Yamagishi Complexity Torus Lab山岸勇輝ラボ

【論文557】歯を強くする角度は、伝動をなめらかにする角度と逆を向いている

要旨

歯車の圧力角は、強さのために選ばれる。本稿が示すのは、その同じ角度が伝動のなめらかさを逆向きに動かすこと、そして一つの歯車の中で「比」と「なめらかさ」がまったく別の種類の量に決められていることである。新しい定理も法則も主張しない。

第一に、これが本稿の芯である。圧力角を上げるとかみ合い率が下がる。$14.5$ 度で $\mathbf{1.919856}$、$30$ 度で $\mathbf{1.344019}$ で、比は $\mathbf{1.428444}$ である(第2節)。

第二に、歯数を増やすと上がる。$10$ と $20$ の組で $\mathbf{1.463161}$、$60$ と $60$ の組で $\mathbf{1.784715}$ である(第2節)。

第三に、$1$ を割ると伝動が途切れる。歯たけを削っていくと $\mathbf{0.572468}$ モジュールでちょうど $1$ になり、その下では次の歯が噛む前に前の歯が離れる(第3節)。

第四に、境目の両側を見た。その $1$ パーセント下では $1$ を割り、$1$ パーセント上では超える(第3節)。

第五に、そのあいだ歯車比は動かない。$40$ 枚と $20$ 枚の比はちょうど $2$ で、$12$ 桁変わらない(第4節)。

第六に、分離子は、比を決めているのが整数だということである。なめらかさは連続量が決め、比は歯の枚数が決める。同じ機械の中で、二つの量の種類が違う(第4節)。

キーワード:歯車、インボリュート歯形、圧力角、かみ合い率、歯の強度。

射程(何を示さないか)

新しい定理も法則も主張しない。インボリュート歯形もかみ合い率の式も標準的である。歯車の設計を勧めない。どの圧力角を選ぶべきかは述べない。動かしたときに何が起きるかだけを見る。歯元の強さを計算しない。圧力角を上げると歯元が太くなることは前提として置いており、曲げ応力の式は解いていない。だから「どちらが得か」は本稿では決まらない。平歯車だけを扱う。はすば歯車は歯すじ方向のかみ合いが加わるので、この対立の形が変わる。転位を入れない。歯たけを削る計算は転位係数を含んでいない。潤滑・摩耗・騒音を扱わない。かみ合い率が騒音に効くことは知られているが、本稿は音を測っていない。「かみ合い率は大きいほどよい」とは書かない。大きくする代償が第2節の対立そのものである。既刊との関係:論文556 は外力の多数派を受けているのがボルトではないと示し、締付を上げれば離れにくくなるがボルト自身の余裕は減ると述べた。本稿の圧力角も同じ形で、一つのつまみが二つの良いことを逆向きに動かす。ただしあちらは荷重の分配、こちらは幾何の取り合いである。論文551 は一つの指数が二つの失敗のうち一方しか見ていないと示した。一つの量が二つの要求を同時には担えない型で、本稿はそれが設計のつまみの側に現れた場合である。論文300 は同根か別根かが判定できると示した。「圧力角がかみ合い率を下げる」と「歯車比が整数で動かない」は別根である。加えたのは、圧力角を六段に振って比を $\mathbf{1.428444}$ と測ったこと、かみ合い率が $1$ になる歯たけを二分法で $\mathbf{0.572468}$ モジュールと出し、逆算で確かめたこと、その境目の両側で符号が変わることを見たこと、歯たけ $0$ の極でかみ合い長さが $0$ に戻ることを確かめたこと、分離子を「比を決めているのが整数であること」に置いたことである。

1. 記法と問い

設定:モジュール $m$、圧力角 $\alpha$、歯数 $z_1$ と $z_2$ の平歯車を噛み合わせる。かみ合い率は

$$\varepsilon=\frac{\sqrt{r_{a1}^{2}-r_{b1}^{2}}+\sqrt{r_{a2}^{2}-r_{b2}^{2}}-a\sin\alpha}{\pi m\cos\alpha}$$

である。分子はかみ合いが続く長さ、分母は基礎円上の歯のピッチである。

観察 1.1 $\varepsilon$ は「同時に何枚が噛んでいるか」の平均である。$1$ を超えていれば、前の歯が離れる前に次の歯が噛む、$1$ を割れば、噛んでいない瞬間ができる。

観察 1.2 圧力角は強さのために選ばれてきた。$14.5$ 度から $20$ 度への移行は、歯元を太くするためだった。だが式の分母にも分子にも $\alpha$ が入っている。

問い:強くする方向に動かすと、なめらかさはどう動くか。

2. 圧力角を上げると、かみ合い率が下がる

計算 2.1:歯数 $20$ と $40$、モジュール $2$ で、圧力角だけを振った。

圧力角 かみ合い率
$14.5$ 度 $\mathbf{1.919856}$
$17.5$ 度 $1.750404$
$20.0$ 度 $\mathbf{1.635186}$
$22.5$ 度 $1.539636$
$25.0$ 度 $1.460768$
$30.0$ 度 $\mathbf{1.344019}$

観察 2.2 これが本稿の芯である。単調に下がり、$14.5$ 度と $30$ 度の比は $\mathbf{1.428444}$ である。$1.4$ より大きく $1.5$ より小さい。実測してから挟んだ。

観察 2.3 歯を強くする向きと、なめらかにする向きが逆である。圧力角を上げれば歯元は太くなるが、同時に同時噛み合い枚数が減る。一つのつまみが二つの良いことを逆向きに動かしている。どちらを取るかは、本稿では決まらない。

観察 2.4 論文556 と同じ形である。あちらでは締付を上げると継手は離れにくくなるが、ボルト自身の余裕が減った。一つのつまみが二つを逆に動かす型。ただしあちらは荷重の分配、こちらは歯形の幾何の取り合いである。

計算 2.5:歯数を変えた(圧力角 $20$ 度)。

歯数 かみ合い率
$10$ と $20$ $\mathbf{1.463161}$
$12$ と $24$ $1.511122$
$20$ と $20$ $1.556838$
$20$ と $40$ $1.635186$
$60$ と $60$ $\mathbf{1.784715}$

観察 2.6 歯数を増やすと上がる。$\mathbf{1.463161}$ から $\mathbf{1.784715}$ へ、小さい歯車ほどなめらかさで不利である。圧力角を上げた分を、歯数で買い戻すことはできる。

3. $1$ を割ると、伝動が途切れる

計算 3.1:歯数 $20$ と $40$、圧力角 $20$ 度で、歯たけを削っていった。

歯たけ かみ合い率
$1.0$ モジュール $\mathbf{1.635186}$
$0.8$ モジュール $1.346530$
$0.6$ モジュール $1.043104$
$0.5$ モジュール $\mathbf{0.884820}$
$0.3$ モジュール $0.552264$

計算 3.2:二分法で、ちょうど $1$ になる歯たけを求めた。$\mathbf{0.572468}$ モジュールである。

観察 3.3 逆算が検査になっている。その値を戻すとかみ合い率がちょうど $1$ に返る($10^{-9}$)、解き損ないではないことを別に見た。

観察 3.4 境目の両側を見ている。$1$ パーセント下では $1$ を割り、$1$ パーセント上では超える。片側だけを示しても、そこが境目であることの証拠にはならない。

観察 3.5 もう一方の極でも確かめた。歯たけを $0$ に近づけるとかみ合い長さも $0$ に戻る。式が壊れていないことの、いちばん安い確認である。

観察 3.6 $1$ は連続的な目安ではなく、切れ目である。$1.05$ と $0.95$ の差は $1$ 割ではない。上では常にどこかが噛んでおり、下では噛んでいない瞬間が周期的に来る。量の差ではなく、種類の差である。

4. 分離子

計算 4.1:そのあいだ、歯車比はどうなっているか。$40$ 枚と $20$ 枚で、比はちょうど $\mathbf{2.000000000000}$ である。

観察 4.2 比は $12$ 桁動かない。圧力角を $14.5$ 度から $30$ 度まで動かしても、歯たけを半分に削っても、比は $2$ のままである。回転の比を決めているのは幾何ではなく、歯の枚数という整数だからである。

観察 4.3 分離子は、比を決めているのが整数だということである。なめらかさは連続量(角度・歯たけ)が決め、比は整数が決める。同じ一組の歯車の中で、二つの量が別の種類に属している。だからベルトのようにすべることがなく、そのかわりなめらかさは連続的に劣化しうる。

観察 4.4 論文300 の基準で別根である。「圧力角がかみ合い率を下げる」はインボリュート歯形の幾何という持ち物を要る。「歯車比が整数で動かない」は歯が数えられるという別の持ち物を要る。歯形を変えても後者は残り、歯を連続体にすれば後者だけが消える。

観察 4.5 言わないこと。「かみ合い率は大きいほどよい」とは書かない。大きくする代償が第2節の対立そのものである。歯元の曲げ応力を解いていないので、どちらが得かは本稿では決まらない。

5. 点呼と結び

  1. $14.5$ 度で $\mathbf{1.919856}$(計算 2.1):もっともなめらか。
  2. $30$ 度で $\mathbf{1.344019}$(計算 2.1):本稿の芯。
  3. 比 $\mathbf{1.428444}$(観察 2.2):実測してから挟んだ。
  4. $10$ と $20$ で $\mathbf{1.463161}$(計算 2.5):小さい歯車は不利。
  5. $60$ と $60$ で $\mathbf{1.784715}$(計算 2.5):歯数で買い戻せる。
  6. 境目の歯たけ $\mathbf{0.572468}$ モジュール(計算 3.2):二分法。
  7. 戻すとちょうど $1$(観察 3.3):逆算の突合せ。
  8. 両側で符号が変わる(観察 3.4):境目の両側。
  9. 歯車比 $\mathbf{2.000000000000}$(計算 4.1):$12$ 桁動かない。
  10. 分離子は整数であること(観察 4.3):比と なめらかさは別種の量。

結び:歯車の圧力角は、強さのために選ばれる。ところがその同じ角度が、伝動のなめらかさを逆向きに動かしている。歯数 $20$ と $40$、モジュール $2$ で圧力角だけを振ると、かみ合い率は $14.5$ 度の $\mathbf{1.919856}$ から $30$ 度の $\mathbf{1.344019}$ まで単調に下がり、比は $\mathbf{1.428444}$ になる。$1.4$ より大きく $1.5$ より小さく、実測してから挟んだ。圧力角を上げれば歯元は太くなるが、同時に同時噛み合い枚数が減る。一つのつまみが二つの良いことを逆向きに動かしており、どちらを取るかは歯元の曲げ応力を解いていない本稿では決まらない。歯数を増やせば買い戻せて、$10$ と $20$ の $\mathbf{1.463161}$ に対し $60$ と $60$ では $\mathbf{1.784715}$ になる。小さい歯車ほどなめらかさで不利である。そしてかみ合い率が $1$ を割ると、伝動そのものが途切れる。歯たけを削っていくと $\mathbf{0.572468}$ モジュールでちょうど $1$ になり、その値を戻すと $1$ に返ることを逆算で確かめた。境目の $1$ パーセント下では $1$ を割り、$1$ パーセント上では超えるので、そこが境目であることが両側から示されている。歯たけを $0$ に近づけるとかみ合い長さも $0$ に戻ることも見た。この $1$ は連続的な目安ではなく切れ目である。上では常にどこかが噛んでおり、下では噛んでいない瞬間が周期的に来る。量の差ではなく種類の差である。分離子は、比を決めているのが整数だということである。圧力角を $14.5$ 度から $30$ 度まで動かしても、歯たけを半分に削っても、$40$ 枚と $20$ 枚の歯車比は $\mathbf{2.000000000000}$ のまま $12$ 桁動かない。なめらかさは連続量が決め、比は歯の枚数という整数が決める。同じ一組の歯車の中で二つの量が別の種類に属しており、だからベルトのようにすべることがなく、そのかわりなめらかさのほうは連続的に劣化しうる。論文300 の基準では、「圧力角がかみ合い率を下げる」はインボリュート歯形の幾何を、「歯車比が整数で動かない」は歯が数えられることを、それぞれ別に要る。論文556 と同じ形でもある。あちらでは締付を上げると継手は離れにくくなるがボルト自身の余裕は減った。一つのつまみが二つを逆に動かす型で、あちらは荷重の分配、こちらは歯形の幾何の取り合いである。論文551 が一つの指数は二つの失敗のうち一方しか見ていないと示したのも同じ骨組みで、そちらは指標の側、こちらは設計のつまみの側に現れている。正直に言えば、歯車の設計は勧めていない。歯元の曲げ応力を解いていないので「どちらが得か」は決まらず、圧力角を上げると歯元が太くなることは前提として置いたままである。平歯車だけを扱っており、はすば歯車では歯すじ方向のかみ合いが加わって対立の形が変わる。転位も入れておらず、潤滑・摩耗・騒音も測っていない。そして「かみ合い率は大きいほどよい」とも書かない。大きくする代償が、まさに本稿の対立である。

参考文献

  1. Buckingham, E. (1949). Analytical Mechanics of Gears. McGraw-Hill.
  2. ISO 6336-1 (2019). Calculation of Load Capacity of Spur and Helical Gears. International Organization for Standardization.
  3. Litvin, F. L., & Fuentes, A. (2004). Gear Geometry and Applied Theory (2nd ed.). Cambridge University Press.
  4. Radzevich, S. P. (2016). Dudley’s Handbook of Practical Gear Design and Manufacture (3rd ed.). CRC Press.
  5. 山岸勇輝 (2026). 『三百本目の点呼、同根か別根かは、判定できる』[論文300]. Zenodo. 10.5281/zenodo.22171914
  6. 山岸勇輝 (2026). 『指標が動かないまま、不良率が $359$ 倍になる』[論文551]. Zenodo. 10.5281/zenodo.23014191
  7. 山岸勇輝 (2026). 『外力の多数派を受けているのは、ボルトではない』[論文556]. Zenodo. 10.5281/zenodo.23014218

作成にあたって:本稿の着想と内容は、著者自身の考察に基づくものです。文章の構成整理や英訳、数式の確認には AI(大規模言語モデル)の助力を得ました。最終的な内容の解釈や誤りがあれば、それらはすべて著者の責に帰します。お気づきの点があれば、ご教示いただければ幸いです。

書誌

山岸勇輝(2026)「歯を強くする角度は、伝動をなめらかにする角度と逆を向いている」[論文557]. Zenodo.
DOI: 10.5281/zenodo.23014224

YOI 557第1版・2026年9月ビットコインに記録済み

日付の証拠(OpenTimestamps):日本語版の .ots・英語版の .ots・SHA256SUMS

予備の置き場所(ミラー。中身は上と同じです):PDF 日本語・PDF English・SHA256SUMS

住所:https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/557・DOI 10.5281/zenodo.23014224・CC BY 4.0・プレプリント(査読を経ていません)・ORCID 0009-0006-8587-3450

引用するとき

山岸勇輝 (2026). 歯を強くする角度は、伝動をなめらかにする角度と逆を向いている [論文557]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/557 ・ DOI: 10.5281/zenodo.23014224

Yamagishi, Y. (2026). The Angle That Strengthens a Tooth Points Against the Angle That Smooths the Drive [Paper 557]. YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/557; DOI: 10.5281/zenodo.23014224

@misc{yamagishi2026yoi557,
  author = {Yamagishi, Yuuki},
  title = {The Angle That Strengthens a Tooth Points Against the Angle That Smooths the Drive},
  year = {2026},
  howpublished = {YOI: https://www.yamagishiyuuki.com/yoi/557},
  doi = {10.5281/zenodo.23014224},
  note = {Preprint, edition 1}
}
指紋(SHA-256)と確かめ方
0d295082d69538c6e8809da9cb37281e547cf8a38c1a8ddac7961aa043813add yamagishi_yoi557_v1_jp.pdf
0f01b141008f7baca4eba2f1dea23b3f4fc97e5cbaa16a8c6f939dd87689ffa1 yamagishi_yoi557_v1_en.pdf

PDF と .ots を同じ場所に保存し、opentimestamps.org に .ots、続けて PDF を落とすと、記録された日時が表示されます。PDF が 1 バイトでも変わっていれば通りません。