要旨
水をよく通すのは隙間の多い土だ、と思いやすい。本稿は、隙間の量より太さが効くことを、四つの土で数える。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、透水係数は粒の径と間隙率で決まる。コゼニー=カルマンの式で、粗い砂 $5.530621\times10^{-3}$、細かい砂 $3.875556\times10^{-4}$、シルト $6.567025\times10^{-6}$、粘土 $1.090000\times10^{-7}$ m/s である(第2節)。
第二に、これが本稿の芯である。隙間の多い粘土のほうが、水を通さない。間隙率は粘土のほうが $\mathbf{1.428571}$ 倍大きいのに、透水係数は $5.073964\times10^{4}$ 倍、$\mathbf{4.705347}$ 桁小さい(第3節)。
第三に、量は粘土に、太さは砂に味方する。間隙率の項は粘土が $\mathbf{4.927114}$ 倍有利だが、径の二乗は粗い砂が $250000$ 倍有利で、二つの比が透水係数の比と差の割合 $10^{-12}$ 未満で一致する(第3節)。
第四に、$100$ m を進む時間は、透水係数よりさらにひらく。動水勾配 $0.01$ で、粗い砂 $2.005350\times10^{-2}$ 年、粘土 $1.453582\times10^{3}$ 年で、比は $72485.207101$ 倍($\mathbf{4.860249}$ 桁)である。間隙率の比 $1.428571$ がもう一度掛かる(第4節)。
第五に、水の速さはダルシーの流速より速い。水は間隙の中だけを進むので速さはダルシーの流速の間隙率の逆数倍で、粗い砂でダルシーの流速から出した時間 $0.057296$ 年は実際の $0.020053$ 年の $\mathbf{2.857143}$ 倍になる(第4節)。
第六に、分離子は、間隙の量を問うか、太さを問うかである。量は水の通り道の数を、太さは一本の通り道の抵抗を決め、透水係数に効くのは後者である(第5節)。
キーワード:ダルシーの法則、透水係数、間隙率、コゼニー=カルマンの式、地下水、模型。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。ダルシーの法則、コゼニー=カルマンの式、水の速さがダルシーの流速を間隙率で割った値であることは、いずれも既知である。実在の地層の値を主張しない。粒の径と間隙率は模型の値で、どの土地の土にも対応しない。流れを広げない。水で満たされていない土の流れ、向きによる違い、層の重なりは入れない。係数を論じない。式の係数 $180$ は球に近い粒の代表的な置き方の一つで、粒の形で動く。設計しない。井戸や排水をどう作るかは述べない。既刊との関係:論文599 は、井戸の水位が距離の対数でしか下がらず、汲み続ければ時間の対数で下がり続けることを示した。本稿はその隣に置く。あちらは透水係数を $10^{-4}$ m/s と代表値で置いて水位を数えた。論文574 は、地下水位が $1$ m 下がると淡水の底が $40$ m 上がることを示した。本稿はその隣にも置く。あちらは透水係数を $20$ m/日と置いた。ここでは、その置かれた数が粒の径でどれだけ動くかを数える。加えたのは、四つの土で透水係数と $100$ m を進む時間を並べたこと、間隙率が大きいほうが $4.705347$ 桁通さないと測ったこと、その比を間隙率の項と径の二乗に分けて突き合わせたこと、分離子を「間隙の量か、太さか」に置いたことである。
1. 記法と問い
設定:粒の径 $d$、間隙率 $n$ の土に、動水勾配 $i$ をかける。透水係数 $K$、ダルシーの流速 $q$(断面全体で割った流量)、水の速さ $v$(間隙の中を進む速さ)を次のように置く。
$$K=\frac{\rho g}{\mu}\cdot\frac{d^{2}n^{3}}{180(1-n)^{2}},\qquad
q=Ki,\qquad
v=\frac{q}{n}$$
水の密度 $\rho=1000$ kg/m$^3$、重力の加速度 $g=9.81$ m/s$^2$、粘り $\mu=1.0\times10^{-3}$ Pa s、動水勾配 $i=0.01$ とした。
問い:隙間の多い土ほど、水をよく通すのか。
2. 四つの土
計算 2.1:粒の径と間隙率を変えて、透水係数を出した。
| 土 | 径 | 間隙率 | 透水係数(m/s) |
|---|---|---|---|
| 粗い砂 | $1$ mm | $0.35$ | $5.530621\times10^{-3}$ |
| 細かい砂 | $0.2$ mm | $0.40$ | $3.875556\times10^{-4}$ |
| シルト | $0.02$ mm | $0.45$ | $6.567025\times10^{-6}$ |
| 粘土 | $0.002$ mm | $0.50$ | $1.090000\times10^{-7}$ |
観察 2.2 間隙率が大きくなる順に、透水係数は小さくなる。四つの土は、間隙率では粗い砂がいちばん小さく、透水係数ではいちばん大きい。隙間の量の順と、水を通す順が逆を向いている。
3. 量と太さ
計算 3.1:粗い砂と粘土を、式の二つの項に分けて比べた。
| 比べたもの | 値 |
|---|---|
| 間隙率の比(粘土 $\div$ 粗い砂) | $1.428571$ |
| 間隙率の項 $n^{3}/(1-n)^{2}$:粗い砂 | $0.101479$ |
| 間隙率の項 $n^{3}/(1-n)^{2}$:粘土 | $0.500000$ |
| 間隙率の項の比(粘土が有利) | $4.927114$ |
| 径の二乗の比(粗い砂が有利) | $250000.000000$ |
| 透水係数の比(粗い砂 $\div$ 粘土) | $5.073964\times10^{4}$ |
| 透水係数の比の桁 | $4.705347$ |
観察 3.2 これが本稿の芯である。隙間の多い粘土のほうが、水を通さない。間隙率の項だけを見れば粘土が $4.927114$ 倍有利だが、径の二乗で粗い砂が $250000$ 倍有利になり、差し引き $4.705347$ 桁、粗い砂がよく通す。径の二乗の比を間隙率の項の比で割ると透水係数の比になり、差の割合は $10^{-12}$ 未満だった。
観察 3.3 太さは二乗で効く。間隙率を $0.4$ に固定して径を $2$ 倍にすると、透水係数はちょうど $4$ 倍になった。差は $10^{-12}$ 未満である。一本の通り道の抵抗は、その太さで決まる。
4. 水が進む時間
計算 4.1:動水勾配 $0.01$ で、ダルシーの流速、水の速さ、$100$ m を水が進む時間を出した。
| 土 | ダルシーの流速(m/s) | 水の速さ(m/s) | $100$ m に要る年 |
|---|---|---|---|
| 粗い砂 | $5.530621\times10^{-5}$ | $1.580178\times10^{-4}$ | $2.005350\times10^{-2}$ |
| 細かい砂 | $3.875556\times10^{-6}$ | $9.688889\times10^{-6}$ | $3.270560\times10^{-1}$ |
| シルト | $6.567025\times10^{-8}$ | $1.459339\times10^{-7}$ | $2.171400\times10^{1}$ |
| 粘土 | $1.090000\times10^{-9}$ | $2.180000\times10^{-9}$ | $1.453582\times10^{3}$ |
観察 4.2 水の速さは、ダルシーの流速の間隙率の逆数倍である。ダルシーの流速は断面全体で割った量だが、水が通れるのは間隙だけである。粗い砂でダルシーの流速から時間を出すと $0.057296$ 年で、水の速さから出した $0.020053$ 年の $2.857143$ 倍になる。四つの土すべてで、水の速さと間隙率の積はダルシーの流速に一致した。
観察 4.3 同じ流速なら、間隙の多い土ほど水はかえって遅い。$100$ m に要る時間の比は粘土が粗い砂の $72485.207101$ 倍($4.860249$ 桁)で、透水係数の差 $4.705347$ 桁より大きい。時間の比は透水係数の比に間隙率の比 $1.428571$ を掛けたものと、差の割合 $10^{-12}$ 未満で一致した。間隙の量は、ここでも水を速めない。
5. 分離子
観察 5.1 分離子は、間隙の量を問うか、太さを問うかである。量は水の通り道がどれだけあるかを決め、太さは一本の通り道がどれだけ水を通すかを決める。粘土は量で勝ち、太さで $250000$ 倍負ける。透水係数に効くのは太さのほうである。
観察 5.2 論文599・574 の隣に置く。599 は透水係数を $10^{-4}$ m/s と置いて井戸の周りの水位を数え、574 は $20$ m/日と置いて淡水の底を数えた。ここでは、その置かれた数が粒の径と間隙率でどれだけ動くかを数えた。四つの土のあいだで $4.705347$ 桁である。
観察 5.3 言わないこと。実在の地層の値も、水で満たされていない土の流れも、向きによる違いや層の重なりも、井戸や排水の設計も扱わない。示したのは、間隙の量より太さが透水係数を決めるということである。
6. 点呼と結び
- 透水係数は径と間隙率で決まる(第1節):コゼニー=カルマンの式。
- 粗い砂 $5.530621\times10^{-3}$ m/s(計算 2.1):間隙率 $0.35$。
- 粘土 $1.090000\times10^{-7}$ m/s(計算 2.1):間隙率 $0.50$。
- 間隙率は粘土が $\mathbf{1.428571}$ 倍(計算 3.1):量は粘土が多い。
- 透水係数は $\mathbf{4.705347}$ 桁の差(計算 3.1):本稿の芯。
- 間隙率の項は粘土が $\mathbf{4.927114}$ 倍有利(計算 3.1):量の側。
- 径の二乗は粗い砂が $250000$ 倍有利(計算 3.1):太さの側。
- 粘土で $100$ m に $1.453582\times10^{3}$ 年(計算 4.1):粗い砂は $2.005350\times10^{-2}$ 年。
- ダルシーの流速から出すと $\mathbf{2.857143}$ 倍長い(観察 4.2):水は間隙だけを進む。
- 間隙の量か、太さか(観察 5.1):分離子・論文599・574。
結び:隙間の多い粘土のほうが、砂より水を通さない。粒の径と間隙率から透水係数を出すと、間隙率は粘土のほうが $1.428571$ 倍大きいのに、透水係数は $4.705347$ 桁小さい。間隙率の項では粘土が $4.927114$ 倍有利だが、径の二乗で粗い砂が $250000$ 倍有利になるからである。動水勾配 $0.01$ で $100$ m を水が進むのに、粗い砂で $2.005350\times10^{-2}$ 年、粘土で $1.453582\times10^{3}$ 年かかる。そして水は間隙の中だけを進むので、ダルシーの流速から出した時間は $2.857143$ 倍長く見積もる。既刊との位置:論文599・574 が代表値として置いた透水係数の隣に、その数が粒の径と間隙率でどれだけ動くかを置いた。正直に言えば、径と間隙率は模型の値で、式の係数は粒の形で動き、水で満たされていない土や層の重なりは入れていない。
参考文献
- Bear, J. (1972). Dynamics of Fluids in Porous Media. Elsevier.
- Freeze, R. A., & Cherry, J. A. (1979). Groundwater. Prentice-Hall.
- 山岸勇輝 (2026). 『地下水位が $1$ m 下がると、淡水の底は $40$ m 上がる』[論文574]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/574 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014304
- 山岸勇輝 (2026). 『井戸の水位は距離の対数でしか下がらず、汲み続ければ時間の対数で下がり続ける』[論文599]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/599 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014427
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「隙間の多い粘土のほうが、砂より水を通さない」[論文863]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/863
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). 隙間の多い粘土のほうが、砂より水を通さない [論文863]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/863
Yamagishi, Y. (2026). Clay Has More Empty Space Than Sand, Yet Lets Less Water Through [Paper 863]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/863
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author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {Clay Has More Empty Space Than Sand, Yet Lets Less Water Through},
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