【M039】「高血圧の人」の割合は、線の高さと服薬の数え方で 2.32 倍動く

要旨

「高血圧の人」という一語が指す人の割合が、線の高さ(140/90 か 130/80 か)と、血圧を下げる薬を飲んでいる人の数え方でどれだけ動くかを、2023 年(令和5年)の国民健康・栄養調査の表(第22表の1・2、第23表の1・3、第56表)の人数で確かめた。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。

第一に、表どうしの人数は一致する。服薬しない人 1577 人(第22表の2)と服薬者 774 人を足すと第56表の 2351 人になり、第22表の2の 140/90 以上 346 人は、高血圧症有病者 1120 人から服薬者 774 人を引いた数に等しい。測った値で 140/90 以上の 651 人は、収縮期だけで越えた 439 人と拡張期 90 以上の 212 人の和である(第3節)。

第二に、20 歳以上(男女計)で「高血圧の人」の割合は、測った値 140/90 以上なら 27.6 %、140/90 か服薬(調査の定義)なら 47.6 %、測った値 130/80 以上なら 54.6 %、130/80 か服薬なら 64.2 % で、いちばん広い線引きはいちばん狭い線引きの 2.32 倍である。 この倍率は若いほど大きい(20〜49 歳 3.41 倍、70 歳以上 2.18 倍)(第4節)。

第三に、ここが本稿の芯である。線を 130/80 に下げて増える分と、服薬中の人を数えて増える分は、年齢で大きさが入れ替わる。20〜49 歳では線を下げた分 15.4 ポイントに対して服薬を数えた分は 2.6、70 歳以上では 12.7 に対して 33.3 である。 60〜69 歳では 19.4 と 21.4 で、95 % の幅のめやすが重なる(第5節)。

第四に、服薬中の人の 60.6〜61.1 % は、測った値が 140/90 未満である(年齢階級では 59.4〜70.0 %)。測った値だけで数えると、この人たちが抜ける(第6節)。

第五に、140/90 を越えたのがどちらの値かも年齢で違う。20〜49 歳では拡張期だけで越えた人が 40.0 %、収縮期だけが 25.0 %、70 歳以上では収縮期だけが 83.8 %、拡張期だけは 3.1 % である(第7節)。

第六に、分けるのは線の高さか、服薬の数え方か。同じ「高血圧の人」でも、若い年齢では線をどこに引くかが、高い年齢では薬を飲んでいる人を数えるかどうかが、割合をいちばん大きく動かす。

射程注記:本稿は新しい数学定理も新しい法則も主張しない。人数は国民健康・栄養調査の表にあり、本稿は線引きを変えて足し引きしただけである。本稿は公開の集計データの数の形を述べる構造的解釈であり、医学的な助言・診断・治療の推奨ではない。著者は医師ではない。個人の健康に関する判断は医師・医療機関に相談すること。査読を経ていないプレプリントである。 どの線引きが正しいかは論じない。線の高さの根拠や、治療を始める目安には立ち入らない。一人の血圧が高いかどうかを判断するものではない。調査は 1 日の 2 回の測定の平均で、診断の手順とは違う。割合は調査の対象者のもので、国の人口の年齢構成にはそろえていない。 自分で割った升目が 10 未満にならないよう年齢階級を束ねた。都道府県や地域は比べない。データについて:国民健康・栄養調査(e-Stat)は政府標準利用規約(第2.0版)に従って使い、本稿の割合・差・幅のめやすはそれらを加工して作成した。本稿が加えたこと:四つの線引きの割合を同じ人たちで並べ、線を下げた分と服薬を数えた分に分けて、その大きさが年齢で入れ替わることを示したこと、表どうしの人数の一致(服薬しない人・Ⅰ〜Ⅲ度の中身)で線引きの中身を確かめたこと。

1. 記号と問い

  • 測った値 140/90:第22表の1のⅠ度・Ⅱ度・Ⅲ度高血圧の人(服薬中の人も測った値で数える)。
  • 140/90 か服薬:第56表の高血圧症有病者(収縮期血圧 140 以上、または拡張期血圧 90 以上、もしくは血圧を下げる薬を飲んでいる者)。
  • 測った値 130/80:第22表の1の高値血圧とⅠ〜Ⅲ度の人。
  • 130/80 か服薬:第56表の高血圧症有病者と高値血圧者(収縮期血圧 130〜139、かつ/または拡張期血圧 80〜89 で、薬を飲んでいない者)。
  • 線を下げた分:130/80 か服薬 − 140/90 か服薬(%の差・ポイント)。服薬を数えた分:140/90 か服薬 − 測った値 140/90。
  • 95 % の幅のめやす:1.96 × √(p(1−p)/n)。調査を単純な無作為抽出とみなしためやすである。

問い:「高血圧の人」の割合は、線の高さと服薬の数え方で、どれだけ、どの年齢で動くか。

観察 1.1:M007 は、「5 年生存率」という一語が三つの別の数を指していることを示した。本稿は「高血圧の人」という一語で、同じことを確かめる。

2. 下見と設計

正直に書く:設計は表を見てから決めた。

内容
人数 2023 年(令和5年)国民健康・栄養調査 第22表の1(日本高血圧学会による血圧の分類・服薬者を含む)、第22表の2(同・服薬者を除く)、第56表(高血圧症有病者の状況)
確かめ 第23表の1・3(収縮期・拡張期の分布)、各表の%
物差し 四つの線引きの割合、線を下げた分、服薬を数えた分、95 % の幅のめやす
束ね方 男女計は 20〜49・50〜59・60〜69・70 歳以上、男女別は 20〜59・60〜69・70 歳以上。自分で割った升目に 10 未満を作らないように決めた
途中で気づいたこと 拡張期だけで 140/90 を越える人が若い年齢で多いことは、第23表と孤立性収縮期高血圧の人数を突き合わせる途中で気づいた

3. データと確かめ

計算 3.1 取得した 5 本のファイルを SHA-256 で固定し、次を確かめた。

  • 第22表・第56表の% = 人数 ÷ 総数(小数 1 桁)。分類の和 = 総数、男性 + 女性 = 総数。
  • 服薬しない人の人数が二つの表で一致する:服薬しない人 1577 人(第22表の2)+ 服薬者 774 人 = 2351 人(第56表)。第22表の2のⅠ〜Ⅲ度 346 人 = 高血圧症有病者 1120 人 − 服薬者 774 人。正常・正常高値・高値の人数も、第56表の上記以外・正常高値血圧者・高値血圧者と一致する。
  • Ⅰ〜Ⅲ度 = 孤立性収縮期高血圧 + 拡張期 90 以上(第23表):服薬者を含めて 651 = 439 + 212、除いて 346 = 198 + 148。Ⅰ〜Ⅲ度は「収縮期 140 以上または拡張期 90 以上」の人である。
  • 第22表の1の総数は第56表より 4 人多い(薬の問いに答えていない人)。

4. 四つの線引き

計算 4.1 四つの線引きの割合(男女計・%)

年齢 測った値 140/90 140/90 か服薬 測った値 130/80 130/80 か服薬 いちばん広い ÷ いちばん狭い 服薬者 人数(第22表・第56表)
総数 27.6 47.6 54.6 64.2 2.32 倍 32.9 2355・2351
20〜49 歳 7.5 10.1 24.3 25.5 3.41 倍 3.7 535・534
50〜59 歳 24.4 35.5 54.1 59.0 2.41 倍 18.5 401・400
60〜69 歳 31.0 52.4 60.9 71.8 2.32 倍 33.7 504・504
70 歳以上 39.0 72.3 69.0 85.0 2.18 倍 55.9 915・913

観察 4.2:20 歳以上で、「高血圧の人」の割合は 27.6 % から 64.2 % まで動き、いちばん広い線引きはいちばん狭い線引きの 2.32 倍である。 調査の定義(140/90 か服薬)の 47.6 % は、その間にある。

観察 4.3:この倍率は年齢が高いほど小さい(20〜49 歳 3.41 倍、50〜59 歳 2.41 倍、60〜69 歳 2.32 倍、70 歳以上 2.18 倍)。若い年齢では、どの線引きを使うかで割合が 3 倍を超えて違う。

計算 4.4 男女別

性・年齢 測った値 140/90 140/90 か服薬 測った値 130/80 130/80 か服薬 いちばん広い ÷ いちばん狭い 服薬者 人数(第22表・第56表)
男性・総数 31.8 54.8 62.0 72.5 2.28 倍 38.2 1029・1026
男性・20〜59 歳 21.1 27.8 49.3 51.9 2.46 倍 11.5 375・374
男性・60〜69 歳 33.9 60.2 64.4 77.1 2.27 倍 42.8 236・236
男性・70 歳以上 40.2 76.0 72.0 88.5 2.20 倍 59.6 418・416
女性・総数 24.4 42.1 48.8 57.8 2.37 倍 28.8 1326・1325
女性・20〜59 歳 10.5 16.4 28.9 31.8 3.02 倍 9.1 561・560
女性・60〜69 歳 28.4 45.5 57.8 67.2 2.37 倍 25.7 268・268
女性・70 歳以上 38.0 69.2 66.4 82.1 2.16 倍 52.7 497・497

観察 4.5:男女とも、いちばん広い ÷ いちばん狭いは 20〜59 歳がいちばん大きい(男性 2.46 倍、女性 3.02 倍)。

5. 芯、若い年齢では線、高い年齢では服薬

計算 5.1 線を下げた分と服薬を数えた分(ポイント・± は 95 % の幅のめやす)

性・年齢 線を下げた分 服薬を数えた分 大きいほう 幅のめやすが重なるか
男女計・総数 16.6(± 1.5) 20.0(± 1.6) 服薬を数えた分 いいえ
男女計・20〜49 歳 15.4(± 3.1) 2.6(± 1.4) 線を下げた分 いいえ
男女計・50〜59 歳 23.5(± 4.2) 11.1(± 3.1) 線を下げた分 いいえ
男女計・60〜69 歳 19.4(± 3.5) 21.4(± 3.6) 服薬を数えた分 はい
男女計・70 歳以上 12.7(± 2.2) 33.3(± 3.1) 服薬を数えた分 いいえ
男性・総数 17.7(± 2.3) 23.0(± 2.6) 服薬を数えた分 いいえ
男性・20〜59 歳 24.1(± 4.3) 6.7(± 2.5) 線を下げた分 いいえ
男性・60〜69 歳 16.9(± 4.8) 26.3(± 5.6) 服薬を数えた分 はい
男性・70 歳以上 12.5(± 3.2) 35.8(± 4.6) 服薬を数えた分 いいえ
女性・総数 15.7(± 2.0) 17.7(± 2.1) 服薬を数えた分 はい
女性・20〜59 歳 15.4(± 3.0) 5.9(± 2.0) 線を下げた分 いいえ
女性・60〜69 歳 21.6(± 4.9) 17.2(± 4.5) 線を下げた分 はい
女性・70 歳以上 12.9(± 2.9) 31.2(± 4.1) 服薬を数えた分 いいえ

観察 5.2:男女計の 20〜49 歳では線を下げた分 15.4 に対して服薬を数えた分 2.6、70 歳以上では 12.7 に対して 33.3 で、大きいほうが入れ替わる。 どちらの年齢でも、二つの幅のめやすは重ならない。

観察 5.3:服薬を数えた分は年齢が高いほど大きく(2.6・11.1・21.4・33.3)、線を下げた分は 50〜59 歳がいちばん大きい(23.5)。60〜69 歳では 19.4 と 21.4 で、幅のめやすが重なり、同じくらいの大きさである。男女別でも、20〜59 歳は線、70 歳以上は服薬が大きく、60〜69 歳は男女とも幅のめやすが重なる。

図1 「高血圧の人」の割合(男女計)

図1:紺が測った値 140/90 以上、金色が服薬中で測った値 140/90 未満の人(服薬を数えた分)、水色が服薬なしで 130/80 以上 140/90 未満の人(線を下げた分)。棒の上の数が 130/80 か服薬の割合。若い年齢では水色が、高い年齢では金色が厚い。

6. 服薬中の人の測った値

計算 6.1 服薬中で、測った値が 140/90 未満の人(男女計)

年齢 服薬者 測った値が 140/90 未満 服薬者の中の割合(%)
総数 774 469〜473 60.6〜61.1
20〜49 歳 20 14〜15 70.0〜75.0
50〜59 歳 74 44〜45 59.5〜60.8
60〜69 歳 170 108 63.5
70 歳以上 510 303〜305 59.4〜59.8

幅のある升目は、薬の問いに答えていない人(第22表の1にだけいる人)がどちらに入るかで決まらない分である。

観察 6.2:服薬中の人の 60.6〜61.1 % は、測った値が 140/90 未満である(年齢階級では 59.4〜70.0 %)。測った値だけで数える線引きは、この人たちを「高血圧の人」に入れない。服薬者の中のこの割合は年齢でそれほど変わらないのに、服薬者そのものは 20〜49 歳の 3.7 % から 70 歳以上の 55.9 % まで増える。服薬を数えた分が高い年齢で大きいのは、そのためである。

7. どちらの値で 140/90 を越えたか

計算 7.1 測った値 140/90 以上の人の中身(男女計)

年齢 測った値 140/90 以上(人) 収縮期だけ 両方 拡張期だけ
総数 651 439(67.4 %) 143(22.0 %) 69(10.6 %)
20〜49 歳 40 10(25.0 %) 14(35.0 %) 16(40.0 %)
50〜59 歳 98 29(29.6 %) 42(42.9 %) 27(27.6 %)
60〜69 歳 156 101(64.7 %) 40(25.6 %) 15(9.6 %)
70 歳以上 357 299(83.8 %) 47(13.2 %) 11(3.1 %)

観察 7.2:収縮期だけで越えた人の割合は年齢が高いほど大きく、拡張期だけで越えた人の割合は年齢が高いほど小さい。 20〜49 歳では拡張期だけ(40.0 %)が収縮期だけ(25.0 %)より多く、70 歳以上では収縮期だけが 83.8 %、拡張期だけは 3.1 % である。「140/90」は二つの線で、若い年齢では拡張期の線が、高い年齢では収縮期の線が人を数えている。

図2 140/90 を越えたのはどちらの値か

図2:測った値 140/90 以上の人を、収縮期だけ(紺)・両方(紫)・拡張期だけ(金色)に分けた割合。

8. 限界

  1. 割合は調査の対象者のもので、国の人口の年齢構成にはそろえていない(総数の割合は、対象者の年齢構成で決まる)。
  2. 幅のめやすは単純な無作為抽出とみなしたもので、地区を選んで行う調査の本当の幅はこれより広いことがある。
  3. 1 日の 2 回の測定の平均で、診断の手順(日を変えた測定など)とは違う。服薬は問診への答えである。
  4. 2023 年の一回の調査だけを見ている。年による動きは扱わない。
  5. どの線引きが正しいかは論じない。 一人の見通しではない。

結び

2023 年の調査の 20 歳以上で、「高血圧の人」の割合は、測った値 140/90 以上の 27.6 % から、130/80 か服薬の 64.2 % まで、2.32 倍動く。線を下げて増える分と、服薬中の人を数えて増える分は、20〜49 歳では 15.4 対 2.6、70 歳以上では 12.7 対 33.3 で、大きさが入れ替わる。

分けているものは一つ、線の高さか、服薬の数え方か。

「高血圧の人は○割」と聞いたら、線がどこに引かれているか、薬を飲んでいる人を数えているか、どの年齢の話かを、一緒に確かめる。

データと再現

データ 2023 年(令和5年)国民健康・栄養調査 第22表の1・第22表の2・第23表の1・第23表の3・第56表(e-Stat・2026 年 9 月 26 日に取得)
利用条件 e-Stat は政府標準利用規約(第2.0版)に従う。本稿の割合・差・幅のめやすは、これらを加工して作成したもので、国が作成した数ではない
範囲 日本・20 歳以上の調査対象者(血圧を測った者)
検算 検算/M039.py(--zu で図も書く)。本文の数字はすべて 検算/M039_output.txt から取った
生データ data/ に取得した 5 本と SOURCES.md(URL・取得日・SHA-256・利用条件・定義と計算の置き方)
図 図/M039_zu1・図/M039_zu2(png・svg・英語版)

参考文献

  • 厚生労働省. 令和5年国民健康・栄養調査 第22表の1・第22表の2・第23表の1・第23表の3・第56表. e-Stat(2026年9月26日に利用). https://www.e-stat.go.jp/
  • 山岸勇輝 (2026). 「5 年生存率」という一語は、三つの別の数を指している [M007]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22964570

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「「高血圧の人」の割合は、線の高さと服薬の数え方で 2.32 倍動く」[M039]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22974218

YOI M039医療統計ビットコインに記録済み

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住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M039・DOI 10.5281/zenodo.22974218・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 「高血圧の人」の割合は、線の高さと服薬の数え方で 2.32 倍動く [M039]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M039 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22974218

Yamagishi, Y. (2026). The Share of “People with Hypertension” Moves 2.32-Fold with the Height of the Line and How Medication Is Counted [M039]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M039; DOI: 10.5281/zenodo.22974218

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  author = {Yamagishi, Yuuki},
  title = {The Share of "People with Hypertension" Moves 2.32-Fold with the Height of the Line and How Medication Is Counted},
  year = {2026},
  howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M039},
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