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【M063】骨折観血的手術の率は部位で年齢の山が違う

要旨

第10回 NDB オープンデータの手術の算定回数(2023 年度・入院)を 2023 年 10 月 1 日の人口で割り、骨折観血的手術(大腿・前腕・下腿)と股関節の二つの手術(人工骨頭挿入術・人工関節置換術)の率を、性と 5 歳階級ごとに並べた。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。

第一に、表はそろっている。「‐」(10 未満)の升目の無い行では総計 = 男女 38 階級の和で、人口は 5 歳階級の和と男女の和が総数に丸めの幅で一致する(第3節)。

第二に、ここが本稿の芯である。骨折観血的手術(大腿)の率は、男女とも 50〜54 歳から 90 歳以上までのどの段でも上がり、90 歳以上が山になる(女性 1966.2・男性 833.9)。 75〜79 歳から先の三つの段では、男女とも 4.25〜5.84 年ごとに倍になる(第4節・第5節)。

第三に、同じ骨折観血的手術でも、部位で年齢の山が違う。 女性の前腕は 80〜84 歳(238.4)が山で、その先の二つの段では下がる。女性の下腿は 75〜79 歳(67.4)が山。男性の前腕は 10〜14 歳(85.7)、下腿は 15〜19 歳(63.6)が山で、若い年齢に山がある(第4節)。

第四に、同じ股関節の手術でも、人工骨頭挿入術(股)は男女とも 90 歳以上が山(女性 790.1)、人工関節置換術(股)は男女とも 65〜69 歳が山(女性 320.1)で、90 歳以上では 36.9 まで下がる(第4節)。

第五に、女性 ÷ 男性の率の比は、手術で違う。 前腕は 75〜79 歳で 6.36 といちばん大きく、人工関節置換術(股)は 55〜59 歳で 4.47、大腿は 85〜89 歳で 2.51 が最大である(第6節)。

第六に、分けるのはどの部位の、どの手術を数えるか。「骨折の手術は年齢とともに増える」は、大腿では 90 歳以上まで当てはまるが、前腕・下腿では当てはまらない。

射程注記:本稿は新しい数学定理も新しい法則も主張しない。算定回数と人口は公開の表にあり、本稿はそれを率にして並べただけである。本稿は公開の集計データの数の形を述べる構造的解釈であり、医学的な助言・診断・治療の推奨ではない。著者は医師ではない。個人の健康に関する判断は医師・医療機関に相談すること。査読を経ていないプレプリントである。 手術の良し悪し・選び方・骨折を防ぐ方法には立ち入らない。 数は診療報酬の算定回数で、人数ではない(同じ人が複数回数えられることがある)。診療行為の名前のままで扱い、どの病気・けがに行われたかは、この表では分からない。10 未満の升目は表で「‐」になっていて、率を出していない。病院・都道府県は比べない。一人の見通しではない。データについて:第10回NDBオープンデータ(厚生労働省)は公共データ利用規約(第1.0版)に、人口推計(e-Stat)は政府標準利用規約(第2.0版)に従って使い、本稿の率・比は、これらを加工して作成した。本稿が加えたこと:骨折の手術の率を部位ごとに年齢で並べ、大腿だけが 90 歳以上まで倍になり続け、前腕・下腿は途中で山を越えること、股関節の二つの手術の山が 65〜69 歳と 90 歳以上に離れていることを示したこと。

1. 記号と問い

  • 五つの手術:骨折観血的手術(大腿)・骨折観血的手術(前腕)・骨折観血的手術(下腿)・人工骨頭挿入術(股)・人工関節置換術(股)(診療行為の名前のまま)。
  • 率:2023 年度(2023 年 4 月〜2024 年 3 月)の入院の算定回数 ÷ 2023 年 10 月 1 日の総人口 × 100,000。
  • 山の年齢:率がいちばん高い 5 歳階級。
  • 倍になる年数:隣り合う 5 歳階級の率の比 r から 5 × log 2 ÷ log r(率が上がらない段は「倍にならない」)。

問い:骨折の手術の率は、年齢とともにどう増えるか。部位と手術の種類で、年齢の形は同じか。

観察 1.1:M002 は、大人の死亡率が年齢とともに倍になる速さを測った。M059 は、介護が必要になった主な原因のうち骨折・転倒の割合が年齢とともに上がることを示した。本稿は、骨折の手術の率に同じ物差しを当てる。

2. 下見と設計

正直に書く:設計は表を見てから決めた。

内容
表 第10回 NDB オープンデータ 医科診療行為(算定回数)K 手術 款別性年齢別算定回数(2023 年度・シート「入院」)、人口推計 第3表(2023 年 10 月 1 日)
下見で気づいたこと 款の中に診療行為ごとの行があり、「骨折観血的手術」は部位(大腿・前腕・下腿など)ごとに分かれていた。股関節には人工骨頭挿入術と人工関節置換術の行がある
年齢 男女それぞれ 0〜4 歳 … 90 歳以上の 19 階級。人口の 90 歳以上は 90〜94・95〜99・100 歳以上の和
物差し 率、山の年齢、倍になる年数、女性 ÷ 男性

3. データと確かめ

計算 3.1 取得した 3 本のファイルを SHA-256 で固定し、次を確かめた。

  • NDB オープンデータのページで、「K手術」の「款別性年齢別算定回数[729KB]」のリンク先が取得したファイル(001493186.xlsx)である。シートは外来・外来(加算)・入院・入院(加算)。
  • 入院のシートの見出しは「診療年月:2023年04月~2024年03月 K 手術 入院」で、10 未満を「‐」とする注がある。年齢の見出しは男女それぞれ 19 階級。
  • 五つの診療行為の行がそろい、「‐」の無い二つの行(大腿・前腕)では総計 = 男女 38 階級の和。
  • 人口推計は「年齢 (5歳階級) 、男女別人口及び割合(各年10月1日現在)」の 2023 年の列(千人)。5 歳階級の和と総数の差、男 + 女 と男女計の差は、どちらも最大 1 千人。

計算 3.2 五つの手術の総計(2023 年度・入院)

診療行為 総計(算定回数) 「‐」の升目
骨折観血的手術(大腿) 134,557 0
骨折観血的手術(前腕) 64,429 0
骨折観血的手術(下腿) 46,123 2
人工骨頭挿入術(股) 85,630 12
人工関節置換術(股) 89,850 2

4. 年齢ごとの率と山

計算 4.1 女性の率(人口 10 万あたり・50 歳以上)

年齢 大腿 前腕 下腿 人工骨頭(股) 人工関節(股)
50〜54 歳 14.2 29.8 44.5 3.7 81.4
55〜59 歳 27.9 66.1 49.1 9.7 173.6
60〜64 歳 40.9 100.5 61.6 20.9 269.2
65〜69 歳 66.8 137.5 64.8 49.6 320.1
70〜74 歳 117.0 163.5 66.3 119.5 311.6
75〜79 歳 214.1 207.0 67.4 218.0 287.1
80〜84 歳 479.4 238.4 65.0 409.9 217.7
85〜89 歳 1083.0 224.8 54.7 654.2 131.7
90 歳以上 1966.2 147.7 37.9 790.1 36.9

計算 4.2 男性の率(人口 10 万あたり・50 歳以上)

年齢 大腿 前腕 下腿 人工骨頭(股) 人工関節(股)
50〜54 歳 14.3 20.9 37.9 3.1 22.8
55〜59 歳 21.9 25.0 44.2 6.3 38.8
60〜64 歳 32.9 24.6 48.7 14.6 64.6
65〜69 歳 46.3 27.7 51.1 28.8 78.0
70〜74 歳 68.1 28.8 49.0 58.8 72.5
75〜79 歳 111.9 32.5 49.8 99.3 67.0
80〜84 歳 202.6 38.4 51.3 186.0 53.1
85〜89 歳 432.0 41.2 53.5 333.8 40.9
90 歳以上 833.9 40.1 41.6 549.6 20.7

観察 4.3:骨折観血的手術(大腿)と人工骨頭挿入術(股)は、男女とも 90 歳以上が山で、大腿の女性は 1966.2 になる。 女性の前腕は 80〜84 歳の 238.4、下腿は 75〜79 歳の 67.4 が山で、その先では下がる。男性の前腕は 10〜14 歳(85.7)、下腿は 15〜19 歳(63.6)が山。人工関節置換術(股)は男女とも 65〜69 歳が山(女性 320.1・男性 78.0)で、女性の 90 歳以上では 36.9 まで下がる。

図1 骨折観血的手術の率(部位別)

図1:骨折観血的手術の率(人口 10 万あたり・縦は対数・50 歳以上)。左が男性、右が女性。紺が大腿、橙が前腕、緑が下腿。

図2 股関節の二つの手術の率

図2:人工骨頭挿入術(股・紫)と人工関節置換術(股・金)の率(人口 10 万あたり・縦は対数)。左が男性、右が女性。

5. 芯、大腿だけが 90 歳以上まで倍になり続ける

計算 5.1 5 年ごとの倍になる年数(50〜54 歳 → 90 歳以上の 8 段)

段 大腿・男 大腿・女 前腕・女 下腿・女 人工関節(股)・女
50〜54→55〜59 歳 8.16 5.13 4.36 35.19 4.58
55〜59→60〜64 歳 8.50 9.09 8.26 15.33 7.90
60〜64→65〜69 歳 10.14 7.08 11.06 68.43 20.01
65〜69→70〜74 歳 9.00 6.17 19.96 154.49 、
70〜74→75〜79 歳 6.98 5.74 14.71 202.02 、
75〜79→80〜84 歳 5.84 4.30 24.52 、 、
80〜84→85〜89 歳 4.58 4.25 、 、 、
85〜89→90 歳以上 5.27 5.81 、 、 、

観察 5.2:骨折観血的手術(大腿)は、男女とも 8 つのどの段でも率が上がり、75〜79 歳から先の三つの段では 4.25〜5.84 年ごとに倍になる。 女性の前腕は 80〜84 歳から先の二つの段で下がり、下腿は 75〜79 歳から先の三つの段で下がる。人工関節置換術(股)は、男女とも 65〜69 歳から先で率が上がらない。(表の「、」は、率が上がらない段。)

6. 女性 ÷ 男性

計算 6.1 女性 ÷ 男性の率の比(50 歳以上の最大)

診療行為 女性 ÷ 男性の最大 その年齢
骨折観血的手術(大腿) 2.51 85〜89 歳
骨折観血的手術(前腕) 6.36 75〜79 歳
骨折観血的手術(下腿) 1.35 75〜79 歳
人工骨頭挿入術(股) 2.20 80〜84 歳
人工関節置換術(股) 4.47 55〜59 歳

観察 6.2:女性 ÷ 男性の率の比は、前腕が 75〜79 歳で 6.36 といちばん大きい。 人工関節置換術(股)は 55〜59 歳で 4.47、大腿は 85〜89 歳で 2.51、人工骨頭挿入術(股)は 80〜84 歳で 2.20、下腿は 75〜79 歳で 1.35。大腿の比は 50〜54 歳の 0.99 から、85〜89 歳の 2.51 まで開く。

7. 限界

  1. 数は算定回数で、人数ではない。 同じ人が複数回数えられることがあり、率は「人口 10 万人のうち手術を受けた人の数」ではない。
  2. 診療行為の名前のまま扱い、どの病気・けがに行われたかは分からない。骨折の数そのものでもない。
  3. 2023 年度の一年の年齢の違いの比べで、同じ人の変わり方ではない。10 未満の升目は「‐」で率を出していない。
  4. 手術の良し悪し・選び方・骨折を防ぐ方法には立ち入らない。病院・都道府県は比べない。一人の見通しではない。

結び

骨折観血的手術の率は、大腿では 90 歳以上まで上がり続け、75〜79 歳から先は 4.25〜5.84 年ごとに倍になった。女性の前腕は 80〜84 歳、下腿は 75〜79 歳が山で、男性の前腕・下腿は 10 代が山だった。同じ股関節でも、人工骨頭挿入術は 90 歳以上、人工関節置換術は 65〜69 歳が山だった。

分けているものは一つ、どの部位の、どの手術を数えるか。

「骨折の手術は年齢とともに増える」と聞いたら、どの部位の、どの手術の数か、何歳で山を越えるかを、一緒に確かめる。

データと再現

データ 第10回NDBオープンデータ 医科診療行為(算定回数)K 手術 款別性年齢別算定回数(厚生労働省ホームページ)、人口推計 第3表(総務省統計局・e-Stat)(2026 年 9 月 26 日に取得)
利用条件 NDB オープンデータは公共データ利用規約(第1.0版)、e-Stat は政府標準利用規約(第2.0版)に従う。本稿の率・比は、これらを加工して作成したもので、国が作成した数ではない
範囲 日本・2023 年度
検算 検算/M063.py(--zu で図も書く)。本文の数字はすべて 検算/M063_output.txt から取った
生データ data/ に取得した 3 本と SOURCES.md(URL・取得日・SHA-256・利用条件・定義と計算の置き方)
図 図/M063_zu1・図/M063_zu2(png・svg・英語版)

参考文献

  • 厚生労働省. 第10回NDBオープンデータ 医科診療行為(算定回数)K手術 款別性年齢別算定回数(2026年9月26日に利用). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177221_00016.html
  • 総務省統計局. 人口推計 各年10月1日現在人口 第3表 年齢(5歳階級)、男女別人口及び割合-総人口(各年10月1日現在). e-Stat(2026年9月26日に利用). https://www.e-stat.go.jp/
  • 山岸勇輝 (2026). 大人の死亡率が年齢とともに倍になる速さはほとんど動かず、下がったのは高さである [M002]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22963210
  • 山岸勇輝 (2026). 介護が必要になった主な原因の 1 位は認知症(10 万対 16,743)だが、当てはまるものを全部選ぶと高齢による衰弱(26,100)、年齢では脳血管疾患(65〜79 歳)・認知症(80〜89 歳)・高齢による衰弱(90 歳以上)と入れ替わり、女性は 1〜3 位が 98 の差に並ぶ [M059]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22975921

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「骨折観血的手術の率は部位で年齢の山が違う」[M063]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22976616

YOI M063医療統計ビットコインに記録済み

日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS

予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS

住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M063・DOI 10.5281/zenodo.22976616・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 骨折観血的手術の率は部位で年齢の山が違う [M063]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M063 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22976616

Yamagishi, Y. (2026). Rates of Open Reduction of Fracture Peak at Different Ages by Site [M063]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M063; DOI: 10.5281/zenodo.22976616

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