要旨
国勢調査(2005〜2020 年)の 100〜104 歳・95〜99 歳・90〜94 歳の人口を、その人たちが生まれた 5 年間の出生数(人口動態統計・1899 年〜)で割り、人口の伸びを「生まれた人の数」の伸びと「出生数あたりの人数」の伸びに分けた。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。
第一に、表はそろっている。国勢調査の表は総数 = 男 + 女、65 歳以上の再掲 = 65〜69 歳 … 110 歳以上 の和が 2005〜2020 年で成り立ち、出生数は 1899〜1930 年で総数 = 男 + 女(表の注の男女不詳 1 を除く)が成り立つ(第3節)。
第二に、100〜104 歳の人口は 2005 年の 23,873 から 2020 年の 73,008 へ 3.06 倍になった。 同じあいだに、その人たちが生まれた年(1901〜1905 年 → 1916〜1920 年)の出生数は 7,395,383 から 9,213,476 へ 1.246 倍にしかなっていない(第4節)。
第三に、ここが本稿の芯である。出生数あたりの 100〜104 歳の人数は 0.00323 から 0.00792 へ 2.45 倍になり、人口の伸びの log の 0.803 を占める。 生まれた人の数の伸びの分は 0.197。90〜94 歳(0.777)、95〜99 歳(0.738)でも、伸びの大半は出生数あたりの人数の側から来ている。出生数あたりの人数は、どの年齢でも 2005→2010→2015→2020 年と上がり続けた(第5節)。
第四に、100〜104 歳の出生数あたりの人数は、どの年も女性が男性の 5 倍を超える(2005 年 5.93 倍・2020 年 7.38 倍)。 2005→2020 年の伸びも女性 2.53 倍・男性 2.03 倍と、女性のほうが大きい(第6節)。
第五に、同じ 1916〜1920 年生まれを追うと、出生数あたりの人数は 2010 年の 90〜94 歳で 0.11089、2015 年の 95〜99 歳で 0.03900、2020 年の 100〜104 歳で 0.00792 になる(第5節)。
第六に、分けるのは生まれた人の数か、生き残る割合か。「百歳の人が増えた」は、100 年前の出生数の伸びより、ずっと大きな「生き残る側」の伸びを含んでいる。
射程注記:本稿は新しい数学定理も新しい法則も主張しない。人口と出生数は公開の表にあり、比を掛け算に分けることは古くからある。本稿は公開の集計データの数の形を述べる構造的解釈であり、医学的な助言・診断・治療の推奨ではない。著者は医師ではない。個人の健康に関する判断は医師・医療機関に相談すること。査読を経ていないプレプリントである。 「出生数あたりの人数」は 100 歳前後まで生き残った割合に近いが、確率そのものではない。国外への出入り、高い年齢の申告、国勢調査の 10 月 1 日と暦年のずれ、100 年前の出生の数え方を含む。長く生きた理由(医療・暮らし・食べ物など)には立ち入らない。一人の見通しではない。データについて:国勢調査・人口動態統計(e-Stat)は政府標準利用規約(第2.0版)に従って使い、本稿の比は、これらを加工して作成した。本稿が加えたこと:百歳の人の伸びを、100 年前の出生数の伸びと、出生数あたりの人数の伸びに分け、伸びの大半が後者から来ること、女性で大きいことを、二つの公開の表だけで示したこと。
1. 記号と問い
- 100〜104 歳の人口:国勢調査(10 月 1 日)の 100〜104 歳の人口(原数値)。
- 出生数:その人たちが生まれた 5 年間(国勢調査の年 t に対して t−104〜t−100 年)の出生数の和。
- 出生数あたりの人数:100〜104 歳の人口 ÷ 出生数。95〜99 歳・90〜94 歳も同じ置き方。
- 二つに分ける:log(人口の比)= log(出生数の比)+ log(出生数あたりの人数の比)。それぞれを log(人口の比)で割った割合を「生まれた数の割合」「生き残る割合の割合」と呼ぶ。
問い:百歳の人が増えたのは、100 年前に生まれた人が多かったからか、生き残る割合が上がったからか。
観察 1.1:M003 は、平均余命が同じ年の率から作った期間の値で、同じ生まれの人を追う値とは違うことを示した。M013 は、平均寿命の延びが、いまは高い年齢の死亡が減ったことから来ていることを示した。本稿は、同じ生まれの人の数そのものを、100 年前の出生数と比べる。
2. 下見と設計
正直に書く:設計は表を見てから決めた。
| 内容 | |
|---|---|
| 表 | 国勢調査 時系列データ 第2表(年齢 5 歳階級 × 男女・1920〜2020 年)、人口動態統計 上巻 第4.1表(年次別出生数・1899 年〜) |
| 下見で気づいたこと | 国勢調査の 100〜104 歳の行は 2005・2010・2015・2020 年だけにある。はじめは 100 歳を過ぎた死亡率を考えたが、100 歳以上の各歳の人口が手元の表に無かったので、この問いに替えた |
| 年のそろえ方 | 2005 年の 100〜104 歳には 1901〜1905 年の出生数、2020 年には 1916〜1920 年の出生数を当てる |
| 物差し | 出生数あたりの人数、その 2005→2020 年の伸び、log の分け方、男女の比 |
3. データと確かめ
計算 3.1 取得した 2 本のファイルを SHA-256 で固定し、次を確かめた。
- 国勢調査の表題は「第2表 年齢(5歳階級),男女別人口及び人口性比 - 全国(大正9年~令和2年)」。年は 1920〜2020 年の 5 年おき 21 回で、100〜104 歳・105〜109 歳・110 歳以上の行は 2005〜2020 年の 4 回にある。
- 人口は、どの行も総数 = 男 + 女。2005〜2020 年の(再掲)65 歳以上は、65〜69 歳 … 110 歳以上 の和に男女計・男・女とも一致する。
- 出生数の表題は「上巻 出生 第4.1表 年次別にみた出生数…」。1899〜1930 年は毎年あり、総数 = 男 + 女(1926 年・1930 年は表の注のとおり男女不詳の 1 だけ違う)。
- 2020 年の 100〜104 歳は、原数値 73,008・不詳補完(※)73,806 で、比は 1.0109。4 つの年をそろえるため原数値を使う。
4. 100〜104 歳の人口と、100 年前の出生数
計算 4.1 100〜104 歳の人口と、その人たちが生まれた 5 年間の出生数
| 年 | 100〜104 歳 | 男 | 女 | 生まれた年 | 出生数 | 出生数あたりの人数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2005 | 23,873 | 3,580 | 20,293 | 1901〜1905 年 | 7,395,383 | 0.00323 |
| 2010 | 41,318 | 5,598 | 35,720 | 1906〜1910 年 | 8,078,289 | 0.00511 |
| 2015 | 57,847 | 7,991 | 49,856 | 1911〜1915 年 | 8,850,646 | 0.00654 |
| 2020 | 73,008 | 9,051 | 63,957 | 1916〜1920 年 | 9,213,476 | 0.00792 |
観察 4.2:100〜104 歳の人口は 2005 年の 23,873 から 2020 年の 73,008 へ 3.06 倍になったが、生まれた年の出生数は 1.246 倍しか増えていない。 105〜109 歳は 1,458 から 6,374 へ、110 歳以上は 22 から 141 へ増えた(110 歳以上は 2015 年の 146 のほうが多い)。

図1:100〜104 歳の人口(紺)、その人たちが生まれた 5 年間の出生数(金)、出生数あたりの人数(橙の破線)を、2005 年を 1 とした倍率で並べた。
5. 芯、伸びの大半は、生き残る側から来ている
計算 5.1 2005→2020 年の人口の伸びを分ける
| 年齢・性 | 人口 | 出生数 | 出生数あたりの人数 | 生まれた数の割合 | 生き残る割合の割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 90〜94 歳・男女計 | 2.12 | 1.182 | 1.79 | 0.223 | 0.777 |
| 90〜94 歳・男 | 2.33 | 1.184 | 1.97 | 0.199 | 0.801 |
| 90〜94 歳・女 | 2.04 | 1.181 | 1.73 | 0.232 | 0.768 |
| 95〜99 歳・男女計 | 2.33 | 1.249 | 1.87 | 0.262 | 0.738 |
| 95〜99 歳・男 | 2.22 | 1.246 | 1.79 | 0.275 | 0.725 |
| 95〜99 歳・女 | 2.36 | 1.252 | 1.88 | 0.262 | 0.738 |
| 100〜104 歳・男女計 | 3.06 | 1.246 | 2.45 | 0.197 | 0.803 |
| 100〜104 歳・男 | 2.53 | 1.245 | 2.03 | 0.236 | 0.764 |
| 100〜104 歳・女 | 3.15 | 1.247 | 2.53 | 0.192 | 0.808 |
観察 5.2:100〜104 歳の男女計では、人口 3.06 倍 = 出生数 1.246 倍 × 出生数あたりの人数 2.45 倍で、伸びの log の 0.803 が出生数あたりの人数の側から来ている。 90〜94 歳(0.777)、95〜99 歳(0.738)でも同じで、どの年齢・性でも、出生数あたりの人数の伸びのほうが出生数の伸びより大きい。
計算 5.3 出生数あたりの人数の年と年齢
| 年 | 90〜94 歳 | 95〜99 歳 | 100〜104 歳 |
|---|---|---|---|
| 2005 | 0.09501 | 0.02615 | 0.00323 |
| 2010 | 0.11089 | 0.03353 | 0.00511 |
| 2015 | 0.13373 | 0.03900 | 0.00654 |
| 2020 | 0.17003 | 0.04884 | 0.00792 |
観察 5.4:出生数あたりの人数は、どの年齢でも 2005→2010→2015→2020 年と上がり続けた。 同じ 1916〜1920 年生まれを追うと、2010 年の 90〜94 歳で 0.11089、2015 年の 95〜99 歳で 0.03900、2020 年の 100〜104 歳で 0.00792 になる(三つとも同じ出生数を分母にしている)。
6. 男女
計算 6.1 100〜104 歳の女性 ÷ 男性
| 年 | 人口 | 出生数 | 出生数あたりの人数 |
|---|---|---|---|
| 2005 | 5.67 | 0.956 | 5.93 |
| 2010 | 6.38 | 0.955 | 6.68 |
| 2015 | 6.24 | 0.958 | 6.51 |
| 2020 | 7.07 | 0.958 | 7.38 |
観察 6.2:100〜104 歳の出生数あたりの人数は、どの年も女性が男性の 5 倍を超え、2005 年の 5.93 倍から 2020 年の 7.38 倍になった。 生まれた数は女性がやや少ない(0.955〜0.958)ので、人口の女性 ÷ 男性(5.67〜7.07)は、ほとんど出生数あたりの人数の違いから来ている。2005→2020 年の出生数あたりの人数の伸びも、女性 2.53 倍・男性 2.03 倍と女性のほうが大きい。

図2:出生数あたりの人数(縦は対数)。左が男性、右が女性。緑が 90〜94 歳、紫が 95〜99 歳、紺が 100〜104 歳。
7. 限界
- 出生数あたりの人数は確率そのものではない。 国外への出入り(100 年前に生まれて国外に出た人・国外で生まれて入ってきた人)、高い年齢の申告、国勢調査の 10 月 1 日と暦年のずれ、100 年前の出生の数え方を含む。
- 国勢調査の 100〜104 歳の行は 2005〜2020 年の 4 回だけで、それより前の年は比べられない。
- 長く生きた理由(医療・暮らし・食べ物など)には立ち入らない。
- 都道府県は比べない。一人の見通しではない。
結び
100〜104 歳の人口は 2005→2020 年に 3.06 倍になったが、その人たちが生まれた年の出生数は 1.246 倍にしかなっていない。出生数あたりの人数が 0.00323 から 0.00792 へ 2.45 倍になったことが、伸びの log の 0.803 を占めた。女性は男性の 5 倍を超え、伸びも大きかった。
分けているものは一つ、生まれた人の数か、生き残る割合か。
「百歳の人が増えた」と聞いたら、100 年前に生まれた人が多かったのか、生き残る割合が上がったのかを、一緒に確かめる。
データと再現
| データ | 国勢調査 時系列データ 第2表(総務省統計局)、人口動態統計 令和6年(確定数)上巻 第4.1表(厚生労働省)(いずれも e-Stat・2026 年 9 月 26 日に取得) |
| 利用条件 | e-Stat は政府標準利用規約(第2.0版)に従う。本稿の比は、これらを加工して作成したもので、国が作成した数ではない |
| 範囲 | 日本・2005〜2020 年(出生数は 1899〜1930 年) |
| 検算 | 検算/M062.py(--zu で図も書く)。本文の数字はすべて 検算/M062_output.txt から取った |
| 生データ | data/ に取得した 2 本と SOURCES.md(URL・取得日・SHA-256・利用条件・定義と計算の置き方) |
| 図 | 図/M062_zu1・図/M062_zu2(png・svg・英語版) |
参考文献
- 厚生労働省. 人口動態統計 令和6年(確定数)上巻 第4.1表. e-Stat(2026年9月26日に利用). https://www.e-stat.go.jp/
- 総務省統計局. 国勢調査 時系列データ 第2表 年齢(5歳階級),男女別人口及び人口性比 - 全国(大正9年~令和2年). e-Stat(2026年9月26日に利用). https://www.e-stat.go.jp/
- 山岸勇輝 (2026). 平均余命は、誰かが実際に生きる年数ではない [M003]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22963485
- 山岸勇輝 (2026). 平均寿命の延びは、はじめは若い年齢の、いまは高い年齢の死亡が減ったことから来ている [M013]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22966888
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「100〜104 歳の人口は 2005→2020 年に 3.06 倍になったが、100〜104 年前の出生数の伸びは 1.246 倍」[M062]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22976523
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M062・DOI 10.5281/zenodo.22976523・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 100〜104 歳の人口は 2005→2020 年に 3.06 倍になったが、100〜104 年前の出生数の伸びは 1.246 倍 [M062]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M062 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22976523
Yamagishi, Y. (2026). The Population Aged 100–104 Grew 3.06-Fold from 2005 to 2020, but Births 100–104 Years Earlier Grew Only 1.246-Fold [M062]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M062; DOI: 10.5281/zenodo.22976523
@misc{yamagishi2026yoiM062,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {The Population Aged 100–104 Grew 3.06-Fold from 2005 to 2020, but Births 100–104 Years Earlier Grew Only 1.246-Fold},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M062},
doi = {10.5281/zenodo.22976523},
note = {Preprint}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
df330ac48f0bf9c646db303e6112052ff5de3dbe6397b0c32edab2b8e4edff1b yamagishi_M062_population_aged_100_104_grew_3_06_fold_20260926_jp.pdf24ecf89dc0bd0c3bb8d28a602cbe84384c7411042ef883428aaa27adb9ed26a5 yamagishi_M062_population_aged_100_104_grew_3_06_fold_20260926_en.pdfPDF と .ots を同じ場所に保存し、opentimestamps.org に .ots、続けて PDF を落とすと、記録された日時が表示されます。PDF が 1 バイトでも変わっていれば通りません。