要旨
令和6年簡易生命表の 65 歳・75 歳の平均余命を、三つの「健康」の数え方(①日常生活に影響がない(国民生活基礎調査 2025 年)、②健康と思う(同)、③要介護2〜5でない(介護給付費等実態統計 2025 年 7 月・人口推計))でサリバン法により健康な年数と健康でない年数に分けた。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。
第一に、表はそろっている。調査の二つの表は区分・年齢・男女の和が丸めの幅(最大 3 千人)で総数に一致し、二つの表の総数は同じ。生命表の Σ nLx ÷ lx は、表の平均余命と 0.0034 年以内でそろう(第3節)。
第二に、65 歳以上のどの年齢でも、「日常生活に影響がある」割合は「健康と思わない」割合より大きく、要介護2〜5の割合はそれよりずっと小さい。 85 歳以上では、日常生活に影響がある割合は男性 0.452・女性 0.517、健康と思わない割合は男女とも 0.338〜0.339(第4節)。
第三に、ここが本稿の芯である。65 歳からの平均余命(男性 19.47 年・女性 24.38 年)のうち健康でない年数は、①で男性 4.97・女性 7.22 年、②で 4.05・5.35 年、③で 1.58・3.26 年になる。 ①は③の男性 3.15 倍・女性 2.21 倍。健康な年数の三つの幅は、男性 3.39 年・女性 3.96 年ある(第5節)。
第四に、女性は男性より平均余命が長く、健康でない年数もどの数え方でも長い。 平均余命に占める健康な年数の割合は、男性 0.745〜0.919、女性 0.704〜0.866 で、どの数え方でも女性のほうが小さい(第5節)。
第五に、③の「要介護」を要支援まで広げると(認定あり)、健康でない年数は男性 3.10 年・女性 6.29 年に延びる。 女性の 75 歳では、認定ありで数えた健康な年数(9.41 年)が①(9.76 年)を下回る(第6節)。
第六に、分けるのは何を「健康」と数えるか。「健康な年数」は一つの数ではなく、数え方の選び方で男性でも 3 年以上動く。
射程注記:本稿は新しい数学定理も新しい法則も主張しない。平均余命を健康な年数と健康でない年数に分けるサリバン法は古くからある方法で、本稿はそれを三つの数え方に当てただけである。本稿は公開の集計データの数の形を述べる構造的解釈であり、医学的な助言・診断・治療の推奨ではない。著者は医師ではない。個人の健康に関する判断は医師・医療機関に相談すること。査読を経ていないプレプリントである。 公表されている健康寿命の値を出し直すものではない(年・データ・定義の細部・計算の置き方が違う)。健康を延ばす方法には立ち入らない。①②は調査の答えで、表の注のとおり入院している人は含まれない。③の認定は申請して認定された人の数で、介護が必要な人の数そのものではない(M058)。平均余命はその年の年齢別の死亡率から作った期間の値で、ある人が実際に生きる年数ではない(M003)。一人の見通しではない。データについて:国民生活基礎調査・簡易生命表・介護給付費等実態統計・人口推計(e-Stat)は政府標準利用規約(第2.0版)に従って使い、本稿の年数・割合は、これらを加工して作成した。本稿が加えたこと:同じ平均余命を三つの「健康」の数え方で分け、健康でない年数が 3 倍ほど違うこと、三つの順がどの性・年齢でも同じこと、要介護を要支援まで広げると順が入れ替わる所があることを示したこと。
1. 記号と問い
- 三つの「健康」:①日常生活に影響がない、②健康と思う(健康意識が「よい」「まあよい」「ふつう」)、③要介護2〜5でない。③の別の置き方として「認定なし」(要支援1〜要介護5のどれでもない)も並べる。
- 健康でない割合:①「日常生活に影響がある」÷(総数 − 不詳)、②「あまりよくない」「よくない」÷(総数 − 不詳)、③要介護2〜5の認定者数 ÷ 総人口。
- 健康な年数(サリバン法):Σ(各歳の定常人口 nLx × その年齢の健康な割合)÷ 生存数 lx。5 歳階級の割合を、その階級の各歳に当てる(①②は 85 歳以上、③は 95 歳以上を一つの階級とする)。
- 健康でない年数:平均余命 − 健康な年数。
問い:「健康な年数」は、何を健康と数えるかでどれだけ動くか。
観察 1.1:M003 は、平均余命が同じ年の年齢別の率から作った期間の値で、誰かが実際に生きる年数ではないことを示した。M058 は、要介護(要支援)認定の割合が、どの区分まで数えるかで年齢の傾きが変わることを示した。本稿は、同じ平均余命を三つの数え方で分ける。
2. 下見と設計
正直に書く:設計は表を見てから決めた。
| 内容 | |
|---|---|
| 表 | 令和7年国民生活基礎調査 健康票 第7表(日常生活への影響 × 性 × 5 歳階級)・第8表(健康意識 × 性 × 5 歳階級)、令和6年簡易生命表(男・女)、介護給付費等実態統計 2025 年 8 月審査分 第19表・人口推計 2025 年 7 月 1 日(M058 と同じ) |
| 年のずれ | 生命表は 2024 年、調査と認定は 2025 年で、1 年ずれる |
| 年齢の区切り | 調査は 85 歳以上、認定は 95 歳以上が一つの階級。それより上の各歳にも同じ割合を当てた |
| 物差し | 65 歳・75 歳の平均余命のうちの健康な年数と健康でない年数、平均余命に占める割合 |
3. データと確かめ
計算 3.1 取得した 6 本のファイルを SHA-256 で固定し、次を確かめた。
- 第7表は「第007表 世帯人員(6歳以上),日常生活への影響の有-日常生活影響の事柄(複数回答)-無・性・年齢(5歳階級)別」、第8表は「第008表 世帯人員(6歳以上),健康意識・性・年齢(5歳階級)別」。単位は千人で、注は「世帯人員には、入院者は含まない」。
- 丸めの差は、第7表の影響あり+なし+不詳と総数が最大 1、第8表の五つ+不詳と総数が最大 2、年齢の和と総数が最大 3、男+女と総数が最大 1(千人)。二つの表の総数は性・年齢ごとに同じ。
- 生命表の Σ nLx ÷ lx は、表の平均余命と最大 0.0034 年の差でそろう(男女 × 65 歳・75 歳)。
- 認定者数と人口は M058 と同じファイル。
4. 年齢ごとの「健康でない」割合
計算 4.1 ①日常生活に影響がある・②健康と思わない(65 歳以上)
| 年齢 | 男 ① | 男 ② | 女 ① | 女 ② |
|---|---|---|---|---|
| 65〜69 歳 | 0.152 | 0.131 | 0.157 | 0.133 |
| 70〜74 歳 | 0.198 | 0.168 | 0.182 | 0.145 |
| 75〜79 歳 | 0.235 | 0.201 | 0.237 | 0.194 |
| 80〜84 歳 | 0.319 | 0.258 | 0.331 | 0.259 |
| 85 歳以上 | 0.452 | 0.338 | 0.517 | 0.339 |
計算 4.2 ③要介護2〜5・認定あり(要支援1〜要介護5)
| 年齢 | 男 要介護2〜5 | 男 認定あり | 女 要介護2〜5 | 女 認定あり |
|---|---|---|---|---|
| 65〜69 歳 | 0.018 | 0.033 | 0.012 | 0.025 |
| 70〜74 歳 | 0.033 | 0.061 | 0.025 | 0.055 |
| 75〜79 歳 | 0.057 | 0.110 | 0.052 | 0.125 |
| 80〜84 歳 | 0.104 | 0.218 | 0.123 | 0.301 |
| 85〜89 歳 | 0.188 | 0.394 | 0.256 | 0.545 |
| 90〜94 歳 | 0.314 | 0.607 | 0.446 | 0.761 |
| 95 歳以上 | 0.470 | 0.770 | 0.679 | 0.909 |
観察 4.3:男女とも、65 歳以上のどの年齢でも①の割合は②より大きい。 85 歳以上では、①は男性 0.452・女性 0.517、②は男性 0.338・女性 0.339。③の要介護2〜5は 80〜84 歳でも男性 0.104・女性 0.123 と小さいが、95 歳以上では男性 0.470・女性 0.679 になる。

図2:年齢ごとの「健康でない」割合(左が男性、右が女性)。橙が①日常生活に影響がある、紫が②健康と思わない、紺が③要介護2〜5。①②の 85 歳以上は一つの階級で、破線で示した。
5. 芯、健康でない年数は、数え方で 3 倍ほど違う
計算 5.1 平均余命のうち健康な年数(括弧の中は健康でない年数)
| 平均余命 | ①日常生活に影響がない | ②健康と思う | ③要介護2〜5でない | 認定なし | |
|---|---|---|---|---|---|
| 男・65 歳 | 19.47 | 14.50(4.97) | 15.42(4.05) | 17.89(1.58) | 16.36(3.10) |
| 男・75 歳 | 12.08 | 8.10(3.98) | 8.92(3.16) | 10.48(1.60) | 8.90(3.18) |
| 女・65 歳 | 24.38 | 17.16(7.22) | 19.03(5.35) | 21.12(3.26) | 18.09(6.29) |
| 女・75 歳 | 15.75 | 9.76(5.99) | 11.46(4.29) | 12.44(3.31) | 9.41(6.34) |
観察 5.2:65 歳からの健康でない年数は、男性で①4.97・②4.05・③1.58 年、女性で①7.22・②5.35・③3.26 年。 ①は③の男性 3.15 倍、女性 2.21 倍。健康な年数は男女とも ③ > ② > ① の順で、三つの幅は男性 3.39 年、女性 3.96 年ある。平均余命に占める健康な年数の割合は、男性で ① 0.745・② 0.792・③ 0.919、女性で ① 0.704・② 0.781・③ 0.866 と、どの数え方でも女性のほうが小さい。女性は平均余命が長く、健康でない年数も①②③のどれでも長い。

図1:65 歳の平均余命のうち健康な年数(紺)と健康でない年数(金)。左が男性、右が女性。三つの棒は、①日常生活に影響がない・②健康と思う・③要介護2〜5でない。
6. 「要介護」をどこまで広げるか
観察 6.1:③の「要介護」を要支援まで広げて認定ありで数えると、65 歳からの健康でない年数は男性 1.58 → 3.10 年、女性 3.26 → 6.29 年に延びる。 女性の 75 歳では、認定ありで数えた健康な年数(9.41 年)が①の日常生活に影響がない年数(9.76 年)を下回り、三つの順が入れ替わる。四つ(男女 × 65 歳・75 歳)のうち、こうなるのは女性の 75 歳だけである。同じ「介護が要らない年数」でも、どの区分まで数えるかで、ほかの二つの数え方との並びが変わる。
7. 限界
- 公表の健康寿命とは同じ数にならない(年・データ・定義の細部・計算の置き方が違う)。本稿は定義を替えると年数がどれだけ動くかを見るもので、公表値を出し直すものではない。
- ①②は調査の答えで、入院している人は含まれない。③は申請して認定された人の数で、分母は総人口。三つは分母の取り方も違う。
- 生命表は 2024 年、調査と認定は 2025 年。85 歳以上(①②)・95 歳以上(③)の各歳には、一つの階級の割合を当てた。
- 健康を延ばす方法には立ち入らない。都道府県は比べない。一人の見通しではない。
結び
65 歳からの平均余命のうち健康でない年数は、日常生活に影響があるかで数えると男性 4.97 年・女性 7.22 年、健康と思えるかで 4.05・5.35 年、要介護2〜5かで 1.58・3.26 年だった。三つの順はどの性でも同じで、幅は 3 年を超える。要介護を要支援まで広げると、女性の 75 歳では順が入れ替わった。
分けているものは一つ、何を「健康」と数えるか。
「健康な年数」「健康寿命」と聞いたら、何を健康と数えた年数か、平均余命のどれだけを占めるかを、一緒に確かめる。
データと再現
| データ | 令和7年国民生活基礎調査 健康 第7表・第8表、令和6年簡易生命表(男・女)、介護給付費等実態統計 月報 2025 年 8 月審査分 第19表(以上 厚生労働省)、人口推計 2025 年 7 月 1 日(確定値)(総務省統計局)(いずれも e-Stat・2026 年 9 月 26 日に取得) |
| 利用条件 | e-Stat は政府標準利用規約(第2.0版)に従う。本稿の年数・割合は、これらを加工して作成したもので、国が作成した数ではない |
| 範囲 | 日本・2024〜2025 年 |
| 検算 | 検算/M061.py(--zu で図も書く)。本文の数字はすべて 検算/M061_output.txt から取った |
| 生データ | data/ に取得した 6 本と SOURCES.md(URL・取得日・SHA-256・利用条件・定義と計算の置き方) |
| 図 | 図/M061_zu1・図/M061_zu2(png・svg・英語版) |
参考文献
- 厚生労働省. 介護給付費等実態統計 月報 令和7(2025)年8月審査分 第19表. e-Stat(2026年9月26日に利用). https://www.e-stat.go.jp/
- 厚生労働省. 令和6年簡易生命表 第1表・第2表. e-Stat(2026年9月26日に利用). https://www.e-stat.go.jp/
- 厚生労働省. 令和7年国民生活基礎調査 健康 第7表・第8表. e-Stat(2026年9月26日に利用). https://www.e-stat.go.jp/
- 総務省統計局. 人口推計 各月1日現在人口 第1表 年齢(5歳階級)、男女別人口(2025年7月確定値、2025年12月概算値). e-Stat(2026年9月26日に利用). https://www.e-stat.go.jp/
- 山岸勇輝 (2026). 平均余命は、誰かが実際に生きる年数ではない [M003]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22963485
- 山岸勇輝 (2026). 要介護(要支援)認定の割合は、65〜84 歳では 4.26〜4.97 年ごとに倍になり、同じ年齢の死亡率(5.87〜7.90 年)より速い。85 歳から遅くなるのは要支援で、要介護3〜5だけを数えると 90〜94 歳まで 4.64〜5.61 年ごとに倍になり続ける [M058]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22975817
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「65 歳からの平均余命のうち「健康でない年数」は、何を健康と数えるかで男性 1.58〜4.97 年、女性 3.26〜7.22 年と 3 倍ほど違う」[M061]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22976414
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M061・DOI 10.5281/zenodo.22976414・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 65 歳からの平均余命のうち「健康でない年数」は、何を健康と数えるかで男性 1.58〜4.97 年、女性 3.26〜7.22 年と 3 倍ほど違う [M061]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M061 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22976414
Yamagishi, Y. (2026). The "Unhealthy Years" Within Life Expectancy at 65 Differ About Threefold with What Counts as Healthy [M061]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M061; DOI: 10.5281/zenodo.22976414
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指紋(SHA-256)と確かめ方
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