要旨
「点数の低い食品を混ぜても点数は低い」と思いがちである。本稿は、点数が最小で決まるとき混ぜると何が起きるかを数える。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、二つとも点数は低い。食品A は $0.555556$、食品B は $0.545455$ である(第2節)。
第二に、足りないものが違う。A はリシン、B は含硫アミノ酸が足りない(第2節)。
第三に、これが本稿の芯である。混ぜるとどちらよりも良くなる。A を $0.428010$ 混ぜると点数は $\mathbf{1.051280}$ で、片方だけの最大の $\mathbf{1.892304}$ 倍である(第3節)。
第四に、最良の割合は二つの充足率が入れ替わる点である。そこでリシンは $1.051280$、含硫は $1.051285$ で、差は $4.323\times10^{-6}$ である(第3節)。
第五に、点数は平均にならない。A を $0.4$ 混ぜたときの点数は $1.018182$ だが、点数の平均は $\mathbf{0.549495}$ にしかならない(第4節)。
第六に、分離子は、一つずつを問うか、組み合わせを問うかである。最小で決まる量は、部分の点数から全体の点数を出せない(第5節)。
キーワード:制限アミノ酸、アミノ酸スコア、最小律、補足効果、混合比、模型。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。たんぱく質の質をいちばん不足する必須アミノ酸で評価すること(アミノ酸スコア・制限アミノ酸)、足りないものが違う食品を組み合わせると補い合うこと(補足効果)は、いずれも既知である。栄養の助言をしない。何をどれだけ食べるべきかは述べない。実在の食品の値を主張しない。A・B の組成と必要量は、比べるために置いた模型の値である。消化吸収を入れない。吸収率や加工による変化は扱わない。四種類に限る。リシン・含硫・トレオニン・トリプトファン以外のアミノ酸は入れない。既刊との関係:論文477 は、効かない投入を続けているあいだ律速はそこにいないことを示し、リービッヒの最小律を既知として置いた。本稿はその席には座らず、隣に置く。あちらは一つの投入を足して律速が動く。こちらは足りないものが違う二つを混ぜて、互いの穴を埋める。論文471 は、積み上げても進まないのは量が足りないからではないことを示した。あちらで足りなかったのは比で、こちらでも混ぜる比が答を決める。加えたのは、混ぜる割合を刻んで点数の山を出したこと、最良の割合で二つの充足率が入れ替わると確かめたこと、混ぜた点数が点数の平均を大きく上回ると測ったこと、分離子を「一つずつか、組み合わせか」に置いたことである。
1. 記法と問い
設定:アミノ酸 $j$ の含量を $a_j$、必要量を $n_j$ とし、たんぱく質の点数を充足率のいちばん小さいものと置く。二つの食品を割合 $w$ と $1-w$ で混ぜると、含量は重みつきの和になる。
$$S(a)=\min_{j}\frac{a_j}{n_j},\qquad
a^{\mathrm{mix}}_j=w\,a^{A}_j+(1-w)\,a^{B}_j$$
含量は足し算で混ざるが、点数は最小を取るので足し算にならない。
問い:点数の低い二つを混ぜると、点数はどうなるか。
2. 二つの食品
計算 2.1:模型の食品 A・B の点数を出した。
| 食品 | 点数 | 足りないもの |
|---|---|---|
| A | $0.555556$ | リシン |
| B | $0.545455$ | 含硫アミノ酸 |
観察 2.2 二つとも点数は低く、しかも足りないものが違う。A はリシンが、B は含硫アミノ酸が足を引っ張る。片方の穴は、もう片方では穴ではない。
3. 混ぜた点数
計算 3.1:A の割合を $0.1$ ずつ変えて点数を出した。
| A の割合 | 点数 | 足りないもの |
|---|---|---|
| $0.0$ | $0.545455$ | 含硫 |
| $0.2$ | $0.781818$ | 含硫 |
| $0.4$ | $1.018182$ | 含硫 |
| $0.5$ | $0.988889$ | リシン |
| $0.6$ | $0.902222$ | リシン |
| $0.8$ | $0.728889$ | リシン |
| $1.0$ | $0.555556$ | リシン |
観察 3.2 これが本稿の芯である。混ぜるとどちらよりも良くなる。A を $0.4$ 混ぜると $1.018182$ で、A だけの $0.555556$ も B だけの $0.545455$ も大きく上回る。片方の穴をもう片方の余りが埋めるからである。
計算 3.3:割合を $10^{-5}$ ずつ刻んで、いちばん良い点を探した。
| 量 | 値 |
|---|---|
| いちばん良い A の割合 | $0.428010$ |
| そのときの点数 | $1.051280$ |
| リシンの充足率 | $1.051280$ |
| 含硫の充足率 | $1.051285$ |
| 二つの差 | $4.323\times10^{-6}$ |
| 片方だけの最大に対する倍率 | $1.892304$ |
観察 3.4 最良の点は、足りないものが入れ替わる点である。そこで二つの充足率が並び、それより A を減らせば含硫が、増やせばリシンが足を引っ張る。山の頂上は、二本の直線が交わるところにある。
4. 点数は平均にならない
計算 4.1:A を $0.4$ 混ぜたときの点数と、同じ割合での点数の平均を比べた。
| 量 | 値 |
|---|---|
| 混ぜた点数 | $1.018182$ |
| 点数の平均($0.4\times0.555556+0.6\times0.545455$) | $0.549495$ |
| 差 | $0.468687$ |
観察 4.2 混ぜた点数は、点数の平均を大きく上回る。差は $0.468687$ ある。含量は平均で混ざるが、点数は最小を取るので、部分の点数から全体の点数は出せない。
観察 4.3 端では最小律がそのまま戻る。A だけにすると点数は A の $0.555556$ に戻る。混ぜ合わせの利得は、足りないものが違うときにだけ生まれる。
5. 分離子
観察 5.1 分離子は、一つずつを問うか、組み合わせを問うかである。一つずつなら $0.555556$ と $0.545455$、組み合わせなら $1.051280$ まで上がる。最小で決まる量は、部分の評価を足しても全体の評価にならない。
観察 5.2 論文477・471 の隣に置く。477 は効かない投入を続けているあいだ律速がそこにいないことを示した。あちらは一つの投入を足して律速が動く。こちらは足りないものが違う二つを混ぜて、互いの穴を埋める。同じ最小律の、足す側と混ぜる側である。471 は積み上げても進まないのが量ではなく比の不足であることを示した。ここでも答を決めるのは混ぜる比である。
観察 5.3 言わないこと。何を食べるべきかも、実在の食品の値も、消化吸収も、四種類以外のアミノ酸も扱わない。示したのは、最小で決まる点数は平均にならず、混ぜたほうが両方より良くなりうるということである。
6. 点呼と結び
- A は $0.555556$(計算 2.1):リシンが足りない。
- B は $0.545455$(計算 2.1):含硫が足りない。
- $0.4$ 混ぜて $1.018182$(計算 3.1):どちらより良い。
- 最良は $0.428010$ で $\mathbf{1.051280}$(計算 3.3):本稿の芯。
- 片方だけの $\mathbf{1.892304}$ 倍(計算 3.3):ほぼ二倍。
- 充足率の差 $4.323\times10^{-6}$(計算 3.3):入れ替わる点。
- 点数の平均は $\mathbf{0.549495}$(計算 4.1):届かない。
- 差は $0.468687$(計算 4.1):平均にならない。
- A だけなら $0.555556$ に戻る(観察 4.3):端は最小律。
- 一つずつか、組み合わせか(観察 5.1):分離子・論文477・471。
結び:足りないものが違う二つを混ぜると、どちらよりも良くなる。点数をいちばん小さい充足率と置くと、食品A は $0.555556$(リシン不足)、食品B は $0.545455$(含硫不足)で、A を $0.428010$ 混ぜると $1.051280$、片方だけの最大の $1.892304$ 倍になる。片方の穴をもう片方の余りが埋め、最良の点で二つの充足率が差 $4.323\times10^{-6}$ まで並ぶからである。そして A を $0.4$ 混ぜたときの点数 $1.018182$ に対して、点数の平均は $0.549495$ にしかならない。含量は平均で混ざるが、点数は最小を取るので、部分の点数から全体の点数は出せないからである。混ぜ合わせの利得は足りないものが違うときにだけ生まれ、A だけに戻せば点数も戻る。既刊との位置:論文477 の「足して律速が動く」の隣に混ぜて穴を埋める側を置き、論文471 の「足りないのは比」と同じく混ぜる比が答を決めることを数えた。正直に言えば、A・B の組成と必要量は模型の値で、何をどれだけ食べるべきかは何も言っていない。
参考文献
- FAO/WHO/UNU (2007). Protein and Amino Acid Requirements in Human Nutrition. World Health Organization.
- 山岸勇輝 (2026). 『積み上げても進まないのは、量が足りないからではない』[論文471]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/471 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22733457
- 山岸勇輝 (2026). 『効かない投入を続けているあいだ、律速はそこにいない』[論文477]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/477 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22733686
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「足りないものが違う二つを混ぜると、どちらよりも良くなる」[論文852]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/852
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). 足りないものが違う二つを混ぜると、どちらよりも良くなる [論文852]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/852
Yamagishi, Y. (2026). Mixing Two Foods Short in Different Things Beats Either One [Paper 852]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/852
@misc{yamagishi2026yoi852,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {Mixing Two Foods Short in Different Things Beats Either One},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/852},
note = {Preprint, edition 1}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
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