要旨
警察庁の「交通死亡事故の発生状況」の年齢層別・状態別の死者数と人口 10 万人当たりの死者数(2015〜2025 年・24 時間死者)で、交通事故の死者がどの年齢・どの移動の状態で減ったかを、人口の年齢構成の分と年齢ごとの率の分に分けて並べた。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。
第一に、表はそろっている。どの年も、計 = 七つの状態の和、合計 = 18 の年齢層の和、65 歳以上 = 65 歳からの五つの層の和で、合計は M066 で使った 24 時間死者(2015 年 4,117・2025 年 2,547)と同じである。死者 50 以上の升目では、状態の行と計の行から逆算した人口が相対 0.0078 以内でそろう(第3節)。
第二に、24 時間死者は 2015 年の 4,117 から 2025 年の 2,547(0.619 倍)に減った。 状態ごとの倍率は、自転車乗用中 0.535 がいちばん小さく、自動二輪車乗車中 0.765 がいちばん大きい。減った 1,570 のうち、歩行中が 644(0.410)、自動車乗車中が 453(0.289)を占める(第4節)。
第三に、年齢の六つの群 × 五つの状態で、両方の年が 10 以上の 26 の升目のうち、2025 年のほうが多いのは 15〜24 歳の自動二輪車乗車中(94 → 95)と 65〜74 歳の自動二輪車乗車中の二つだけである。 自動二輪車乗車中の死者に占める 15〜24 歳の割合は、0.210 から 0.278 になった(第5節)。
第四に、ここが本稿の芯である。全体の 0.619 倍は、率を 2015 年のままにして人口の年齢構成だけを 2025 年にすると 1.077 倍、人口を 2015 年のままにして年齢ごとの率だけを 2025 年にすると 0.583 倍に分かれる。 年齢構成の分がいちばん大きいのは歩行中(1.130)で、率の分がいちばん小さいのは自転車乗用中(0.493)と歩行中(0.520)、いちばん大きいのは自動二輪車乗車中(0.790)である。自動二輪車乗車中だけは、年齢構成の分も 1 を下回る(0.963)(第6節)。
第五に、65 歳以上の歩行中の率は、どの層でも下がったが、85 歳以上の倍率(0.614)がいちばん 1 に近い。 85 歳以上の歩行中の死者は 239 から 207 で、ほかの層ほど減っていない(第7節)。
第六に、分けるのは人口の年齢構成か、年齢ごとの率か、どの移動の状態か。死者の数の減りは、率の下がりが年齢構成の押し上げを上回った結果で、その釣り合いは移動の状態ごとに違う。
射程注記:本稿は新しい数学定理も新しい法則も主張しない。死者数と率は公開の表にあり、年齢構成と率に分ける方法は古くからある。本稿はそれを移動の状態ごとに当てて並べた。本稿は公開の集計データの数の形を述べる構造的解釈であり、医学的な助言・診断・治療の推奨ではない。著者は医師ではない。個人の健康に関する判断は医師・医療機関に相談すること。査読を経ていないプレプリントである。 事故を防ぐ方法・運転や移動の良し悪し・交通の政策の評価には立ち入らない。 率がなぜ下がったか(車・道路・医療・移動の量の変化など)は、この表では分けられない。率は人口当たりで、移動の量(乗った距離や時間)当たりではない。事故の当事者や、事故で家族を亡くした人を責めるものではない。都道府県は比べない。一人の見通しとしては書かない。データについて:道路の交通に関する統計(警察庁・e-Stat)は政府標準利用規約(第2.0版)に従って使い、本稿の比は、これを加工して作成した。本稿が加えたこと:交通事故の死者の減りを、移動の状態ごとに年齢構成の分と率の分に分け、全体では年齢構成が 1.077 倍に押し上げる中で率が 0.583 倍に下がったこと、年齢構成の押し上げは歩行中でいちばん大きく、率の下がりは自動二輪車でいちばん小さいことを示したこと。
1. 記号と問い
- 死者:24 時間死者(交通事故発生から 24 時間以内に死亡した者・M066)。
- 五つの状態:自動車乗車中・自動二輪車乗車中・原付乗車中(一般原付と特定小型原付の和)・自転車乗用中・歩行中。「その他」は数が小さいので状態ごとの比べからは外し、合計には入れる。
- 率:人口 10 万人当たりの死者数(表 2-3-1・小数 2 桁)。
- 年齢構成の分・率の分:状態ごとに、18 の年齢層で、率を 2015 年のままにして人口だけ 2025 年にした死者数と、人口を 2015 年のままにして率だけ 2025 年にした死者数を、2015 年の死者数で割った比。人口は外から持ち込まず、年齢層ごとに計の死者数 ÷ 計の率 × 100,000 で逆算した。
- 年齢の六つの群:0〜14 歳・15〜24 歳・25〜44 歳・45〜64 歳・65〜74 歳・75 歳以上。
問い:交通事故の死者が減ったのは、どの年齢・どの移動の状態でか。人口の高齢化は、死者の数を押し上げたのか。
観察 1.1:M001 は、「死亡率が上がった」が年齢構成の動きと年齢別の率の動きを一語で呼んでいることを示した。M066 は、交通事故の死者に三つの数え方があり、その違いが年齢でそろわないことを示した。本稿は、そのうち 24 時間死者の減り方を、年齢構成と率と移動の状態に分ける。
2. 下見と設計
正直に書く:設計は表を見てから決めた。
| 内容 | |
|---|---|
| 表 | 道路の交通に関する統計「交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」表 2-3-2(年齢層別・状態別死者数)・表 2-3-1(同 人口 10 万人当たり) |
| 下見で気づいたこと | 表の合計が、M066 の 24 時間死者と同じ数だった。人口の表は無いが、死者数と率から人口の比を逆算でき、状態の行と計の行で逆算の結果がそろった |
| 比べる年 | 表の最初と最後の 2015 年と 2025 年 |
| 物差し | 状態ごとの倍率と減った数、年齢の群 × 状態の升目の倍率(両方の年が 10 以上の升目だけ)、年齢構成の分と率の分 |
3. データと確かめ
計算 3.1 取得したファイル 2 本を SHA-256 で固定し、次を確かめた。
- 二つの表の題名、年(2015〜2025 年の 11 個)、18 の年齢層と合計・65 歳以上、七つの状態と計の行。
- 表 2-3-2:どの年齢層・どの年も 計 = 七つの状態の和。どの状態・どの年も 合計 = 18 の年齢層の和、65 歳以上 = 65-69 歳からの五つの和。合計の計は 2015 年 4,117・2025 年 2,547 で、M066 の 24 時間死者と同じ。
- 人口の逆算:死者 50 以上の 43 の升目で、状態の行から逆算した人口と計の行から逆算した人口の相対差は最大 0.0078(率の丸めの幅)。率 × 人口で戻した 2015 年の死者は、表の死者と相対 0.0047 以内。
4. 状態ごとの死者数
計算 4.1 状態ごとの 24 時間死者(全年齢)
| 状態 | 2015 年 | 2025 年 | 倍率 | 減った数 | 全体の減りに占める割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 自動車乗車中 | 1,322 | 869 | 0.657 | 453 | 0.289 |
| 自動二輪車乗車中 | 447 | 342 | 0.765 | 105 | 0.067 |
| 原付乗車中 | 230 | 135 | 0.587 | 95 | 0.061 |
| 自転車乗用中 | 572 | 306 | 0.535 | 266 | 0.169 |
| 歩行中 | 1,534 | 890 | 0.580 | 644 | 0.410 |
| 合計 | 4,117 | 2,547 | 0.619 | 1,570 | 1 |
観察 4.2:減った 1,570 のうち、歩行中が 644(0.410)、自動車乗車中が 453(0.289)を占める。 倍率は自転車乗用中 0.535 がいちばん小さく、自動二輪車乗車中 0.765 がいちばん大きい。合計の率(人口 10 万人当たり)は 3.24 から 2.06 になった。

図1:移動の状態ごとの 24 時間死者(2015〜2025 年)。紺が自動車乗車中、紫が自動二輪車乗車中、灰色が原付乗車中、緑が自転車乗用中、橙が歩行中。
5. 年齢の群 × 状態、二輪だけは減っていない升目がある
計算 5.1 年齢の六つの群 × 五つの状態の倍率(2025 年 ÷ 2015 年・両方の年が 10 以上の升目だけ)
| 年齢 | 自動車 | 自動二輪車 | 原付 | 自転車 | 歩行中 |
|---|---|---|---|---|---|
| 0〜14 歳 | - | - | - | - | 0.314 |
| 15〜24 歳 | 0.412 | 1.011 | 0.731 | 0.333 | 0.561 |
| 25〜44 歳 | 0.541 | 0.457 | 0.645 | 0.604 | 0.659 |
| 45〜64 歳 | 0.654 | 0.801 | 0.660 | 0.565 | 0.575 |
| 65〜74 歳 | 0.676 | 1.714 | 0.411 | 0.348 | 0.450 |
| 75 歳以上 | 0.814 | 0.812 | 0.606 | 0.642 | 0.632 |
(- は、どちらかの年が 10 未満の升目。)
観察 5.2:両方の年が 10 以上の 26 の升目のうち、2025 年のほうが多いのは 15〜24 歳の自動二輪車乗車中(94 → 95)と 65〜74 歳の自動二輪車乗車中(21 → 36)の二つだけである。 15〜24 歳の自動二輪車乗車中は、11 年のあいだ 72〜110 の幅で上下し、2025 年は 95 だった。自動二輪車乗車中の死者に占める 15〜24 歳の割合は、2015 年の 0.210 から 2025 年の 0.278 になった。
6. 芯、年齢構成は押し上げ、率が下げた
計算 6.1 状態ごとの年齢構成の分と率の分(18 の年齢層・2015→2025 年)
| 状態 | 実際の倍率 | 年齢構成だけ | 率だけ | 二つの積 |
|---|---|---|---|---|
| 自動車乗車中 | 0.657 | 1.055 | 0.628 | 0.662 |
| 自動二輪車乗車中 | 0.765 | 0.963 | 0.790 | 0.761 |
| 原付乗車中 | 0.587 | 1.043 | 0.580 | 0.605 |
| 自転車乗用中 | 0.535 | 1.091 | 0.493 | 0.538 |
| 歩行中 | 0.580 | 1.130 | 0.520 | 0.588 |
| 全体 | 0.619 | 1.077 | 0.583 | 0.628 |
観察 6.2:全体の 0.619 倍は、年齢構成の分 1.077 倍と率の分 0.583 倍に分かれる。 人口の年齢構成だけが 2025 年になっていたら、死者は増えていた。二つの積と実際の比の相対差は、どの状態でも 0.031 以内である。
観察 6.3:年齢構成の分がいちばん大きいのは歩行中(1.130)で、歩行中は年齢構成に押し上げられながら、率の分 0.520 で下がった。 率の分がいちばん小さいのは自転車乗用中(0.493)、いちばん大きいのは自動二輪車乗車中(0.790)である。正直に書く:五つの状態とも年齢構成の分は 1 を超えると見込んでいたが、自動二輪車乗車中だけは 0.963 で 1 を下回った。どの年齢層の組み合わせがそうさせているかの内訳は、本稿では並べていない。

図2:状態ごとの、年齢構成だけの比(金の丸)・率だけの比(紺の四角)・実際の比(橙の×)。点線は 1(変わらない)。
7. 65 歳以上の歩行中、85 歳以上がいちばん下がっていない
計算 7.1 65 歳以上の歩行中の率(人口 10 万人当たり)と死者数
| 年齢層 | 率 2015 年 | 率 2025 年 | 率の倍率 | 死者 2015 年 | 死者 2025 年 |
|---|---|---|---|---|---|
| 65〜69 歳 | 1.32 | 0.63 | 0.477 | 121 | 46 |
| 70〜74 歳 | 2.26 | 1.09 | 0.482 | 179 | 89 |
| 75〜79 歳 | 3.89 | 1.55 | 0.398 | 244 | 122 |
| 80〜84 歳 | 5.90 | 2.57 | 0.436 | 287 | 158 |
| 85 歳以上 | 5.00 | 3.07 | 0.614 | 239 | 207 |
観察 7.2:65 歳以上の歩行中の率は、どの層でも下がったが、85 歳以上の倍率(0.614)がいちばん 1 に近い。 85 歳以上の人口の比(逆算)は 1.413 で、18 の年齢層でいちばん大きい。そのため 85 歳以上の歩行中の死者は 239 から 207 と、ほかの層ほど減っていない。
8. 限界
- 死者は 24 時間死者で、30 日以内死者や人口動態統計の数ではない(M066)。数え方が違えば、年齢の形も少し違う。
- 率は人口当たりで、移動の量当たりではない。 率が下がった理由(車・道路・医療・移動の量の変化など)は、この表では分けられない。
- 人口は死者数と率(小数 2 桁)から逆算したので、丸めの分の誤差が入る(死者 50 以上の升目で相対 0.0078 以内)。死者の少ない年齢層では、逆算の誤差は大きくなりうる。
- 2015 年と 2025 年の二つの年の比べで、途中の年の揺れは扱っていない(15〜24 歳の二輪を除く)。事故を防ぐ方法・政策の評価には立ち入らない。都道府県は比べない。一人の見通しではない。
結び
交通事故の 24 時間死者は、2015 年の 4,117 から 2025 年の 2,547 へ 0.619 倍になった。その減りは、人口の年齢構成が 1.077 倍に押し上げる中で、年齢ごとの率が 0.583 倍に下がった結果だった。年齢構成の押し上げは歩行中でいちばん大きく(1.130)、率の下がりは自転車乗用中(0.493)・歩行中(0.520)で大きく、自動二輪車乗車中(0.790)で小さかった。15〜24 歳の自動二輪車乗車中は 94 から 95 と減っていない。
分けているものは三つ、人口の年齢構成か、年齢ごとの率か、どの移動の状態か。
「交通事故の死者が減った」と聞いたら、高齢の人が増える中でどれだけ減ったのか、年齢ごとの率はどう動いたのか、どの移動の状態で減ったのかを、一緒に確かめる。
データと再現
| データ | 道路の交通に関する統計「交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」表 2-3-2・表 2-3-1(警察庁・e-Stat)(2026 年 9 月 26 日に取得) |
| 利用条件 | e-Stat は政府標準利用規約(第2.0版)に従う。本稿の比は、これを加工して作成したもので、国が作成した数ではない |
| 範囲 | 日本・2015〜2025 年 |
| 検算 | 検算/M067.py(--zu で図も書く)。本文の数字はすべて 検算/M067_output.txt から取った |
| 生データ | data/ に取得したファイルと SOURCES.md(URL・取得日・SHA-256・利用条件・定義と計算の置き方) |
| 図 | 図/M067_zu1・図/M067_zu2(png・svg・英語版) |
参考文献
- 警察庁. 道路の交通に関する統計 交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について 表 2-3-2・表 2-3-1. e-Stat(2026年9月26日に利用). https://www.e-stat.go.jp/
- 山岸勇輝 (2026). 「死亡率が上がった」は、年齢構成の動きと年齢別の率の動きを一語で呼んでいる [M001]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22963112
- 山岸勇輝 (2026). 2024 年の交通事故の死者は、警察庁の 24 時間死者で 2,663、30 日以内死者で 3,221、人口動態統計の路上交通事故で 3,100、人口動態が 30 日以内より多いのは 80 歳以上(955 対 945)だけで、24 時間死者に対する比は 80 歳以上の 1.303 がいちばん大きい [M066]. Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.22977686
作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。
書誌
山岸勇輝(2026)「交通事故の 24 時間死者は 2015→2025 年に 0.619 倍になったが、人口の年齢構成だけなら 1.077 倍に増えていた」[M067]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22977762
日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS
予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS
住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M067・DOI 10.5281/zenodo.22977762・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450
引用するとき
山岸勇輝 (2026). 交通事故の 24 時間死者は 2015→2025 年に 0.619 倍になったが、人口の年齢構成だけなら 1.077 倍に増えていた [M067]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M067 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22977762
Yamagishi, Y. (2026). Road Traffic Deaths Within 24 Hours Fell to 0.619 Times from 2015 to 2025, Though the Age Composition Alone Would Have Raised Them 1.077-Fold [M067]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M067; DOI: 10.5281/zenodo.22977762
@misc{yamagishi2026yoiM067,
author = {Yamagishi, Yuuki},
title = {Road Traffic Deaths Within 24 Hours Fell to 0.619 Times from 2015 to 2025, Though the Age Composition Alone Would Have Raised Them 1.077-Fold},
year = {2026},
howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/M067},
doi = {10.5281/zenodo.22977762},
note = {Preprint}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
297ec2a1371865c63e87376f064dfe0e0c24a42f092d644844bbf2741fab07c3 yamagishi_M067_road_traffic_deaths_within_24_hours_fell_20260926_jp.pdf8dd064ffd0c9d08f9370287f0330cf5acbff1efe0cf481227bdcdc8b75d6fdd4 yamagishi_M067_road_traffic_deaths_within_24_hours_fell_20260926_en.pdfPDF と .ots を同じ場所に保存し、opentimestamps.org に .ots、続けて PDF を落とすと、記録された日時が表示されます。PDF が 1 バイトでも変わっていれば通りません。