要旨
特定健診(2022 年度)の 16 の検査項目について、40〜74 歳の 5 歳階級ごとの全国の平均を男女で並べ、隣り合う階級の差(段)を比べた。第10回 NDB オープンデータの「各項目の平均値」の「全国」の行と、「LDLコレステロール」の分布を使った。年齢の形が男女で同じか、女性だけある段で折れるかを確かめた。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。
第一に、表はそろっている。平均値の表には 48 の都道府県の塊のあとに「全国」の塊があり、HbA1C の「全国」は都道府県の平均を HbA1c の表の人数で重みづけた値と 0.0001 以内で一致し、LDL の「全国」も LDL の表の人数で重みづけた値と一致する(第3節)。
第二に、ここが本稿の芯である。女性は 16 項目のうち 9 項目で、45〜49 歳から 50〜54 歳への段が、年齢の 6 つの段のどれよりも大きい(HbA1C・中性脂肪・LDL・GOT・GPT・γ-GTP・ヘモグロビン・血清クレアチニン・eGFR)。男性は 3 項目(空腹時血糖・HbA1C・血清クレアチニン)(第4節)。
第三に、その段の飛び出し方も違う。 この段の大きさが、ほかの 5 つの段の大きさの平均の何倍かを見ると、女性は GOT 3.75・ヘモグロビン 3.66・GPT 3.26・血清クレアチニン 3.20・LDL 2.65・γ-GTP 2.44 で、男性はどの項目も 1.80 以下である(第4節)。
第四に、LDL では、女性は 111.49 → 116.96 → 126.37 → 131.09 と上がり(45〜49→50〜54 歳の段 +9.41)、男性は 126.99 から下がっていく。 平均は 50〜54 歳(126.37 対 126.15)で、140 以上の割合は 55〜59 歳で、女性が男性を初めて上回る。女性の 140 以上の割合は 45〜49 歳 20.67 % から 50〜54 歳 31.23 %(1.51 倍)になる(第5節)。
第五に、これは一つの年度の、年齢の違う人どうしの比べである。 同じ人が年をとってどう変わるかではなく、生まれた年の違いも、服薬している人の値も入っている(第6節)。
第六に、分けるのは年齢でなだらかに変わるか、ある一つの段で折れるか。「年齢とともに上がる」と一語で言っても、男女で折れる場所が違う。
射程注記:本稿は新しい数学定理も新しい法則も主張しない。平均と人数は NDB オープンデータにあり、本稿は隣り合う年齢の差を並べて比べただけである。本稿は公開の集計データの数の形を述べる構造的解釈であり、医学的な助言・診断・治療の推奨ではない。著者は医師ではない。個人の健康に関する判断は医師・医療機関に相談すること。査読を経ていないプレプリントである。 なぜその段で変わるのか(体の変化・暮らし・服薬など)には立ち入らない。 一つの年度の年齢の違う人どうしの比べで、同じ人の変わり方ではない。特定健診を受けた 40〜74 歳の値で、服薬している人も入っている。値の良し悪しや基準値には触れない。都道府県は比べない。一人の見通しではない。 データについて:第10回 NDB オープンデータ(厚生労働省)は公共データ利用規約(第1.0版)に従って使い、本稿の段差・比・割合はそれを加工して作成した。本稿が加えたこと:特定健診の 16 項目の年齢の形を男女で並べ、女性だけ多くの項目で 45〜49→50〜54 歳の段がいちばん大きいことを、段の大きさとその飛び出し方で示したこと。
1. 記号と問い
- 段:隣り合う 5 歳階級の全国の平均の差(後の階級 − 前の階級)。40〜44→45〜49 歳から 65〜69→70〜74 歳までの 6 つ。
- いちばん大きい段:6 つの段のうち、大きさ(絶対値)がいちばん大きいもの。
- 段の飛び出し方:45〜49→50〜54 歳の段の大きさ ÷ ほかの 5 つの段の大きさの平均。
- LDL 140 以上の割合:LDL の表の 140〜160・160〜180・180 以上の人数 ÷ 総数。
問い:検査値の年齢の形は、男女で同じか。女性だけ、ある年齢の段で大きく変わるか。
観察 1.1:M046 は、同じ NDB オープンデータの HbA1c で、平均のずれと分布の形の変わりを分けた。本稿は 16 の項目の平均を男女で並べ、年齢のどの段で大きく変わるかを見る。
2. 下見と設計
正直に書く:設計は表を見てから決めた。
| 内容 | |
|---|---|
| 表 | 第10回 NDB オープンデータ 特定健診「各項目の平均値」「LDLコレステロール」「HbA1c」の都道府県別性年齢階級別分布(2022 年度) |
| 項目 | BMI・腹囲・空腹時血糖・HbA1C・収縮期血圧・拡張期血圧・中性脂肪・HDL・LDL・GOT・GPT・γ-GTP・ヘモグロビン・随時血糖・血清クレアチニン・eGFR の 16 |
| 物差し | いちばん大きい段、段の飛び出し方、LDL の平均と 140 以上の割合、男女が入れ替わる年齢 |
| 下見で気づいたこと | 平均値の表に「全国」の塊がある。都道府県を重みづけて全国を出す必要はなかった |
| 見込みと実測 | 男性でいちばん大きい段が 45〜49→50〜54 歳の項目は 1 つ以下と見込んでいたが、実測は 3 項目だった。LDL の平均と 140 以上の割合は同じ 50〜54 歳で男女が入れ替わると見込んでいたが、割合は 55〜59 歳だった |
3. データと確かめ
計算 3.1 取得した 4 本のファイル(ページの写しと三つの表)を SHA-256 で固定し、次を確かめた。
- ページの写しに三つの表の置き場所がある。平均値の表の見出しは「特定健診 平均値:2022年度」で、年齢の見出しは男女とも 7 つと中計。
- 平均値の表に 16 の項目があり、都道府県の塊は 48 で、そのあとに「全国」の塊がある。どの項目・性・年齢も、47 以上の塊に平均がある。
- 表の「全国」と、都道府県の平均を人数で重みづけた値の差の最大は、HbA1C(HbA1c の表の人数で重みづけ)0.00000、LDL(LDL の表の人数)0.0000。中性脂肪を HbA1c の表の人数で代用して重みづけると 0.4314 ずれるので、本稿は表の「全国」をそのまま使う。
- LDL の表は 48 の塊で、中計 = 5 歳階級の和。
4. 芯、女性は 45〜49→50〜54 歳の段で折れる
計算 4.1 項目ごとのいちばん大きい段と、45〜49→50〜54 歳の段の飛び出し方
| 項目 | 女:いちばん大きい段 | 女:飛び出し方 | 男:いちばん大きい段 | 男:飛び出し方 |
|---|---|---|---|---|
| BMI | 40〜44→45〜49 | 0.69 | 40〜44→45〜49 | 0.23 |
| 腹囲 | 40〜44→45〜49 | 1.54 | 40〜44→45〜49 | 1.78 |
| 空腹時血糖 | 50〜54→55〜59 | 1.28 | 45〜49→50〜54 | 1.80 |
| HbA1C | 45〜49→50〜54 | 1.78 | 45〜49→50〜54 | 1.47 |
| 収縮期血圧 | 60〜64→65〜69 | 0.94 | 40〜44→45〜49 | 0.99 |
| 拡張期血圧 | 40〜44→45〜49 | 2.17 | 40〜44→45〜49 | 1.04 |
| 中性脂肪 | 45〜49→50〜54 | 1.59 | 40〜44→45〜49 | 0.31 |
| HDL | 60〜64→65〜69 | 1.58 | 50〜54→55〜59 | 1.07 |
| LDL | 45〜49→50〜54 | 2.65 | 55〜59→60〜64 | 0.31 |
| GOT | 45〜49→50〜54 | 3.75 | 65〜69→70〜74 | 0.27 |
| GPT | 45〜49→50〜54 | 3.26 | 50〜54→55〜59 | 1.07 |
| γ-GTP | 45〜49→50〜54 | 2.44 | 65〜69→70〜74 | 0.44 |
| ヘモグロビン | 45〜49→50〜54 | 3.66 | 65〜69→70〜74 | 0.17 |
| 随時血糖 | 65〜69→70〜74 | 0.76 | 60〜64→65〜69 | 1.02 |
| 血清クレアチニン | 45〜49→50〜54 | 3.20 | 45〜49→50〜54 | 1.42 |
| eGFR | 45〜49→50〜54 | 1.67 | 40〜44→45〜49 | 1.12 |
観察 4.2:女性は 16 項目のうち 9 項目で、45〜49→50〜54 歳の段が 6 つの段のどれよりも大きい。男性は 3 項目。 段の飛び出し方は、女性の上位 6 項目が GOT 3.75・ヘモグロビン 3.66・GPT 3.26・血清クレアチニン 3.20・LDL 2.65・γ-GTP 2.44 で、男性の最大は空腹時血糖の 1.80。女性の多くの項目は、この段で折れてから、55〜59 歳以降は平らになるか下がる。
図2:LDL・中性脂肪・GOT・GPT・γ-GTP・ヘモグロビンの、40〜44 歳の平均を 1 とした年齢の形。橙が女性、紺が男性。灰色が 45〜49→50〜54 歳の段。
5. LDL:平均と 140 以上の割合
計算 5.1 LDL の平均(mg/dL)と、140 以上・160 以上の割合(%)
| 年齢 | 男:平均 | 女:平均 | 男:140 以上 | 女:140 以上 | 男:160 以上 | 女:160 以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 40〜44 歳 | 125.52 | 111.49 | 30.79 | 15.35 | 13.60 | 5.49 |
| 45〜49 歳 | 126.99 | 116.96 | 32.71 | 20.67 | 14.64 | 8.00 |
| 50〜54 歳 | 126.15 | 126.37 | 32.00 | 31.23 | 14.10 | 13.91 |
| 55〜59 歳 | 123.51 | 131.09 | 29.09 | 36.88 | 12.16 | 17.21 |
| 60〜64 歳 | 120.21 | 130.13 | 25.47 | 35.72 | 10.01 | 16.33 |
| 65〜69 歳 | 117.30 | 127.12 | 22.10 | 31.86 | 8.14 | 13.82 |
| 70〜74 歳 | 114.30 | 123.54 | 18.74 | 27.41 | 6.39 | 11.14 |
観察 5.2:女性の LDL の平均は 45〜49→50〜54 歳で +9.41 と、6 つの段でいちばん大きく上がり、55〜59 歳の 131.09 まで上がる。男性は 45〜49 歳の 126.99 から下がっていく。 平均は 50〜54 歳(126.37 対 126.15)で、140 以上の割合は 55〜59 歳で、女性が男性を初めて上回る。50〜54 歳では平均は女性が上なのに、140 以上の割合はまだ男性が上(31.23 % 対 32.00 %)で、平均だけでは男女の分布の形の違いは見えない。

図1:LDL の平均(左)と 140 以上の割合(右)。灰色が 45〜49→50〜54 歳の段。
6. 一つの年度の、年齢の違う人どうし
観察 6.1:本稿の「段」は、2022 年度に 45〜49 歳だった人と 50〜54 歳だった人の平均の差である。同じ人が 5 年たって変わった量ではなく、生まれた年の違い(M044 が死亡率で分けた形)も入っている。また特定健診の値には、服薬している人の値もそのまま入っている(本稿は服薬の有無で分けた表を使っていない)。本稿は、段がどこで大きいかという形だけを言い、その理由には立ち入らない。
7. 限界
- 一つの年度の年齢の違う人どうしの比べで、同じ人の変わり方ではない。
- 服薬している人の値が入っている(服薬の有無で分けた表は使っていない)。
- 特定健診を受けた 40〜74 歳の値で、受ける人の顔ぶれは年齢で違う。
- 5 歳階級の段で見ており、1 歳ごとの形は分からない。
- なぜその段で変わるのかには立ち入らない。値の良し悪しや基準値には触れない。都道府県は比べない。一人の見通しではない。
結び
特定健診(2022 年度)の 16 の検査項目で、女性は 9 項目、45〜49 歳から 50〜54 歳への段が年齢のどの段よりも大きかった。男性は 3 項目で、その段の飛び出し方も 1.80 以下だった。LDL では女性の平均がこの段で +9.41 上がり、50〜54 歳で男性を上回った。
分けているものは一つ、年齢でなだらかに変わるか、ある一つの段で折れるか。
「年齢とともに上がる」と聞いたら、どの年齢の段でいちばん大きく変わるのか、それが男女で同じかを、一緒に確かめる。
データと再現
| データ | 第10回 NDB オープンデータ(厚生労働省)特定健診「各項目の平均値」「LDLコレステロール」「HbA1c」の都道府県別性年齢階級別分布(2022 年度・2026 年 9 月 26 日に取得) |
| 利用条件 | 厚生労働省のページは公共データ利用規約(第1.0版)に従う。本稿の段差・比・割合は、これらを加工して作成したもので、国が作成した数ではない |
| 範囲 | 日本(表の「全国」)・特定健診を受けた 40〜74 歳・2022 年度 |
| 検算 | 検算/M052.py(--zu で図も書く)。本文の数字はすべて 検算/M052_output.txt から取った |
| 生データ | data/ に取得した 4 本と SOURCES.md(URL・取得日・SHA-256・利用条件・定義と計算の置き方) |
| 図 | 図/M052_zu1・図/M052_zu2(png・svg・英語版) |
参考文献
- 厚生労働省. 第10回NDBオープンデータ 特定健診(各項目の平均値・LDLコレステロール・HbA1c 都道府県別性年齢階級別分布)(2026年9月26日に利用). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177221_00016.html
- 山岸勇輝 (2026). COPD の死亡率は、男性では生まれ年にそろい、女性ではそろいにくい。1995〜2015 年の年齢 × 年で、生まれ年でそろえると残りは男性で 3.24 分の 1、女性で 1.25 分の 1 になり、年齢調整死亡率の男女の比は 4.33 から 7.44 に開いた [M044]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22974498
- 山岸勇輝 (2026). HbA1c の平均は 40〜44 歳から 70〜74 歳へ 0.426 しか上がらないのに、6.5 以上の人は 5.11 倍になる。平均のずれだけで見込むと 6.67 %、実際は 16.34 %(2022 年度の特定健診の男性)、8.4 以上の人はかえって 55〜59 歳がいちばん多い [M046]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22974590
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「女性の検査値は、45〜49 歳から 50〜54 歳への段でいちばん大きく変わる」[M052]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22974950
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M052・DOI 10.5281/zenodo.22974950・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 女性の検査値は、45〜49 歳から 50〜54 歳への段でいちばん大きく変わる [M052]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M052 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22974950
Yamagishi, Y. (2026). Women's Checkup Values Change Most at the Step from Ages 45–49 to 50–54 [M052]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M052; DOI: 10.5281/zenodo.22974950
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author = {Yamagishi, Yuuki},
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howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M052},
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指紋(SHA-256)と確かめ方
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