要旨
クリーニングの数を、衛生行政報告例(令和6年度末、厚生労働省【生活衛生】第11表)で数え、人口・経済センサスと突き合わせた。
クリーニング所 67,551 施設のうち、48,172(71.3%)は「取次所」である。 取次所は洗濯物を預かって別の施設へ回す店で、自分では洗わない。実際に洗う施設は 19,379 しかない。
従事クリーニング師は 32,525 人。 全施設で割ると1施設あたり0.48人と1人を切るが、洗う施設だけで割れば 1.68人 になる。クリーニング業法が求めるのは、洗濯をする施設にクリーニング師を置くことであって、取次所には義務が無いためである。
免許の交付は年に 790 件。 いまいるクリーニング師 32,525 人の 2.43% にあたる。
無店舗取次店(宅配など)は 2,304。 クリーニング所の3.4%にすぎず、半数(50.3%)が指定洗濯物を扱う。
取次所の割合は県によって 55.7%(栃木県)から 86.5%(沖縄県) まで開く。人口10万人あたりのクリーニング所は愛媛県106.5から神奈川県35.2まで3.02倍の開きがあり、店が多い県ほど、その多くは取次所である(r = +0.487)。
北海道は 2,429 施設(取次所73.6%、洗う施設642)。釧路総合振興局管内では鶴居村が0である。
1. はじめに
I004 は理容所・美容所が1店あたり1.80人・2.12人の小さな店であることを、I007 は薬局の94.4%が開設者の店ではないことを示した。どちらも「その商売の店とは何か」を数で確かめたものである。
クリーニングには、他の業種に無い区分がある。同じ「クリーニング所」でも、洗う施設と、預かるだけの取次所が分けて数えられている。
クリーニング屋は、いくつあるのか。そのうち、何軒が洗っているのか。
2. データ
| クリーニング | 厚生労働省「令和6年度 衛生行政報告例」【生活衛生】第11表 クリーニング師免許交付・取消件数、クリーニング所施設数、従事クリーニング師数、使用確認件数、無店舗取次店営業者数(施設数・人数は令和6年度末現在。免許・使用確認は年度中の件数) |
| 経済センサス | 「令和3年 経済センサス-活動調査」産業小分類 781 洗濯業(令和3年6月1日) |
| 人口・65歳以上 | 総務省「住民基本台帳に基づく人口」2026年1月1日 |
47都道府県すべての行がそろい、合計は全国の欄と一致する(施設 67,551、取次所 48,172、クリーニング師 32,525、無店舗取次店 2,304)。
衛生行政報告例には市区町村別が無い(都道府県・指定都市・中核市まで)。本稿は都道府県を単位とし、経済センサスは市区町村の値を都道府県ごとに合計した。
取次所は施設数の再掲である。 「洗う施設」は、施設数から取次所数を引いて求めた。
3. 結果
3-1 7割は取次所
| 施設 | 割合 | |
|---|---|---|
| クリーニング所 | 67,551 | |
| うち取次所(再掲) | 48,172 | 71.3% |
| → 取次所でない施設 | 19,379 | 28.7% |
| うち指定洗濯物を扱う(再掲) | 3,510 | 5.2% |
取次所は、洗濯物を預かって別の施設へ回す店である。店の看板は同じでも、7割は洗っていない。
経済センサスと並べると、向きが2つに割れる。
| 数 | クリーニング所との比 | |
|---|---|---|
| クリーニング所(令和6年度末) | 67,551 | |
| 経済センサスの洗濯業 781(令和3年) | 42,842 | 1.58倍 |
| 取次所でない施設 | 19,379 | 0.45倍 |
「クリーニング屋が何軒あるか」の答えは、0.45倍から1.58倍のあいだで動く。 I005 の飲食店(0.54〜2.91倍)と同じ形である。ただし781 洗濯業にはリネンサプライ・貸おしぼりも含まれるので、この比較は粗い。
3-2 クリーニング師は、洗う施設1つあたり1.68人
| 人 | |
|---|---|
| 従事クリーニング師 | 32,525 |
| 全施設(67,551)あたり | 0.48 |
| 洗う施設(19,379)あたり | 1.68 |
全施設で割ると1人を切る。 これは計算が変なのではなく、取次所にクリーニング師を置く義務が無いからである。クリーニング業法は、洗濯をする施設にクリーニング師を置くことを求めている。
洗う施設だけで割れば1.68人。I004 の理容所1.80人・美容所2.12人とほぼ同じ水準である。洗う場所は、理容室や美容室と同じくらい小さい。
3-3 免許の交付は年に790件
| 件数(年度中) | |
|---|---|
| クリーニング師免許の交付 | 790 |
| 同 取消 | 3 |
| 使用確認件数 | 858 |
交付790件は、いまいるクリーニング師 32,525 人の 2.43% にあたる。
仮に1人が40年働くとすれば、人数を保つには年に 813 人ほどの新規が要る計算になる。790 はそれをわずかに下回る。ただしこれは単純な置き方であり、実際の在職年数も、免許を取った人が働き始めたかどうかも、本稿は確かめていない。
3-4 無店舗取次店(宅配など)は2,304
| 無店舗取次店の営業者数 | 2,304 |
| うち指定洗濯物を扱う | 1,158(50.3%) |
| 従事クリーニング師 | 128人 |
| クリーニング所(67,551)に対して | 3.4% |
宅配クリーニングは話題になるが、届出の数で見ればクリーニング所の3.4%にとどまる。
3-5 都道府県ごと

図1 クリーニング所に取次所が占める割合(47都道府県、令和6年度末)。
灰色は都道府県、橙は北海道、青の破線は全国の71.3%。
| 取次所の割合 | 高い | 低い |
|---|---|---|
| 沖縄86.5%/滋賀83.1%/福岡80.6% | 秋田58.9%/青森56.9%/栃木55.7% |
中央値は71.2%で、全国の71.3%とほぼ同じ。すべての県で半分を超える。
| 人口10万人あたり | 多い | 少ない |
|---|---|---|
| クリーニング所(全国54.6) | 愛媛106.5/福井101.2/岩手95.5 | 埼玉39.2/千葉37.5/神奈川35.2 |
| 洗う施設 | 愛媛28.5/山梨27.3/福井23.1 | 宮城11.2/滋賀10.3/沖縄10.2 |
クリーニング所は上と下で 3.02倍 の開きがある。
店が多い県ほど、その多くは取次所である(人口10万人あたりの施設数と取次所の割合の相関 r = +0.487)。愛媛県は店が106.5と全国一多いが、洗う施設は28.5である。
一方、人口の大きさと取次所の割合は、ほとんど関係が無い(人口の常用対数との相関 r = +0.055)。「都会だから取次所ばかり」ではない。高齢化率との相関は r = −0.327 で弱い。
3-6 北海道と釧路総合振興局管内
北海道はクリーニング所 2,429(うち取次所 1,787、73.6%)。洗う施設は642しかない。
従事クリーニング師は 1,305 人で、洗う施設あたり 2.03人。全国の1.68人より多い。無店舗取次店は131。
人口10万人あたりの施設は48.6で47都道府県中 36位、取次所の割合は16位である。
釧路管内は、衛生行政報告例に市区町村別が無いため、経済センサスの781(洗濯業)のみを示す。
| 市町村 | 人口 | 781 事業所 | 人口10万人あたり |
|---|---|---|---|
| 釧路市 | 151,566 | 55 | 36.3 |
| 釧路町 | 18,021 | 9 | 49.9 |
| 厚岸町 | 7,976 | 2 | 25.1 |
| 浜中町 | 5,172 | 2 | 38.7 |
| 標茶町 | 6,698 | 5 | 74.6 |
| 弟子屈町 | 6,327 | 3 | 47.4 |
| 鶴居村 | 2,368 | 0 | 0.0 |
| 白糠町 | 6,840 | 4 | 58.5 |
全国1,889市区町村の中央値は 32.6。標茶町74.6と白糠町58.5が高く、厚岸町25.1が低い。
鶴居村は0である。 I007 では薬を買う店(603)も0だった。781が0の市区町村は全国で 192 ある。
4. 考察
4-1 同じ看板で、中身が違う
「クリーニング屋」と一口に言っても、7割は預かるだけの店である。洗う設備を持ち、クリーニング師を置いている施設は 19,379 で、全体の3割に満たない。
この区分は、他の業種の統計にはほとんど無い。理容所・美容所も飲食店も、その場で仕事をしているかどうかを分けて数えていない。 クリーニングだけが、法律の側の都合(クリーニング師の設置義務)で分かれている。
「その町に何軒あるか」を数えるとき、何を数えているのかが業種ごとに違う。 これは R001〜R003 が経済センサスの事業所数で「ある/無い」を数えたことの、別の角度からの限界である。
4-2 店が多い県ほど、洗っていない
人口あたりの店の数と取次所の割合には、中くらいの正の相関(r = +0.487)がある。愛媛県は人口10万人あたり106.5店で全国一だが、洗う施設は28.5にとどまる。
取次所は設備が要らないので、数を増やしやすい。店の数が多いことは、その商売が厚いことを意味しない。 I006 で「宿が多い県ほど1軒は小さい」と同じ向きの話である。
ただし、なぜ県によって55.7%から86.5%まで開くのかは、本稿では説明していない。
4-3 入ってくる人の数
免許交付790件は、いまいるクリーニング師の2.43%である。「1人が40年働く」と置いた目安の813人をわずかに下回る。
これだけで「クリーニング師が減る」とは言えない。在職年数も、免許取得者が実際に働き始めるかも、本稿は見ていない。言えるのは、年に790人という数そのものだけである。
4-4 宅配は、まだ3.4%
無店舗取次店2,304は、クリーニング所67,551の3.4%にとどまる。宅配クリーニングの伸びは届出の数では、まだ小さい。
ただし無店舗取次店1件あたりが扱う量は本稿では分からない。件数と規模は別のものである。
5. 限界
- 衛生行政報告例は令和6年度末、経済センサスは令和3年6月1日、人口は2026年1月1日。時点が違う
- 衛生行政報告例はクリーニング業法の届出をした施設の数。経済センサスは事業所
- 取次所は施設数の再掲。 「洗う施設」は施設数から取次所数を引いて求めた
- 経済センサスの781 洗濯業には、リネンサプライ・貸おしぼりも含む。 クリーニング所と同じものではない
- 従事クリーニング師は、その施設で働く免許保持者の数で、常勤・非常勤を区別しない
- 免許交付件数は年度中の件数で、その人が働き始めたかどうかは示さない。「1人が40年働く」は目安の置き方にすぎない
- 衛生行政報告例には市区町村別が無い。釧路管内はセンサスの値のみ
- 売上・洗濯物の量・店の大きさは見ていない
- どちらの統計が正しいかを、本稿は判定しない
6. 再現の手順
- e-Stat から「令和6年度 衛生行政報告例」【生活衛生】第11表(CSV)を取得する。指定都市・中核市の再掲行があるので、都道府県の行だけを使う
- 47県の合計が全国の欄と一致することを確かめる(施設 67,551/取次所 48,172/クリーニング師 32,525/無店舗取次店 2,304)
- 施設数から取次所数を引いて「洗う施設」を出す(全国 19,379)
- e-Stat から令和3年 経済センサスの産業小分類別 事業所数(市区町村別)を取得し、781 を都道府県ごとに合計する
- 住民基本台帳の人口・65歳以上人口を都道府県ごとに合計する
- 取次所の割合、洗う施設あたりのクリーニング師数、人口10万人あたりの施設数を出す
本稿の数値は、すべて1本のスクリプト(kensan_196)の出力である。中間の数値を手で書き写していない。
この論文の位置づけ
新しい理論を主張するものではない。同じ「クリーニング所」の中に、洗う施設と預かるだけの取次所があり、その割合を数えたものである。I004(理容・美容)・I005(飲食)・I007(薬局)と同じく、「その商売の店とは何か」を公的統計の区分から読んだ。経済センサスの781はリネンサプライ等を含むため、突き合わせは参考にとどめた。どちらの統計が正しいかは判定しない。
参考文献・データの出典
- 厚生労働省「令和6年度 衛生行政報告例」【生活衛生】第11表
- 総務省統計局・経済産業省「令和3年 経済センサス-活動調査」産業小分類別 事業所数(市区町村別)
- 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」2026年1月1日現在
- 山岸勇輝「理容所と美容所、1店あたり2人」(I004)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22875820
- 山岸勇輝「飲食店営業の許可は、事業所の2.9倍」(I005)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22875863
- 山岸勇輝「宿の数は、統計によって13.7倍ちがう」(I006)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22876047
- 山岸勇輝「薬局が1つも無い町村が140ある」(I007)。Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22876130
版の記録
| 版 | 日付 | 内容 |
|---|---|---|
| 第1版 | 2026-09-21 | 初出 |
引用のしかた
山岸勇輝(2026)「クリーニング所の7割は、洗っていない。67,551施設のうち48,172が取次所 [I008]」Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22876239
(この DOI は concept DOI。常に最新の版を指す。引用にはこれを使う)
© 2026 山岸 勇輝(Yuuki YAMAGISHI)
本稿は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際(CC BY 4.0) の下で公開する。
出典を示せば、複製・改変・再配布・商用利用ができる。
creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja
図表を含め、本稿の数値はすべて公的統計から計算したものである。元データそのものの権利は、各統計の公表元に従う。
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「クリーニング所の7割は、洗っていない」[I008]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22876239
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/I008・DOI 10.5281/zenodo.22876239・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). クリーニング所の7割は、洗っていない [I008]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/I008 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22876239
Yamagishi, Y. (2026). Seven in Ten Cleaning Premises Do Not Wash: 48,172 of 67,551 Are Drop-Off Shops [I008]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/I008; DOI: 10.5281/zenodo.22876239
@misc{yamagishi2026yoiI008,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {Seven in Ten Cleaning Premises Do Not Wash: 48,172 of 67,551 Are Drop-Off Shops},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/I008},
doi = {10.5281/zenodo.22876239},
note = {Preprint}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
ca5e923047c5cb1b3c3b4ebcdeed53867ae80eb6ad11a3dc08a7086f4f3b10d0 yamagishi_I008_cleaning_dropoff_shops_20260921_jp.pdf52ff3596db2ca3b83efb570cd8ad99e31bee55095c48b94db30e18f74191b45a yamagishi_I008_cleaning_dropoff_shops_20260921_en.pdfPDF と .ots を同じ場所に保存し、opentimestamps.org に .ots、続けて PDF を落とすと、記録された日時が表示されます。PDF が 1 バイトでも変わっていれば通りません。