【論文953】流れのある槽で残るのは速く増える種ではなく少ない餌で釣り合える種で、勝者は流す速さで入れ替わる

要旨

流れのある槽(ケモスタット)では、流れ出るより速く増えられる種だけが残る。本稿は、論文933 の種と、最大の増え方は遅いが薄い餌でも増える種を同じ槽に入れ、流す速さごとにどちらが残るか、残ったときの餌の濃さはどうなるかを数値で出す。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、流す速さで勝者が入れ替わる。種 A(最大 $0.40$ /h・半飽和 $0.50$ g/L)と種 B($0.25$ /h・$0.05$ g/L)では、流す速さ $0.10$・$0.20$ /h で B が残り、$0.24$・$0.30$ /h で A が残った。釣り合う餌の濃さが等しくなるのは $\mathbf{0.233333}$ /h だった(第2節)。

第二に、残った餌の濃さは、いつも勝った種の釣り合いの濃さになる。$3000$ 時間後の餌は $0.033333$・$0.200000$・$0.750000$・$1.500000$ g/L で、四つとも勝った種の釣り合う餌の濃さと相対 $10^{-6}$ 以内で一致した(第2節)。

第三に、一人なら残れる種も、相手がいると負ける。流す速さ $0.24$ /h では、B も一人なら $1.200000$ g/L の餌で釣り合えるが、A が餌を $0.750000$ g/L まで下げたため、B は $3.767166\times10^{-9}$ まで減った(第2節)。

第四に、遅い種が勝つのは、薄い餌で速く増えるからである。二つの種の増え方は餌 $0.700000$ g/L で等しく($0.233333$ /h)、それより薄いと B が速い。餌 $0.2$ g/L では A $0.114286$ /h・B $\mathbf{0.200000}$ /h だった(第3節)。

第五に、分離子は、最大の増え方で比べるか、釣り合う餌の濃さで比べるかである。最大の増え方は餌がたっぷりあるときの速さで、流れのある槽の餌は勝った種が薄くしてしまう。勝ち負けを決めるのは、流す速さと同じだけ増えるのに要る餌の濃さである(第4節)。

キーワード:ケモスタット、資源競争、釣り合う餌の濃さ、競争排除、希釈率、モノーの式。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。モノーの式、流れのある槽の釣り合い、一つの餌を奪い合う種のうち釣り合う餌の濃さが最も低い種だけが残ること(資源競争の理論)は、いずれも既知である。置いた値である。種 A の値と流れ込む餌の濃さ $10.0$ g/L は論文933 と同じで、種 B の値は比べるために置いた。どの藻や菌にも対応しない。餌は一つ。餌が二つ以上ある場合、種が互いに毒を出す場合、死滅と壁への付着は入れない。共存を論じない。四つの流す速さだけを調べ、釣り合う餌の濃さがちょうど等しい点で何が起こるかは扱わない。既刊との関係:論文933 の射程注記は、死滅や付着を入れず、菌の死滅、壁への付着、複数の種の競争は入れないと書いた。本稿はそのうち複数の種の競争の席に座る(先客なし)。論文933 は、流れのある槽で増え続けられる境が最大の増え方ではなく流れ込む餌で決まり、産出は境の手前で最大になることを示した。ここでは、二つの種を入れると、残る種を決めるのも最大の増え方ではないことを数える。論文680 は、指数増殖の怖さが最後の一倍加に半分が入っていることだと示した。種 A の値はその代表値である。加えたのは、二つの種の釣り合う餌の濃さと、それが等しくなる流す速さを出したこと、四つの流す速さで勝者と残った餌の濃さを数値で出したこと、一人なら残れる種が負ける場合を示したこと、負けた種が減るまでの時間を並べたこと、分離子を「最大の増え方か、釣り合う餌の濃さか」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:流れ込む餌の濃さ $S_0=10.0$ g/L、流す速さ(希釈率)$D$ の槽に、二つの種 $X_A$・$X_B$ を入れる。増え方はモノーの式で、収率はどちらも $0.5$ とする。

$$\frac{dS}{dt}=D(S_0-S)-\sum_i\frac{\mu_i(S)X_i}{Y},\qquad \frac{dX_i}{dt}=(\mu_i(S)-D)X_i,\qquad \mu_i(S)=\frac{\mu_{\max,i}S}{K_i+S}$$

種 A は $\mu_{\max}=0.40$ /h・$K=0.50$ g/L(論文933 と同じ)、種 B は $0.25$ /h・$0.05$ g/L(置いた値)。一人で流す速さと釣り合うのに要る餌の濃さは $R^*_i=K_iD/(\mu_{\max,i}-D)$ である。

解き方:両方を $0.05$ g/L ずつ入れ、餌 $S_0$ から、刻み $0.02$ 時間のルンゲ=クッタで $3000$ 時間まで追う。負けたほうが勝ったほうの $1/1000$ を切った時刻も記録する。

問い:同じ槽に二つの種を入れると、どちらが残り、それは流す速さでどう変わるか。

2. 四つの流す速さ

計算 2.1:釣り合う餌の濃さと、$3000$ 時間後の槽。

$D$(/h) $R^*_A$ $R^*_B$ 餌(g/L) A B 負けたほうが $1/1000$ を切った時刻
$0.10$ $0.166667$ $0.033333$ $0.033333$ $0.000000$ $4.983333$ $124.0$ h
$0.20$ $0.500000$ $0.200000$ $0.200000$ $0.000000$ $4.900000$ $220.5$ h
$0.24$ $0.750000$ $1.200000$ $0.750000$ $4.625000$ $3.767166\times10^{-9}$ $507.6$ h
$0.30$ $1.500000$ 増えられない $1.500000$ $4.250000$ $1.631820\times10^{-77}$ $54.0$ h

釣り合う餌の濃さが等しくなる流す速さは $\mathbf{0.233333}$ /h($R^*=0.700000$ g/L)だった。四つとも、残った種は $R^*$ の小さいほうで、餌の濃さはその $R^*$ と相対 $10^{-6}$ 以内、残った量は収率×($S_0-R^*$)と相対 $10^{-6}$ 以内で、負けた種は勝った種の $10^{-6}$ 未満だった。

観察 2.2 残るのは釣り合う餌の濃さの低い種で、流す速さで入れ替わる。流す速さが $0.233333$ /h より遅いと B、速いと A が残った。$D=0.24$ では B も一人なら $1.200000$ g/L で釣り合えるが、A が餌を $0.750000$ g/L まで下げ、B の増え方は流れに追いつかなくなった。負けたほうが減りきるまでの時間は、境に近い $0.24$ で $507.6$ h と長かった。

3. 遅い種が勝つわけ

計算 3.1:二つの種の増え方が等しくなる餌の濃さは $0.700000$ g/L で、そのときの増え方は $0.233333$ /h だった。餌 $0.2$ g/L では A $0.114286$ /h・B $\mathbf{0.200000}$ /h だった。この濃さと増え方は、$R^*$ が等しくなる点($0.7$ g/L と $0.233333$ /h)と一致した。

観察 3.2 最大の増え方の遅い B は、薄い餌では A より速く増える。餌が $0.700000$ g/L より濃いと A が速く、薄いと B が速い。流れのある槽の餌は勝ち残る種によって薄くされるので、流す速さが遅く、釣り合う餌が薄い側に来るほど、薄い餌に強い B が有利になった。

4. 分離子

観察 4.1 分離子は、最大の増え方で比べるか、釣り合う餌の濃さで比べるかである。最大の増え方は、餌がたっぷりあるときの速さである。流れのある槽では、残った種が餌を自分の $R^*$ まで下げるので、勝ち負けは「流す速さと同じだけ増えるのに要る餌の濃さ」で決まった。最大の増え方の速い A が勝ったのは、その濃さでも A が低くなる $D>0.233333$ /h のときだけだった。

観察 4.2 言わないこと。実在の種、餌が二つ以上のとき、毒や死滅や付着、$R^*$ がちょうど等しい点での振る舞いは扱わない。示したのは、置いた二つの種で、残る種と残る餌の濃さが釣り合う餌の濃さで決まり、流す速さで入れ替わることである。

5. 点呼と結び

  1. 二つの種のモノーの式と $R^*$(第1節):流す速さと釣り合う餌。
  2. $R^*$ が等しくなる $\mathbf{0.233333}$ /h(計算 2.1):遅いと B、速いと A。
  3. 残った餌は勝った種の $R^*$(計算 2.1):相対 $10^{-6}$ 以内。
  4. $D=0.24$ で B は $3.767166\times10^{-9}$ まで(計算 2.1):一人なら残れる種が負ける。
  5. 餌 $0.2$ で B $\mathbf{0.200000}$ /h(計算 3.1):薄い餌では遅い種が速い。
  6. 最大の増え方か、釣り合う餌か(観察 4.1):分離子・論文933 の射程注記・論文680。

結び:流れのある槽で残るのは速く増える種ではなく少ない餌で釣り合える種で、勝者は流す速さで入れ替わる。最大の増え方の速い A と、薄い餌に強い B を同じ槽に入れると、流す速さ $0.233333$ /h より遅ければ B、速ければ A が残った。残った餌の濃さは四つとも勝った種の $R^*$ に一致し、$D=0.24$ では一人なら残れる B も $3.767166\times10^{-9}$ まで減った。分離子は、最大の増え方で比べるか、釣り合う餌の濃さで比べるかである。既刊との位置:論文933 が一つの種で「境を決めるのは最大の増え方ではない」と示したことを、二つの種の勝ち負けに広げた。正直に言えば、湖や湾の種の入れ替わりは言わない。一つの餌を奪い合う二つの種で、残る種が何で決まるか、そこまでである。

参考文献

  1. Hsu, S. B., Hubbell, S., & Waltman, P. (1977). A mathematical theory for single-nutrient competition in continuous cultures of micro-organisms. SIAM Journal on Applied Mathematics.
  2. Tilman, D. (1982). Resource Competition and Community Structure. Princeton University Press.
  3. 山岸勇輝 (2026). 『指数増殖の怖さは速さではなく、最後の一倍加に半分が入っていることである』[論文680]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/680 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014794
  4. 山岸勇輝 (2026). 『流れのある槽で増え続けられる境は最大の増え方ではなく流れ込む餌で決まり、産出は境の手前で最大になる』[論文933]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/933

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「流れのある槽で残るのは速く増える種ではなく少ない餌で釣り合える種で、勝者は流す速さで入れ替わる」[論文953]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/953

YOI 953第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 流れのある槽で残るのは速く増える種ではなく少ない餌で釣り合える種で、勝者は流す速さで入れ替わる [論文953]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/953

Yamagishi, Y. (2026). In a Flow-Through Culture the Species That Breaks Even on Less Food Wins, and the Winner Switches with the Flow Rate [Paper 953]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/953

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