【論文325】虹の角度に、水滴の大きさは入っていない

要旨

虹はいつも同じ角度に出る。本稿が問うのは、その角度は何で決まっているのかである。答は、屈折率だけであって、水滴の大きさではないである。新しい数学定理も新しい法則も主張しない。

第一に、主虹は $\mathbf{42.078107}$ 度である。赤 $42.252933$、紫 $40.575405$、幅 $\mathbf{1.677527}$ 度(第2節)。

第二に、副虹は色の順が逆である。赤 $\mathbf{50.575709}$ が紫 $\mathbf{53.605345}$ より内側(第3節)。

第三に、あいだの $\mathbf{8.322776}$ 度は暗い(第3節)。

第四に、これが本稿の芯である。停留の条件式に、半径 $R$ が一文字も入っていない(第4節)。

第五に、それでも大きさは効いている。霧では色が消えて白い虹になる(第5節)。

第六に、分離子は「幾何光学が使えるか」であって、大きさそのものではない(第5節)。

射程(何を示さないか)

新しい数学定理も新しい法則も主張しない。デカルトの虹の理論、最小偏角、アレクサンダーの暗帯、ミー散乱による白虹はいずれも標準的である。光学を作らない。使うのは一つの停留条件と、一つの無次元数だけである。強度を計算しない。フレネル係数による明るさの配分には立ち入らない。本稿は角度だけを見る。過剰虹を扱わない。干渉による副次的な縞(過剰虹)はエアリー理論に属し、本稿では扱わない。屈折率に精度を主張しない。$1.3318$ / $1.3330$ / $1.3435$ は代表的な波長での値であり、温度でも変わる。偏光を分けない。虹の光が強く偏光していることは事実として触れるにとどめる。既刊との関係:論文321 は一つの長さが二つの問いに答えると示した。本稿は逆で、一つの長さ(半径)が、一方の問いにだけ答えない。論文320 は分岐比が写像の形に依らないと示した。同じ型であり、ここでは角度が水滴の大きさに依らない。論文315 はどの次元が特別かは問い方で変わると示した。本稿では、どの量が効くかが問い方で変わる。論文219 は平らな板が焦点を結ぶと示した。どちらも「形が光を集める」話だが、219 は人工の構造、本稿は球一つである。論文210 はパルスの山が入る前に出ることがあると示した。どちらも停留点の話であり、見えているのは光線ではなく停留の位置である。論文212 はどんな地図も必ず何かを歪めると示した。角度を保つか面積を保つかという選択が、そこでも本稿でも軸になっている。加えたのは三次までの虹の角度を解析解で計算したこと、副虹で色の順が逆になることを数で示したこと、暗帯の幅を $8.322776$ 度と出したこと、分離子を大きさではなくサイズ因子に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:球形の水滴に光線が入射角 $\theta$ で入り、中で $k$ 回反射して出る。屈折角を $r$ とすると、光線の曲げられる総量(偏角)は

$$D(\theta)=2\theta-2(k+1)r+k\pi,\qquad \sin\theta=n\sin r$$

観察 1.1 水滴には様々な入射角の光線が当たっている。滴の上端をかすめる線から、中心を通る線まで、偏角 $D$ は入射角ごとに違う。

観察 1.2 それなら光はあらゆる方向へ散らばるはずである。それなのに、虹は帯として見える。何かがある一つの方向に光を溜めている。

問い:その方向は、何で決まっているのか。

2. 主虹は $42.078107$ 度である

設定:$D(\theta)$ が停留する(微分が零になる)ところで、隣り合う光線が同じ方向へ出る。そこに光が積み上がる。

観察 2.1 停留条件は解析的に解ける。$dD/d\theta=0$ から

$$\cos^2\theta=\frac{n^2-1}{(k+1)^2-1}$$

検算 2.2:一回反射($k=1$)の場合(本稿で計算)。

波長 $n$ 入射角 偏角 $D$ 見える角度
赤($656.3$ nm) $1.3318$ $59.480227^\circ$ $137.747067^\circ$ $\mathbf{42.252933^\circ}$
平均 $1.3330$ $59.410473^\circ$ $137.921893^\circ$ $\mathbf{42.078107^\circ}$
紫($404.7$ nm) $1.3435$ $58.801373^\circ$ $139.424595^\circ$ $\mathbf{40.575405^\circ}$

観察 2.3 虹の幅は $\mathbf{1.677527}$ 度である。満月の見かけの直径が約 $0.5$ 度だから、月三つぶん強、細い帯である。

観察 2.4 赤が外側にある。$42.252933>40.575405$ だからである。屈折率が小さい色ほど、遠くに出る。

観察 2.5 入射角は $59$ 度あたりに集まっている。赤と紫で $0.68$ 度しか違わない。ほとんど同じ場所に当たった光が、$1.68$ 度に開いて出てくる。

3. 副虹は、色の順が逆である

検算 3.1:二回反射($k=2$)と三回反射($k=3$)。

$k$ 赤 紫 幅
$1$(主虹) $42.252933^\circ$ $40.575405^\circ$ $1.677527^\circ$
$2$(副虹) $\mathbf{50.575709^\circ}$ $\mathbf{53.605345^\circ}$ $\mathbf{3.029636^\circ}$
$3$ $42.179415^\circ$ $37.926285^\circ$ $4.253130^\circ$

観察 3.2 副虹では赤と紫の大小が入れ替わっている。主虹は赤 $>$ 紫、副虹は赤 $<$ 紫、反射が一回増えただけで、色の順が逆になる。

観察 3.3 副虹の幅は主虹の $\mathbf{1.81}$ 倍である。$3.029636/1.677527$、その分だけ薄い(同じ光を広い角度に配るから)。

検算 3.4:主虹と副虹のあいだ。

角度
主虹の外側(赤) $42.252933^\circ$
副虹の内側(赤) $50.575709^\circ$
あいだ $\mathbf{8.322776^\circ}$

観察 3.5 この $\mathbf{8.322776}$ 度には、光が来ない。どの入射角の光もこの範囲へは出ないからである。アレクサンダーの暗帯であり、$1700$ 年以上前から記録されている。

観察 3.6 三回反射の虹は $41.737347$ 度に出る。主虹とほぼ同じ角度だが、太陽の側に出る。太陽を背にして見る主虹とは、反対を向かねばならない。だから普通は見えない。

4. 芯:条件式に、半径が一文字も入っていない

観察 4.1 これが本稿の芯である。停留条件

$$\cos^2\theta=\frac{n^2-1}{(k+1)^2-1}$$

に現れるのは $n$ と $k$ だけである。水滴の半径 $R$ が、どこにも無い。

検算 4.2:

水滴 半径 主虹の角度
雨粒 $1$ mm $42.078107^\circ$
霧雨 $0.1$ mm $42.078107^\circ$
霧 $10$ $\mu$m $42.078107^\circ$
雲粒 $1$ $\mu$m $42.078107^\circ$

観察 4.3 千分の一にしても、小数第六位まで同じである。近似ではなく、式に入っていないからである。$R$ は約分されて消えたのではなく、最初から現れない。

観察 4.4 理由は相似である。球はどの大きさでも同じ形であり、光線の道筋は半径を単位に取れば全部同じになる。角度は、長さの比しか見ない。

観察 4.5 論文320 は「分岐比は写像の形に依らない」と書いた。同じ型である。そこでは形が答に入らず、ここでは大きさが答に入らない。

観察 4.6 では虹は、何を測っているのか。答は屈折率だけである。空にかかっているのは、水の屈折率の目盛りである。

5. 分離子:幾何光学が使えるかどうか

設定:ところが、霧の中では虹が白くなる。角度が同じなら、なぜ色が消えるのか。

検算 5.1:無次元のサイズ因子 $x=2\pi R/\lambda$($\lambda=550$ nm)。

水滴 半径 $x=2\pi R/\lambda$ 何が効くか
雨粒 $1$ mm $\mathbf{11424.0}$ 幾何光学
霧雨 $0.1$ mm $1142.4$ 幾何光学
霧 $10$ $\mu$m $\mathbf{114.2}$ 回折(白虹)
雲粒 $1$ $\mu$m $11.4$ 回折(白虹)

観察 5.2 分離子、$x$ が $10^3$ を超えるかどうか。超えていれば光線として扱えて色が分かれ、下回ると回折が角度を鈍らせて $1.68$ 度の幅を塗りつぶす。白虹になる。

観察 5.3 半径は、二つの問いに別々に答えている。

問い 半径は
どの角度に出るか 答えない(式に無い)
色が付くかどうか 答える($x$ を通して)

観察 5.4 論文321 の鏡像になっている。321 では一つの長さが二つの問いに答えた。ここでは一つの長さが、片方の問いにだけ答える。どちらも「長さ単独では決まらない」という同じ規律に服している。

観察 5.5 論文300 の判定基準を、角度と白虹に当てる。

基準 結果
恒等式を保つ対応があるか 無い。$x$ から角度は出ない
同じ量が現れるか 片方だけ。$R$ は $x$ にしか入らない
変数を動かして一致し続けるか しない。$R$ を変えると片方だけ動く

観察 5.6 三行とも別根を指している。同じ水滴の、同じ半径が、二つの独立な役目を持っている。一つの量が一つの役目とはかぎらない。

観察 5.7 最後に一つ、虹に大きさは無い。近づいても遠ざかっても $42.078107$ 度のままで、端に着くことはできない。虹は場所ではなく、方向だからである。見る人が動けば、虹も同じだけ動く。

6. 点呼と結び

  1. 主虹は $42.078107$ 度(検算2.2):赤 $42.252933$、紫 $40.575405$。
  2. 幅は $1.677527$ 度(観察2.3):満月三つぶん強。
  3. 副虹は色の順が逆(検算3.1):赤 $50.575709$ $<$ 紫 $53.605345$。
  4. 暗帯は $8.322776$ 度(検算3.4):光が来ない。
  5. 三次は太陽の側(観察3.6):$41.737347$ 度だが振り返らねば見えない。
  6. 条件式に $R$ が無い(観察4.1):$n$ と $k$ だけ。
  7. 千分の一でも同じ(検算4.2):小数第六位まで。
  8. 理由は相似(観察4.4):角度は比しか見ない。
  9. $x$ が $10^3$ を切ると白虹(検算5.1):霧は $114.2$。
  10. 半径は片方の問いにだけ答える(観察5.3):321 の鏡像。

結び:水滴には様々な入射角の光線が当たっているのに、虹は帯として見える。光を溜めているのは偏角が停留する点であり、その条件は解析的に解けて $\cos^2\theta=(n^2-1)/((k+1)^2-1)$ になる。主虹は $\mathbf{42.078107}$ 度、赤 $42.252933$、紫 $40.575405$、幅は $\mathbf{1.677527}$ 度で満月三つぶん強である。副虹では色の順が逆になり、赤 $\mathbf{50.575709}$ が紫 $\mathbf{53.605345}$ より内側に来る。反射が一回増えただけで大小が入れ替わる。あいだの $\mathbf{8.322776}$ 度にはどの入射角の光も出ないので暗い。そしてこの条件式には、水滴の半径が一文字も入っていない。$1$ mm の雨粒でも $1 \mu$m の雲粒でも小数第六位まで同じ角度である。約分されて消えたのではなく、最初から現れない。球はどの大きさでも同じ形であり、角度は長さの比しか見ないからである。それでも大きさは効いている。無次元のサイズ因子 $x=2\pi R/\lambda$ が $\mathbf{10^3}$ を切ると回折が $1.68$ 度の幅を塗りつぶして白虹になる。霧は $\mathbf{114.2}$ である。分けるものは一つ、幾何光学が使えるかどうかであって、大きさそのものではない。半径は「どの角度に出るか」には答えず、「色が付くかどうか」には答える。論文321 の鏡像になっている。321 では一つの長さが二つの問いに答え、ここでは一つの長さが片方の問いにだけ答える。どちらも「長さ単独では何も決まらない」という同じ規律に服している。最後に一つ、虹に大きさは無い。近づいても遠ざかっても $42.078107$ 度のままで、端に着くことはできない。虹は場所ではなく方向であり、見る人が動けば、虹も同じだけ動く。

参考文献

  1. Descartes, R. (1637). Les Météores, Discours VIII: De l’arc-en-ciel. Leiden.
  2. Airy, G. B. (1838). On the Intensity of Light in the Neighbourhood of a Caustic. Transactions of the Cambridge Philosophical Society, 6.
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  4. Lee, R. L. and Fraser, A. B. (2001). The Rainbow Bridge: Rainbows in Art, Myth, and Science. University Park: Pennsylvania State University Press.
  5. Bohren, C. F. and Huffman, D. R. (1983). Absorption and Scattering of Light by Small Particles. New York: Wiley.
  6. 山岸勇輝 (2026). パルスの山は、入る前に出ることがある [論文210]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22111747
  7. 山岸勇輝 (2026). どんな地図も、必ず何かを歪める [論文212]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22112104
  8. 山岸勇輝 (2026). 平らな板が、焦点を結ぶ [論文219]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22119788
  9. 山岸勇輝 (2026). 三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる [論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  10. 山岸勇輝 (2026). どの次元が特別かは、問いごとに違う [論文315]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22208139
  11. 山岸勇輝 (2026). カオスへの道は、写像が持っていない数を持っている [論文320]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22209089
  12. 山岸勇輝 (2026). 大気の厚さを決める長さが、大気が残るかどうかも決めている [論文321]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22209154

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「虹の角度に、水滴の大きさは入っていない」[論文325]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.22209848

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引用するとき

山岸勇輝 (2026). 虹の角度に、水滴の大きさは入っていない [論文325]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/325 ・ DOI: 10.5281/zenodo.22209848

Yamagishi, Y. (2026). The Size of the Drop Is Not in the Angle of the Rainbow [Paper 325]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/325; DOI: 10.5281/zenodo.22209848

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