【M023】報告された 5 年生存率は、報告のおよそ 10 年前に診断された人たちの数である

要旨

本稿が問うのは、報告される「5 年生存率」が、何年前に診断された人たちの数か、である。地域がん登録に基づく二つの集計表(診断の年ごとの 5 年相対生存率(1993〜2011 年診断)と、2002〜2006 年の追跡だけから作った数(期間法))を使い、数が指す年を定義から数え、同じ長さの年月のあいだに数がどれだけ動いたかを部位ごとに測った。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。

第一に、集計表の最も新しいコホートの数(2009〜2011 年に診断された人たち)の出典は、2020 年の「2009-2011年生存率報告」である。最後に診断された人の 5 年を見終えるのは 2016 年の終わりで、診断の中点 2010.5 から報告の 2020 年までは 9.5 年ある(診断の年から数えて 9〜11 年)(第4節)。

第二に、期間の数(2002〜2006 年の追跡)には 1997〜2006 年に診断された人たちが効く。1 年目の生存は 2001〜2006 年の診断、5 年目は 1997〜2002 年の診断から来る。2006 年の終わりの時点で 5 年を見終えた最も新しい診断年は 2001 年なので、期間の数には、見終えたコホートより 5 年新しい診断が入る。これは定義から出る。その数を載せた論文は 2014 年で、追跡の窓の中点 2004.5 から 9.5 年である(第4節)。

第三に、これが本稿の芯である。報告までの 9.5 年と同じ長さのあいだ(1993〜96 年診断 → 2003〜05 年診断・ほぼ同じ地域)に、部位 × 性の 35 組の 5 年相対生存率は、膀胱・女性の −6.2 点から前立腺・男性の +27.0 点まで動いた(中央値 +2.3 点)。 標準誤差の 2 倍を超えて上がったのは 18 組、下がったのは 2 組、2 倍の中は 15 組である。前立腺は 66.8 から 93.8 に、肺・女性は 27.1 から 41.0 になった(第5節)。

第四に、古い数が低く出るとは限らない。 膀胱は男性 80.0 → 76.5、女性 70.6 → 64.4 と下がった。その次の 9.0 年(2000〜02 年 → 2009〜11 年・地域が 6 府県から 22 府県に広がった)でも、2 倍を超えて下がったのは膀胱の男女だけで、上がったのは 29 組である。下がった理由には立ち入らない(第5節)。

第五に、期間の数を、同じ 6 府県のコホートの数と並べた。期間の数が 2000〜02 年のコホートより上に出たのは 32 組のうち 8 組で、差の中央値は −1.0 点、動きの速さとの順位相関は −0.140 だった。二つの表は年齢の範囲と除外の決まりが違うので、この差は期間法の効き目を測ったことにならない。 最も動いた前立腺だけは、期間の数 87.4 が 1993〜2002 年の三つのコホート(66.8・75.5・84.6)のどれより高く、2003〜05 年の 93.8 より低い(第6節)。

第六に、分けているのは、人たちを診断の年でそろえるか(コホート)、追跡の年でそろえるか(期間)である。コホートの数は 5 年を見終えるまで作れず、報告される時には診断から 10 年近くたっている。その遅れが何点にあたるかは部位で違い、向きも一つではない。

本稿の射程(scope note):新しい数学定理も新しい法則も主張しない。コホート法と期間法(ピリオド法)の違いは既知のことで、集計表と引用文献自身が説明している。本稿は公表された数を並べ、数が指す年を定義から数え、同じ長さの年月のあいだの動きを測るだけである。生存率を自分で計算し直していない。本稿は公開の集計データの数の形を述べる構造的解釈であり、医学的な助言・診断・治療の推奨ではない。著者は医師ではない。個人の健康に関する判断は医師・医療機関に相談すること。査読を経ていないプレプリントである。 いま診断された人の見通しではない。どの数も、ある年に診断された人たち、またはある年に追跡された人たちの集計である(M003・M006 と同じ)。これから数がどう動くかは言わない。測ったのは過去の同じ長さの年月のあいだの動きである。動いた理由(診断・治療・登録のしかたの変化など)には立ち入らない。 府県・地域・施設を比べない。集計の対象地域は年によって違い(6 府県・7 府県・21 府県・22 府県)、本稿はその違いを分けられない。データについて:集計表の数は改変せずに載せ、本稿の計算(差・中点の年・標準誤差の倍数・順位相関)と分けて示す。出典:国立がん研究センターがん情報サービス。加えたのは、報告された数が指す診断の年を定義から数えたこと、報告までの年月と同じ長さのあいだに、35 組の数がどれだけ・どちら向きに動いたかを標準誤差と並べて示したこと、期間の数とコホートの数を並べ、二つの表の違いのために期間法の効き目がここでは測れないことを示したことである。

1. 記法と問い

  • 5 年相対生存率:診断から 5 年後に生存している割合を、同じ性・年齢の一般の人たちの生存率で割った数(%)。集計表の「用語の解説」のとおり、一般の人たちと比べて何%の生存確率かを表す。
  • コホートの数:ある年に診断された人たちを 5 年追って作る数(集計表「推移データ(性別)」)。
  • 期間の数:ある年に追跡された人たちの生存の経験だけから作る数(ピリオド法・集計表「サバイバー5年生存率」の 15-99 歳の「0年サバイバー」)。0 年サバイバーは診断から 0 年後に生存している人=診断された人たち全員なので、これは診断からの 5 年相対生存率である(サバイバー生存率は、M006 が院内がん登録で扱った数と同じ考え方の数である)。
  • 診断の中点:a〜b 年の診断は (a + b + 1) ÷ 2 年(1993〜1996 年 → 1995.0、2009〜2011 年 → 2010.5)。
  • 点:生存率(%)の差の単位。

問い:報告される 5 年生存率は、何年前に診断された人たちの数か。その遅れのあいだに、数はどれだけ動くか。

観察 1.1:5 年生存率は、5 年を見終えないと作れない。そのうえ、見終えてから報告されるまでにも年月がある(計算 4.1)。だから報告される数は、報告の時点の人たちの数ではない。M003 は平均余命について、期間の数(ある年の死亡率から作る)とコホートの数(ある年に生まれた人たちの実際)が違う数であることを示した。本稿はその区別を、がんの生存率で数える。

2. 下見と設計

正直に書く:本稿の設計は、表を見たあとに決め、下見のあとで一度組み直した。

中身
コホートの数 集計表 cancer_survival(1993-2011).xls の「推移データ(性別)」:1993-1996・1997-1999・2000-2002・2003-2005・2006-2008・2009-2011 年診断の部位別・性別の 5 年相対生存率(対象者数・標準誤差つき)
期間の数 集計表 cancer_survival_period(2002-2006).xls の「サバイバー5年生存率(年齢別)」「10年生存率(年齢別)」:2002〜2006 年に追跡された 6 府県のデータ(ピリオド法)
見込みと、外れたこと 下見の前は「期間の数は、同じ地域のコホートの数より新しい側に出る」と見込んでいた。並べると、そうはならなかった(第6節)。二つの表の年齢の範囲と除外の決まりが違うためにこの比べは効き目の測定にならないと分かったので、芯を「数が指す年」と「同じ長さの年月のあいだの動き」に組み直した

3. データと、その確かめ

計算 3.1 取得したファイル 2 本を SHA-256 で固定し、次のことを確かめた。

  • 「推移データ(性別)」の 2009-2011 年の値は、別のシート「最新データ(性別)」の値と、部位・性の 54 組すべてで一致する。
  • 期間の数の中で、10 年相対生存率 = 0 年サバイバーの 5 年 × 5 年サバイバーの 5 年 ÷ 100 が、15-99 歳の 40 組すべてで、三つの値の丸め(小数第 1 位)で説明できる幅(最大 0.147 点)の中に入る。相対生存率は掛け算でつながるので、「0 年サバイバーの 5 年」が診断からの 5 年相対生存率であることの確かめになる。10 年の値はどの組も 0 年サバイバーの 5 年の値より低い。
  • 集計表の「ファイル内容」から、2009-2011 年生存率報告の年(2020)と、期間の数の引用文献(Ito ほか・Cancer Science)の年(2014)を読んだ。期間の数の注に「1993-2006年に診断され、2002-2006年に追跡された」「ピリオド法」とある。集計表は、推移データ(コホートの数)の出典として、2009-2011年生存率報告と Matsuda ほか(2011)を挙げている。
  • 対象地域を集計表の文から読んだ:1993-2002 年 6 府県・2003-2005 年 7 府県・2006-2008 年 21 府県・2009-2011 年 22 府県(書かれた府県の数と並んだ名前の数が一致する)。期間の数の 6 府県は 1993-2002 年診断のコホートの 6 府県と同じ集合で、2003-2005 年の 7 府県はその 6 府県に滋賀を足したものである。

計算 3.2 二つの表の違い(集計表の注から)

コホートの数 期間の数
地域 1993〜2002 年診断は 6 府県、2003〜05 年は 7 府県、2006〜08 年は 21 府県、2009〜11 年は 22 府県 6 府県(1993〜2002 年診断のコホートと同じ 6 府県)
年齢 年齢不詳と 100 歳以上を除く 15-99 歳(0-14 歳と 15-29 歳は別の行)
除外(注の文) DCO、第2がん以降、悪性以外、上皮内がん(大腸の粘膜がんを含む)、年齢不詳および100歳以上、遡り調査患者 DCO、第2がん以降、悪性以外、上皮内がん(脳腫瘍以外)、年齢不詳および100歳以上

観察 3.3:白血病は比べない。期間の数の白血病は 15-99 歳で男性 25.5・女性 26.5、0-14 歳(男女計)で 79.6 で、53.1 点違う。年齢を 15 歳で切るかどうかで大きく動く数を、年齢の切り方の違う二つの表で比べない。

4. 数が指す年

計算 4.1 報告された数と、それが指す年(定義の算術)

コホートの数(最も新しいもの) 期間の数
数を作る人たち 2009〜2011 年に診断された人たち 2002〜2006 年に追跡された人たち
効く診断の年 2009〜2011 年(中点 2010.5) 1997〜2006 年
5 年を見終える 最後の人で 2016 年の終わり 追跡の窓の終わり(2006 年の終わり)で作れる
出典の年 2020 年(2009-2011年生存率報告) 2014 年(Ito ほか)
中点から出典まで 9.5 年(診断の年から 9〜11 年) 9.5 年(追跡の窓の中点 2004.5 から)

計算 4.2 期間の数の、年目ごとの診断の年(追跡の窓 2002〜2006 年)

診断からの年目 効く診断の年 診断の年の中点
1 年目(0〜1 年) 2001〜2006 2004.0
2 年目(1〜2 年) 2000〜2005 2003.0
3 年目(2〜3 年) 1999〜2004 2002.0
4 年目(3〜4 年) 1998〜2003 2001.0
5 年目(4〜5 年) 1997〜2002 2000.0

観察 4.3:最も新しいコホートの数は、報告の 9.5 年前(中点)に診断された人たちの数である。 5 年を見終えるのに、最後に診断された人でも 2016 年の終わりまでかかる。そのあと報告の年 2020 年まで、さらに年月がある。

観察 4.4:期間の数は、追跡の窓の中の生存の経験だけを使う。年目ごとに違う年の診断が効き、五つの中点の平均は 2002.0 である。2006 年の終わりの時点で、5 年を見終えた最も新しい診断年は 2001 年だが、期間の数には 2006 年の診断まで入る。同じ時点で、5 年新しい診断が入る。 ただし、この期間の数を載せた論文も、追跡の窓の中点から 9.5 年後の 2014 年である。期間法は定義の上で数を新しくするが、この例では、報告までの年月は期間法でも 9.5 年だった。

図1 コホートの数と期間の数が見ている人たち

図1:横は暦の年、縦は診断からの年数。橙の帯が 2009〜2011 年に診断された人たち(コホートの数)で、斜めに 5 年ぶん進み、2016 年の終わりに見終える。破線は報告の 2020 年。青の四角が 2002〜2006 年の追跡の窓(期間の数)で、斜めの線は 1997〜2006 年の各年に診断された人たち。期間の数は、窓の中を通る部分だけを使う。

5. 芯、同じ 9.5 年のあいだの動き

報告までの 9.5 年と同じ長さの年月のあいだに、コホートの数はどれだけ動いてきたか。1993〜96 年診断(中点 1995.0)と 2003〜05 年診断(中点 2004.5)は、ちょうど 9.5 年離れている。対象地域は 6 府県と 7 府県で、ほぼ同じである。もう一組、2000〜02 年診断と 2009〜11 年診断(9.0 年・6 府県と 22 府県)も並べる。

計算 5.1 部位 × 性の 35 組の 5 年相対生存率(%)と、その差(点)。「倍」は差を二つの標準誤差の二乗和の平方根で割った数(全部位・子宮(頸部と体部を束ねた行)・男女計は数えない)。1993〜96 年の差の小さい順。

部位・性 1993〜96 2003〜05 差 倍 対象者数 2000〜02 2009〜11 差 倍
膀胱・女 70.6 64.4 −6.2 −2.4 1,049・1,118 68.2 63.0 −5.2 −2.3
口腔・咽頭・女 64.7 60.2 −4.5 −1.9 1,022・1,061 60.6 69.4 +8.8 +4.2
膀胱・男 80.0 76.5 −3.5 −2.5 3,481・3,480 79.9 76.5 −3.4 −2.7
喉頭・男 78.2 76.0 −2.2 −1.0 1,570・1,286 76.8 81.8 +5.0 +2.6
喉頭・女 75.9 74.6 −1.3 −0.2 90・82 90.2 81.7 −8.5 −1.5
子宮頸部・女 73.4 72.2 −1.2 −1.0 3,472・2,928 72.2 76.5 +4.3 +3.9
胆のう・胆管・女 20.1 19.9 −0.2 −0.2 2,962・2,548 20.3 22.1 +1.8 +1.7
膵臓・男 7.0 7.1 +0.1 +0.1 2,855・3,205 5.0 8.9 +3.9 +6.6
子宮体部・女 79.5 79.8 +0.3 +0.2 1,688・2,428 79.2 81.3 +2.1 +1.7
多発性骨髄腫・女 30.9 31.2 +0.3 +0.1 446・553 32.4 43.6 +11.2 +4.1
甲状腺・女 93.2 93.7 +0.5 +0.5 2,483・2,267 93.3 95.8 +2.5 +2.9
甲状腺・男 86.3 87.0 +0.7 +0.3 541・663 86.9 91.3 +4.4 +2.0
結腸・男 71.3 72.2 +0.9 +1.1 10,542・10,721 72.1 72.8 +0.7 +1.0
膵臓・女 5.9 6.9 +1.0 +1.4 2,205・2,684 6.0 8.1 +2.1 +3.2
胃・女 60.4 61.5 +1.1 +1.6 14,817・11,825 62.4 64.6 +2.2 +3.8
結腸・女 66.1 67.9 +1.8 +2.1 8,609・9,763 67.0 69.4 +2.4 +3.5
胃・男 62.1 64.2 +2.1 +4.2 29,318・24,586 65.1 67.5 +2.4 +5.2
直腸・男 65.0 67.3 +2.3 +2.3 7,089・6,983 66.1 71.7 +5.6 +6.3
口腔・咽頭・男 48.6 51.7 +3.1 +1.9 2,535・2,351 52.0 60.7 +8.7 +6.1
胆のう・胆管・男 19.0 22.5 +3.5 +2.6 2,475・2,268 23.5 26.8 +3.3 +2.6
白血病・男 31.7 35.4 +3.7 +2.1 1,686・1,555 29.6 43.4 +13.8 +9.1
直腸・女 63.9 67.8 +3.9 +3.2 4,316・4,091 66.1 71.9 +5.8 +5.6
肺・男 20.8 25.0 +4.2 +7.4 15,124・16,561 24.7 29.5 +4.8 +10.4
肝臓・女 21.8 26.2 +4.4 +4.1 3,619・3,619 25.7 35.1 +9.4 +9.0
乳房・女 84.4 89.1 +4.7 +9.4 14,094・17,162 87.7 92.3 +4.6 +13.8
多発性骨髄腫・男 29.3 34.0 +4.7 +1.5 508・603 25.3 41.9 +16.6 +6.2
卵巣・女 49.4 55.0 +5.6 +3.6 2,116・2,447 53.3 60.0 +6.7 +5.0
白血病・女 33.2 39.8 +6.6 +3.2 1,234・1,170 35.7 44.9 +9.2 +5.0
食道・男 25.7 32.3 +6.6 +6.2 4,401・4,694 32.8 40.6 +7.8 +8.3
肝臓・男 21.0 28.7 +7.7 +10.7 9,958・7,416 27.7 36.2 +8.5 +11.9
食道・女 33.1 41.3 +8.2 +3.3 843・861 35.5 45.9 +10.4 +4.7
悪性リンパ腫・男 46.3 54.9 +8.6 +5.5 2,349・2,525 51.2 66.4 +15.2 +11.5
悪性リンパ腫・女 51.4 63.1 +11.7 +6.6 1,800・2,178 58.6 68.6 +10.0 +7.1
肺・女 27.1 41.0 +13.9 +15.1 5,618・6,616 39.0 46.8 +7.8 +9.8
前立腺・男 66.8 93.8 +27.0 +24.1 4,220・12,204 84.6 99.1 +14.5 +17.5

観察 5.2:1993〜96 年 → 2003〜05 年の 9.5 年に、35 組の数は、膀胱・女性の −6.2 点から前立腺・男性の +27.0 点まで動いた。中央値は +2.3 点である。 標準誤差の 2 倍を超えて上がったのは 18 組、下がったのは 2 組(膀胱の男女)、2 倍の中は 15 組である。前立腺は 66.8 から 93.8、肺・女性は 27.1 から 41.0、悪性リンパ腫・女性は 51.4 から 63.1 になった。膵臓・男性は 7.0 から 7.1 で、ほとんど動いていない。

観察 5.3:古い数が低く出るとは限らない。 膀胱は男性 80.0 → 76.5(標準誤差の −2.5 倍)、女性 70.6 → 64.4(−2.4 倍)と下がった。2000〜02 年 → 2009〜11 年でも、2 倍を超えて下がったのは膀胱の男女だけ(−3.4 点・−5.2 点)で、上がったのは 29 組である。後半の組は対象地域が 6 府県から 22 府県に広がっており、本稿は地域の入れ替わりと数の動きを分けられない。下がった理由には立ち入らない。

観察 5.4:喉頭・女性は対象者数が 1993〜96 年 90 人・2003〜05 年 82 人で、標準誤差が大きい(差 −1.3 点で −0.2 倍)。数が大きく動いて見えても、倍が小さい組は動いたとは言えない。

観察 5.5:全部位の数も動いた(男女計 53.2 → 58.6、男性 48.9 → 55.4、女性 59.0 → 62.9)。ただし全部位には部位の組み合わせの変化も入る。前立腺は全部位・男性の対象者のうち 0.040 から 0.112 に増えた(4,220 人 → 12,204 人)。本稿は、組み合わせの効きと部位ごとの動きを分けていない。

図2 同じ 9.5 年のあいだの、コホートの数の動き

図2:1993〜96 年診断から 2003〜05 年診断への 5 年相対生存率の差(点)。青は標準誤差の 2 倍を超えて上がった組、橙は下がった組、灰は 2 倍の中の組。黒い棒は ±標準誤差の 2 倍。

6. 期間の数を、同じ地域のコホートの数と並べる

計算 6.1 期間の数(2002〜2006 年の追跡・15-99 歳)と、同じ 6 府県のコホートの数(1993〜2002 年診断)、7 府県の 2003〜05 年診断(%)。右の列は 期間 − 2000〜02 年(点)。

部位・性 期間の数 1993〜96 1997〜99 2000〜02 2003〜05 期間 − 2000〜02
口腔・咽頭・男 49.7 48.6 48.3 52.0 51.7 −2.3
口腔・咽頭・女 60.0 64.7 63.0 60.6 60.2 −0.6
食道・男 32.2 25.7 30.7 32.8 32.3 −0.6
食道・女 37.6 33.1 37.3 35.5 41.3 +2.1
胃・男 63.3 62.1 62.6 65.1 64.2 −1.8
胃・女 60.3 60.4 61.2 62.4 61.5 −2.1
結腸・男 70.9 71.3 71.0 72.1 72.2 −1.2
結腸・女 65.3 66.1 66.4 67.0 67.9 −1.7
直腸・男 65.5 65.0 65.7 66.1 67.3 −0.6
直腸・女 66.9 63.9 64.5 66.1 67.8 +0.8
肝臓・男 25.3 21.0 23.7 27.7 28.7 −2.4
肝臓・女 23.6 21.8 21.8 25.7 26.2 −2.1
胆のう・胆管・男 21.5 19.0 21.8 23.5 22.5 −2.0
胆のう・胆管・女 17.8 20.1 18.9 20.3 19.9 −2.5
膵臓・男 5.9 7.0 6.2 5.0 7.1 +0.9
膵臓・女 5.9 5.9 7.3 6.0 6.9 −0.1
喉頭・計 79.2 78.1 76.1 77.8 75.9 +1.4
肺・男 22.8 20.8 22.4 24.7 25.0 −1.9
肺・女 37.0 27.1 33.5 39.0 41.0 −2.0
乳房・女 87.6 84.4 85.5 87.7 89.1 −0.1
子宮頸部・女 69.3 73.4 71.5 72.2 72.2 −2.9
子宮体部・女 78.6 79.5 76.8 79.2 79.8 −0.6
卵巣・女 51.3 49.4 52.0 53.3 55.0 −2.0
前立腺・男 87.4 66.8 75.5 84.6 93.8 +2.8
膀胱・男 79.1 80.0 78.6 79.9 76.5 −0.8
膀胱・女 65.9 70.6 69.8 68.2 64.4 −2.3
甲状腺・男 89.0 86.3 87.6 86.9 87.0 +2.1
甲状腺・女 95.5 93.2 93.5 93.3 93.7 +2.2
悪性リンパ腫・男 49.6 46.3 46.6 51.2 54.9 −1.6
悪性リンパ腫・女 58.1 51.4 54.2 58.6 63.1 −0.5
多発性骨髄腫・男 27.7 29.3 31.5 25.3 34.0 +2.4
多発性骨髄腫・女 29.6 30.9 28.1 32.4 31.2 −2.8

観察 6.2:期間の数が 2000〜02 年のコホートより上に出たのは、32 組のうち 8 組である。差の中央値は −1.0 点、最小 −2.9 点、最大 +2.8 点である。1993〜96 年から 2000〜02 年への動きの速さ(点/年)と、この差との順位相関は −0.140 で、速く動いた部位ほど期間の数が上に出る、という形は見えない。同じ 6 府県の三つのコホート(1993〜2002 年診断)のどれより上は 6 組、どれより下は 7 組である。

観察 6.3:この差を「期間法だから」とは読まない。 計算 3.2 のとおり、二つの表は年齢の範囲(15-99 歳かどうか)と除外の決まり(遡り調査患者を除くのはコホートの側だけ・上皮内がんの扱いの書き方)が違う。期間の数が新しい側に出るかどうかは、この二つの表では測れない。

観察 6.4:最も動いた前立腺だけは、並びがはっきりしている。期間の数 87.4 は、同じ 6 府県の 1993〜96 年(66.8)・1997〜99 年(75.5)・2000〜02 年(84.6)のどれより高く、2003〜05 年(93.8)より低い。前立腺のコホートの数の期ごとの差(+8.7・+9.1・+9.2 点)は、32 組の「期間 − 2000〜02」の幅(−2.9〜+2.8 点)より大きい。

7. 限界

  1. 動いた理由には立ち入らない。 診断・治療・登録のしかた・対象地域の変化を分けていない。
  2. これから数がどう動くかは言わない。 測ったのは過去の同じ長さの年月のあいだの動きである。
  3. 対象地域が年によって違う。 1993〜96 年 → 2003〜05 年は 6 府県と 7 府県、2000〜02 年 → 2009〜11 年は 6 府県と 22 府県である。
  4. 期間法の効き目は測れなかった。 二つの表の年齢の範囲と除外の決まりが違う。
  5. 生存率を自分で計算し直していない。 集計表の値を使った。
  6. 一人の見通しではない。 府県・地域・施設を比べない。

結び

集計表の最も新しいコホートの数は 2009〜2011 年に診断された人たちの数で、報告は 2020 年だった。診断の中点から 9.5 年である。同じ 9.5 年のあいだに、部位ごとの数は膀胱・女性の −6.2 点から前立腺・男性の +27.0 点まで動いてきた。期間法は、同じ時点で 5 年新しい診断を数に入れる。ただし、ここで使った二つの表では、期間の数が新しい側に出るかは測れなかった。

分けるものは一つ、人たちを診断の年でそろえるか(コホート)、追跡の年でそろえるか(期間)、である。

5 年生存率を読むときは、それが何年に診断された人たちの数で、そのあいだにその部位の数がどちら向きに、どれだけ動いてきたかを、一緒に思い出す。

データと再現

データ 地域がん登録に基づく部位別 5 年相対生存率(1993〜2011 年診断)・10 年相対生存率とサバイバー 5 年相対生存率(2002〜2006 年追跡)の集計表(がん情報サービス・2026 年 9 月 26 日に利用)
利用条件 出典として「国立がん研究センターがん情報サービス」と明記して利用。集計表の値は改変せずに載せ、本稿の計算(差・中点の年・標準誤差の倍数・順位相関)と分けて示した
範囲 1993〜2011 年診断(コホートの数)、2002〜2006 年追跡(期間の数)
検算 検算/M023.py(--zu で図も書き出す)。本文の数字はすべて 検算/M023_output.txt から取っている
生データ data/ に取得したファイル 2 本と SOURCES.md(URL・取得日・SHA-256・利用条件・ファイルの注の写し・言葉と計算の置き方)
図 図/M023_zu1・図/M023_zu2(png・svg・英語版)

参考文献

  • Center for Cancer Control and Information Services, National Cancer Center (2020). Monitoring of Cancer Incidence in Japan – Survival 2009-2011 Report.
  • Ito, Y., Miyashiro, I., Ito, H., Hosono, S., Chihara, D., Nakata-Yamada, K., et al. (2014). Long-term Survival and Conditional Survival of Cancer Patients in Japan Using Population-based Cancer Registry Data. Cancer Science. 10.1111/cas.12525
  • Matsuda, T., Ajiki, W., Marugame, T., Ioka, A., Tsukuma, H., & Sobue, T. (2011). Population-based Survival of Cancer Patients Diagnosed Between 1993 and 1999 in Japan: A Chronological and International Comparative Study. Japanese Journal of Clinical Oncology. 10.1093/jjco/hyq167
  • 国立がん研究センターがん情報サービス. 地域がん登録に基づく部位別 5 年相対生存率(1993〜2011 年診断)cancer_survival(1993-2011).xls(2026年9月26日に利用). https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/excel/cancer_survival%281993-2011%29.xls
  • 国立がん研究センターがん情報サービス. 地域がん登録に基づく 10 年相対生存率・サバイバー 5 年相対生存率(2002〜2006 年追跡・ピリオド法)cancer_survival_period(2002-2006).xls(2026年9月26日に利用). https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/excel/cancer_survival_period%282002-2006%29.xls
  • 山岸勇輝 (2026). 平均余命は、誰かが実際に生きる年数ではない [M003]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22963485
  • 山岸勇輝 (2026). 一度聞いた「5 年生存率」は、生きた年数とともに書き換わる [M006]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22964113

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「報告された 5 年生存率は、報告のおよそ 10 年前に診断された人たちの数である」[M023]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22968328

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 報告された 5 年生存率は、報告のおよそ 10 年前に診断された人たちの数である [M023]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M023 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22968328

Yamagishi, Y. (2026). A Reported 5-Year Survival Figure Describes People Diagnosed About Ten Years Before the Report [M023]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M023; DOI: 10.5281/zenodo.22968328

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