【M048】食塩の平均と中央値は、10 回の調査でいつも 0.31〜0.57 g 離れて並んで動くのに、2024 年の表だけ標準偏差が前の年の 0.732 倍になる

要旨

国民健康・栄養調査の 2013〜2019・2022〜2024 年の 10 回について、20 歳以上の食塩相当量の平均値・中央値・標準偏差を、各年の第1表の2(男性)・第1表の3(女性)から並べた。平均と中央値は同じように動くか、ばらつきは年をまたいで比べられるかを確かめた。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。

第一に、表はそろっている。20 の表の題名・列・行が年と性に合い、表の平均を丸めた値は厚生労働省の結果の概要(2023 年 男性 10.7 g・女性 9.1 g、2024 年 男性 10.5 g・女性 8.9 g)と一致する。「全国補正値」の注は 2016 年と 2024 年の表にだけある(第3節)。

第二に、平均と中央値は、いつも同じくらい離れて並んでいる。 平均 − 中央値は男性 0.39〜0.57、女性 0.31〜0.47 に収まり、2013 年から 2023 年への差は男性で平均 −0.48・中央値 −0.48、女性で −0.32・−0.29 である。ただし厚生労働省は、年齢調整した値で「この 10 年間でみると、男女とも有意な増減はみられない」としている(第4節)。

第三に、ここが本稿の芯である。2024 年の表だけ、食塩の標準偏差が小さい。 全国補正値でない 8 年は男性 3.98〜4.16・女性 3.43〜3.67 なのに、2024 年は男性 3.00・女性 2.62 で、前の年の 0.732 倍・0.722 倍である(第5節)。

第四に、それは食塩だけではない。 同じ表の 35 の行で標準偏差の比を取ると、2023→2024 年の中央値は男性 0.748・女性 0.746、2015→2016 年(もう一つの全国補正値の年)は 0.909・0.901、対照の 2019→2022 年は 0.999・0.958。平均の比の中央値はどの組も 0.984〜1.002 で、平均は動いていない(第5節)。

第五に、全国補正値の重みの和の比と、数が合う。 重みは「令和4・5年の実施世帯数の和 ÷ 令和6年の実施世帯数」で、全体では (2,910 + 2,921) ÷ 10,414 = 0.5599、その平方根は 0.7483。2023→2024 年の標準偏差の比の中央値(男女の行をまとめて)0.7469 に近い。ただし標準偏差の計算式は結果の概要に書かれておらず、本稿はこの一致を理由の証明とはしない(第6節)。

第六に、分けるのは動いたのが人の側か、表の作り方の側か。平均と中央値は年をまたいで並べられるが、全国補正値の年の標準偏差は、ほかの年と同じ物差しでは比べられない。

射程注記:本稿は新しい数学定理も新しい法則も主張しない。平均値・中央値・標準偏差は公開の表にあり、本稿は差と比を取っただけである。本稿は公開の集計データの数の形を述べる構造的解釈であり、医学的な助言・診断・治療の推奨ではない。著者は医師ではない。個人の健康に関する判断は医師・医療機関に相談すること。査読を経ていないプレプリントである。 食塩の摂取量が下がったとは言わない。厚生労働省の検定(年齢調整した値)では、10 年間で有意な増減はみられない。食塩の目標や、健康への影響には立ち入らない。 2024 年の標準偏差が小さい理由を断定しない。重みの和の比と数が合うことは示すが、計算式は結果の概要に無い。どちらの年の標準偏差が「正しい」とも言わない。栄養計算に使った食品成分表の版を確かめられたのは 2018・2019 年(2015 年版(七訂))だけである。 調査は任意の 1 日の食事で、一人ひとりのふだんの量ではない。年齢調整はしていない(表の 20 歳以上のそのままの値)。都道府県は比べない。一人の見通しではない。 データについて:国民健康・栄養調査(e-Stat)は政府標準利用規約(第2.0版)に、厚生労働省の報告書・結果の概要は公共データ利用規約(第1.0版)に従って使い、本稿の差・比・範囲はそれを加工して作成した。本稿が加えたこと:食塩の平均と中央値が年をまたいで並んで動くことと、全国補正値の年の標準偏差が食塩に限らず小さくなることを、10 回の表で確かめ、「人の側の変化」と「表の作り方の変化」を分けたこと。

1. 記号と問い

  • 食塩相当量:ナトリウム量(mg)× 2.54 ÷ 1,000(2014 年以降の表の注)。任意の 1 日の食事の記録から出した値(g/日)。
  • 平均 − 中央値:同じ年・同じ性の 20 歳以上の平均値から中央値を引いた値。分布の右の裾の厚さの目安。
  • 全国補正値:都道府県ごとの実施世帯数の違いを直すための重みを付けて出した値(令和6年の結果の概要)。2016 年と 2024 年の表に注がある。
  • 標準偏差の比:隣り合う二つの年で、同じ行(栄養素)の標準偏差の比(後の年 ÷ 前の年)。

問い:食塩の平均と中央値は同じように動くか。ばらつき(標準偏差)は年をまたいで比べられるか。

観察 1.1:M040 は、血圧が 140 以上の人の割合がその年の平均でほぼ決まり、平均のいちばん大きい下がりが血圧計の替わった年に重なることを示した。M046 は、HbA1c の平均のずれと分布の形の変わりを分けた。本稿は、数が動いたとき、それが人の側か、表の作り方の側かを分ける。

2. 下見と設計

正直に書く:設計は表を見てから決めた。

内容
表 国民健康・栄養調査 各年の第1表の2(男性)・第1表の3(女性)「栄養素等摂取量」の「(再掲)20歳以上」の列
年 2013〜2019・2022〜2024 年の 10 回(2020・2021 年は調査中止)
報告書 2018・2019 年の報告書(食品成分表の版)、2022・2023・2024 年の結果の概要(世帯数・全国補正値・検定)
物差し 平均 − 中央値、標準偏差、35 の行の標準偏差の比と平均の比
見込みと実測 隣の調査との変化で平均と中央値の向きは 9 回とも同じと見込んでいた。実測は男性 8 回・女性 7 回。対照の 2019→2022 年の標準偏差の比は 0.97〜1.03 と見込んでいたが、女性は 0.958 だった
下見で気づいたこと 2024 年の食塩の標準偏差だけが、ほかの年より大きく離れて小さい。そこで同じ表のほかの栄養素でも比べた

3. データと確かめ

計算 3.1 取得した 25 本のファイル(表 20 本・報告書と結果の概要 5 本)を SHA-256 で固定し、次を確かめた。

  • 20 の表の題名が、年(平成25年〜令和6年)・第1表の2(男性)/第1表の3(女性)と合い、どの表にも「(再掲)20歳以上」の列と単位 g の「食塩相当量」の行がちょうど一つある。
  • 「全国補正値」の注(平均値、標準偏差、中央値は全国補正値である)は、2016 年と 2024 年の表にだけある。
  • 表の平均を丸めた値が結果の概要と一致する(2023 年 男性 10.7・女性 9.1、2024 年 男性 10.5・女性 8.9)。
  • 2018・2019 年の報告書に、栄養素等摂取量の算出に「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」を使ったとある。ほかの年の報告書は、この環境では文字を取り出せず確かめていない。
  • 令和5年の結果の概要に「令和2年及び3年は調査中止」とあり、年次推移の検定は平成22年国勢調査の基準人口で年齢調整した値で行うとある。
  • 栄養摂取状況調査は、令和5・6年とも「日曜日及び祝祭日を除く任意の1日」。
  • 調査実施世帯数は、令和4年 2,910・令和5年 2,921・令和6年 10,414。

4. 平均と中央値

計算 4.1 20 歳以上の食塩相当量(g/日)

年 男:平均 男:中央値 男:平均 − 中央値 女:平均 女:中央値 女:平均 − 中央値
2013 11.13 10.70 0.43 9.37 8.98 0.39
2014 10.89 10.36 0.54 9.19 8.83 0.37
2015 10.98 10.54 0.43 9.17 8.79 0.38
2016 10.80 10.23 0.57 9.17 8.75 0.42
2017 10.78 10.29 0.49 9.08 8.64 0.44
2018 11.00 10.53 0.47 9.34 8.87 0.47
2019 10.94 10.51 0.43 9.27 8.96 0.31
2022 10.53 10.11 0.42 8.95 8.54 0.41
2023 10.65 10.22 0.43 9.05 8.69 0.36
2024 10.51 10.12 0.39 8.90 8.49 0.41

観察 4.2:平均はどの年も中央値より上にあり、平均 − 中央値は男性 0.39〜0.57、女性 0.31〜0.47 に収まる。 2013 年から 2023 年への差は、男性で平均 −0.48・中央値 −0.48、女性で平均 −0.32・中央値 −0.29 と、ほとんど同じである(2024 年までなら男性 −0.62・−0.58、女性 −0.47・−0.49)。隣の調査との変化で向きが同じなのは、男性 9 回中 8 回・女性 7 回。ただし厚生労働省は年齢調整した値で「この 10 年間でみると、男女とも有意な増減はみられない」としている。本稿は下がったとは言わない。

図1 食塩の平均と中央値

図1:20 歳以上の食塩相当量の平均(実線)と中央値(破線)。横軸は調査の年の下 2 桁。灰色は調査中止の 2020・2021 年。

5. 芯、ばらつきだけが、全国補正値の年に小さい

計算 5.1 食塩の標準偏差(g/日)と調査人数

年 男:標準偏差 男:調査人数 女:標準偏差 女:調査人数
2013 4.16 2,998 3.67 3,483
2014 4.10 3,112 3.46 3,615
2015 4.15 2,840 3.54 3,332
2016(全国補正値) 3.84 9,987 3.25 11,864
2017 3.98 2,714 3.47 3,080
2018 4.03 2,663 3.51 3,080
2019 4.13 2,297 3.58 2,630
2022 4.04 2,059 3.43 2,394
2023 4.10 2,097 3.63 2,375
2024(全国補正値) 3.00 7,225 2.62 8,491

計算 5.2 同じ表の 35 の行(栄養素)で取った比の中央値

年の組 男:標準偏差の比 男:平均の比 女:標準偏差の比 女:平均の比
2015 → 2016 0.909 0.984 0.901 0.996
2023 → 2024 0.748 1.002 0.746 0.995
2019 → 2022 0.999 0.988 0.958 0.989

観察 5.3:全国補正値でない 8 年の食塩の標準偏差は男性 3.98〜4.16・女性 3.43〜3.67 なのに、2024 年は男性 3.00・女性 2.62(2023 年の 0.732 倍・0.722 倍)。同じことが 35 の行ほぼすべてで起きている。2023→2024 年に標準偏差の比が 0.9 より小さい行は男性 33・女性 34 で、比の中央値は男性 0.748・女性 0.746。もう一つの全国補正値の年 2016 年は 0.909・0.901 で、対照の 2019→2022 年(どちらも全国補正値でない)は 0.999・0.958。一方で平均の比の中央値は、どの組も 0.984〜1.002 で動かない。食べ方が一年で急にそろったのではなく、表の作り方が違う年に、ばらつきの数だけが小さく出ている。

図2 標準偏差:年ごとと、35 の栄養素の比

図2:左は食塩の標準偏差(丸で囲んだのが全国補正値の年)。右は 35 の行の標準偏差の比(点)とその中央値(横棒)。

6. 重みの和の比と、数が合う

計算 6.1 令和6年の結果の概要によると、全国補正値は「都道府県ごとの直近2年間(令和4、5年)の実施世帯数の和を令和6年の実施世帯数で割った値」を重みとして、平均値・標準偏差・中央値を出したものである。全体でならすと、重みの和の比は (2,910 + 2,921) ÷ 10,414 = 0.5599、その平方根は 0.7483。

観察 6.2:この 0.7483 は、2023→2024 年の標準偏差の比の中央値 0.7469(男女の行をまとめて)に近い。 標準偏差を、重みの和ではなく人数で割る形で出すと、ちょうどこの平方根の分だけ小さく出る。という説明と数は合う(重みの平均 0.5597 の作り物のデータで、比は 0.7481)。けれども結果の概要には標準偏差の計算式が書かれておらず、2016 年の重みも確かめていない。本稿はこれを理由の一つの候補として置くだけで、証明とはしない。 平均と中央値は、重みを割り戻す形なら重みの大きさで動かないので、第4節の比べ方には影響しないと考える。

7. 限界

  1. 食品成分表の版を確かめられたのは 2018・2019 年だけである。版が変わると、同じ食事でも数が変わりうる。
  2. 任意の 1 日の食事で、一人ひとりのふだんの量ではない。
  3. 年齢調整をしていない(表の 20 歳以上のそのままの値)。厚生労働省の検定は年齢調整した値で行われ、有意な増減はみられないとされる。
  4. 全国補正値の標準偏差の計算式は確かめていない(重みの和の比と数が合うことを示しただけ)。
  5. 調査人数は年で違う(男性 2,059〜9,987)。食塩の目標や健康への影響には立ち入らない。都道府県は比べない。一人の見通しではない。

結び

国民健康・栄養調査の 10 回で、20 歳以上の食塩の平均と中央値は、いつも男性 0.39〜0.57 g、女性 0.31〜0.47 g 離れて並び、同じくらい動いた。ところが 2024 年の表だけ標準偏差が前の年の 0.732 倍(男性)になり、同じ表の 35 の栄養素でも標準偏差の比の中央値は 0.748、平均の比は 1.002 だった。

分けているものは一つ、動いたのが人の側か、表の作り方の側か。

年をまたいで「ばらつきが小さくなった」と見えたら、その年の表に、ほかの年と違う作り方の注が無いかを、一緒に確かめる。

データと再現

データ 国民健康・栄養調査(厚生労働省・e-Stat)平成25年〜令和元年・令和4年〜令和6年の第1表の2・第1表の3、厚生労働省の報告書(平成30年・令和元年の調査の概要)と結果の概要(令和4・5・6年)(2026 年 9 月 26 日に取得)
利用条件 e-Stat は政府標準利用規約(第2.0版)、厚生労働省のページは公共データ利用規約(第1.0版)に従う。本稿の差・比・範囲は、これらを加工して作成したもので、国が作成した数ではない
範囲 日本・20 歳以上・2013〜2019・2022〜2024 年
検算 検算/M048.py(--zu で図も書く)。本文の数字はすべて 検算/M048_output.txt から取った
生データ data/ に取得した 25 本と SOURCES.md(URL・取得日・SHA-256・利用条件・定義と計算の置き方)
図 図/M048_zu1・図/M048_zu2(png・svg・英語版)

参考文献

  • 厚生労働省. 国民健康・栄養調査 平成25年〜令和元年・令和4年〜令和6年 第1表の2・第1表の3. e-Stat(2026年9月26日に利用). https://www.e-stat.go.jp/
  • 厚生労働省. 平成30年国民健康・栄養調査報告 調査の概要(2026年9月26日に利用). https://www.mhlw.go.jp/content/001741046.pdf
  • 厚生労働省. 令和元年国民健康・栄養調査報告 調査の概要(2026年9月26日に利用). https://www.mhlw.go.jp/content/001066904.pdf
  • 厚生労働省. 令和4年国民健康・栄養調査結果の概要について(2026年9月26日に利用). https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001325269.pdf
  • 厚生労働省. 令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要(2026年9月26日に利用). https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001338334.pdf
  • 厚生労働省. 令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要(2026年9月26日に利用). https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001603146.pdf
  • 山岸勇輝 (2026). 血圧が 140 以上の人の割合は、その年の平均でほぼ決まる。2013〜2023 年の 8 回の調査の 50 歳以上で、平均だけから当てた割合との差のばらつきは 1.76 ポイント、平均のいちばん大きい下がりは 6 つの升目のうち 4 つで血圧計が替わった 2018→2019 年 [M040]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22974334
  • 山岸勇輝 (2026). HbA1c の平均は 40〜44 歳から 70〜74 歳へ 0.426 しか上がらないのに、6.5 以上の人は 5.11 倍になる。平均のずれだけで見込むと 6.67 %、実際は 16.34 %(2022 年度の特定健診の男性)、8.4 以上の人はかえって 55〜59 歳がいちばん多い [M046]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22974590

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「食塩の平均と中央値は、10 回の調査でいつも 0.31〜0.57 g 離れて並んで動くのに、2024 年の表だけ標準偏差が前の年の 0.732 倍になる」[M048]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22974707

YOI M048医療統計ビットコインに記録済み

日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS

予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS

住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M048・DOI 10.5281/zenodo.22974707・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 食塩の平均と中央値は、10 回の調査でいつも 0.31〜0.57 g 離れて並んで動くのに、2024 年の表だけ標準偏差が前の年の 0.732 倍になる [M048]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M048 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22974707

Yamagishi, Y. (2026). The Mean and Median of Salt Intake Move Side by Side, Always 0.31–0.57 g Apart, Across 10 Surveys, Yet Only in the 2024 Table Is the Standard Deviation 0.732 Times the Previous Year [M048]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M048; DOI: 10.5281/zenodo.22974707

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  author = {Yamagishi, Yuuki},
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