。空気が薄くなれば浮力は減る、というのは硬い物について正しい。膨らむ物についても正しいかは、別の問いである。

問い:ゴム気球の浮く力と上昇の速さは、上がるにつれてどう変わるのか。

2. 膨らむ気球

計算 2.1:$1976$ 年米国標準大気で、地上の密度は $1.224999$ kg/m$^3$、$11000$ m で $216.65$ K・$22632.06$ Pa・$0.363918$ kg/m$^3$、$20000$ m で $5474.89$ Pa・$0.088035$ kg/m$^3$、$30000$ m で $226.65$ K・$1171.87$ Pa・$0.018012$ kg/m$^3$ である。直径 $1.5$ m・上昇速度 $5$ m/s で打ち上げ、直径 $6$ m で破裂する気球は、

高度 体積(地上の何倍) 直径(何倍) 上昇の速さ
$0$ m $1.0000$ $1.0000$ $5.0000$ m/s
$5000$ m $1.6641$ $1.1850$ $5.4430$ m/s
$10000$ m $2.9682$ $1.4371$ $5.9940$ m/s
$15000$ m $6.3251$ $1.8494$ $6.7996$ m/s
$20000$ m $\mathbf{13.9149}$ $\mathbf{2.4053}$ $7.7544$ m/s
$25000$ m $31.0395$ $3.1427$ $8.8639$ m/s
$29608.6$ m(破裂) $\mathbf{64.0000}$ $4.0000$ $10.0000$ m/s

破裂する密度は $0.019141$ kg/m$^3$、地上の $64$ 分の $1$ である。

観察 2.2 浮く力は高度に依らない。空気の密度と体積の積が一定なので、押しのけた空気の重さは一定で、中のヘリウムの重さも一定である。浮力からヘリウムの重さを引いたものは押しのけた空気の重さの $\mathbf{0.861810}$ で、高度に依らない。膨らむことが、薄くなる空気の分をちょうど埋めている。

3. 上昇の速さ

計算 3.1:浮く力が一定なら、上昇の速さは抗力との釣り合いで決まり、$v\propto(\rho A)^{-1/2}\propto\rho^{-1/6}$ になる。力の釣り合いから直接出した速さと、この閉じた式の相対差は $2.2\times10^{-16}$ だった。破裂の高さでは密度が地上の $64$ 分の $1$ なので、速さはちょうど $64^{1/6}=\mathbf{2.000000}$ 倍、破裂の直径と打ち上げの直径の比 $4$ の平方根である。破裂までの時間は $4403.8$ 秒 $=73.40$ 分で、打ち上げの $5$ m/s のまま上がるとした $98.70$ 分の $\mathbf{0.743667}$ 倍になる。

観察 3.2 これが本稿の芯である。体積は $64$ 倍に膨らむのに、上昇の速さは $2$ 倍にしかならない。抗力は空気の密度と断面積の積に比例する。密度は $64$ 分の $1$ になるが、断面積は体積の $2/3$ 乗で $16$ 倍になるので、積は $4$ 分の $1$ にしかならない。速さはその平方根の逆数で $2$ 倍である。

4. 硬い気球

計算 4.1:体積の変わらない硬い気球では、浮力は空気の密度に比例して落ちる。打ち上げで重さより $1$ 割多く浮く気球は、密度が地上の $0.909091$ 倍になる $981.8$ m で、$3$ 割多く浮く気球は $0.769231$ 倍になる $2650.3$ m で、浮力が重さと釣り合って止まる。

観察 4.2 同じ「空気が薄くなる」が、硬い気球を止め、ゴム気球を止めない。硬い気球は薄くなった分だけ浮力を失う。ゴム気球は薄くなった分だけ膨らんで、浮力を失わない。ゴム気球が止まるのは、浮力が尽きたときではなく、ゴムが伸びきって破裂したときである。

5. 分離子

観察 5.1 分離子は、気球が膨らめるかどうかである。膨らめる気球は浮く力を保って破裂まで上がり、上昇の速さは密度の $-1/6$ 乗で少しずつ速くなる。膨らめない気球は浮く力を失って、浮力と重さが釣り合う高さで止まる。「空気が薄くなると浮かなくなる」は、膨らめない物についてだけ正しい。

観察 5.2 論文326 の恒等式が指数を決める。あちらは、二乗三乗の関係が法則ではなく恒等式であることを示した。本稿では、断面積が体積の $2/3$ 乗であることと、体積が密度の $-1$ 乗であることの二つが組んで、上昇の速さの指数 $-1/6$ を出す。

観察 5.3 論文300 の基準では同根である。膨らむ気球と硬い気球は、同じ浮力の式から出る。二つを分けているのは、体積が変わるかどうかだけである。

観察 5.4 言わないこと。気球を設計しない。日射による加熱、ゴムの過圧、抗力係数の変化、横風は入れていない。示したのは、膨らむことが浮力を保ち、速さが密度の $-1/6$ 乗でしか変わらないという、式の形である。

6. 点呼と結び

  1. $20000$ m で体積 $\mathbf{13.9149}$ 倍・直径 $\mathbf{2.4053}$ 倍(計算 2.1):密度に反比例して膨らむ。
  2. 浮く力は押しのけた空気の重さの $\mathbf{0.861810}$ で一定(観察 2.2):高度に依らない。
  3. 上昇の速さは密度の $-1/6$ 乗(計算 3.1):力の釣り合いと $2.2\times10^{-16}$ で一致。
  4. $20000$ m で $\mathbf{1.550887}$ 倍(計算 2.1):膨らみほどは速くならない。
  5. 破裂で体積 $\mathbf{64.0000}$ 倍・速さ $\mathbf{2.000000}$ 倍(観察 3.2):本稿の芯。
  6. 速さの比は直径の比の平方根(計算 3.1):$\sqrt4=2$。
  7. 破裂まで $73.40$ 分(計算 3.1):一定の速さの見積もりの $\mathbf{0.743667}$ 倍。
  8. 硬い気球は $981.8$ m と $2650.3$ m で止まる(計算 4.1):浮力が密度に比例して落ちる。
  9. 論文326 の恒等式が指数を決める(観察 5.2):面積は体積の $2/3$ 乗。
  10. 分離子は膨らめるかどうか(観察 5.1):浮く力を保つか、失うか。

結び:気球は上がるほど膨らみ、空気が薄くなるので、だんだん浮かなくなる、と思われやすい。ゴム気球では、浮く力は高度に依らず一定である。中の気体の量が変わらないので、空気の密度と体積の積が変わらず、押しのけた空気の重さからヘリウムの重さを引いた浮力は、押しのけた空気の重さの $\mathbf{0.861810}$ のまま動かない。直径 $1.5$ m の気球は $20000$ m で体積 $\mathbf{13.9149}$ 倍・直径 $\mathbf{2.4053}$ 倍に膨らむ。上昇の速さは空気の密度の $-1/6$ 乗でしか変わらない。断面積が体積の $2/3$ 乗で広がるので、抗力を決める密度と断面積の積は密度の $1/3$ 乗でしか減らない。$6$ m で破裂するジオポテンシャル高度 $29608.6$ m で体積は $\mathbf{64.0000}$ 倍になるが、速さはちょうど $\mathbf{2.000000}$ 倍、破裂と打ち上げの直径の比の平方根である。破裂までの $73.40$ 分は、一定の速さの見積もりの $\mathbf{0.743667}$ 倍になる。体積の変わらない硬い気球なら、重さより $1$ 割多く浮いても $981.8$ m、$3$ 割でも $2650.3$ m で止まる。分離子は、気球が膨らめるかどうかである。「空気が薄くなると浮かなくなる」は膨らめない物についてだけ正しい。論文300 の基準で、二つは同じ浮力の式から出る同根である。既刊との位置、論文326 が示した、面積が体積の $2/3$ 乗という恒等式が、ここでは速さの指数 $-1/6$ を決めた。正直に言えば、中の気体は周りと同じ温度と圧力とし、日射による加熱、ゴムの過圧、抗力係数の変化、横風は入れていない。直径と打ち上げの速さは代表値で、気球は設計しない。

参考文献

  1. NOAA, NASA, & USAF (1976). U.S. Standard Atmosphere, 1976. U.S. Government Printing Office.
  2. Wallace, J. M., & Hobbs, P. V. (2006). Atmospheric Science: An Introductory Survey (2nd ed.). Academic Press.
  3. Yajima, N., Izutsu, N., Imamura, T., & Abe, T. (2009). Scientific Ballooning: Technology and Applications of Exploration Balloons Floating in the Stratosphere and the Atmospheres of Other Planets. Springer.
  4. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  5. 山岸勇輝 (2026). 『二乗三乗の「法則」は、法則ではなく恒等式である』[論文326]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22209992

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「ゴム気球は上がるほど膨らむが、上昇の速さは空気の密度の -1/6 乗でしか速くならない」[論文592]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.23014392

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). ゴム気球は上がるほど膨らむが、上昇の速さは空気の密度の -1/6 乗でしか速くならない [論文592]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/592 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014392

Yamagishi, Y. (2026). A Rubber Balloon Swells as It Rises, but Its Ascent Speeds Up Only as the -1/6 Power of the Air Density [Paper 592]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/592; DOI: 10.5281/zenodo.23014392

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