要旨
道路が混んでいるかどうかは、交通量を測れば分かりそうに思える。本稿が示すのは同じ交通量が二つの状態で実現することである。片方は快適で、片方は渋滞である。新しい定理も法則も主張しない。
第一に、$v=v_{f}(1-k/k_{j})$、$q=kv$ とすると、容量は $k=k_{j}/2$ で $\mathbf{3750}$ 台/時になる(第2節)。
第二に、容量点での速度は、ちょうど自由流の半分($\mathbf{50.0000}$ km/h)である(第2節)。
第三に、これが本稿の芯である。密度 $50$ と $100$ が、どちらも $\mathbf{3333.3333}$ 台/時を出す。速度は二倍違う(第2節)。
第四に、容量を $1$ 台/km 超えても、$1$ 台/km 手前でも、交通量は減る(第3節)。
第五に、密度 $100$ では、容量より $\mathbf{416.6667}$ 台/時少ない(第3節)。
第六に、分離子は「密度が臨界の上か下か」であって、流量では判定できない(第5節)。
射程(何を示さないか)
新しい定理も法則も主張しない。グリーンシールズの線形関係、基本図、容量の定義はすべて交通工学で既知である。道路を設計しない。車線数や信号制御は与えない。一つの関係式の中の数だけを見る。線形の速度・密度関係を仮定している。実測の基本図は線形ではなく、容量落ちや二相構造がある。定性的な二値性は変わらない。渋滞の発生を扱わない。衝撃波・追従モデル・相転移の動力学は主題ではない。定常状態だけを見る。運転者を扱わない。反応時間や車頭時間の分布は主題ではない。政策を論じない。料金や規制の是非は主題ではない。既刊との関係:論文379 は「二倍の温度」に三つの答があることを示した。ここでは一つの流量に二つの状態がある。論文391 は有義波高が平均でも最大でもないことを示した。ここでは流量が状態を代表していない。論文357 は最大出力と最大効率が別の点であることを示した。ここでは最大流量と最大速度が別の点である。論文300 は同根か別根かが判定できることを示した。密度と流量は、その基準で別根である。加えたのは、五つの密度で速度と流量を数に出したこと、同じ流量が二つの密度で出ることを示したこと、容量点で速度がちょうど半分になることを示したこと、容量の両側で流量が減ることを挟んで確かめたこと、分離子を「密度が臨界の上か下か」に置いたことである。
1. 記法と問い
設定:速度 $v$ が密度 $k$ について線形に落ちるとする(グリーンシールズ)。
$$v=v_{f}\left(1-\frac{k}{k_{j}}\right),\qquad q=kv=v_{f}k\left(1-\frac{k}{k_{j}}\right)$$
$v_{f}=100$ km/h(自由流速度)、$k_{j}=150$ 台/km(渋滞密度)とする。
観察 1.1 $q$ は $k$ について上に凸の二次式である。$k=0$ と $k=k_{j}$ でゼロ、中間に最大がある。
観察 1.2 二次式は、一つの値を二つの $k$ で取る。頂点の左右に一つずつ、$q$ を測っても $k$ は決まらない。
観察 1.3 一方 $v$ は $k$ について単調である。一対一、速度を測れば密度は決まる。
問い:道路の状態を知るには、何を測ればよいか。
2. 同じ $3333.3333$ 台/時が、二回現れる
計算 2.1:密度に対する速度と交通量(本稿で計算)。
| 密度 $k$ [台/km] | 速度 [km/h] | 交通量 $q$ [台/時] |
|---|---|---|
| $25$ | $83.3333$ | $2083.3333$ |
| $\mathbf{50}$ | $\mathbf{66.6667}$ | $\mathbf{3333.3333}$ |
| $\mathbf{75}$ | $\mathbf{50.0000}$ | $\mathbf{3750.0000}$ |
| $\mathbf{100}$ | $\mathbf{33.3333}$ | $\mathbf{3333.3333}$ |
| $125$ | $16.6667$ | $2083.3333$ |
観察 2.2 これが本稿の芯である。$k=50$ と $k=100$ が、小数点以下まで同じ $3333.3333$ 台/時を出す。ところが速度は $66.6667$ km/h と $33.3333$ km/h で、ちょうど二倍違う。
観察 2.3 $k=25$ と $k=125$ でも同じことが起きる。どちらも $2083.3333$ 台/時、偶然の一致ではなく、二次式の対称性である。
観察 2.4 容量点での速度がちょうど自由流の半分である。$50.0000$ km/h、最も多く流れているときに、すでに半分まで遅くなっている。
観察 2.5 最大流量と最大速度は別の点である。最大速度は $k=0$、最大流量は $k=75$、論文357 と同じ構造で、二つの「最良」が一致しない。
観察 2.6 速度の列だけは単調である。$83.3333\to16.6667$、測るべきはこちらである。
3. 容量の両側で、流量は減る
計算 3.1:容量の近傍(本稿で計算)。
| 密度 $k$ | 交通量 $q$ [台/時] | 容量との差 |
|---|---|---|
| $74$ | $3749.3333$ | $-0.6667$ |
| $\mathbf{75}$ | $\mathbf{3750.0000}$ | $\mathbf{0}$ |
| $76$ | $3749.3333$ | $-0.6667$ |
| $100$ | $3333.3333$ | $\mathbf{-416.6667}$ |
観察 3.2 両側で同じだけ減る。$74$ でも $76$ でも $-0.6667$、頂点なので、一次の項が消えている。
観察 3.3 だから容量の近くでは、流量が状態をほとんど区別しない。$0.6667$ 台/時の差、測定誤差に埋もれる。
観察 3.4 離れると差が開く。$k=100$ で $-416.6667$ 台/時、一台増やすごとの損は、密度が高いほど大きい。
観察 3.5 $dq/dk$ の符号が $k=75$ で変わる。$v_{f}(1-2k/k_{j})$ が $k=74$ で正、$k=76$ で負、境目を両側から挟んだ。
観察 3.6 つまり臨界を超えると、一台の流入が全体を減らす。自分が通れば、他が通れなくなる。混んだ道に入るという行為が、その道の輸送量を下げる。
4. 流量は代表値になっていない
観察 4.1 流量は「一時間に何台通ったか」である。結果の量、状態の量ではない。
観察 4.2 同じ結果が、二つの状態から出る。速い車が少ないか、遅い車が多いか、台数を数えても区別がつかない。
観察 4.3 論文391 と同じ形である。論文391 では有義波高が平均でも最大でもなかった。ここでは流量が状態を代表していない。どちらも、一つの数が代表を名乗って代表していない。
観察 4.4 論文300 の基準で別根である。密度は車間が、速度は運転者の判断が、流量はその積が決める。流量は導かれた量であって、一次の量ではない。
観察 4.5 だから「交通量が去年と同じ」は、状態が同じことを意味しない。頂点をまたいだ可能性がある。同じ数字が、改善の証拠にも悪化の証拠にもなる。
5. 分離子:密度が臨界の上か下か
観察 5.1 分離子、密度が $k_{j}/2$ より小さいか、大きいか。
| 状態 | 密度 | 一台増えると流量は | 流量で区別できるか |
|---|---|---|---|
| 自由流 | $k<75$ | 増える | できない |
| 渋滞流 | $k>75$ | 減る | できない |
観察 5.2 右端がどちらも「できない」である。同じ流量が両方から出る。測る量を変えなければ、判定できない。
観察 5.3 速度か密度を測れば、一発で決まる。どちらも $k$ と一対一、必要なのは追加の観測ではなく、別の観測である。
観察 5.4 分離子は動かせる。流入を制御して密度を $75$ 以下に保てば、二値性そのものが消える。ランプメータリングが効くのはそのためである。
観察 5.5 正直に言えば、$3750$ 台/時も $3333.3333$ 台/時も、速度と密度が線形という模型の値である。実測の基本図は線形でなく、容量落ちもある。動かないのは、同じ流量が二つの密度から出ることと、速度が単調であることである。
観察 5.6 最後に一つ、最も多く流れている点が、すでに半分まで遅い点である。「たくさん通す」と「速く通す」は同じ点で最大にならない。どちらを目標にするかを決めないと、最適化そのものが定まらない。
6. 点呼と結び
- $q$ は上に凸の二次式(第1節):一つの値を二つの $k$ で取る。
- 容量は $k=75$ で $3750$ 台/時(計算 2.1):$k_{j}/2$。
- $k=50$ と $k=100$ が同じ $3333.3333$(観察 2.2):小数点以下まで。
- 速度は $66.6667$ と $33.3333$(観察 2.2):ちょうど二倍。
- 容量点の速度は自由流の半分(観察 2.4):$50.0000$ km/h。
- $74$ でも $76$ でも $-0.6667$(観察 3.2):頂点で一次項が消える。
- $k=100$ で $-416.6667$(計算 3.1):離れると差が開く。
- $dq/dk$ の符号が $k=75$ で変わる(観察 3.5):両側から挟んだ。
- 速度だけが単調(観察 2.6):測るべきはこちら。
- 二つの目標は同じ点で最大にならない(観察 5.6):決めないと定まらない。
結び:道路が混んでいるかどうかは、交通量を測れば分かりそうに思える。だが同じ交通量が、二つの状態で実現する。速度が密度について線形に落ちるとすると、$q=kv$ は上に凸の二次式になる。$v_{f}=100$ km/h、$k_{j}=150$ 台/km で、容量は $k=75$ 台/km の $\mathbf{3750}$ 台/時。二次式は一つの値を頂点の左右で二回取るので、$q$ を測っても $k$ は決まらない。密度 $50$ と $100$ が、小数点以下まで同じ $\mathbf{3333.3333}$ 台/時を出す。ところが速度は $66.6667$ km/h と $33.3333$ km/h で、ちょうど二倍違う。$k=25$ と $k=125$ でも同じことが起き(どちらも $2083.3333$ 台/時)、偶然ではなく二次式の対称性である。そして容量点での速度は、ちょうど自由流の半分($\mathbf{50.0000}$ km/h)、最も多く流れているときに、すでに半分まで遅くなっている。最大速度は $k=0$、最大流量は $k=75$ で、論文357 と同じく二つの「最良」が一致しない。容量の両側で、流量は同じだけ減る。$k=74$ でも $k=76$ でも $-0.6667$ 台/時で、頂点なので一次の項が消えている。だから容量の近くでは流量が状態をほとんど区別せず、$0.6667$ 台/時の差は測定誤差に埋もれる。離れれば差は開き、$k=100$ では容量より $\mathbf{416.6667}$ 台/時少ない。$dq/dk=v_{f}(1-2k/k_{j})$ の符号は $k=74$ で正・$k=76$ で負と、境目を両側から挟める。つまり臨界を超えると、一台の流入が全体を減らす。混んだ道に入るという行為が、その道の輸送量を下げる。流量は代表値になっていない。流量は「一時間に何台通ったか」という結果の量であって、状態の量ではない。速い車が少ないのか、遅い車が多いのか、台数を数えても区別がつかない。論文391 で有義波高が平均でも最大でもなかったのと同じ形で、一つの数が代表を名乗って代表していない。論文300 の基準で別根であり、密度は車間が、速度は運転者の判断が、流量はその積が決める。だから「交通量が去年と同じ」は状態が同じことを意味せず、同じ数字が改善の証拠にも悪化の証拠にもなる。分けているものは一つ、密度が $k_{j}/2$ より小さいか、大きいか。自由流でも渋滞流でも、流量では区別できない。速度か密度を測れば一発で決まる。どちらも $k$ と一対一である。必要なのは追加の観測ではなく、別の観測である。流入を制御して密度を $75$ 以下に保てば二値性そのものが消える。ランプメータリングが効くのはそのためである。正直に言えば、$3750$ 台/時も $3333.3333$ 台/時も、速度と密度が線形という模型の値であり、実測の基本図は線形でなく容量落ちもある。動かないのは、同じ流量が二つの密度から出ることと、速度が単調であることである。最後に一つ、最も多く流れている点が、すでに半分まで遅い点である。「たくさん通す」と「速く通す」は同じ点で最大にならない。どちらを目標にするかを決めないと、最適化そのものが定まらない。
参考文献
- Greenshields, B. D. (1935). A Study of Traffic Capacity. Proceedings of the Highway Research Board.
- Lighthill, M. J., Whitham, G. B. (1955). On Kinematic Waves II. A Theory of Traffic Flow on Long Crowded Roads. Proceedings of the Royal Society A.
- Daganzo, C. F. (1997). Fundamentals of Transportation and Traffic Operations. Oxford: Pergamon.
- Kerner, B. S. (2004). The Physics of Traffic. Berlin: Springer.
- 山岸勇輝 (2026). 『第三百回の点呼、同根か別根かは判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
- 山岸勇輝 (2026). 『最大出力と最大効率は、同じ点ではない』[論文357]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22697180
- 山岸勇輝 (2026). 『「二倍の温度」には三つの答があり、比が 2 になるのは一つだけである』[論文379]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22698802
- 山岸勇輝 (2026). 『有義波高は、平均でもなければ最大でもない』[論文391]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22699212
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「同じ交通量が、二つの別の状態で実現する」[論文394]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22699272
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引用するとき
山岸勇輝 (2026). 同じ交通量が、二つの別の状態で実現する:流量を測っても、どちらにいるかは分からない [論文394]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/394 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22699272
Yamagishi, Y. (2026). The Same Flow Is Two Different States: Measuring the Flow Does Not Tell You Which One You Are In [Paper 394]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/394; DOI: 10.5281/zenodo.22699272
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