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【M049】20 歳以上の平均の動きのうち、答えた人の年齢構成の分は、指標によって向きも大きさも違う

要旨

国民健康・栄養調査の 2013 年と 2023 年について、20 歳以上の歩数・BMI・食塩・カリウム・エネルギーの平均(男女別)の差を、「年齢ごとの値の差」と「答えた人の年齢構成の差」に分けた(北川の方法)。年齢は 20〜29 歳から 70 歳以上の 6 区分。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。

第一に、表はそろっている。年齢区分の平均を答えた人数で重みづけて組み立てると、どの表でも 20 歳以上の値に表の最後のけた 1 つ分の範囲で一致し、分けた二つの和はもとの差にちょうど等しい(第3節)。

第二に、答えた人は年をとった。 どの表でも 70 歳以上の割合は 2013 年より 2023 年のほうが大きく、歩数の表では男性 0.262 → 0.296、女性 0.261 → 0.302(第4節)。

第三に、ここが本稿の芯である。同じ年のとり方が、指標によって違う向き・違う大きさで平均を動かす。 歩数は男性で差 −471.241 のうち年齢構成の分が −70.970(0.151)、女性で 0.140 と、下がりを 1 割以上深める。女性の BMI は差 +0.103 のうち +0.077(0.752)が年齢構成の分で、男性の BMI(0.013)と男性の食塩(−0.002)ではほぼ 0 である(第5節)。

第四に、カリウムでは向きが逆になる。 年齢ごとの値の分は男性 −47.002・女性 −31.552 と下がるのに、年齢構成の分は +17.621・+21.528 で、下がりの 0.375・0.682 を打ち消す。年齢構成の分の向きは、2013 年の 70 歳以上 ÷ 20〜29 歳 が 1 を超えるかどうかと、10 組すべてで一致する(第5節)。

第五に、女性の BMI の年齢ごとの値の分 +0.026 は、表の丸めだけで動きうる幅 ±0.055 より小さい。 年齢ごとの BMI が上がったとは言えない。厚生労働省の検定は年齢調整した値で行われ、令和5年の歩数の表の注にある年齢調整した男性の値は 6,914 歩で、表の平均 6,628 歩とは違う(第6節)。

第六に、分けるのは年齢ごとの値が動いたか、答えた人の年齢の並びが動いたか。平均の見出しの数には、答えた人の年齢の並びの分が入っており、その向きは指標の年齢の形で決まる。

射程注記:本稿は新しい数学定理も新しい法則も主張しない。年齢区分ごとの平均と人数は公開の表にあり、本稿は北川の方法で差を二つに分けただけである。本稿は公開の集計データの数の形を述べる構造的解釈であり、医学的な助言・診断・治療の推奨ではない。著者は医師ではない。個人の健康に関する判断は医師・医療機関に相談すること。査読を経ていないプレプリントである。 ここでの年齢構成は、調査に答えた人の年齢構成であって、国の人口の年齢構成ではない。答える人の顔ぶれがなぜ年をとったかには立ち入らない。年齢ごとの値が動いた理由(食べ方・暮らし方・調べ方)にも立ち入らない。 厚生労働省の検定(年齢調整した値)とは別の分け方で、その結論を置き換えるものではない。6 区分の中の年齢の並びの変化は分けていない。栄養の数は任意の 1 日の食事で、食品成分表の版は年で違いうる。都道府県は比べない。一人の見通しではない。 データについて:国民健康・栄養調査(e-Stat)は政府標準利用規約(第2.0版)に、厚生労働省の結果の概要は公共データ利用規約(第1.0版)に従って使い、本稿の割合・差・分け方はそれを加工して作成した。本稿が加えたこと:20 歳以上の平均の差のうち、答えた人の年齢構成の分が、指標ごとに向きも大きさも違うことを、五つの指標・男女の 10 組で示し、その向きが年齢の形で決まることを確かめたこと。

1. 記号と問い

  • 答えた人の年齢構成:その表の 20 歳以上の人数のうち、各年齢区分の割合。表ごとに答えた人が違うので、表ごとに出す。
  • 20 歳以上の平均:年齢区分ごとの平均を、答えた人の年齢構成で重みづけた値。
  • 北川の方法:2013 年から 2023 年への差を、「年齢ごとの値の差 × 二つの年の年齢構成の平均」(年齢ごとの値の分)と「年齢構成の差 × 二つの年の年齢ごとの値の平均」(年齢構成の分)に分ける。二つの和はもとの差にちょうど等しい。
  • 年齢の形:2013 年の 70 歳以上の値 ÷ 20〜29 歳の値。

問い:20 歳以上の平均が動いたとき、動いたのは年齢ごとの値か、答えた人の年齢の並びか。それは指標によって違うか。

観察 1.1:M001 は、「死亡率が上がった」が年齢構成の動きと年齢別の率の動きを一語で呼んでいることを示した。M048 は、食塩の標準偏差が表の作り方で動くことを示した。本稿は同じ分け方を健康の平均値に当て、指標によって答えが違うことを示す。

2. 下見と設計

正直に書く:設計は表を見てから決めた。

内容
表 国民健康・栄養調査 平成25年・令和5年の第62表(歩数)、第19表/第15表(BMI)、第1表の2・3(食塩・カリウム・エネルギー)
年 2013 年と 2023 年(どちらも全国補正値でない年)
年齢 20〜29・30〜39・40〜49・50〜59・60〜69・70 歳以上。令和5年の第1表は 70〜79 歳と 80 歳以上を人数で重みづけてまとめた
下見で気づいたこと 栄養素だけでは年齢構成の分が小さかった(男性の食塩は +0.001)。年齢で差の大きい歩数と BMI を足すと、向きと大きさの違いがはっきりした
見込みと実測 組み立てた 20 歳以上の平均の許容を、書く前は最後のけたの半分と置いた。2013 年の女性の BMI(22.3534 対 22.36)で落ち、年齢区分の値も丸められているので 1 けた分に直した

3. データと確かめ

計算 3.1 取得した 9 本のファイル(表 8 本と令和5年の結果の概要)を SHA-256 で固定し、次を確かめた。

  • 表の題名が、年と表の番号(第62表・第19表/第15表・第1表の2/の3)に合い、どの指標・性・年も 6 つの年齢区分がそろう。
  • 年齢区分から組み立てた 20 歳以上の平均が、表の 20 歳以上(歩数は総数)の値と、表の最後のけた 1 つ分の範囲で一致する。
  • どの指標・性でも、年齢ごとの値の分 + 年齢構成の分 = 差。
  • 令和5年の結果の概要に、歩数は「この10年間でみると、男女とも有意に減少している」、「平成24年以降は、100歩未満又は5万歩以上の者は除く」とあり、年次推移の検定は年齢調整した値で行うとある。2013 年と 2023 年の歩数は同じ除き方である。

4. 答えた人の年齢構成

計算 4.1 歩数の表の答えた人の年齢構成(20 歳以上に対する割合)

年齢 男:2013 年 男:2023 年 女:2013 年 女:2023 年
20〜29 歳 0.093 0.080 0.083 0.064
30〜39 歳 0.123 0.116 0.124 0.108
40〜49 歳 0.148 0.129 0.151 0.134
50〜59 歳 0.155 0.186 0.151 0.195
60〜69 歳 0.218 0.192 0.231 0.197
70 歳以上 0.262 0.296 0.261 0.302

観察 4.2:どの表・性でも、答えた人のうち 70 歳以上の割合は 2013 年より 2023 年のほうが大きい(歩数の表で男性 0.262 → 0.296、女性 0.261 → 0.302、BMI の表で男性 0.277 → 0.329、女性 0.279 → 0.336)。20〜29 歳は男性 0.093 → 0.080、女性 0.083 → 0.064 に減った。

5. 芯、同じ年のとり方が、違う向きに効く

計算 5.1 2013 → 2023 年の差の分け方

指標・性 2013 年 2023 年 差 年齢ごとの値の分 年齢構成の分 構成の分 ÷ 差
歩数(歩)・男 7099.051 6627.811 -471.241 -400.271 -70.970 +0.151
歩数(歩)・女 6249.291 5659.042 -590.249 -507.405 -82.844 +0.140
BMI・男 23.508 23.724 +0.215 +0.212 +0.003 +0.013
BMI・女 22.353 22.456 +0.103 +0.026 +0.077 +0.752
食塩(g)・男 11.133 10.652 -0.481 -0.482 +0.001 -0.002
食塩(g)・女 9.370 9.051 -0.319 -0.347 +0.029 -0.090
カリウム(mg)・男 2399.843 2370.462 -29.381 -47.002 +17.621 -0.600
カリウム(mg)・女 2200.128 2190.104 -10.024 -31.552 +21.528 -2.148
エネルギー(kcal)・男 2128.998 2108.378 -20.620 -15.425 -5.195 +0.252
エネルギー(kcal)・女 1678.966 1702.962 +23.996 +23.010 +0.986 +0.041

計算 5.2 年齢の形(2013 年の 70 歳以上 ÷ 20〜29 歳)

指標 男 女
歩数 0.653 0.624
BMI 1.030 1.097
食塩 1.064 1.108
カリウム 1.355 1.340
エネルギー 0.951 1.009

観察 5.3:歩数は、年齢構成の分が下がりを 1 割以上深める(男性 0.151・女性 0.140)。女性の BMI は、上がり 0.103 のうち 0.077(0.752)が年齢構成の分で、男性の BMI(0.013)や男性の食塩(−0.002)ではほぼ 0 である。カリウムでは向きが逆で、年齢ごとの値は下がるのに年齢構成の分は上げ、下がりの 0.375(男性)・0.682(女性)を打ち消す。年齢構成の分が上げる向きの組は 10 組中 7、下げる向きは 3。向きは、年齢の形(70 歳以上 ÷ 20〜29 歳)が 1 を超えるか(カリウム 1.355・1.340、食塩 1.064・1.108 など)、下回るか(歩数 0.653・0.624、男性のエネルギー 0.951)と、10 組すべてで一致する。

図1 2013 → 2023 年の差を二つに分ける

図1:2013 年の平均に対する割合(%)で見た、年齢ごとの値の分(水色)と答えた人の年齢構成の分(橙)。

図2 年齢ごとの値

図2:2013 年の年齢ごとの値を 20 歳以上の平均で割ったもの。歩数は年齢とともに下がり、カリウムは上がる。年をとった人が増えると、前者の平均は下がり、後者は上がる。

6. 丸めの幅と、年齢調整した値

計算 6.1 令和5年の BMI の表は小数 1 けた、平成25年は小数 2 けたなので、年齢ごとの値の分は丸めだけで ±0.055 まで動きうる。女性の年齢ごとの値の分は +0.026 で、この幅より小さい。

観察 6.2:女性の BMI の 20 歳以上の平均の上がりは、年齢構成の分で説明がつき、年齢ごとの BMI が上がったとは表からは言えない。 また、令和5年の歩数の表の注には、年齢調整した男性の歩数 6,914 歩があり、表の平均 6,628 歩とは違う。厚生労働省の検定は年齢調整した値で行われるので、見出しの平均の数と検定の対象は別の数である。

7. 限界

  1. ここでの年齢構成は答えた人の年齢構成で、国の人口の年齢構成ではない。答える人の顔ぶれがなぜ変わったかには立ち入らない。
  2. 6 区分の中の年齢の並び(例えば 70 歳以上の中の 80 歳以上の割合)の変化は、年齢ごとの値の分に入る。
  3. 二つの年の比べであり、途中の年の動きは見ていない。厚生労働省の検定(年齢調整した値)の結論を置き換えるものではない。
  4. 栄養の数は任意の 1 日の食事で、食品成分表の版は年で違いうる(M048)。
  5. 年齢ごとの値が動いた理由には立ち入らない。都道府県は比べない。一人の見通しではない。

結び

国民健康・栄養調査の 2013 年と 2023 年で、答えた人のうち 70 歳以上の割合はどの表でも増えた。その同じ年のとり方が、歩数の平均の下がりを 1 割以上深め、女性の BMI の平均の上がりの 0.752 をまかない、男性の食塩にはほとんど効かず、カリウムでは年齢ごとの下がりを打ち消した。向きは、指標の年齢の形で決まっていた。

分けているものは一つ、年齢ごとの値が動いたか、答えた人の年齢の並びが動いたか。

「平均が上がった(下がった)」と聞いたら、答えた人の年齢の並びが同じだったかと、その指標が年齢でどう変わるかを、一緒に確かめる。

データと再現

データ 国民健康・栄養調査(厚生労働省・e-Stat)平成25年・令和5年の第62表・第19表・第15表・第1表の2・第1表の3、令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要(2026 年 9 月 26 日に取得)
利用条件 e-Stat は政府標準利用規約(第2.0版)、厚生労働省のページは公共データ利用規約(第1.0版)に従う。本稿の割合・差・分け方は、これらを加工して作成したもので、国が作成した数ではない
範囲 日本・20 歳以上・2013 年と 2023 年
検算 検算/M049.py(--zu で図も書く)。本文の数字はすべて 検算/M049_output.txt から取った
生データ data/ に取得した 9 本と SOURCES.md(URL・取得日・SHA-256・利用条件・定義と計算の置き方)
図 図/M049_zu1・図/M049_zu2(png・svg・英語版)

参考文献

  • 厚生労働省. 国民健康・栄養調査 平成25年 第19表・第62表・第1表の2・第1表の3、令和5年 第15表・第62表・第1表の2・第1表の3. e-Stat(2026年9月26日に利用). https://www.e-stat.go.jp/
  • 厚生労働省. 令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要(2026年9月26日に利用). https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001338334.pdf
  • 山岸勇輝 (2026). 「死亡率が上がった」は、年齢構成の動きと年齢別の率の動きを一語で呼んでいる [M001]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22963112
  • 山岸勇輝 (2026). 食塩の平均と中央値は、10 回の調査でいつも 0.31〜0.57 g 離れて並んで動くのに、2024 年の表だけ標準偏差が前の年の 0.732 倍になる。35 の栄養素の標準偏差も 0.748 倍で、平均は 1.002 倍のまま [M048]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22974707

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「20 歳以上の平均の動きのうち、答えた人の年齢構成の分は、指標によって向きも大きさも違う」[M049]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22974769

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 20 歳以上の平均の動きのうち、答えた人の年齢構成の分は、指標によって向きも大きさも違う [M049]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M049 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22974769

Yamagishi, Y. (2026). Of the Movement in Means at Ages 20+, the Part Due to Respondents' Age Composition Differs in Direction and Size by Indicator [M049]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M049; DOI: 10.5281/zenodo.22974769

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