【論文938】林を層に分けて標本を取ると層の間の違いが誤差から消え、ばらつく層に多く配るとさらに減る

要旨

林の平均の材積を、限られた数の区画を測って見積もるとき、区画の選び方で推定の誤差が変わる。本稿は、若い・中ほど・古い三つの層を持つ林で、三十か所の標本を無作為に取る場合、面積の割合で層に配る場合、層のばらつきに合わせて配る場合の推定の分散を式で出し、合成の林から乱数で標本を取って確かめる。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、林全体の分散の大半は、層の間の違いである。面積の割合 $0.5$・$0.3$・$0.2$、層の平均 $50$・$150$・$300$ m³/ha の林では、層の中の分散 $2680.000$ に対して層の間の分散は $9100.000$ だった(第2節)。

第二に、面積の割合で層に配ると、層の間の違いが誤差から消える。三十か所を無作為に取ると平均の推定の分散は $392.666667$、面積の割合で $15$・$9$・$6$ か所に配ると $89.333333$ で、比は $\mathbf{0.227504}$ だった(第3節)。

第三に、層のばらつきに合わせて配ると、さらに減る。層の面積とばらつきの積に比例して $7.143$・$8.571$・$14.286$ か所に配ると、分散は $58.800000$ で、無作為に対する比は $\mathbf{0.149745}$ だった(第3節)。

第四に、無作為で同じ精度を得るには、区画の数が何倍も要る。面積の割合の配り方と同じ精度には $131.866$ か所、ばらつきに合わせた配り方と同じ精度には $\mathbf{200.340}$ か所が要る。合成の林から $20000$ 回取ると、三つの分散は式と比 $0.95$ から $1.05$ のあいだで合った(第4節)。

第五に、分離子は、標本を面積の割合で配るか、層のばらつきに合わせて配るかである。面積の割合で配れば、どの層がどれだけ入るかの運が消える。ばらつきに合わせて配れば、見積もりにくい層に区画を寄せて、同じ数の区画で誤差をさらに削る(第5節)。

キーワード:層別抽出、比例配分、ネイマン配分、推定の分散、標本調査、森林調査。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。層別抽出、比例配分、層のばらつきに合わせる配分(ネイマン配分)、それぞれの推定の分散の式は、いずれも標本調査の理論で既知である。実在の林を主張しない。面積の割合、層の平均とばらつき、区画の数 $30$ は置いた値で、特定の林や樹種には対応しない。層の決め方と費用を扱わない。層の境をどう引くか、層ごとに測る費用が違う場合、区画の中をさらに抜き取る二段の取り方は扱わない。層のばらつきを知っていると置く。ばらつきに合わせた配り方は、層のばらつきが前もって分かっているときの値である。既刊との関係:論文891 の射程注記は、林全体に入らず、一本の木の材積だけを扱い、林全体の標本の取り方は扱わないと書いた。本稿はその林全体の標本の取り方の席に座る(先客なし)。論文581 は、森が炭素を吸う速さの頂点と、ためる量の頂点が別の林齢にあることを示した。ここでは、林齢で分けた層が材積の平均の見積もりの誤差をどう変えるかを数える。加えたのは、林全体の分散を層の中と層の間に分けたこと、三つの配り方の推定の分散と比を出したこと、無作為で同じ精度に要る区画の数を出したこと、合成の林から乱数で式を確かめたこと、分離子を「面積の割合で配るか、ばらつきに合わせて配るか」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:林を面積の割合 $W_h$ の層 $h$ に分け、層の平均を $\mu_h$、層の中のばらつきを $S_h$ とする。区画 $n$ か所で林全体の平均を見積もるとき、無作為・面積の割合(比例配分)・層のばらつきに合わせる配り方(ネイマン配分)の推定の分散は次のとおりである。

$$V_{\text{無作為}}=\frac{\sum W_hS_h^2+\sum W_h(\mu_h-\mu)^2}{n},\qquad V_{\text{比例}}=\frac{\sum W_hS_h^2}{n},\qquad V_{\text{ネイマン}}=\frac{\left(\sum W_hS_h\right)^2}{n}$$

ネイマン配分は層 $h$ に $nW_hS_h/\sum W_kS_k$ か所を配る。検算では $W=(0.5,0.3,0.2)$、$\mu=(50,150,300)$、$S=(20,40,100)$、$n=30$ とし、層ごとに正規分布の合成の林($10$ 万本)から $20000$ 回標本を取った。

問い:同じ区画の数で、林の平均の見積もりの誤差を小さくするには、区画をどう配ればよいか。

2. 林の分散の内訳

計算 2.1:全体の平均は $130.000$、層の中の分散は $2680.000$、層の間の分散は $9100.000$ だった。

観察 2.2 林全体のばらつきの大半は、層の中ではなく層の間の違いである。若い林と古い林では平均の材積が六倍違い、その差が林全体の分散の大部分を占める。無作為に区画を取ると、どの層の区画が何か所入るかの運が、この層の間の違いを誤差に持ち込む。

3. 三つの配り方

計算 3.1:区画 $30$ か所。

配り方 区画の配分 推定の分散 標準誤差 無作為に対する比
無作為 運しだい $392.666667$ $19.815819$ $1$
面積の割合 $15$・$9$・$6$ $89.333333$ $9.451631$ $0.227504$
ばらつきに合わせる $7.143$・$8.571$・$14.286$ $58.800000$ $7.668116$ $0.149745$

観察 3.2 面積の割合で配ると層の間の違いが誤差から消え、ばらつきに合わせるとさらに減る。面積の割合で配れば、式から層の間の分散 $9100.000$ が落ち、分散は $0.227504$ 倍になる。ばらつきに合わせて、ばらつきの大きい古い層に区画を寄せると、若い層の区画を減らしても全体の分散は $0.149745$ 倍まで下がる。面積の割合の配り方に比べると $0.658209$ 倍である。

4. 同じ精度に要る区画と、乱数での確かめ

計算 4.1:無作為で面積の割合の配り方と同じ精度には $131.866$ か所、ばらつきに合わせた配り方と同じ精度には $\mathbf{200.340}$ か所が要る。

計算 4.2:合成の林から $20000$ 回取った推定の分散(ばらつきに合わせる配り方は $7$・$9$・$14$ か所に丸めた)。

配り方 乱数の分散 式 推定の平均
無作為 $387.607516$ $392.666667$ $130.057$
面積の割合 $89.270611$ $89.333333$ $129.795$
ばらつきに合わせる(丸め) $59.152657$ $58.857143$ $129.834$

三つとも乱数の分散と式の比は $0.95$ から $1.05$ のあいだで、合成の林の平均は $129.865$ だった。

5. 分離子

観察 5.1 分離子は、標本を面積の割合で配るか、層のばらつきに合わせて配るかである。面積の割合で配ると、層の間の違いという大きな誤差の源が消え、同じ $30$ か所で分散は $0.227504$ 倍になる。ばらつきに合わせて配ると、面積は小さくても見積もりにくい層に区画を寄せ、分散は $0.149745$ 倍になる。無作為でそれと同じ精度を得るには $200.340$ か所が要る。

観察 5.2 言わないこと。実在の林、層の境の決め方、層ごとの費用の違い、二段の取り方、層のばらつきを知らないときは扱わない。示したのは、層に分けて配るだけで同じ区画の数の誤差が大きく減ることと、その減り方が配り方で違うことである。

6. 点呼と結び

  1. 三つの配り方の推定の分散の式(第1節):層の中と層の間。
  2. 層の中 $2680.000$・層の間 $9100.000$(計算 2.1):大半は層の間。
  3. 面積の割合で比 $\mathbf{0.227504}$(計算 3.1):層の間が消える。
  4. ばらつきに合わせて比 $\mathbf{0.149745}$(計算 3.1):さらに減る。
  5. 無作為なら $\mathbf{200.340}$ か所(計算 4.1):同じ精度に要る数。
  6. 乱数と式の比 $0.95$〜$1.05$(計算 4.2):合成の林で確かめた。
  7. 面積の割合か、ばらつきか(観察 5.1):分離子・論文891 の射程注記・論文581。

結び:林を層に分けて標本を取ると層の間の違いが誤差から消え、ばらつく層に多く配るとさらに減る。三つの層の林では、全体の分散の大半が層の間の違いだった。同じ $30$ か所でも、面積の割合で配ると平均の推定の分散は無作為の $0.227504$ 倍、ばらつきに合わせて配ると $0.149745$ 倍になり、無作為で同じ精度には $200.340$ か所が要った。合成の林から乱数で取った分散は、三つとも式と合った。分離子は、標本を面積の割合で配るか、層のばらつきに合わせて配るかである。既刊との位置:論文891 が一本の木の誤差にとどめた材積の見積もりを林全体の標本の取り方に広げ、論文581 の林齢で分かれる森を層として数えた。正直に言えば、実際の調査の設計は言わない。配り方で同じ区画の数の誤差がどれだけ変わるか、そこまでである。

参考文献

  1. Cochran, W. G. (1977). Sampling Techniques. Wiley.
  2. Neyman, J. (1934). On the two different aspects of the representative method. Journal of the Royal Statistical Society.
  3. 山岸勇輝 (2026). 『森が炭素を吸う速さの頂点と、ためる量の頂点は、別の林齢にある』[論文581]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/581 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014343
  4. 山岸勇輝 (2026). 『伐らずに測る材積の誤差は三つの仮定の誤差が重なり、いちばん効くのは測りにくい形の係数である』[論文891]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/891

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「林を層に分けて標本を取ると層の間の違いが誤差から消え、ばらつく層に多く配るとさらに減る」[論文938]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/938

YOI 938第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 林を層に分けて標本を取ると層の間の違いが誤差から消え、ばらつく層に多く配るとさらに減る [論文938]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/938

Yamagishi, Y. (2026). Stratifying a Forest Removes Between-Stratum Differences from Sampling Error, and Allocating More Plots to Variable Strata Reduces It Further [Paper 938]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/938

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